時は☆年 世界は超巨大企業が支配する暗黒の時代と化していた。
地獄の沙汰も金次第、財力がモノを言うこの不条理な世界に今、新たなライダーが登場する!

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仮面ライダー通貨

10年前、創造主により生み出された複数の王候補が存在した。

カレら(・・・)の目的はただ一つ、創造主によって用意された、たった一つの玉座を奪い合うという宿命の為に生み出されたのだ。

 

 

創造主はカレらに対して平等であった。

創造主は全員に同じ能力を与えたのだ。

万物を高エネルギーに変換する夢のようなシステムを。

 

 

しかしシステムはまだ完成ではなかった。

理論は完璧であり、本来であればエネルギーを生み出すことのない無価値な石ころですらも同質量の化石燃料の燃焼と同等以上のエネルギーを生み出すとはいえ、そのエネルギー変換率は原材料によって大きなバラつきがあったのだ。

 

 

そのために創造主はカレらを生み出し、試練を与えた。

候補シャ(・・・・)に数年の猶予の間でもっとも効率の良いエネルギー源の捜索を命じ、最も優れたエネルギー源を見つけ出したモノを王にすると約束したのだ。

 

こうしてカレらは創造主により与えられた能力を万全に活かすために必要な力の根源を探し出す試練の旅に、王になるための要石(キングストーン)を探す旅が始まったのだ。

 

 

 

「……バカな……ッ!? どういうつもりなのだ!? それほどの力があれば、あのような策略をめぐらさずとも王になれただろうに……!」

 

 

5年前、表世界がにわかに変革を遂げようとしているその最中、創造主は候補シャたちを集め選定に入る。

この僅かな期間でもだれが最も優秀なキングストーンを手に入れたのか、その方法は単純で、もっとも確実は方法が採られた。

 

 

純粋なエネルギー量がモノを言う、総当たり戦による殺し合いが行われたのだ。

 

結果は圧倒的エネルギー差により白銀のモノが勝利で幕を閉じ、王座につくはずであった。

 

不正が行われていたのである。

 

 

候補シャたちの多くは勝シャである白銀のモノの妨害により高品質のキングストーンを手にすることが出来ず、粗末なエネルギー源で戦うことを強いられたからだ。

 

創造主は怒り狂った。

すぐさま白銀のモノを粛清するための軍勢を送り、これを討たんとする。

だがカレは創造主の想像を超えていた。

 

 

「人から貰った王座なぞに価値はない。俺が王かどうかは、俺自身の実力でそれを証明し続けて見せる。この、俺だけのキングストーンによって……」

 

 

神々に等しい創造主の軍勢を容易く退け、撃ち滅ぼしたカレは自ら新しい王権を手に入れていたのだ。

それは、不正を行わずとも他の候補シャたちを蹴散らせる程のエネルギーを生み出す動力源であり、創造主に反旗を翻すことすらも可能にした、とても身近な代物。

 

現代社会には必要不可欠であり、しかし時には争いを巻き起こすほどの魔力を秘めた恐ろしい代物。

 

 

皮肉にも、創造主はその身でもって彼らの生み出したシステムに必要な最後のピースとは何かを証明し、その破滅でもって神々を気取っていた彼らも所詮は人間であったと証明したのであった。

 

 

 

 

物語はさらに5年後、とある町の商店に一人の女性が訪れたところから始まる。

 

 

「すいません、この水を買いたいのですが、いくらでしょうか? 値段の横に、¥のマークとCぽいのが書かれていますけど…円じゃないんですか?」

 

 

扇情的な赤い薄着に男物のコートを上から羽織り、薄暗い室内でも映えるようにしっかりと、しかしケバケバしくない程度の化粧を施した女性が店主に尋ねる。

 

 

「なんだねえちゃん、クレッセント通貨を知らんのかいな」

 

「クレッ…なんですって?」

 

「クレッセント。まぁ分かり易く言えば地域通貨の電子マネー版ってやつさ。地域通貨と言っても今や日本の7割ぐらいの地域でも使われてるって話だから、おねえちゃん結構田舎から来たと見た。どこから来たんだい?」

 

「えっと…ごめんなさい。田舎過ぎてちょっと伝わらないかもしれないです。それより、私いま現金しか持ってないのですが、円は使えないんですか?」

 

