山内くんに転生したのでBADEND回避を目指します!   作:あまざらし

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【1年生】夏休み編 その3

 それから何故か松下千秋のお説教が始まった。

 

「私の情報を握ってたから未来ってことにしたんでしょうけど、

 未来でも転生でも、迂闊に発言したら病院行きだからやめたほうがいいわね」

「そうだよな」

 

「もし相手に疑われたなら二重人格のような昔の記憶が消えて新しい人格になったらしいという『言い訳』の方がまだ現実味ありそう。それでも、言わないほうが無難ね」

「その通りだな」

「じゃあなんで私に話したの?」

 親が子供を諭すような状況である。

 数分間続いたお説教もそろそろ許されたかな……。

 

「松下だったら黙っててくれそうだったからな」

「……そう」

 

 ・洋介は、軽井沢の秘密を綾小路くんに打ち明けている。

 ・櫛田は、自分の立場が崩れた後に秘密を暴露する。

 ・綾小路くんは、必要とあらば取引相手に情報を公開する。

 ・啓誠は、学力が高く口も硬そうだが、交渉が得意というわけではない。

 ・堀北先生だけは、話さないだろうが主要メンバーのため未来が大幅に狂いそう。

 

 皆、相談するには何か問題があった。

 

 ただこの松下千秋という子だけは、1年生の最後までは影に隠れる慎重な性格。

 原作でも綾小路くんの実力を知りつつ、他人に知られたくないことを悟ると、空気を読んで他人には黙っていたし。

 

 だから何となく、今回も黙ってくれるんじゃないかと直感していたのだ。

 

 勿論、暴露されるリスクもある。

 しかし、もしも転生者山内と広まったところで、”あの山内(バカ)”がどうやら今度は遅めの中二病患者になったようだとバカにされるだけだろう。

 

 それでも、松下は転生というファンタジー要素だけは未だに半信半疑だったので、「いったんそれでいい」と返し、オレたちはある決め事をして別れた。

 

 それほど難しいことではない。

 しばらくは今まで通り接するということだ。

 

 

 ◇  ◇  ◇

 

 

 オレは最近、午前中は学校の図書館に通うようにしている。

 

 わざわざ図書館に行く理由は、友人や教師は確か位置情報を知ることができる機能があるからだ。

『佐倉のストーカー事件』もこれで、綾小路くんが佐倉の場所突き止めてたしな。

 

 夏休みとはいえ、何人かは図書館を利用するだろうし、

 毎日図書館にいるなら二学期以降に成績が急上昇しても、そこまで違和感がないはずだろう。

 

 そして最近、週4日くらいの頻度である人物を図書館で見かける。

 現在オレの向かいに座っている『椎名ひより』である。

 

 椎名を見るとひどい外傷はなさそうなので、龍園の暴力は受けてないと思われる。

 でもいじめられてる可能性もあるしな……謝ったほうがいいかもな。

 

「椎名さん久しぶりだな。その節はどうも」

「こんにちは。元野球部のエースの山内さん」

 

「元野球部のエースはいらないです」

「そうですか。では帰宅部のエースの山内さんこんにちは」

「あ、はい。どうも」

 こんな子だっけ椎名さんって。やっぱり綾小路くんだと態度変わるのかな……

 

「どうかされました?」

 椎名はオレがジロジロ見てるのを不思議に思ったのか、本を置いてこちらに向き合ってくれた。

 

「えっと。椎名さん。あれから龍園からいじめとか受けてない? 大丈夫?」

 ひとまず聞いてみる。

「ありがとうございます。ですが心配はご無用です。

 あの試験以降、龍園くんとは一度も会話してませんから。それに私は暴力には屈しません」

 と原作でも聞いたことありそうなセリフで返す椎名。

 椎名と龍園の関係って謎だよな。ホント。

 

「ならいいけどさ」

「そうでした。山内さん、言い忘れてましたが、鳥グループの特別試験おめでとうございます。

 やはり正解されたようですね」

 全く悔しそうな素振りは見せず、微笑みながらオレを祝う椎名。

 オレはせっかくなので、あの時の試験について聞いてみることにした。

 

「椎名さんってやっぱり試験の法則知ってたの?」

「ええ。龍園くんに干支試験のAクラスの優待者を教えたのは私です。

 ですが私は”4グループの優待者”を知らされている状態でした。その点、山内くんは勇気ある投票をされましたね」

 

