恋するバンドガールと見守るバンドマン   作:黒マメファナ

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⑦:EPILOGUE

 色々あったけどチュチュさんがパレオを迎えに来てくれて、ひどいことを言ったことへの謝罪とパレオが必要だと言うこと伝え、パレオが泣きながら謝ったことで反抗期が終わりこうして、パレオと俺は元に戻った──なんて言えればよかったね。残念ながら一度変わってしまった関係は二度と修復されることはない。

 

「修斗様〜♡」

「……なんでいるの?」

「今日は練習終わったんです、だからお世話しに来ました!」

「ハウス」

「そんなひどいことおっしゃらないでくださいよ〜」

 

 待て待て、そうじゃなくて一体どうやって俺んちに入ったかって訊いてるんだけど。今日は外のライブハウスで一緒に練習して兄ちゃんが帰ってくることもあってお泊りの許可をもらってきてきたましろもすごく驚いていた。

 ──だがパレオはこともなげに質問への答えを放った。

 

「浩介さんに合鍵を作っていただきました」

「兄ちゃんから?」

「はい! 本日、チュチュ様が浩介さんにお会いされた際にパレオに預けておくと一言添えられて渡されたそうです」

「……なにしてんだ兄ちゃん」

 

 不法侵入、もとい脱法侵入を手引した黒幕は兄ちゃんだった。どうやらチュチュさんのマンションに兄ちゃんが来て合鍵を置いていったらしい。俺としてはすっかりもうパレオにお世話してもらうダメ人間生活は終わりだと思ったのに。パレオは俺の手に持ってる手提げを見て、何かを察知したらしい。

 

「本日は何をお作りになる予定でしたか?」

「担々麺と餃子、お兄ちゃんが帰ってくるからって」

「ましろ?」

「この状態でパレオさんを追い出すのは無理でしょ? 諦めたほうがいいよ」

 

 ましろはパレオの隣に来てそんなことを言ってきた。まさかの味方がいなくなったんですがこれは一体どういうことなんでしょうか。確かに兄ちゃんに鍵を手渡されたんだから悪いことはしてない。でもこれでご主人様じゃなくなるんだなぁと思ってたのにこの状態じゃあただパレオがRASのために出掛けるだけしか変化がないじゃんか。

 

「焼餃子ですか、ではましろさん一緒に作りましょう!」

「わ、私あんまりキレイにできないと思うよ?」

「大丈夫です、このおうちには挟むだけで餃子が作れる便利なアイテムがありますから」

「なら大丈夫かな……あ、じゃあシュウさんは担々麺作って」

「ではすみませんがお願いしてもよろしいですか?」

「……わかった、わかったよ」

 

 準備をし始めるとあんまり辛くしちゃだめだよと言われ、俺はわかってるよと答える。なんだかんだでパレオとましろは仲が良くなってるし。パレオがしっかりものでましろが甘えん坊だから、どっちが年上かどうかわからなくなってしまうけど。

 

「おお、いい匂い」

「おかえり、残念ながら辛くはないよ」

「ん、ましろがいるのか」

「パレオもね」

「早速か」

 

 準備が終わってきた頃、兄ちゃんが帰ってきた。俺の報告に苦笑しているけど、兄ちゃんがパレオを呼び寄せたんでしょうが。そう思ったけど、口に出す前に玄関に顔を出したましろが明るい声を出して俺の隣までやってきた。最近兄ちゃんに会えてなかったことも多かったせいか二割増しの笑顔だ。

 

「お兄ちゃん!」

「おう、ましろ、手までまっしろだな」

「あ……えへへ、パレオさんと餃子作ってるんだ」

「浩介さん、おかえりなさいませ」

「ただいま」

 

 パレオもやってきて、ぱっと笑顔になる。やっぱり兄ちゃんが帰ってくるとみんな嬉しそうだ。そのままご飯の準備を終えて、フライパンではなくちょっと前につぐみとひまりとでホットケーキを作るって話をした時に購入したホットプレートを使って、餃子を焼き始める。

