山内くんに転生したのでBADEND回避を目指します!   作:あまざらし

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【1年生】姫さま救出大作戦編 その2

 松下に橘書記救出作戦の概要を説明した数日前、オレは博士(同じクラスの外村)に相談していた。

 

「なぁ、博士。技術的にこういうことって可能なのか?」

「む、拙者も専門ではない故、完璧とはいかないまでもある程度そっくりなものなら出来るでござる」

「なっ、本当か!?」

 

 博士の説明は半分も理解できなかったが、『声質変換技術』という技術を使い可能だということ。

「拙者も〇〇ちゃん(放送中の深夜アニメのヒロイン)に近づけるために試行錯誤してるでござる」

 などと意味不明なことも供述していた。

 

 オレが驚いていると、博士もどこか得意気な顔で質問してくる。

「それにしても山内殿はなぜそのようなことを……」

「ああ、実は”かわいい女の子”を悪の魔の手から救いたいんだ」

 

 嘘は言っていない。本当のことである。

 かわいい女の子(橘書記)を悪(巧みする南雲パイセン)から救うのだから。

 

「なっ、正義の味方……でござるか!」

「ああ。このミッションをクリアできなければ、いけ好かないモテ男の手によって、か弱き女の子が退学になってしまう。なんとしても防ぎたいのだ。

 しかし立ちふさがる敵は強大だ。このことは博士、誰にも話さないで欲しい」

 

「わかったでござる。ちなみにオナゴとは誰のことでござるか?」

「橘先輩だ。元生徒会の」

 

「お団子頭の小動物キャラでござるか。

 なるほど。山内殿にはペーパーシャッフル試験中も世話になった故。拙者、そういうことなら力になるでござる」

「本当か。ちなみに実行する上で何が必要なんだ?」

「元となる人物の音声データと、あとはスタジオで収録したキレイな音源が欲しいござるな」

「了解した。ミッション名『姫さま救出大作戦』に向けて博士よ! 世話になる」

「拙者、こういうスパイミッションみたいなの……憧れてたでござる」

 

 ふと思い出したように博士が質問してくる。

 

「ただ山内殿、前回のラジコンカメラは駄目で、なぜ今回のはいいでござろうか」

 確かに今回オレがやろうとしてることは違法染みた行為である。

 

「かわいい女の子が『喜ぶ』のが今回で『悲しむ』のが前回なのだ博士よ。

 博士の力は有能だ。だからこそ使い道は正しくあれよ」

「なるほど。そういうことでござるか……」

 

 

 それから音源データの入手も成功し本日、オレたちはスタジオを借りて収録していた。

 オレたちがやろうとしていたのは、南雲と3年Bクラスの密会シーンの『偽造』である。

 

 実際に行われるであろう密会。

 だがオレがその音声データを入手するのはほぼ不可能だ。出来たとしても尋常ではない手間が必要となる。それにオレの行動により南雲に勘付かれる恐れもある。

 

 そのため密会シーンをオレたちで再現してしまい、それを根拠に橘書記を初め3年生の人たちの協力を願いたいのだ。そのための収録である。

 

 参加メンバーは、オレ、博士、そして松下だ。

 女性の声が必要なので松下も来てもらった。

 3年Bクラスの密会参加者は実行犯の猪狩先輩、同じクラスの石倉先輩あたりだと想定しているからだ。

 

 

「なんで今日なのよ山内くん。何の日か知ってるんでしょ」

 松下は怒っている様子だ。それもそうだろう。

 だって今日は……

 

「今日は12月24日だな。なんてことない冬の日じゃねーかって、嘘だよ嘘だって! 殴るな! ごめんなさいって!! 

 スタジオ予約いっぱいで空いてる最速の日が今日だったんだよ」

 

 そうしてオレたちの偽造音声収録が始まる。

 

『ご足労いただきありがとうございます石倉先輩。

 俺は次の特別試験で、ぜひ3年Bクラスの力を借りたいと思ってましてね』

『お前のことは聞いている南雲。力を貸すとは言ってない。話だけは聞いてやろうと思ったんだ』

『今はそれで構いません。次の特別試験の詳細を聞いてからでも遅くない』

『南雲くん、私も聞いていいの?』

『ええ、今回は猪狩先輩が全ての鍵ですから』

 

『──つまり堀北との勝負はブラフで本当の狙いは橘茜ということか』

『ええ。小グループ結成時に橘先輩をBクラスが多数いるグループに入れさえすれば、橘先輩は連帯責任者となり退学となります。

 堀北先輩が彼女を救っても救わなくてもAクラスにダメージが残るでしょう』

『しかしBクラスにもダメージが残る』

『それは勿論フォローしますよ。先輩』

『なっ、2000万ptを援助だと』

『ええ、先輩方さえ協力していただけたら。ぜひ今後も仲良くしたいですからね。先輩たちをAクラスに上げるお手伝いを俺はしたいのです』

『猪狩できそうか?』

『わ、わかったわ。私が小グループ結成時に橘さんをチームに入れるように説得すればいいのね』

『Bクラスとしても、”C、Dクラスは眼中にない”。Aクラスを落とせるなら……協力しよう』

 

 

 南雲の音声は目立つのでそこら中で入手可能だった。

 というより学内HPに南雲先輩の声なんてフリー素材みたいに配布されてるからな。彼が目立ちたがりで助かったわ。

 

 一方で苦労したのは、猪狩先輩と石倉先輩の音源だ。

 これについてはある人物の協力を得た。堀北学である。

 理由も聞かず、内密でとの要望通りオレに音源を送ってくれた。やはり彼は出来る男だな。

 オレの中でまた一つ堀北先輩の評価が上がる。

 

 事情を話して、堀北先輩主導で動くのが正直一番手っ取り早い。

 しかし原作でも最後まで相手を信じる大人の対応だったからな。堀北先輩。

 フォローはしてくれるが、”確実な証拠”がないなら自ら動かないだろう。

 

 そして収録は進み、

 オレは無難な演技で終わるが、松下の演技は凄かった。

「松下殿は加工なしでもそのまま通せそうなほど、クオリティー高いでござるな」

「それほどでも」

 何でも無いように言う松下。お前はいったい何者なんだ……。

 

 おい見てるか『綾小路くん』。お前を超える逸材(天才)がここにいるぞ。

 それも同時に2人もだ……って見られたら困るけどな。

 

 博士はオレの音声をよくわからないツールを用いて淡々と変調させてゆき、

 そして、

 

「少しノイズを乗せることで、判別を難しく現実に寄せるでござる。よし完成した。なかなかの出来でござる」 

 

 そうして偽造音源が完成したのであった。

 それは素人が聞いただけでは、オレたちで会話したとは到底思えないほど、完成度の高い密会シーンの音源が出来上がった。

 

「最後に博士に頼まれたやつ……あの、松下さんお願いします」

「はぁ。なんでイヴにこんなこと。もういや……」

 

 メインの偽造音源収録が終わり、その後は博士監修シチュエーションボイス収録が始まる。

 それが絶対に黙るという約束の交換条件だった。

 

 事前に原稿内容をチェックし、松下の承諾も得ていた。

 

 いたのだが──収録を終えて解散となった後も、それでもオレは松下に延々と破茶滅茶に怒られ続け、大量のポイントも消化され一日が過ぎるのだった。




博士ならこれくらいのことやってくれるはずだ
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