 

困り顔でパースバッグから財布を取り出して見せる。

困り顔は店主も同様であった。

 

 

「う~ん現金か。一応1クレッセントは1円相当だから売れなくもないが……よっしゃ分かった。特別に売ろう」

 

「本当ですか!? ありがとうございます!」

 

 

礼儀正しすぎな程に深く何度も頭を下げてお礼を述べる女性。

それに伴い彼女の胸元に隠れていた、どこかの外国のものだろうか、見たことのない文様のネックレスに加工されたコインが飛び跳ねていた。

 

ボトル1本、税込み334円の水をピン札の1000円で支払った女性は商店を後にする。

 

久々に1000円札を手にしたからかマジマジ観察する店主は後方から襲ってくる重い一撃には気がつかなかった。

 

 

「あダッ!?? 何すんだよ母ちゃん!? 箒でなぐるこったないだろ?」

 

「何すんだじゃないわよ! アンタ、なんで今時現金で大事な商品を売っちまうんだい!」

 

 

店奥からやってきたのは一連の商売を見ていた店主の妻であった。

 

 

「しょうがないだろ……現金しかないって言うんだから…」

 

「とかなんとか言って、本当は鼻の下伸ばしていたくせに。本当、若い女に甘いんだから。ほら、さっさとそんな汚い金は捨てちまいな。絶対ロクな仕事してないわよ、あの女」

 

「汚いって……そりゃ今時現金を使う奴はロクな奴しか居ないのは確かだけど、金は金だぜ? 手数料掛かるとはいえクレッセントに両替も出来るし…」

 

「あ~ら、えらく肩を持つじゃないの。じゃあ寝室にある百科事典に挟まっているアレ、何に使っているのか説明してもらいましょうか……」

 

 

現金によるヘソクリの存在を明かされた店主の顔はこの世のモノとは思えない程に青ざめていた。

 

 

 

「クレッセントも遂にここまで波及してしまったのね」

 

 

薄暗い路地裏にて、ペットボトルに入った水をあおったのは先ほど商店でニコニコ現金払いをした女性である。

彼女の名前はルコ、その口ぶりは先ほど初めてクレッセントの存在を知った女性とは思えないものだった。

 

 

「つーかマジで進退窮まったって感じ。いくら現金収入は見込めるとはいえ、見つかるの時間の問題ね。今時クレッセント用の口座が無いと飲み水はおろかちゃんとした仕事にもありつけやしない」

 

 

ため息交じりにもう一度ペットボトルの水をあおる。

余程喉が渇いていたのか、貴重な飲み水は早々に1本空いてしまう。

 

 

「……そろそろ潮時なのかな。つーかアタシにしてはよく頑張ったほうだよ」

 

 

うんうんと自分に言い聞かせながら胸元に埋まっていたコインを大事そうに指でなぞる。

しかし、言葉とは裏腹に彼女の目にはまだどうにかしたいという諦めていない者が持つ輝きが灯っていたのだ。

だが、それは風前の灯火なみに儚い、いつ吹き消えるかも分からないような微かな光でしかなかった。

 

 

 

「ッ……!? しつこいわね!?」

 

 

先ほどまで腰かけていた木箱から飛び跳ねるように立ち上がるルコ。

彼女の目線の先には派手で個性的なデザインなスーツに身を包んだ3人の男が下卑た笑いを浮かべながら近づきつつあった。

 

 

「ようユキ、探したぜ~? それともうらら、みずき、ハルカって呼ぼうか~?」

 

「そろそろ俺たちも鬼ごっこには飽きたところなんだ。おとなしく捕まるなら、優しくしてやるぜ? オトハちゃん」

 

「ミルクちゃん知ってるっしょ? ボクちゃんたち、こう見えても意外と紳士だってさ!」

 

 

ニタニタと過去に名乗った名前を次々に上げていく男たち。

それと共に嫌な思い出も蘇りそうなるが彼女そんな過去すらも心の窯にくべ、怒りの炎を上げることにより気丈に彼らを睨み返した。

 

 

「はッ! 冗談じゃないわよ! つーかアンタたちもご苦労なことね。こんな小娘一人捕まえるのにこんな田舎にしかも3人も送ってくるなんて。経費かけ過ぎじゃないかしら?」