 

「はい、ラー油」

「さんきゅ」

「……お兄ちゃん、それもうコチュジャン掛けたよね?」

「いるだろ、どっちも」

「いるでしょ」

「ましろさん、もう諦めた方がよろしいです」

 

 担々麺もスパイス大量に投入しているため、既にましろには未知の領域になっているのだった。兄ちゃんの方も、俺の方も。ましろなんて何もない担々麺でも辛いようで水をしきりに飲んでいるのに、俺と兄ちゃんは更に真っ赤にしてるんだから。パレオは素の状態で平然と食べていた。

 

「ごめんましろ、辛かった?」

「ん……ちょっと、でも大丈夫だから」

「無理されるとお腹壊すので気をつけてくださいね?」

「うん」

 

 その様子に兄ちゃんが笑い、パレオもましろも笑う。やっぱり兄ちゃんがいるとすごく、雰囲気が明るくなる気がした。その後、ましろに気を遣って兄ちゃんとふたりきりにしてあげて、俺とパレオはスタジオに移動した。お風呂上がりで黒髪状態のパレオが今までとは打って変わって甘えてくる。

 

「パレオ?」

「……やっぱりご迷惑でしたか?」

「なにが?」

 

 ソファで隣に座って肩に頭を乗せている現状だろうか。別にこれは迷惑とは思わないけど、逆に言うとパレオが甘えることを迷惑かもしれないと考えていないことはよくわかっているため、言葉の続きを待つ。すると、パレオは幾分か落ち着いた声で俺の手を握りながら息を吐いた。

 

「……いえ、そんなの訊く必要なかったですね」

「気になるんだけど」

「秘密にしておきます」

 

 結局パレオは教えてくれなかったけど、どうやらこれからもできる限りはお世話をしたいってことは伝わった。頭を撫でると目を閉じて安心したような顔をしてくれてることが、俺にはちょっとだけ嬉しいと思えた。今までの不安や罪悪感が全て解けたような彼女の安らいだ表情は、やがて眠りに落ちそうになっていった。

 

「パレオ、寝そう?」

「ん……申し訳、ありません」

「いいよ、しばらく寝てて」

「ですが」

「……チュチュさんと仲直りできてよかったね」

「はい……ありがとう、ございます修斗さん」

 

 パレオのこと、だいぶ女性として意識せずに身体的接触できるようになったような気がする。あれだけ一緒にいたら嫌でもそうなるもんな。いやパレオってすごくかわいいしスラッとしてるせいでふとした時に不意打ちでドキドキすることもあるんだけどさ。

 ──でもこうやって安心してくれている以上、俺はドキドキだけでとどめておこう。こういう時、頼りになったのは誰かさんと何度もデートした経験もあるような気がしていた。

 

 

 


 

 

「パレオちゃんといちゃいちゃしすぎじゃない?」

「なんでそういう言い方するの?」

「いやだっていちゃいちゃしてるじゃん!」

 

 ──後日、ひまりと羽沢珈琲店で話しているとすごく文句を言われた。いちゃいちゃなんてしてない、してないよね? だいたい向こうは俺を未だに「修斗様」呼びを変えてくれないところに悩んでるのに。別にもうあの子をメイドにしてるつもりないのに、勝手に上がり込んで家事してくれてるんだから。

 

「惚気?」

「違うって」

「そうだと思ってた」

「パレオに失礼じゃない?」

 

 というか、なんか怒ってる? 俺はそれを訊ねるとますます不機嫌になるのは一年になる付き合いの中でわかりきってるので、わざわざ言わない。俺はそれを何度かして怒らせているので、もう二度と同じ轍を踏まないのだ。

 ただ、つぐみが全てを察してケーキを持ってきてくれた。ありがとうつぐみ、おかげでちょっとは機嫌が回復するはずだ。俺が奢るから。

 

