吾輩は幽霊である   作:asikuma

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その2

 

俺が幽霊となってから数日がたった。霊体てすげーけどデメリットもやっぱり多いね。まず寝る必要が亡くなったことですごい退屈。こちとら毎日が夏休みになったのにさゲームもネットも出来ないのよ?そういうときって寝て過ごせばいいのにそれが出来ないわけ。人が起きてる時間帯はまだいいけどさぁ、夜になったらホントに暇。暇すぎて誰か呪ってやろうかと思ったわ、やり方知らないけど。

 

あとねあとね、壁抜けの件だけど当然やったよ?『覗き』

当たり前じゃん?絶対バレないしスゲー簡単だもん。でもさー、まあ結果からして普通に覗けたよ?見たよ、女性の全裸。けど拍子抜けもいいとこ、一言で表すなら

 

『おっ、サーモグラフィーかな?』

 

まぁ知ってたけどね。初日にも言ってたけど幽霊の見る景色って生きてる時のそれと全然違うわけ。無機物は色を除けば普通に分かるけど生物、特に魂があるものはまた違った見え方でさ。まさにサーモグラフィーを通したみたいに白を基準に赤とか黄色く発光して見えるわけ。何人もみて自分なりに検証してみたけどあれはやっぱりその人の魂の質とか感情の機微で違うんだわ。特に頭と胸辺りの発光が強いから体に関しては見づらいのなんの…やはり心と魂は脳と心臓に強く関係してるということだろうか?

 

でもまぁ全く見えないわけじゃないから、覗きしてるって事実で滾るものもあったけど賢者モードも半端なかったね。半分失敗といったところかな?

 

え?変態?気にするなよ。向こうだって気づいてないって。それにすぐ(4人くらいで)辞めたから。

 

あとわかったのは幽霊はやっぱり鏡に映らない。人から見えないのは勿論幽霊になった自分の目でも当然見えなかった。でもね鏡越しだと人の姿がクッキリ分かるっていうのは結構良い収穫だったね。反射体に魂魄は無いってことだろう。因みに覗いてるときにわかったよ、やっぱエロって偉大だわ。

 

ん?そういえば心霊写真てあるけど、鏡の件からして心や魂はそういうのに影響しないということなのでは?やっぱりヤラセ?それとも幽霊っていうむき出しの魂はまた別問題なの?不思議は尽きないものである。

 

次に幽霊から生きた人間に対する接触の検証もしてみた。無機物はすり抜けたけど同じく生物もすり抜けるのか?結果としてダメだったでござる。こちら側からしたらなんと触れたんだよね。でもって触れたけど摘むとか出来ない、いうなれば干渉できないというべきか。干渉できないから触られた側からしても自覚はないようだ。憑依とかあるけど多分できない。これは幽霊の質にもよるだろうけど俺の考えとしては肉体は魂の器であり鎧でもあってそういう干渉を阻害してるんだと思う。でももし俺の幽霊としての質が強かったり人間側に何かしらの要素が合えばいけると思うんだ。ほら見える人とかよく聞くじゃん?この町じゃまだそういう人に出会えてないんだよねー。

 

そしてそして、皆が気になると思う幽霊同士の接触。勿論検証してみた。やべー、俺○ーチューバーだったらかなり再生数稼げる案件だと思うんだが?

意外と町中じゃ俺以外の幽霊は全然いなかった。まだ全域廻ってないていうのもあるけどもしかしたらこの町は事件とか少いのかも、いいことだ。でも宛はあった。

 

そう『墓地』だ。

 

正直幽霊となった自分でも怖いという思いはあった。何せ俺は幽霊ではあるけども感性は生きた頃のままであり感情もそのままだ。でもまぁ何とかなるっしょという思いで行くことにした。幸い町の案内板で寺を見つけることができた。近くまでフワフワ飛んでると次第にザワつきを覚えた。見えるとか臭うではないまた別の感覚、人によっては第六感というのか…え、それは違う?とにかく向かっている方角に進むに連れてザワが大きくなる。やっぱり『いる』んだって思ったね。

 

 

『お、おぉ…やっぱりいるんだ』

 

墓地についた俺は初めて自分以外の幽霊を見つけた。てっきりひしめくくらいいるかと思ったが幽霊の数は墓石に比例せず数人程度だった。やっぱり墓地に縛られているんだろうか誰もこの場から離れようとせずそれぞれその場で立ちすくんだり墓石の周りを彷徨いてるだけでザ・幽霊の典型みたいな奴らだ。あと幽霊同士だからか他の幽霊たちの顔立ちは思いの外はっきりして見えるのね。でも俺みたいに白くなくてはっきり言って半透明、深海魚で内臓が見えるほど透けてる魚とかいるじゃん?あんな感じで流石に中身は見えないけど体を通して向こうの景色が見えんのよ。こんなもんかーとか思いつつ俺は取り敢えず近い幽霊から話しかけることにした。あれ?そういえば幽霊同士の挨拶って何だろう…

 

『う、うらめしやぁ…?』

『…』

 

今ほど自分を馬鹿過ぎるバカだと恥じたことはないと思ったね。

初対面で恨みぶつけるとか通り魔かよ、普通にこんにちはでいいじゃないか…

羞恥心から咳払いのあと再度話しかける。

 

『あ、あのぅ…こんにちは?』

『…』

 

相手はヨボヨボのおじいちゃんだった。外見からして年齢による老衰か病死のどちらかだろう。俯いていた半透明のおじいちゃんはゆっくりこちらを見ると何を言うこともなくまた視線を戻した。

 

え?無視?顔合わせといて無視とかそれ既読スルーだよそういうの良くないって、気まずくなるじゃんお互いに…ん?既読スルーとはなんぞや?