 

「それだけてめぇには価値があるってことさ」

 

「知ってっか? オマエを捕まえれば組に1億円ものシノギが入る。しかも現ナマ一括だ。最近はこっちもこんなご時世なもんで苦しくてな。悪いが地の果てまで追いかけさせてもらう」

 

 

男たちはゆっくりとルコを囲い込むように近づいてくる。

確実に捕まえるために、今度ばかりは逃がさないという強い意志が見て取れる行動であった。

 

万事休す。

後方は金網のフェンスで塞がれ逃げ道は既になく、助けを呼ぼうにも大通りから離れているこの裏通りは極端に人が少なかった。

 

だがそれ以前に、彼女は他人を充てにはしていなかった。

過去にも何度か他人の助けを求めたことはあったが大抵はこの状況を見て見ぬふりをするばかり。

時には助けてくれる人も居たがその悉くが見返りを求めるだけ求めた。

金銭なり、なんなりと、そうやって彼女は様々な物を失いながら今日まで逃げ果せたのだ。

見返りもなく助けてくれる者など存在しないことを彼女は身を以って熟知していた。

 

そして今、理由は不明だが、自分には一億円もの価値があることを知ってしまう。

一億円に釣り合うような見返りなど、とても自分には用意できない。

そう悟った時、彼女は金網にもたれかかりながら地面に座り込んでしまった。

心の灯火が今まさに消えかかり、男たちが彼女の手首を掴み取ろうとしたその時、強烈なエンジン音と思わしき排気音が路地裏を強く木霊する。

 

ルコたちが思わずその耳をつんざくような音の出どころを探すと彼女が背にしていた金網を突き破りながら人が乗ったバイクが飛び出して来たのだ。

 

突然の出来事に放心してしまう4人。

だがバイクはそのまま通り去ってしまうことは無く、車体をスライドさせながら見事なブレーキングを披露する。

 

非常識ながらも見事なスタントに思わず感嘆符をあげ拍手を送ってしまう男たち。

だがそれに対するドライバーからの返礼は物凄い速さで顔面に迫りくるヘルメット、拳と蹴りだった。

 

またもや突然の強襲にたたらを踏む結果となってしまう男たち。

そんな隙にバイクの持ち主(ライダー)はルコの元に辿り着く。

ライダーは黒めの茶髪であり、華奢な若者の男性通りの柔らかい声で話しかけたのだがその第一声が衝撃的であった。

 

 

「君、お金持っている?」

 

「……はぁ?」

 

「助けてあげようか」

 

 

今度はルコが呆ける番であった。

人に裏切られることに慣れてしまっていた彼女ではあったが、お約束的な展開にまで裏切られるとは思いもしなかったからだ。

現実逃避する時間すらもくれないこの男の言動に、彼女の中に溜まり続けた怒りとフラストレーションが遂に爆発することとなる。

 

 

「どいつもこいつも金! 金!! 金!!! 嫌になるわ! つーかアンタ!? 少しは人情っていうものがないのか!! こんな困った人に対して金を要求する普通ッ!? 鬼ッ!!」

 

 

老若男女問わず、多少でも良心があれば思わず頷いてしまいそうな心の吐露に対しライダーは平然と答える。

 

 

「? オレは鬼じゃない。それに何かをして貰うには対価が必要なのは当たり前だろ?」

 

 

他意も悪気など全く無くそう答えたこのライダー。

資本主義的な正論の前に思わず閉口してしまうが何と言い返そうか思案する前にダメージから回復した3人の男たちが彼ら口論に割って入ったことにより話は進み始める。

 

 

「テメェッ!? 何者か知らないが邪魔するんだったらタダじゃおかねえぞ!」

 

「それは困るな。オレはタダという言葉が嫌いなんだ」

 

「ふざけてるんじゃねーぞ! オラッ!」

 

 

一斉に襲い掛かる男たち。

しかしライダーはケンカ慣れしているのか自然な体裁きそれらの攻撃を次々に無力化してゆく。

 

 

「すごい…」

 

「どうかやめて欲しい。俺は金にならないことはしたくない。だからこのままオレだけ通してくれないだろうか」

 

「ちょっと!?」

 

「そうは行くか! テメェをぶっ潰した後にその女も連れていく!」

 