「私、ケーキで機嫌直ると思われてる?」

「……違うのか」

「そんな安くないもん!」

「じゃあ、どっか出掛ける?」

「え、いいの?」

 

 こいつ、実は俺よりちょろいんじゃないかって思うんだけど。ほら夏休みも後半に突入したし、お盆前とか暇だし。俺はそう言うとひまりはすっかり機嫌が直ったようになった。ただし、夏休みの予定がひまりに握られたことも意味していた。ましろとの練習日はモニカの練習もあるから一応決まってはいるんだけど。

 

「あ、ここ! 空いてるならサマーフェス来てよ!」

「そこはもう行くよ。兄ちゃんと、多分花音さんと友達と一緒だよ」

「だから空けてるの?」

「そりゃね」

「あ、あの──フェスって、私たちも一緒していいですか?」

「二葉さん」

「いいよ、でもチケットは」

 

 チケットは今からだと厳しいかもしれないけど、それはどうなんだろうか。俺も疑問に思ってると二葉さんはケロっとした顔でそれは大丈夫ですと言い切った。何か伝手があるのだろうか、俺はましろから彼女のうっかりな一面をよく聞かされているため少し不安になって訊ねてみた。

 

「七深ちゃんと透子ちゃんが興味あるって言ってて」

「あの二人が?」

「そうなんです。瑠唯さんは来れないって言ってたんですけど」

「じゃあもうチケットは」

「四人分取ってあります!」

 

 それなら安心だ。だから一緒していいですかだったんだね。つまりそのフェスは兄ちゃんと花音さんと友達──は何人グループだっけ? そして八潮さん以外のモニカと一時的に合流って形になるのか。

 ──すごく大所帯だから自然と二人とか三人のグループになりそうだね。俺と兄ちゃん、花音さんと友達グループ、モニカってな感じで。

 

「いや、私は違うと予想するね」

「ひまり?」

「だいたいましろちゃんがお兄さん来るのわかってモニカグループで離れると思う?」

「……確かに」

 

 するとそれに引っ張られて兄ちゃん+モニカって形になるかましろ以外の三人が別々になるかってところか。そうすると俺ってもしかしてボッチなのでは? 

 ひまりはそれはそうとしてとかテキトーなことを言って逃れようとしてくる。やだよ、助けてよ。

 

「つぐも私も出演者だし、確かRASもでしょ?」

「そうなんだよね」

「まぁそれに花音さんのグループって言うと千聖さんかハロハピじゃない?」

「千聖さんだったら顔見知りだからある程度話せると思うけど……いや芸能人だし」

 

 花音さんの親友として自然と一緒にいることが多いせいで忘れがちだけど、白鷺千聖さんって芸能人でアイドルなんだよね。一緒したらスキャンダルになりかねないし、フェスみたいなところに一般人として参加するとは思えない。するとハロハピか。面識ない上にどういう人たちなのかって花音さんのふわふわな評価でしか知らないんだよ。

 

『──みんな元気で一緒にいて楽しい子だよ』

 

 正直、あてにはならないって言ったら失礼だけど花音さんは器が大きい感じするからね。でも、ひまりもハロハピなら大丈夫だよと明るく言ってくるからあんまり身構えずにいこう。兄ちゃんをましろに取られる可能性がある以上、そうするともう俺の居場所ってそこしかないわけだからね。

 

「三人で回れば?」

「ましろに恨まれるよ」

「そうかな、ほらなんだかんだシュウのことお兄ちゃんって思ってるし」

「兄ちゃんのことは男として見てるから」

 

 それに、そういえば花音さんもほら兄ちゃんとめちゃくちゃ仲いいわけじゃん? 本人には確認してないけど俺としては花音さんは兄ちゃんのことが好きなんじゃないか疑惑あるし、そうすると俺って知らない人の中に放り出される可能性があるんじゃ。

 せめて兄ちゃんとましろと花音さんになって、俺はモニカグループに混ぜてもらえるようにと祈るしかないようだった。

 

 

 

 

 

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