TS魔法少女がまぁまぁ優しくない世界で頑張るハナシ 作:のへてみこそ
気がつけば転生していた。齢が2.3の頃から少しづつ思い出してきた。前世の記憶とやらを。
まあ、人生悔いあれどこんなものだろって感じでぽっくり逝ってから、気づいたら赤ちゃんとしてこんにちは。なんか、申しわけない気持ちともう一度人生やれることに葛藤 を覚えつつはや10数年。性別の違いにもなれた。だがスカートは無理だ。
前世とは少し変わった世界で
今日も生きています。
なぜ、こんな人生紹介じみたものをしているのかというと、今まさに、信じられない出来事が起きているからだ。驚きのあまりに現実逃避に走っている。夢だと思いたい。というか、まじふざけんなって感じ。
だって、目の前には得体の知れないマスコットがいて、
「魔法少女になってみないかな?」
とこちらに向かって呟いているからだ。マルチ商法かよ。
最初は自分ではなく、周りの誰かに言ってるんだと思って無視をしていた。だから、肩に乗ってきて耳もとで嘯くのだ。たちが悪い。そう、もの凄くこそばゆいのだ。力がぬける。周りの人たちもコソコソ噂話をしていて凄く気まずかった。
あなたは選ばれし魔法少女なのです。なんて。
あたかも、自分の黒歴史を掘り起こして、羽ペンでこしょこしょする感じ。
いや、もういいでしょ、自分はもう大人なんだ。まあ、外見年齢は子供だけど。あのときみたいに、家族に自分が考えた魔法理論を発表しよう。なんて。もはやできない体になってしまった。
とりあえず、走って逃げた。
それはもう、道を歩いている人が二度見するくらい走った。
だって怖いんだもの。
今にして思うに私を見てたのではないのかもしれないげど。まぁ、関係ないか、こんな些細なこと。
下校中の出来事だったので、いつも登下校している通学路を大きく遠回りして家へと戻る。まっすぐ帰ると家バレすると思ったから。スパイアニメみたいに何度か電柱の影に隠れて後ろを確認した。
これが意外と楽しい。
大きく乱れている息を整えて、自室のベッドの上で一息をつく。この時間帯は家には誰もいないためとても静かだ。衣擦れが静かな部屋の一室に響く。
「ふぁー恐ろしかった。あのヘンテコ生物。いったい何だったのかな」
「ヘンテコ生物など呼ばれる筋合いはないかな。そのような名称はもっと仲がよろしくなってからこそ効用を発揮するだろう」
なんか、いる。音のなる方へ首を傾ける。
天井にあのマスコットが浮かんでいた。
時がとまった気がした。
悲鳴をあげなかった自分を褒めてほしい。
どこから侵入しているんだとか、こいつはいったい何者なんだとか、頭の中でいろんな疑問が駆け巡って。結局どうでもよくなった。まぁ、諦めた。こりゃ、むり。
ベッドに倒れ込む。もう、家バレしているじゃん。このヘンテコ生物は何のためにここまでするのか。
「何のよう?」
「魔法少女になってくれないかという相談だよ、僕のレーダーに反応してね。キミ、魔力使えるでしょ」
「魔力?なに、それ」
「普通のニンゲンはね魔力を隠蔽することなんてできないんだよ。それで、探しだすのに手間がかかった」
「隠蔽、もしかしてコレのこと」
自分は体の奥底に眠っている、熱いやつを動かした。幼少期の頃暇で暇でやることがなかった自分は、魔力の運用に活路を見出したのだ。
「そう、ソレ。まさか、こんなにも魔力があるなんて、管理局の奴らの目は節穴だな」
「あの、なんで魔法少女になるコトが前提みたいにして、進めようとしているの。そして、管理局って?」
「魔法少女というのがどんなことをするのかを説明しようか」
こいつ無視しやがった。不法侵入しているのに。腹ただしい。こいつはプライベートのプライバシーを侵害している。
「魔法少女とは一言でいえば、こちらの世界にやってきたモンスターを退治する役割を担っている。彼女らがいないと、多くの命がモンスターの凶刃の手にかかるだろう。
そう、ちなみに、この手の事実は情報統制されていてね、むやみに他の人に話すとそれ相応の対処がされるよ」
「それで、私にそのモンスター退治をやれっていうわけ?少しよく分からないな」
かなり強引すぎるきがする。
「そうだよ。この国は今人材不足なんだ。だから、処理がおいついていない」
「どういうこと?」
「この映像を見てもらおうか」
そして、マスコットはポケットの中からプロジェクターを取り出し、コンセントへコードを差した。そして、手に持っていたUSBメモリをプロジェクターに差し、スイッチを押した。
あと、かってに家の電気使われてる。そもそも、家の中にはどうやって入ったのか。二階のベランダが開けっ放しだったっけ。魔法で入ったのかな。
「魔法とかで映像を映したりしないの?」
「そんなことしていたら、魔力の無駄遣いではないか」
なんか常識のない人を見る目をされた。心外。
実は、魔法少女って思っていたよりも世知辛いのか。
そんなこんな考えるうちに、部屋の壁に映像が映しだされた。
「これは、現在発生している、モンスターとの戦闘記録、ライブ配信中だね」
スクリーンには一人のコスプレをした少女と、それを取り囲む数え切れないほどのモンスターがいた。
「ねぇ、どういうこと」
「だからいっただろう、人材不足だって」