 

男たちがそう叫ぶと同時にポケットから何かを取り出す。

それは、遠目にはUSB、銀色のコイン、スイッチのようなものに見えた。

 

そんな物で何をするのかと思う間もなく、次の瞬間、男たちの姿に変化が起きる。

それぞれのアイテムを自身の体に差す、入れる、またはスイッチのボタンを押すなどの動作によりかろうじて人の姿を保った怪しい存在、俗に言う怪人へと変貌したのだ。

 

 

「なになになに!? 一体何なの!??」

 

 

突然の出来事に狼狽するルコ。

想像だにしなかった事象を目の当たりにして思わず同じ境遇と気持ちだと思い込んでいたライダーの背中にしがみ付くことにより安心感を得ようとする

 

その目論見はある意味達成は出来た。

ただ違うのは、そのライダーが異様に冷静だったこと…そして彼らの正体を見破ったことであった。

 

 

「その力、財団X製のガイアメモリー、セルメダルにアストロスイッチ……いや、その海賊版ってところか。どこで手に入れたのかは知らないが、安物買いの銭失いだな。勿体無い」

 

「ハッ! だからどうしたってんだ! 少なくともテメェとそこの女を捕まえるには十分すぎる力だ」

 

「謝るのなら今のうちだぞ~? 謝られても許してヤラナイけどな!」

 

「女は五体満足で連れてこいって話だがオマエは八つ裂きにしてやる!」

 

 

ライダーの態度が気に入らなかったのか、それとも力の誇示により気が大きくなったのか口々に威嚇する男たち。

ルコはただただその異様な光景に戸惑い、自分は想像以上にとんでもない相手を敵に回してしまったのでないかと、心が押しつぶされるような感覚に見舞われる。

 

目の前が暗くなりそうになったとき、彼女の目を覚まさせたのはまたしても彼の言葉であった。

 

 

「なぁ、金持ってるか?」

 

「こんな時にお金の話ッ!? アンタ状況解って…」

 

「もちろんだ。金払うならこんな奴ら簡単に倒してやるぞ」

 

 

正気を疑うルコだったが彼の目はいたって大真面目であった。

 

 

「あああああッ!?? もう分かったわよッ!? こいつらからアタシを守ってくれるならいくらでも払うわ! つーかさッ! アタシに一億円も払う能力は無いわよ。このサイフに入っているのが全財産ッ! しかも全部現ナマ。クレッセント通貨なんて1円分も無いわよ、それでも文句ない!?」

 

 

そう言ってパースバッグから財布をライダーに投げ渡す。

見るからに高級そうなサイフの中には大量の札束が入っていたが、ライダーはそれには目もくれず小銭入れのチャックを開いた。

 

 

「問題ない。こいつらを倒すだけならこれだけで十分だ」

 

 

彼がそう宣言して取り出して見せたのはたった6枚の日本円硬貨。

新500円玉、100円玉、50円玉、10円玉、そして1円玉を1枚ずつだった。

 

呆けているルコにサイフを突き返すとライダーはどこからともなく出したシルバーメタリックの四角い機械を丹田部に当てると彼の胴回りに巻き付きベルトへと変化する。

そして独特な機械音と共に電子音声が高らかに言語を発した。

 

『クレジットドライバー+ …… レディトゥディポジットアンドダイジェスション!』

 

「変身」

 

 

ライダーはそう呟くと同時に新500円玉をベルトのコインスロット部に投入した。

するとやかましい作業音と大量のスチームが発生しライダーの姿は隠れてしまう。

 

時間にして3秒ほどだろうか、煙が晴れるとそこには先ほどまで素顔だったライダーの代わりに黄金色と白銀のツートンで彩られたボディーと仮面を付けた一人の男が佇んでいた。

 

 

「え、え、えッ!? なになになに!? つーかアンタも変身するの!?」

 

「チッ!? テメェも俺たちと同類かよ! けどなぁこっちは3人。たった一人で何が……ぶるぅわッ!?」

 

 

メダルの力でデブな猫の怪人に変身した男が何かを言い終わる前に彼は殴り飛ばされてしまう。

殴ったのはいつの間にか近くまで接近していたライダーだった。

 

