飛行機がない?絶対におかしいよな!?   作:素人目

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ご都合主義的な感じで話が進んでいます。

てか無茶苦茶です。


濃い人がいると苦労する

この世界の地価は安い。

デフレじみた値段でこそないが、前世の日本と比べれば圧倒的に安い。なにせ低地の平野が軒並み水没した上に、今では水上都市が発達しているのだ。

それに、一度沈んだ以上、また沈むかもしれないという不安があるのだろう。

ちなみに国の調査の結果、これ以上沈むことはほぼ無いらしい。だが、人の不安なんて早々消えない。イメージとしては事故物件だろうか。

 

そんな海沿いの陸地にある、こじんまりとした会社、矢場マリン。

水没のことを考えなければ、水上都市群も近く、良い立地だ。

 

 

「……三倉さん。念の為言っておきますけど、プライベートならともかく、社会人としていきなり押しかけるのは非常識ですよ」

 

「おっしゃる通りです。ですが今回ばかりは急いだ方がいいと思いまして。ーーーートビウオのことですよ」

 

 

……私服の自分が、ものすごく場違いに思える。

ついて行ったら、いきなり会社の応接室に送られた。会社の人が怪訝な目をむけるのも頷ける。土曜日にお疲れさま。

 

というより、今の状況がよくわからない。三倉さんの話を信じるならば、この中年に足を仕込んだ人はあの忌々しい組織の被害者らしいが……

 

 

「そういえば、まだ挨拶していませんでしたか。矢場マリン経営者の矢場蒼汰です」

 

「あっ、ご丁寧にどうも。野辺拓人です」

 

「いきなりですが、あなたはこの会社の助けになると聞きました。具体的にどういったことでしょうか?」

 

「ーーーあの、すみません。ここには特に説明もなく、急に連れて来られまして、今でもなにがなんだか………」

 

 

矢場さんはしらけた目を向ける。向けられた三倉さんは目をそらす。良かった。悪いとは思っているらしい。

 

 

「三倉さん。どうゆうことか教えて頂けますか?とゆうか見たところ野辺くんは精々高校生ですよね?」

 

「あーっと、それに関しては、こちらを見ていただいた方が早いかと。」

 

カバンからパソコンを取り出し、矢場さんの方に画面を向ける。

って、これ自分が作ったプロモーションビデオかよ。持って来てたのか………

矢場さんは最初けげんな目を向けていたが、次第に興味ありげに画面を見る。どうやら初見だったらしい。数分なんてあっという間だった。

 

 

「………なるほど」

 

 

矢場さんは静かにパソコンを戻した。口角は僅かに上がっているが、どこかで諦観の念を感じさせる、なんとも曖昧な表情をしている。

 

 

「この情報をトビウオに使えと。ーーー遅すぎなんですよ。いや、最初からあっても意味は無いでしょう」

 

「そうか………」

 

 

二人して暗い雰囲気を出しているが、未だに状況がわからない自分には理解しがたい。そもそもの話、

 

 

「あの、すみません。そのトビウオとは一体?」

 

「スキッパーに羽つけてピョンピョンさせようっていう企画だ」

 

「って、三倉さん!?」

 

「なに、今更だ。何でも今までに無い新感覚というていで売り出すつもりだったらしい。」

 

 

矢場さんの混乱をよそに、三倉さんは企画の内容を口にした。

ほそぼそと、小型高速艇やスキッパーの生産をしていた矢場マリンが、そのノウハウを活かして『変わり種』を作ろうとしたらしい。

後は簡単な話で、いつの間に不良債務が積み上がったそうだ。この会社は持って数ヶ月らしい。そういえば、すれ違った社員も、どこか疲れ顔だった気がする。

 

うろたえていた矢場さんが再起動するころには、三倉さんはほとんど話終えていた。

 

 

「……よく経営者の前で、堂々と情報漏洩できますね?」

 

「もちろん、こちらも情報をお渡ししますよ?ーーー野辺、今までやっていた事と、お前の言う組織とやらのの説明を」

 

「アッ、ハイ」

 

 

いろいろとメチャクチャだ。

 

もうどうにでもなーれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

******

 

 

「あなた達馬鹿ですか!?そんなのに協力できるわけないでしょ!会社を立て直す一発逆転の手段って、ロシアンルーレットと何が違うんですか!!」

 

この人の反応も仕方ないと思う。

 

あの忌々しい組織の説明をする際、自分はリスクをぼかして説明した。協力への忌避感を抑えるためにだ。

ところが三倉さんという常識行方不明者がその説明を補完した。具体的には組織による暗殺の危険性を強調しやがった。

 

 

「野辺、リスクへの対応は?」

 

「あれだけ危機感を煽っておいて自分に丸投げですか!?ええと、あっ!大衆に情報を拡散することでリスクの分散が図れます。先程お話した中にーーーーー」

 

 

自分は以前、匿名でインターネットに航空機の動画をアップして、暗殺のリスク回避を狙った。世界中の人々が航空機を知り、多くの人が実証すれば、組織の能力を上回ることが出来ると思ったのだ。

まさか100年単位の歴史を持った組織でも、世界中の不特定多数の人を殺害してまわるわけにもいくまい。

 

実際のところ、組織の情報統制能力が予想以上に高く、動画が拡散しきる前に動画が削除されてしまい、あえなく失敗に終わった。

 

だからこそ、やるなら徹底的にやるのがいい。

 

 

「多くの人がいる前で、デモンストレーションはどうでしょう?なんの事前情報もなしに、いきなり鳥のように、空を飛ぶものが飛んできたらどう思いますか?一気に拡散されるでしょう。組織は暗殺なんてしている暇はありません」

 

「………組織や人というのは、結局は理屈ではなく感情で動くものです。ヤケになって刺客を送る可能性はどうでしょうか?」

 

 

話を聞いているうちに、表面上は落ち着いたらしい。冷静に質問してくる。

そのあたりは大丈夫だ。

 

 

「そんな組織なら、長い月日の中で正体を表しているはずです。今まで知られていないのが、感情より理屈を重視している何よりの証拠かと」

 

 

矢場社長は長考に入ったようだ。腕を組んで眉をひそめている。

そこに三倉さんの追い打ちが掛かる。

 

 

「せっかく親から継いだ会社を、ここで畳むか?」

 

「……ああもう、わかりました協力します!ただし設計に社員は関わらせませんよ。あくまで製造や組み立てまでです。真っ先に狙われるなら設計者でしょうからね!」

 

 

やけくそながら、言質を取ることに成功した。

設計ならこちらで出来る。これでも前世持ちだ。初歩的な航空機の概念設計図はしっかり覚えている。離着水のためのフロートがネックだが 、ただ人一人飛ばすだけなら簡単だ。

 

 

 

 

 

 

「……………設計図は海の日、つまり明後日までにおねがいします」

 

 

………………は?

 

 

「いや、この会社に時間的余裕が本当にないんです。出来れば月末までに倒産の手続きを開始しなければならない程にはヤバいんです。ですから可能な限り、部品は会社にあるものを使って、外部への発注は極力抑えてください。」

 

 

………………………………………………………………………………………………………………………ひとまず、在庫の一覧表とCAD貸して下さい。




野辺「そういえば、よくあんな荒唐無稽な話を信じましたね?」

矢場「心当たりが有り過ぎるんですよ………」



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