 まぁ法則を最初から知っていたので……。

 照れていると勘違いしたのか、オレの様子を見守りながらも椎名は忠告してきた。

 

「Cクラスは今、龍園くんがリーダーとしてクラスをまとめています。

 そんな中、特別試験で意表をついたのが無人島試験での堀北さん。

 そして干支試験での山内くん。あなたです。

 二学期の特別試験は気をつけてくださいね。何か良からぬことがあれば私も対応しますが……。

 龍園くんの統率力を疑うことはありませんが、暴力的なやり方は私は好みません」

 椎名は純粋にオレを気遣い、心配しているようだった。

 

「ありがとう。椎名さん」

 

 龍園だったらやり返すだろうなという予測が確信に変わる。

 だからと言って、対抗策が浮かぶわけでもなかった。

 

 続けて椎名はオレの前に広げられた教科書を指差す。 

「それにしても夏休み中も勉学とは。山内さんはとても真面目な方なんですね」

「ええ。そうしないと色々と大変なので……」

 

 主に山内が退学するという意味で。

 しばらく雑談をして椎名と別れ、オレはある場所に向かう。

 

 

 ◇  ◇  ◇

 

 

「待った―! ごめんね山内くんっ!」

「いや、今来たところ」

 オレは佐藤と例の占いの館近くで待ち合わせしていた。

 

「山内くん今日は制服なんだ?」

「おう、学校の図書館で勉強してきた」

「うっわー、真面目じゃんっ山内くん! どうしちゃったの? 頭でも打った?」

 あながち間違ってないのが困る。

 

「二学期のオレはちょっとは勉強出来る男山内になるんだよ。

 それにそんな事言ってると付き合わないぞー!」

 と少し怒ったフリで返すと「ごめんごめん」と笑いながら佐藤に謝られつつ目的地へ向かう。

 

「ここだよな」

「うん、噂通り人気だね。ここの占いコーナー」

 占いがある5階にたどり着くと、男女ペアの恋人関係な生徒たちが多数並んでいた。

 

「男女ペアじゃないと占えないってわけじゃないんだけどさー。やっぱ、ちょっと気後れしちゃってね……」

「まぁ案外そんな人も多いのかもな」

 と言ってはみたものの、明らかに2人だけの空間を作り出しているカップルが多いこと多いこと。

 ちょっと帰りたくなったよ。

 

 それから佐藤と他愛も無い雑談をしていて30分ほど経過したあと、

「次にお待ちの方どうぞー」

 オレたちの番がやってきた。

 

「はいー」と元気よく佐藤が返事をした直後、

 衝撃とともに柔らかい感触がオレの左腕を包む。

 佐藤さん何やってらっしゃるの!? 

 佐藤が腕を組んできた。

 

「減るもんじゃないし。ねっ、いいでしょっ! 早く行こう春樹くん!」

 と密着した状態で何事もなく急かすように歩く佐藤に圧倒されつつ、

 オレは用意された2つの座席の片方に腰掛ける。

 

 冷静に考えるとあれか。

 オレ恋人役だからか。名前呼び。

 

 占いにはいくつかのプランがあるらしいが、

 ポイントが減るのも惜しいオレは、基本プランでお願いした。

 

「春樹くんどれがいいかな」

「オレは基本プランにするけど、……麻耶は好きなのでいいよ」

 あー、すまん。

 今日から佐藤麻耶の”恋人”の山内春樹ってことでよろしく。

 彼女の好きな食べ物は知らないが、なんでも美味しそうに食べてたと思う。

 彼女の好きな色も分からないが今日みたいに涼しげな寒色系も似合うと思う。

 彼女の好きなタイプはイケメンで足の速い人だ。

 全く該当しないが、これから愛を深めていくつもりだ。よろしく! 