その威力は凄まじく、たった1撃で鈍重に見えた怪人は宙を舞い、地面に激突と共に爆発、爆炎の中から姿が元に戻った男とその傍には粉々に砕けたメダルだけが残された。

 

 

「ナニッ!? コイツよくも根古をやりやがったな! だがその程度のパワーじゃ俺は倒せないぜ!」

 

 

伊達に修羅場は経験していないからか、残された二人は多少動揺こそすれ、すぐに態勢を整え攻勢に転じたのだ。

 

スイッチにより醜悪な豚に変身した男がライダーに襲い掛かる。

先ほどのネコの怪人以上の巨体のためか、俊敏さはないため攻撃を難なく避けるライダーではあったがその厚い脂肪に阻まれ彼のパンチやキックは先ほどまでの威力が発揮できずにいた。

 

 

「邪魔な脂肪だな。ならこれならどうだ」

 

 

キックの反動で怪人から距離を取るライダー。

左手で100円玉を見せ付けるように持ち、変身時にコインを入れたスロットとは別のスロットにその100円玉を投入する。

 

するとライダーの体に異変が起きた。

硬貨を投入したベルトを中心にライダーのボディーが桜色を主体としたカラーリングと、より精強そうに見える鎧へと変化したのだ。

 

だがまだライダーの行動は終わらない。

今度は5円玉をスロットに挿入するとベルトの中央部から赤銅色の剣が精製されたのだ。

 

気合一発、ライダーは宙高く飛び上がると両手で握った剣を自由落下のエネルギーと共に豚の怪人を縦一文字に切り裂く。

怪人を背に残心を行う、すると数秒遅れで怪人の体が真っ二つに割れると同時に爆発が起こる。

その場には倒れた男と煙を吐いている半壊したスイッチだけが残された。

 

 

あと一体、ライダーが最後の標的を探しているガイアメモリーにより馬のような怪人に変身した男が喚き叫ぶ。

 

 

「根古も東も一瞬でだとぉ!? テメェ……一体ナニモンだ!?」

 

「オレか? ただ生きるために必死なナニカとしか言いようがないな」

 

 

返事はしたものの質問には全く答えてない回答を返しながら一歩ずつゆっくりと近づいてくるライダー。

意味不明な回答と理不尽なまでの強さにパニック状態に陥った馬の怪人はその俊敏な能力を活かし茫然と戦闘を見ていたルコをとッ捕まえてライダーに対して盾としてしまう。

 

 

「近づくんじゃねぇぞコラッ!? さもないとこの女がどうなっても良いのか!??」

 

 

怪人の強力な握力により苦悶の声を上げるルコ。

すっかり目的を忘れ、己の保身と加虐性を一時的にも満たしたことによる僅かな気の弛みが生じる。

その隙を逃すライダーでは無かった。

 

ライダーは50円玉を素早くスロットに投入するとベルトよりニッケル色の銃を生成し、狙いを定め引き金を引く。

 

発射された弾丸は怪人の頭部に命中、気の抜けていた状態での突然の痛みに怪人は思わず手を放してしまい、その衝撃でルコは地面に投げ倒されそうになってしまう。

 

ライダーはすぐさま走りながら1円玉をスロットに投入。

すると先ほどまで精強な桜色の鎧は若木色の軽装鎧に変化、色が完全に変わると同時にライダーの走るスピードは先ほどまでと大幅に早くなるとルコが地面に倒れるよりも前に辿り着け、彼女を抱きとめることに成功した。

 

 

「あ、ありがとう」

 

 

ほぼ反射的に自分が助けられたことに感謝の言葉を伝えるルコ。

だがライダーの方は彼女が無事であることを確認するとすぐさま離れ再び馬の怪人に対峙する。

 

 

「そろそろトドメと行こう」

 

「ヒィッ!?」

 

 

ようやく悶絶から復帰した怪人は既に戦闘意欲は失われていた。

馬怪人の能力を活かし逃げ出そうとするがそんな馬怪人よりも早く先回りしたライダーに宙へ蹴り上げられてしまう。

 

 

ライダーは体の色を元の黄金と白銀のツートンに戻すとベルトのスロットに10円玉を投入。

するとライダーの右足から常磐色のエネルギーが溢れ出し、そのまま宙に浮かぶ怪人に向かって飛び上がる。

空中で何回も前方宙返りをし、遠心力によってより強化されたかかと落としが怪人を株価や通貨が暴落したごとき角度で地面に叩きつけられた怪人は他二人の怪人以上の爆発を起こす。

