どうしよう……
そこは、よくわからない公園だった。
堤防か防波堤の役割でもあるのだろうか。どこにでも浮いている船が、半ば沈められた上に、甲板には芝生が敷かれている。
特に遊具も設置されていないからか、遊んでいる子供は見当たらない。ポツポツと置かれたベンチが、どこか寂しさを匂わせていた。
そのベンチの一つに、男二人が腰掛けていた。
「……だから鳥類関連の本を見かけないわけですか?三倉さん。」
「そうゆうこった。論文1つで大騒ぎするんだ。本なんか出版したら焚書になるんじゃねえか?」
「表現の自由はどこ行った……」
こんなの憲法違反だろ。裁判所は仕事してるのか?
してないからこうなっているんだろうな。
ーーーさて、手紙のやり取りをえて、協力者候補と面会することはできた。この人ならば乗って来るだろうし、ふざけた組織関連の人物でもないだろう。まさか被害者面した組織協力者という線はあるまい。
しかし、憲法まで歪めてくる組織とは一体……
「都市伝説では『禁句』ってのが腐るほどあるぞ。使い古されすぎて、もはや事実だろうといわれるぐらいにはな。」
「禁句……」
「なんでも、禁止されている言葉を喋ると消されるらしい。何者かにな。」
知らなかった。そんな都市伝説があるのならば、都市伝説の調査と表して組織の正体を暴けるかもしれない。
共通点としては、鳥や飛行機などのーーー
「ーー空を飛ぶものか」
「おい、全部聞こえているぞ」
「えっ?あ、」
「いい加減、腹の中ぜんぶさらけ出せ。ただ協力しろと言われても、俺は動かねえぞ。」
じっと目を見てくる。いや、ほぼ睨んでいると言ったほうがいい。この人は直に組織の被害にあった人だ。危険な橋はもう渡りたくないだろう。
だが、やりたいことがある。
三倉さんは、自分と似ているところがある。
しばらく話していてわかった。この人は、譲れないところは絶対に譲らない人だ。ある程度は理性的に振る舞うが、一線を超えると損得勘定を度外視する、自分の同類と言える人だ。
だから、やりたいことを伝える。
「三倉さん。空が綺麗に思えたことはありますか?」
「あ?まあ、あるが……」
「自分もです。いつかは覚えてないんですけどね。ふと、雨上がり空を見上げた時、光に照らされた白い雲と、雲の切れ間から見えた青空が、とても神々しく思えたんですよ。」
「………」
あの時の感動はよく覚えている。なぜ昔の人が、神が空にいると思ったのか、わかる気がした。
それからだった。空を鳥のように舞いたいと思うようになったのは。とにかく、空の一部になってみたかった。
気球は違う。自分はエレベーターのようにしか思えなかった。
飛行船も違った。確かに良いものだが、大気を押しのけるような感覚が気になった。
自分が求めているのは、風と一体化して、空の一部になるものだ。空という領域に立ち入るための翼が欲しいのだ。
だからこそ、飛行機がない現状が我慢ならない。
*****
気づけば、随分と長く話し込んでいたらしい。ふと腕時計を見れば、いつの間に長針が一回転していた。
三倉さんはどこか遠くを見ていた。いや、港の海鳥を見てるのか?
そして、ポツリと呟く。
「ーーーお前、馬鹿だろ」
いきなり何を言う。馬鹿とは失礼な。それを言うなら、あんなに迫害されたのに未だに研究職を続けている、三倉さんの方こそ馬鹿だ。
「まあ、確かにな。だが、命の危険を理解しているくせして突き進もうとするのは、馬鹿のやることだろ?」
とりあえず、それは置いておく。
ーーーそれで、協力の是非は?
「お前、俺が生物学者を名乗っているのを忘れたのか?生物学ならまだしも、工学なんて分かんねえよ。」
すみません。確かに無茶振りです。しかし、三倉さんしか居なかった。今なら良かったと思っている。
「……そうかよ。つか、腹の中を晒し出せと言われてマジでペラペラ喋る奴なんて初めて見たわ。なんだ?今の高校生はそこまでオープンなのか?」
……冷静に考えて、いきなり自分の夢を語り出す男って迷惑だな。
「お前、確か野辺だったか。此処まで何で来た?」
「はい?水上バスですけど」
「このあと、時間はあるか?」
「はい」
「なら着いてこい」
「……え、ちょっ!」
いきなり腰を上げたかと思えば、スタスタと歩き始めた。
もちろん、慌てて後を追う。
「三倉さん!いきなりどうしたんですか!?」
「排斥された人間なんて、大抵は孤独になるもんだが、例外は存在する。排斥された人間が複数人いる場合、そいつら同士で群れることも有るもんだ」
「今日いきなりですか!?その方たちだって仕事とかあるかもしれませんし、日を改めた方が」
「なに、あいつなら関係なしに食い付く」
そう言って、三倉さんはポケットから携帯電話を取り出した。
三倉さん、チョロい?
出来れば高評価、コメントおねがいします。