 

 さて、悩んでいた佐藤に「せっかくだし、いいプラン選んでみたら?」

 と提案したものの、基本プランで大丈夫! ということで落ち着き、いよいよ占いが始まる。

 

 さてオレ、何占ってもらおう。

 

「では彼女から。何を占う」

 目の前に座る如何にもな怪しい雰囲気の婆さんが質問してきた。

 こんなインチキ感あふれる占いって今どき少なそうだよな。

 全然知らないけど。

 

「はいっ。恋愛でお願いします!」

「それは2人の関係か?」

「はい。2人の関係とか、あと将来の恋愛事情とかも気になります……」

 と佐藤が答える。

「ふむ。では二人の名前と生年月日を」

 と言われるままに答える。ちなみに山内の誕生日は5月30日、これ豆な。

 つまり退学回避しないと祝ってもらえないってことよ山内は。悲しいなー。

 

「ふむ。お主ら二人の相性は悪くないようだ。

 ただ男の方が何というか少しわかりにくいというか歪じゃな……。

 まるで心と体が別々のようじゃ」

 

(おい占いババア! 何言い出すんだ! ビビったぞ、的確な回答するんじゃねーぞ!)

 そんなオレの心の声を無視して話は続く。

 

「女の方は気持ちが傾いたら一途になりやすいようじゃな。

 あまり盲目的なのも考えものじゃ。それが原因で悪いことに繋がる。そういった時は自分にとって何が大切かを冷静に見つめ直し行動することじゃ」

 

 合ってる。

 オレは心の声で頷いていた。

 佐藤も真剣に聞き入っているようである。

 

「将来についてだが、お主は大きな岐路に立たされるだろう。

 それを選ぶのは自分自身じゃがどちらを選ぶにしても茨の道じゃ。

 後悔のない方にしなさい」

 

 ほう。クリスマスの告白イベントのことか。

 告白するかしないかは原作でも確か迷ってたはずだしな。

 綾小路くんだったらどちらを選ぶも茨だろうな……。頑張れ佐藤。いや麻耶よ。

 

 なるほど結構当たってるな。これはオレの占いも期待だな。

 そうして佐藤の占いが終わり、満足そうな表情をした佐藤がいた。

 

「で、お主はどうする」

「目標が達成できるかとか。そういう曖昧なものでもいいですか?」

「構わん」「ではそれで」

 

「フム。アタシも長く占いをやってるが、こんなに歪なヤツを占うのは初めてじゃな。

 まだ若いから歩んできた記録もそこまでなんだろうが、歴史がひっくり返ったようじゃ。まぁいい。目標だから未来のことじゃな」

 もう勘弁してくれませんか。占いおばあさま……。

 

「はい。お願いします」

「どれくらい先が良い?」

「半年ほどで」

 目をキラキラさせた佐藤の横でオレも占ってもらう。

 

 

「半年後は、お主にとって非常に強い『負の力』が働いておる。

 通常だったら避けられなかったろうな。

 ただお主は少し特殊なのが作用しておる。若干だが風向きが変わっているようだ」

 ほうほう。いい感じってことか。

 

「『負の力』を乗り越えるには何が必要でしょうか」

「人じゃな。大きく巻き込む必要があろうな」

 ほうほう。なぜか佐藤を見るとドヤッと得意気な表情をしている。

 

「どんな人でしょうか」

「まぁ人は選ぶべきだが……数は多いほうがよいだろう。

 あと男より女がいいかもしれない」

 なるほど。いろんな女の子と仲良くなってエンジョイしろってことか。

 ニヤニヤしてたら佐藤の圧が怖いんだけど……。あっ違う、麻耶な。

 

「な、なるほど」

「それにお主は目標のため、常に最高の結果を選びたがるかもしれない。しかし、それが正解とは限らない。

 だから慎重に事を運べ。敵は少ないほうがいい。

 だが動く時は大胆に動け。その方が効果が大きい」

 どういうことだろう。

 

「目標は達成され成功できるでしょうか?」

「今はまだ低い。現状のままなら失敗だろう。しかし一つの成功で大きく風向きが変わる」

 凄い抽象的だけど、まぁ今は全然なのはそれはそうだ。

 

 慎重に事を運ばずに松下に相談したのミスったかな。

 でも女の子だしな。大丈夫か? 

 

「わかりました。ありがとうございました」

 こうしてオレたちの占いは終わった。

 

 

「ちょっと緊張したけど楽しかったね。山内くん」

 フロアを出ると、残念ながら麻耶から佐藤の関係に戻ってしまったオレたちなのであった。




山内くんにいい思い出作ってもらいたくてさ……偽だとしても。
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