 

爆心地には気を失った男と真っ二つに割れたメモリーのみとなったことにより戦闘は終了した。

その時間は、僅か5分少々であった。

 

 

「恨むなよ。オレも生きるのに必死なのだ。縁がなかったと思って諦めてくれ」

 

 

そう呟きながらライダーはベルトを体から引き離すと変身が解け元の姿へと戻った。

 

 

「信じられない。三体も居た化け物をあんな簡単に……。アナタ何者?」

 

「ナニモノか…こればかりは金を払われても答えられそうにないな」

 

 

終始有り得ない光景を目の当たりにしたルコは逃げ出すこともなく変身を解除したライダーへと尋ねた。

得体の知れない相手とはいえ、一応金銭のやり取りをした以上は信頼できるだろうと踏んだからでもある。

それと、もっとも大事なことを確認する必要があったからだ。

 

 

「つーかさ、本当に料金はあれだけで良かったの? たった666円ていうのは……」

 

「高すぎたか?」

 

「いやいやいやいや!? 安すぎるわ! 大丈夫? 後で高額な料金を要求してこない?」

 

 

あとで請求されるのは嫌よ、とばかりにその安すぎる金額に不安を覚えたのだ。

 

 

「オレは別に金を稼ぎたいわけじゃあない。じゃあな、また縁があったら会おう」

 

 

守銭奴なのかそうではないのか……いまいちハッキリしないこの素顔のライダーは地面に転がっていたヘルメットを拾い上げ停めていたバイクの元へと歩きだそうとする。

 

 

「円ならあるわ。アナタ…アタシに雇われてくれない?」

 

 

彼の歩みを止めたのはルコから仕事の依頼であった。

 

 

「とてもじゃないけど今のが最後だとは思えない。どうしてアタシに一億円もの懸賞金が掛かっているのか知らないけど身に降りかかる火の粉は払いのけたい。だからお願い! アナタの力を買いたいの! お金ならどんな手段でも用意するわ! 現金オンリーだけど!」

 

 

真剣な眼差しでそう訴えるルコ。

内心やっぱりクレッセント通貨でないかと駄目かと心配するがそれは杞憂に終わった。

 

 

「良いだろう。契約成立だな。オレの名は…神鷹(じんよう)。神鷹ダイチだ。好きに呼んでくれ」

 

「ありがとう! アタシの名前はルコ、金山ルコよ。よろしくねダイチ!」

 

 

笑顔で握手する二人。

今ここに、世にも奇妙な契約が結ばれた。

 

雇い主は金山ルコ…突如一億円もの懸賞金を掛けられた無辜の女性…

 

そして雇われ人は神鷹ダイチ…すべてが謎に包まれた男…

ただ一つ解っていることは、彼は金に五月蠅いが金さえ払えば仕事はしっかりとやり遂げるということ。

そして……

 

 

「つーかさ、その力はなんなの? 雇い主としては詳しく知っておきたいのだけど」

 

「詳しくは幾ら積まれても話せん。詮索するのなら契約を切るぞ」

 

「分かったわ。でもせめて名前ぐらい教えなさいよ。いちいちあの力を使えなんて言いづらいたらありゃしないもの」

 

「…名前などない。だから好きに呼べばいい」

 

「そう? じゃあ適用にツウカって呼ぶわね」

 

 

ツーと言えばカーで伝わりやすいでしょ? っと茶目っ気を出すルコ。

 

 

後に世界を揺るがす大事件から街を救う仮面のヒーロー、仮面ライダーツウカの誕生の瞬間であったがそんなことを二人はまだ知る由も無かった。

 

 

 

 




お読みいただきありがとうございました。

友人たちのオリジナルライダーに触発されて自分なりのライダー像を、1話だけですが詰め込めるだけ詰め込んだつもりです。

一応パイロット版ということで1話完結になりますが、気が向いたら2話、3話と書いて行けたらと思います。

宜しければ忌憚なき意見や少しでもお気に召す部分があれば感想などでお伝えいただけるととても喜びます。

それではまた・・・

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