山内くんに転生したのでBADEND回避を目指します! 作:あまざらし
二学期初日、登校早々にオレは松下に助けられる。
何かというと、教室の『座席』である。
基本的に教室のロッカーや下駄箱、寮の部屋番号などは、だいたい名札が存在していていたり、管理人に問い合わせすることで判明した。
だが学校の座席は席替えすることもあり不明だったのだ。
校舎内の構図は図書館帰りに寄ることで大体の位置は把握していたが、こういう細かいところが抜けていたのである。
「席はここよ」「ありがとう」
「あとでコーヒー。ブラックで」「仰せのままに」
今後も松下の協力が得られるか。
そのためには体育祭は原作通り進めることができるかが重要なんだよな……。
あれ、それってオレ、身動き取れないのでは?
こうしてオレの二学期は始まった。
◇ ◇ ◇
さて茶柱先生による体育祭の説明が始まった。
この試験すっかり忘れていたが、学校側としては生徒の受け止めによって特別試験なのか判断させていた。
つまり正式には特別試験ではなく、あくまで体育祭とのことらしい。
しかしクラスポイントの変動が行われるため実質的に特別試験という扱いで問題ないだろう。
問題ないよな松下!
そしてB、Cクラスが白組、A、Dクラスが赤組に分けられる。
全学年合同で行われるが、最後の3学年合同1200メートルリレー以外は他学年と関わらないので、この試験も基本的には1年生は1年生同士での争いになる。
・全員参加種目
1.100メートル走
2.ハードル競争
3.棒倒し(男子限定)
4.玉入れ(女子限定)
5.男女別綱引き
6.障害物競走
7.二人三脚
8.騎馬戦
9.200メートル走
《推薦参加種目》
10.借り物競争
11.四方綱引き
12.男女混合二人三脚
13.3学年合同1200メートルリレー
文字通り全員参加種目は全員参加し、推薦参加種目はクラス内で厳選された生徒が出場することになる。
ま、オレの運動能力を考えるに全員参加種目だけになるだろうな。
そして茶柱先生が1位報酬について話しているが、
何度も言うが山内の運動能力は特に期待していないのでそこまで執着するつもりはない。
最下位にならないように頑張ろう。それでよし。
そう思いながら、頭の中で100メートル走と200メートル走を斜線で消していた。
茶柱先生の説明もそこそこに他学年との顔合わせが始まった。
1年Aクラスの葛城がオレたちのDクラスの前に出向き、洋介と葛城による共闘の握手が交わされる。そんな時である。
「ああ、あの子は」
『坂柳有栖』
坂柳は体が不自由のため椅子に座っていた。
「私に関しては残念ながら戦力としてお役に立てません。すべての競技で不戦敗となります。自分のクラスにもDクラスにもご迷惑をおかけするでしょう。
そのことについては最初に謝らせてください」
あと山内くんのこと誑かさないでいただけると助かるんですがね……。
Dクラスの「気にしないで」という言葉を聞きながら胸中でそんな切実なお願いをするのであった。
いくら前回の試験でオレが優待者を当てたとしても、まだ坂柳はオレを気にも留めないだろう。
なんたってDクラスには坂柳の思い人、綾小路くんがいるしな。
主人公モテすぎ―! とか僻んでたら、葛城がこちらに向かって歩いてきた。
たしかに葛城はオレのこと目の敵にするか。干支試験のAクラスの責任者だもんな。
そう思っていたら、
「夏の件、協力してもらって感謝する」
何のことかと思ったらあれか。
葛城の妹さんに誕生日プレゼント送ろう大作戦の携帯貸出のやつか。
あまり貸したくはなかったが、原作だと脳死で貸してたからな。仕方ない。
これも退学リスクあっただろ。絶対。
でも病弱の妹さん元気になるといいな。そういうのに弱いオレであった。
「いや、気にするな。オレも報酬は受け取ったしな。あまり大きな声で言えないがよかったな」