少女がたくさんのモンスターに襲われてる。今ところは大丈夫そうだが、いつ、この危うい均衡が崩れ去るのか予断を許さない。
「どうすれば彼女を救うことができる?」
私は白いマスコットに詰め寄った。
「魔法少女になれば助けることができるよ」
「この腹黒マスコットが。やるよ。やってやるよ、魔法少女とやらに。方法を教えろ」
金属の棒にハート型の細工が施されている所々に流線形の意匠が雰囲気を醸し出している。所々には宝石が装飾されていて、アクセントを与えている。白いマスコットはポケットの中から、そのステッキを取り出した。
「このステッキを持って、自分のなりたいもの心の中に描けばいい」
私はステッキを手に握って。思う。
光が辺りに満ちる。
気がつけば、私の衣装は変わっていた。
「ナニコレ」
ゴーグルに黒いスカーフ、そして露出高めのくのいち衣装。
「ねぇ、マスコット、これ何」
「それは、魔法少女の衣装だよ」
「魔法少女って、皆こんな感じなの」
「それは、キミの魔法少女に対する意識の問題だよ。ふしだらな気持ちを抱いているのだよ」
気恥ずかしさに下を向く。なんか、昔の自分にたいして強く怒りたい。とりあえず部屋にかけているパーカーを羽織る。
今は、そんなことしてる場合じゃない。首をふって、気持ちを切り替える。
「それで変身したけど、どうすればいいの」
「そうだね、ここから少し離れた所に行く必要があるね。屋根の上を走っていこうか」
「屋根の上?」
「身体能力が強化されているからね」
「うん、やってみるよ」
屋根を忍者みたいに走る。
「近くにたどり着いたら、境界石に案内するから、そこから向こうの世界に入ってね」
「うん、わかった」
境界石ってなんだよ。まぁ、着けば解るか。
「はぁ、はぁ」
周りにはたくさんのモンスターがいる。オオカミの姿を真似たモンスターたちは、私の方向へ向かって襲いかかってくる。
マズい、倒しきれない。このままじゃ。
私は怖くなってしまい、目をつぶってしまった。けれど、いつまで経っても何も起こらない。
おそるおそる目を開けてみる。
するとそこには、黒髪をたなびかせた、くのいちの姿をした恥ずかしい人がいた。黒のパーカーは腰元に結び着けられている。黒のゴーグルのせいで顔がよく分からない。でも、肌色が多い。
おもわず、目をつぶってしまった。
「ちょっとまって、その反応はこっちも恥ずい。というか、きつい薄々自覚はしているから」
目をあけて彼女の姿を見てみる。彼女はゴーグルを人差し指でくるくると回している。そして彼女は恥ずかしいのか、頬が少し赤く染まってる。
「そういえば、モンスターは?」
「あぁ、そいつらなら。ほら」
周辺には倒されたモンスターが転がっていた。
「これを一人で全部倒したの……」
「いや、そんな大したことじゃないよ。コイツラってあまり強くないっぽいし。こいつがそう言うてたもの。キミならできるって」
彼女はベルトにくくりつけられている白いフェレットみたいな、妖精さんをつつきながら話をしている。器用にも、反対の手ではゴーグルでお手玉をしている。
なにか、とても楽しそうだ。
「あれ、何の反応もない。じゃあいいか」
「いや、それは。ううん」
その白い妖精さんは目を回している気がする。なんか、うめき声を上げている気もする。でも、まず、それよりも先に言うことがある。
「なんでもありません。それより、助けて下さって、ありがとうございます」
私は妖精さんのことを見てみぬふりをした。ツッコミをしたい気持ちを抑えて、大人な対応をした。きっと、こうして私は成長するのだろう。
「そんな、全然ありがたられることとかじゃ無いんて、気にしなくて大丈夫ですヨ。それに、こいうのって、困った時はお互い様って言いますし」
「いやいや、それでも何かお礼がしたいです」
「うーん。それなら、魔法少女について教えてくれない」
「いや、私はまだ魔法少女になってから数ヶ月しか経っていなくて。ぜんぜん、私よりも経験が豊富にありそうですから」
「いや、今日が初出勤日だよ」
「えぇ!そうなんですか」
でもとても手慣れている様子です。
「そうなんだよ。つまり私はキミの後輩というわけです。ねぇ、センパイ」
先輩…。なにか胸がおどる言葉です。
「じゃあ、何でも聞いてください、後輩さん。私分かることならなんでも答えます」
「とりあえずここから、出たいんですけど何かお作法とかありますか。ほら、コイツのびちゃってるから」
「境界石を回収すればこの場所はもとの世界に戻るそうです」
「へぇー。ありがとう。あっ、それと、電話番号教えてくれないかな。ちょっとね、コイツ信用ならないと思うから」
白い妖精さんの頬摘んでいます。少し羨ましいかも。
「電話番号ですか、別に構いませんけど」
「ほんとうにありがとうね。こいつだけが情報源だと、偏ってるから」
彼女は白い妖精さんの頬をまたつついた。
「わかりました」
「じゃあ、お疲れさまです。失礼します」
彼女はひとっ飛びにマンションの屋上まで行くと、そこからかなりの速さで駆けていった。
何か不思議な人だったなぁ。
ちなみに、妖精さんは姿を隠せない設定です。
つまり、みんなに見られています。
早くイチャイチャさせねば。