山内くんに転生したのでBADEND回避を目指します! 作:あまざらし
(Side 軽井沢恵)
「で、結局クリスマスにデートすることになったんだー」
「う、うん。そうなんだ」
休日の午後、私はケヤキモールのカフェで同じクラスの佐藤麻耶さんから恋愛相談を受けていた。
あの三バカ。いやもう三バカとも呼べないか。アイツ、私より”頭いいし”。
でもなんかムカつくから三バカって呼ぶけどね。
佐藤さんはその三バカの一角、山内春樹とクリスマスにデートすることになったようだ。
それで洋介くんとの恋愛経験豊富な私に相談するということになっているのだが……
「でもアイツ。佐藤さんのこと好きって言ったんでしょ?
それって何が不安なの、てかもう告ったようなものじゃない? それって」
話の流れをまとめると、
試験前に好きなタイプに山内くんは佐藤さんを挙げて、
佐藤さんはなぜか試験で”平均点以上”とったらイヴにデートする約束を取り付けるも、
佐藤さんは試験で平均点以下をとってしまい落ち込む。
その様子をみた山内くんから、イヴは約束を違うことになるので、次の日の”クリスマス”にデートしませんか? と提案されたらしい。
もうOKじゃん。いったい何に不安があるのか。
清隆の朴念仁は、アタシがあんなに協力してやってるのに何もしてこないのだ。
山内くんも正直もっとスマートにやるべきだと思うが、行動しない奴よりマシである。
って何言ってるの。別に清隆のことはそういう対象としてみてるわけでは……。
──いや、ペーパーシャッフルのペアになってわかった。
多分、私はきっと清隆のことが好きなのだ。
その点、今回の恋愛相談で佐藤さんが『清隆のこと』を相談してこなかっただけでも、応援しがいもあるってものである。
「私、当日は任せておいて! って言っちゃったんだけどさ。そ、そのデート経験とかなくて」
そういう佐藤さんは恥ずかしそうに話していた。
「そうなんだ。でも佐藤さんが山内くんってのも意外。
佐藤さんならもっとこう上のランクの人とも付き合えると思うのに。Aクラスの里中くんとかさ」
「私も最初は友達ってだけで気にしてなかったんだよね。
でもたまたま特別試験で一緒になった時からさ。妙に気になっちゃって……。
大人っぽいなとか、落ち着いてるなとか。色々とあって気づいたら」
「ふーん」
「あ、あと山内くん最近は凄い勉強が出来たりして目立っちゃってるし。
いろんな女子とも仲良くしてるみたいなんだよね。だから好きって言われても不安っていうかっ……」
確かに山内くんはあの干支試験の後から急成長株としてクラス内でも目立っていた。
ペーパーシャッフルの期末試験の順位でも、堀北さんのあの『地獄の特訓』があったとは言え、
幸村くん、堀北さん、高円寺くんについでクラス全体で4位の好成績を収めていた。
入学時には三バカと呼ばれていたのに今はクラスでトップ3を脅かす存在になっているのだ。
学校の七不思議の一つとして数えられても不思議ではないレベルである。
最近では洋介くんや堀北さんのサポートも献身的にこなしていることから、
他の三バカと比べても今は頭3つくらいはクラスの女子からの評判は高くなっている。
比較対象が三バカだから、洋介くんと比べたらこれまた頭3つくらい下だけどね。
もし洋介くんくらい顔も良かったら、今頃はクラスを2分する人気になっていたかもしれない。
それくらい今の山内くんに対する、クラスの評価は変わっていた。
清隆も『堀北の件があるとはいえ山内の変化は気になる。だが今はクラスより龍園の動向が重要』と言っていたし、アイツも気にかけてるくらいなのだから、やはり相当凄いことなのかもしれない。
そして私は、偽装恋人なのにも関わらず恋愛経験豊富な相談役として、
佐藤さんのデートプランをサポートする恋のキューピット役として相談を受けつつ、今日を過ごすのだった。
◇ ◇ ◇
「で、お前は橘先輩にどんなオレの噂を流したんだよ」
たまに2人で集まる喫茶店で、オレは松下を問い詰めていた。
「なんとなく察してるんでしょ。でも堀北先輩と”お話”出来たんだから良かったでしょ? むしろ褒めてほしいのだけど」
ニコニコとこちらを見る松下。
「まぁそれは──そうなんだけどさ。つまり松下は橘先輩と接触出来たってことでいいんだな」
「ええ、櫛田さんを経由しないのは苦労したんだから。今日もそっちの奢りね」
「はいはい」
そう、オレが関係を持ちたかった人物は橘茜先輩。通称橘書記である。
先輩のくせにちょっと抜けててお団子頭のかわいい先輩だ。
以前、オレと松下で議論したことのある1000万ptを集める方策。
その中でオレが1000万ptを集める方法は、結論を言うなら1つしかないと考えていた。
『1000万pt以上持っている生徒から貰う』である。
そんな大金を持っている生徒は少ない。
原作の知識を使うなら、おそらく1000万pt以上を扱える人物は4人に限られる。
1.一之瀬帆波
2.坂柳有栖
3.南雲雅
4.堀北学
である。その中で一之瀬帆波は同じ試験でポイントを利用するため不可。
坂柳有栖、南雲雅は原作の知識だけでは1000万ptをオレに渡すような出来事は発生しそうにもない。ここには挙げてないが龍園も難しいだろう。龍園の持つポイントをBクラスに渡す交渉があるからだ。
でないと一之瀬が南雲の手に落ちる……。
なんか嫌だろそんなの。阻止、そんなの絶対阻止。
唯一残ったのは、堀北学である。
来年行われる特別試験『混合合宿』では、南雲の策略によって堀北学の相棒、橘茜が退学処分になってしまう。
それを取り消すために原作で堀北学率いる3年Aクラスは、『2000万ptとクラスポイント300ポイント』を支払っているのだ。
これをオレが阻止すれば、堀北先輩陣営は2000万ptが浮くわけである。
そして、その2000万ptの内の『半分』でも貰えたらオレの退学も回避ってなわけだ。
ふふふ。簡単だろ。
しかし、簡単に思えるが実際にそう簡単ではない。
なぜならこの合宿は『男女別』で行われる試験だから。
さらに南雲の策略は、特別試験が始まる『前』に手を打たないとほぼ詰むからだ。
だからオレは信頼のおける女子を仲間にしたかった。それも秘密裏に。
そこで『松下千秋』である。
この作戦はオレがいくら裏で動いたとしても、最後はぶっちゃけ松下頼りなのだ。
男のオレでは手を出せないから。
松下が防いでくれたなら、ここのお店メニューの端から端まで奢ってもいいくらいである。
まぁ言わないけどな。
「で、ここからどう動くつもりなの? 分からないけど南雲先輩は冬休み明けにはもう3年Bクラスを買収してるんでしょ。物語通りなら」
「ああ、防ぐ方法は2通りあると思ってる。そのうちの1つ、南雲パイセンと3年Bクラスの取引をオレは止めるつもりはない」
「へー。じゃあ、どうするの?」
「3年A、C、Dクラスの3クラス女子連合を裏で作る。そして3年Bクラスを『孤立』させる。それがオレの考える
期末試験も終わり、皆が一息ついている頃、オレの
ああ、そろそろ龍園は綾小路くんにボコられるんだろうな……ちょっと生で観戦したいな。
そんなことも考えていた。まぁ無理だろうが。
山内くん1000万pt集めの導入まで。
しばらくは綾小路くんを他所に完全オリジナルストーリーを展開する予定です。