山内くんに転生したのでBADEND回避を目指します! 作:あまざらし
オレが意識を取り戻し、別段体調も問題ないと判断したのだろう。
綾小路くんは一言「ちょっと堀北をフォローしてくる」と告げてその場を去っていた。
フォローも何も、オレがこうなったのは全ては綾小路くんの策略である。
転生したオレには、全部お見通しなのだがここは黙っておいてあげよう。
さて、オレに割り振られた作業も既に終了していたようで今はフリータイム。
少し考える時間を与えられたオレは、クラスのベースキャンプ近くにある川辺で、足を水につけて涼しさを満喫しつつ、本来の山内としては少し違和感がありそうだが一人黄昏れていた。
(無人島試験でやること、特にないんだよなぁ)
前世の記憶というべきか。
過去の記憶をたどると今回の特別試験、勝手に無人島試験編と呼ぼうか。
今はその特別試験の終盤あたりのようだ。
原作通り進むなら、今回はオレの出番は必要ない。
なぜかというと今回の特別試験。
主人公である綾小路くんが珍しく本気を出して、オレたちの所属するDクラスが全体1位になるから。
そう。全体で1位。
『よう実』は、高度育成高等学校という少し特殊な高校が舞台のラノベである。
学年ごとにAクラスからDクラスまで40人ごとに別れて、不定期に開催される少し特殊なイベント”特別試験”に参加しつつ、クラス単位で順位を争う仕組みだ。
生徒は入学時に学校側でより優秀だと判断されたらAクラスへ、無能だと判断されたらDクラスへ組分けされる。
ちなみに学校側は入学パンフレットには希望進路は99.9%叶えますと掲載しつつも、希望進路に進めるのは『Aクラスで卒業した生徒のみです!』と入学後に生徒たちに告げるのだ。
消費者庁もなんとびっくりの景品表示法違反みたいなことをしている学校である。
そして国営だったはずである。この国、大丈夫か?
オレが所属するDクラスは無能たちの集まるクラスなので、一見するともう既に詰んでいるようにも思える。
しかし今回のような特別試験を経て、クラスポイントというポイントを試験の成績に応じて各クラス獲得することができるのだ。
そして幾つもの試験を通じて学年全体でクラスポイントがTOPになれば、初めはDクラスだろうとAクラスへ昇格することも可能というのがこの学校の大まかな仕組みである。
現状はあまり覚えてないが、クラスポイントは現在Aクラスが1000ptでDクラスが200ptくらいだったか?
あとで確認しておく必要がありそう。
話は逸れたが入学時に落ちこぼれでも、卒業までに成長していれば逆転可能というわけである。
個人ではなく、あくまでクラス単位なのがネックであるが……。
しかしオレ個人がやるべきこと。
つまり山内として取り組むべきことは、
『Aクラスで卒業することではない』
なぜならオレはこのままだと卒業を待たずして、
退学する
この学校ってクラスポイントで競わせるだけじゃなくて、問答無用で何人かを退学させる特別試験をぶち込んでくるんだよな……。
だからまずは、オレはオレ自身の退学を阻止するべきだろう。
やっぱり学園生活、楽しみたいからね。
退学のタイムリミットは、確か1年三学期に行われる追加の特別試験。
つまり今からあと半年ほどで、オレ、山内春樹は退学するわけだ。
ちなみに退学する試験内容はクラスへの貢献度や、クラスメイトの心象が大きく作用する試験だったはず。
でも原作の山内くんは、ほぼ自滅とも言ってよい形で退学してたんだよなぁ。
坂柳ちゃん、まじで坂柳ちゃん……。
その結末を知っているオレとしては、”そのルートは”避けたいところだ。
でも退学を確実に回避できる自信はない。
なぜならこの山内という男。
既にこの時期にはクラス内で、
『お調子者でクラスの女子に嫌われている、使えないモブキャラ』
として認識されているはずだからだ。
ああ、自分のことなのが辛いです……。
普通の学校だったらそんなモブキャラが一人いても許容されるんだけどさ。
ここ実力至上主義の学校ではお荷物なんだよね。
ダメキャラ山内。
この認識、印象を早急に変えないと……。
◇ ◇ ◇
回想してたら、ベースキャンプからなにやら騒ぎ声が聞こえる。
「マニュアルが燃えてる!」
騒ぎがする方に近づいてみると、今回の特別試験の説明書やカタログにあたるマニュアル本が燃えてしまったらしい。
(犯人は伊吹だっけか?)
と曖昧な記憶を頼りにCクラスなのにDクラスに潜入スパイ活動をしている伊吹さんというツンツンキャラな女の子を見つめる。
しかしどうやらその伊吹さんすら困惑してるようだった。
思い出した、ってことは……
”綾小路くんだったか!! ”
退学を避ける上で、綾小路くんを軽んじてはいけない。
そう思いつつ彼に警戒されないよう、人に紛れている綾小路くんへあまり視線を向けないよう注意する。
主人公の綾小路くんは、一言でまとめるとチートキャラである。
そう、チートなのに
それすらもうチートである。
とは言え欠点もある。
彼は性格が一部破綻しているのだ。それがDクラスに決まった一因だろう。
友達を欲しがっているのに『最終的に俺が勝っていればいいのだから……(キリッ』とかぼやいて、利用価値の無いものを切り捨てる冷徹なお方なのだ。
それにしてもなぜお前が主人公なんだ。どう考えてもラスボスだろ……。
もし彼の機嫌を損ねてしまったら、オレを退学させることなんて簡単だろう。
赤子の手を捻るように。
原作知識があるといっても所詮一般人だぞオレは。
クラスとは別の意味で怯えているオレは、即座に脳内で綾小路対策会議を開始。そして秒で方針を固めた。
『おい山内、お前は想像より成長したようだな!』
『(清隆)先生は感動したぞ! お前、そこそこ使えそうだし、これからも頑張れよ!』
綾小路くんにそう思わせることこそが寛容。逆らってはならない。
己のためなら、あらゆる手段を躊躇なく実行する綾小路清隆。
消火活動が終わっても、不安と不穏な空気で埋め尽くされるDクラス。
そんな中こうなることが分かっていたはずなのに、何の迷いもなく行動する彼を目の当たりにして、オレは内心、怯えていたのだった。
原作についての仕様説明が多めになってしまった2話
感想や評価いただき、ありがとうございます!
よう実人気すごい