山内くんに転生したのでBADEND回避を目指します! 作:あまざらし
豪華客船の旅も終わり、新鮮な気持ちで寮の自室に戻ったオレは、
久々にじっくりと1人で考える時間が作れたため、今後の方針を固めていた。
それにしても思ったよりきれいな部屋である。
10万ptを早々と使い切ったことにより購入が追いついていない可能性もあるが。まあ、それはよしとしよう。
何よりゴミが溜まっていないのは助かった。
ゲーム機やソフトが散乱していたり、少し服が散らばっている、男子学生の一人部屋にありがちな状態で親近感すら湧く。
さて話を戻すと、特に考えるべきポイントは、
オレ、山内春樹が原作で退学処分となる『追加特別試験』と呼ばれる試験についてだ。
追加特別試験を一言で言うなら、”必ず退学者を発生させる”ことが目的の試験だ。
この試験をどうするか。
結論から言えば、原作通り”オレが退学者となる”予定である。
そしてその後、”退学を取り消し”してもらうことを目標としたい。
特別試験のルールは大まかだが、
簡単にまとめると確かこんなところである。
・クラス内の生徒へ3人称賛票を、3人批判票をそれぞれ投票する。(投票は本人以外に限られる)
・クラス外の生徒へ1人称賛票を投票する。
・称賛票1票につき+1点。批判票1票につき-1点が与えられる。
・投票された点数の合計が最下位のものは退学。1位だったものにはプロテクトポイントが与えられる。
・退学となった生徒がそれを取り消するためにはプライベートポイント2000万ptが必要
この試験が存在することを知っているオレは、干支試験後に茶柱先生と交渉した。
そして交渉の末、試験前日までに1000万pt用意さえ出来れば、問題の追加特別試験で山内が退学となった場合でも取り消し可能になったわけだ。
つまりオレが退学する分には、取消料金は本来の半額。
これを利用しない手はない。
クラスにおける試験の結末は、大きく分けて4パターンある
1.『山内が』クラス最下位となるが、前日までに1000万ptまたは当日2000万ptを用意することで『退学を取り消しにする』。
2.『山内が』クラス最下位となり、プライベートポイントを用意できずに『退学する』。
3.『山内以外の誰かが』クラス最下位となり2000万ptを用意し『退学を取り消しにする』。
4.『山内以外の誰かが』クラス最下位となり2000万ptを用意できず『退学する』。
この中で絶対避けたいもの。
BAD ENDと言うべきものはオレの退学確定。
つまり2番である。
そして、一番困難なのはオレ以外の生徒の退学を取り消す3番だと思っている。
だからこの線もほぼ消している。
もしもクラスで2000万ptを用意できていたら、洋介が原作でも山内の退学を取り消していたはずだ。
可能になるとしたらオレが2000万ptを集めることだが……。
1000万すら厳しいのに2000万なんて夢物語である。
よって目指すのは1番だ。
何としてでもこの試験が始まる前に、何らかの方法で1000万ptを集めたい。
それが無理な場合は山内以外の誰かが退学する4番のパターンとなる。
このパターンは今後オレが真面目にするだけで希望が持てるし何より楽だ。
ただそれはできる限り”避けたい”のだ。
最近、追加特別試験について考えるたびオレは自問している。
この世界に転生したオレにとっての”ハッピーエンド”とはなんだろうと。
ただ己の退学を回避して学園生活を謳歌することだろうか。
しかしオレの代わりに生贄のように別の生徒が退学したとして、
本当にその後、純粋に楽しめるのだろうかと。
もしも原作を知らなかったら、
山内春樹が退学すると知らなかったら、
原作で山内以外の他の生徒が山内の退学後に折り合いをつけたように、オレも納得していたに違いない。
でもオレは知っているのだ。
この試験で本来退学する生徒は山内春樹だということを。
つまりはそう単純に寝覚めが悪いのだ。
オレがどんなに真面目な生徒になって退学回避をしても、必ず他の誰かが犠牲になってしまうこと。
それは嫌だから、
それすらも回避したいというオレの傲慢な考えなのだ。
それにもし1000万ptさえ集めれば、
オレにだけ批判票が集まるようにクラス内で調整することは比較的容易だと思っている。
誰だって望んで退学するやつはいないはずだ……おそらく。
称賛票3票と批判票2票をクラスでオレ以外にある程度均等になるように分け合うように調整した上で、オレに批判票をすべて投票してもらえれば、それで試験は終了するはずだ……おそらく。
『おそらく』というのは、何も妨害やアクシデントがなければということだが。
1000万ptすら集まっていない今は考えるようなことでもないか。
さて、どうやって集めようかな。1000万pt。
この前の干支試験によりプライベートポイント50万ptを獲得したが、
手元に残るのは40万ptとそこらだろうしな。
オレは少なくとも誰かに頼る必要性を感じていた。
◇ ◇ ◇
(Side 綾小路清隆)
豪華客船から戻ってきて、
懐かしさも感じる学生寮の自室に戻ってきたオレは、ある人物のことを気にかけていた。
それは直前の干支試験で優待者の法則を見出した”山内春樹”である。
オレは、いやオレだけでなく堀北も、
平田から山内が投票した知らせを受けた時、優待者を外す覚悟をしていた。
その報告を受けた直後の堀北の怒りぶりは、それはもう、こちらまで巻き添えを食いそうなほどだった。
”あの山内”が優待者を当てられるとは、とても想像出来なかったからである。
しかし山内は4日という限られた期間で、
平田を初め、池や須藤の協力のもと、
確かな情報を集めて鳥グループの優待者を見事的中させたようだ。
それにここ最近、山内が変わっているという話は堀北からも聞いていた。
以前のアイツは、誰かに強要されず勉強をするヤツでなかったはずだが、
干支試験直前から心を入れ替えたように自習をするようになったらしい。
堀北が言うには「山内くんは池くんが活躍した姿を見て焦っている」とのことだが、
その理由もオレが数カ月間に接してきた山内のそれとは反していた。
オレの考える山内は、
”焦っていても口だけで行動しないヤツ”
それが山内だったからである。
だがこうも思う。
人は些細なことがキッカケになって、急速に変化することもあると。
夏休み明けで髪を染めてイメチェンするように、あるいは軽井沢のように高校に入るタイミングで性格を一変させたように。
人が成長するキッカケというのは千差万別なのだろう。
山内にとってのタイミングがまさに今回だったという可能性もある。
それはそれで面白いとオレは思った。
ただ今回の山内の正解にはCクラスの椎名という人物が関わっていたのは少し気がかりだ。
椎名との取引を通じて今回の法則を見つけた可能性もゼロではない。
そしてこれが全て龍園による策略の可能性もあるが、
山内と龍園の会話を聞く限り龍園の暗躍というわけでもなさそうだが。
Cクラスも一枚岩ではないのかもしれない。
手元の情報だけでは結論を出すことのできないオレは、いったんこの件を様子見にすることにした。
それにもし
山内と言えば、佐倉の連絡先を教える約束をしていたな……。
オレは山内からの頼まれごとを今になって思い出した。
『佐倉、相談したいことがあるんだが。今、大丈夫か?』
オレは佐倉にメールを送ることにした。
これからやりたいことまとめな話を書いてから構成を練ることに。