山内くんに転生したのでBADEND回避を目指します!   作:あまざらし

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山内くんに転生したのでBADEND回避を目指します!
【1年生】無人島試験編 その1


(side 綾小路清隆)

 

 無人島試験

 

 ──8月6日 午後

 

 1年の夏休み。唐突に実施された無人島での特別試験も終盤に差し掛かった。そろそろ動くか……。

 

「なぁ、山内。少し相談があるんだが」

 そう言って俺はある計画を進めるため、山内に相談を持ちかける。

 

「ばっ……そんなことしたら俺が殺されるっての! 絶対やらねぇぞ!」

「佐倉のメアド」

 ぼそっと呟くと山内の顔が照れた表情に変わる。

 なんとかなりそうだな。

 

「もし実行してくれたら、教えてやらなくもない」

 俺が畳み掛けると山内は絶対だからな! と戸惑いつつ雨でぬかるんだ泥を掬いだした。

 

 普段の堀北だったら山内の気配を察知したかもしれない。

 しかし今は体調が悪く、周囲に気を配る余裕はない。

 

 

 そう、だからこそ……

 

「泥だらけだな! あははおもしれ~」

 山内は堀北に泥をかけることに成功した。

 

 そして、

 

 ガンッ!! 

 茶化された堀北は山内に一本背負いを仕返すのだった。

 

 

 山内という尊い犠牲はあったものの、泥まみれになった堀北の体調は更に悪化するだろう。

 堀北を特別試験からリタイアさせる流れ。

 全てが順調に進んでいた。

 

 

 当たりどころが悪かったのか。

 ”気を失ってしまった山内の存在”以外は……

 

 ◇  ◇  ◇

 

 目を覚ますと、どんよりとした雨雲の空。そして隙間なく木々で埋め尽くされた豊かな自然風景が広がっていた。

 

(あれ??)

(俺さっき家でラノベ読んで寝落ちしてたよな)

(なんで外いるんだ?)

 都内とは思えないほど澄んだ空気が体を巡っている。

 

 なぜ外にいるのか理解できず、残業のストレスで夢遊病にでも俺はなってしまったのだろうか。あるいは普段飲まないお酒を飲み過ぎて倒れた説も浮上してくる。でも酔っ払っていた記憶も無いし……。

 

「おい! 大丈夫か? 山内!」

 そんなことを考えていると、どこか焦り気味な男がオレに小さく呼びかけていた。

「山内?」とボヤきつつ、オレは男に視点を合わせる。若い、そしてイケメンだった。

 

 なぜ体操着なのか理解できないが彼はジョギングの途中だったのだろうか? 

 イケメンは性格もイケメンなのだなと感心しつつ感謝を告げようとしたら、頭の中でこのイケメンがとある人物と重なる。

 

 そう、ライトノベル『ようこそ実力至上主義の教室へ(通称:よう実)』の主人公。

 綾小路清隆くんに瓜二つだった。

 

 オレがその事実に動揺して終始無言だったからだろう。

 目の前の無表情イケメンがひそひそと耳打ちしてきた。

「泥をかぶせた後でお前、堀北に投げられただろ。その時の打ちどころが悪かったみたいでな。もう5分くらい横になってたんだ。まさか気を失うとは……いや本当にすまなかった。山内……」

 などとイケメンが事情を説明してくれるが、イマイチ頭に入ってこない。

 

 あれ、ひょっとして『よう実』世界に転生しちゃいました? 

 なんかやっちゃいました? 

 架空小説おなじみの転生したら~でした的な展開になっちゃいました? 

 

 ああ。頭がくらくらしてきた。

 気を失ったの影響なのか、低気圧の影響なのか、はたまた現状への混乱の影響なのかすらもう分からない。

 

 それにしても山内って……

 "あの"Dクラスの山内くん!? 

 

 Aクラスに在籍する怖カワイイ美少女な坂柳有栖ちゃんに騙されて。

 最後には退学を突き付けられる哀れな山内くん? 

 

 序盤では綾小路くんとそれなりに掛け合うも、後半からあまり出番も与えられず、たまに出番が来たかと思ったらウザいキャラとして活躍しちゃう山内くん!? 

 

 須藤健、池寛治、山内春樹の三バカコンビとか言われつつ、

 篠原さんという彼女ができる池くん。

 学力も伸びて堀北ちゃんの忠犬として成長する須藤くん。

 それに比べて全く成長しないでクラスで除け者になり、退学させられちゃう山内くんですよね……。

 

 

(やべええええええええじゃんんんんんん!)

 

 

 両手で頭を抱えると隣にいた、物語の主人公ことイケメン綾小路くんが焦りだす。

「だ、大丈夫か!? やっぱりまだどこか痛むのか??」

 それにしてもなぜだろう。

 先程からなぜか手厚いフォローをされるオレ山内。

 そう訝しんでいたら、ああ思い出した。

 

 そういえば1年生の無人島編で山内くん、

『堀北ちゃんに泥かけたらキミの気になってる女の子、佐倉さんのメアドをプレゼントしよう!』

 みたいな馬鹿な取引を綾小路くんから持ちかけられて実行してたよな。

 でも結局メアドすらゲットできず最終的に退学ENDなんだよね。

 うん、哀れすぎるぞ。山内くん。

 

 なるほど

 

 つまり今ってもう無人島編なのか。

 だから外の空気はおいしいし、オレも周りの生徒の服装も体操着なのか。

 

 昔から切り替えだけは早いと褒められたこともあるオレは、この現実をそろそろ受け入れようとする。

 

 しかしまだ心の中に凝りがあるのだろうか。

 次々に複雑な感情が頭をよぎる。

 

 ああ、神様。

 折角大好きな『よう実』世界に来たのに、なぜ妙なハードモードに設定したのでしょう。

 こういう時ってチート特典とかあるんじゃないの? 

 てか神様どこにいらっしゃいます? 

 まだご対面してないのですが! 

 

 こちとらちょいブラック企業に勤めて3年目。

 3年目のジンクスとやらも気になるお年頃の社会人だったんやぞ! (彼女なし)

 

 いやでも待てよ。

 この状況って明日から仕事しなくていいし若返ったしで良いことづくしなのでは? 

 

 とりあえずまあ

 

『退学だけは回避しよう!』

 

 そしてオレは新しい現実を受け入れたのであった。

 

 

 

「おいっ山内。お前、本当に大丈夫か?」

 そういえば綾小路くんのこと忘れてたわ。

 

 

 そうしてオレは「大丈夫っ」と一言返し、改めて現実を受け入れたのであった。




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