 

『あのー、おじいちゃん?俺の声聞こえてます…よね?』

『…』ブツブツ

『んん?』

 

無反応かと思えばおじいちゃんは何か呟いている。顔を寄せて聞いて見るとやれ昼飯は魚がいいとか風呂の温度は最も熱くしろってなかんじ、何やこれ爺ちゃんボケてる?思わず鉄板ネタで返してしまった。

 

『なーに言ってんですか、おじいちゃんもう死んじゃったでしょ?』

 

ご飯はさっき食べたでしょ?みたいなノリで言ったのだがおじいちゃんの反応ははっきりしたものだった。目を見開いてこちらを見るおじいちゃんの顔は驚いているようで数秒口をわなわなさせた後深い息を吐いたと思ったら半透明から完全な透明となって消えてしまったではないか

 

え…ウソ、逝っちゃった?

 

どうやら自分はおじいちゃんを成仏させてしまったようだ。どうやらおじいちゃんは自分が死んだという事実を知らなかったらしい。いいことだろうけど何だか申し訳なくて次に行くことにした。今度から言葉を選んで話さなければ…

 

 

side墓参りに来たシングルマザー

 

夫が私と息子を残して先立ち2年経ち、何となく娘を連れて夫の墓参りに行った。娘は春から近所の小学校に通う年になりその報告と娘のランドセル姿を見せようと思ってのこと。寺から掃除道具を借り墓石を清掃したあと夫が好きだったタバコと缶ビールを添えて線香を立てた。

 

居眠り運転だと聞いた。電話を受け着の身着のまま病院に駆け込むとそのまま霊安室に通された。わけが分からず横たわった人の顔に掛けられた布を取るとそこに夫がいた。遺体の損傷は酷くなかったが轢かれたあとの打ちどころが悪かったらしい。目の前の夫は本当にただ寝てるみたいだった。現実を受け入れられないまま葬式を済ませ気づけば時が過ぎていて今でもたまに朝食を3人分用意してハッなることがある。受け入れるためにもこうして墓参りをしているというのに…

 

「見てよ、あの子春から小学校に行くんだから。しっかり見てないと次見るときは制服来てるかもしれないよ?」

 

隣でボーッと虚構を見る娘を他所に私は口を開く。

私には霊感はない、けどそこに夫がいるんだと思って語りかける。娘がまだおねしょをすること、朝番組のマジカル少女に夢中になっていること。なんでもない会話、夫が生きていたらテーブルを挟んで話したであろうことを口にする。前に来たときは未亡人の私にアプローチしてくる男性の話もした。こんなんだからまだ受け入れられないんだろうとも自覚があるのに…

 

「え…?」

 

すると頭を撫でられたような気がした。横からゆっくり2回、それは夫が生前私にしてくれた動作の感触のそれと同じで思わず顔を上げたが目の前には墓石しかない。呆気にとられていると隣りにいる娘が私に、正確には私を通して隣に向かってバイバイと手を降っている。

 

「ママ」

「ど、どうしたのアヤカ?」

「コレがさいごだって。つぎのしあわせを見つけてくれって」

「一体なんの…」

「もうパパはヨシヨシできないから。ママがパパ好きなのはわかったからありがとーって」

 

ハッとした。さっき感じた頭の感触をズバリ当てられたかのような気がして、しかもまるで今まで私が夫に話したことを知ってるかのような物言いに聞かずにいられなかった。

 

「パパに聞いたの?」

「違うよ。でもパパがそう言ってるってお兄ちゃんが教えてくれた」

「お兄ちゃん?バイバイってパパにバイバイしたの?」

「ううん。教えてくれたお兄ちゃん帰った。でもパパもバイバイなりそう。だからママもバイバイして?」

 

わけがわからない、でもパパもバイバイなりそうという言葉ははっきり頭に入ってきた。

 

「パパいるの?どこに?ママ見えない…から、教えてアヤカ」

 

涙声になって娘に問う。すると娘には私の背後を指差してそこだと言った。体ごと後ろを向くがやっぱり誰も見えない、やっぱり子供ながらの虚言かと思えば、また頭を撫でられた。

 

『じゃあなミヨ。アヤカを頼むぞ』

 

押し留めていた涙が決壊し涙と声が溢れ出る。夫が死んでから2年、この日私は初めて大声で泣くことができた。

 

 

 

 




主人公のネタはポッと出てくるけど知識にはあっても記憶にないから元ネタを思い出せない設定
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