「ありがとう。今回は同じ赤組だ。お互い協力し合おう」
その後、オレたちは握手を交わした。
◇ ◇ ◇
オレたちDクラスは現在、参加種目の参加方法について議論している。
洋介を中心に議論が進められているが、堀北中心の運動能力があるものが優先的に出場するという案、軽井沢を中心とした能力に関係なく参加の機会が欲しいという案で二分されている。
多数決の結果、Dクラスの方針としては結果を大きく左右するため、運動能力があるものが優先的に出場するという方針となった。
しかしオレはこれに一石投じたい。
「洋介、堀北先生ちょっといいか」
「どうしたの春樹くん」
洋介が答える。
「運動能力があるものが推薦参加種目に優先的に参加するというのは異論はない。オレもそっちに手を挙げたしな。
ただ『借り物競走』については運動能力はあまり重要ではないと思ってるんだ。
どちらかというと機転や交友関係が重要になる気がする。
だからこの種目は希望者を募って完全ランダムじゃ駄目か?」
推薦競技の一つ『借り物競争』である。
原作だと借り物競走の時間帯は出場者の健が不貞腐れて『欠席』していたはずだ。
代理で参加した寛治が1位を獲得していたような気がする。
この推薦競技の代理は、プライベートポイント10万ptを支払う必要があるためできれば避けたい。そのためこの競技だけは、健を出場させずにDクラスの面々に好きに出てもらうほうがプラスに働くはずだ。
ちなみにオレは参加する予定はない。
椎名から龍園に狙われているという警告をもらった以上、欠場のリスクをわざわざ取る必要はないだろう。
「なるほど。ありがとう春樹くん。一理あると思うけどみんなはどうだろう」
洋介が皆の反応を窺う。堀北と軽井沢の方針の間をとった無難な選択だったこともあり、多くの生徒からは良好な反応が得られるも、
「おい春樹! オレが全部出場できなくなるだろ!」
という健の怒りが炸裂する。
「須藤くん。確かにあなたが最優秀生徒報酬を得られる可能性を考えると出場してもらうのも悪くないと思うわ。ただクラスポイントに影響しないことを考えると、今回はみんなに出てもらった方がいいかもしれないわね」
さすが堀北先生の忠犬。彼女の鶴の一声で叫びがピタリと止んだ。
「健、オレの提案は全員が参加希望できるから。お前がじゃんけんに勝てば参加も可能だ」
「よっしゃ。じゃあ勝ってやるぜ!」
オレの声にも押され、健は調子を取り戻す。
だが残念。健はじゃんけんで1回戦敗退、借り物競走は不参加となるのであった。
(よしよし。10万pt浮いたぞー)
そんな悪いことを考えるオレであった。
「あなたは参加しないのね山内くん」
じゃんけんの様子を眺めていると堀北先生から声がかかる。
「まあな。全員参加でも競技数あるからバテると思ってさ」
「呆れた。ただ次のテストのことを考えるとあなたも参加した方がいいのではないかしら?」
当然の疑問だった。
体育祭で上位を獲得すると、次の試験で点数が優遇されるのだ。バカなオレは真っ先に参加すべきである。
「結構自信あるんだ。次のテストは」
「確かに最近は勉強しているようだけど……、変わらずの自信家ね。せいぜい”足をすくわれないように”気をつけることね。決まったわね」
そうして堀北先生は他の推薦参加種目の参加応募へ向かったのだった。
堀北先生こそ本番で『足』に注意しなよ。
……って助言したら結果変わっちゃう可能性あって言えないのがツライところだよな。
松下の協力を得たいのは勿論だが、
原作でも綾小路くんはDクラスの育成のため、あえて体育祭では手助けをしていなかった。
だからオレもそれに従うのが長期的にもプラスなんだろうと思い、今回は自分のこと以外は何もしないつもりだ。
そうしてオレたちは体育祭の準備を着々と進めていった。