山内くんに転生したのでBADEND回避を目指します!   作:あまざらし

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【1年生】クリスマス当日

「Wデート?」

「そそ。あたしと洋介くん。そして佐藤さんと山内くんでデートするわけ。面白そうじゃない?」

 

「それは難しいんじゃないかな? 2人にも別の予定があると思うし」

 洋介がやんわりと断ろうとしている様子をオレはただ眺めている。

 これはWデートすることになるやつだな。

 

「佐藤さんも面白そうって言ってくれたんだよねー」

「うんっ。面白そうっ」

 

 さて綾小路くんは……いないっと。

 

「洋介ここは乗っておこう。常に一緒ってわけではないだろうし。難しそうだったら別々に行動するでもいいから」

「春樹くんが迷惑じゃないなら……わかったよ」

 

 そうしてオレたちは映画を見ることになる。

 とは言え、裏で動く女子の計画も完璧に連携しているわけではないのだろう。

 

 見る映画は、偶然にも同じ時間の同じ映画だが予約した席はバラバラだしな。

 

「でも二人ともまだ付き合ってないの? 実は付き合ってるんじゃない?」

「違うよ! 全然まだ私たちはそんな関係じゃないからっ」

 オレたちの関係を否定する佐藤。

 

「ほんとうかなぁ」

 なんて軽井沢に茶化されつつ映画館に向かう。

 

 4人はゆっくりと目的地へ進んでいく。

 映画館で遭遇する可能性のある南雲パイセンとはあまり関わりたくないものだな。

 

 映画館の手前に来た時に、想定通りオレは南雲を始めとする生徒会関係者を目撃した。

 一年生の一之瀬や、ひまわりの髪飾りがトレードマーク2年生の朝比奈なずなの姿も見える。

 

 洋介と一緒に歩いているから声をかけられると思ったが、やはり南雲パイセンが最も気にしているのは綾小路くん。南雲パイセンに足止めされることもなく目的地へ辿り着く。

 オレの存在はマークされてない、それは作戦もまだ表に出てない可能性が高いということ。どこか一安心する。

 

「さっき一之瀬さんいたね」

 話題を探していたのか手持ち無沙汰な佐藤が小さく声をかける。

 

「生徒会長もいたし生徒会の仕事なのかもな。クリスマスなのに大変だな。はいこれ」

 映画館のチケットを発券して、佐藤に一枚渡す。

 

「そうだねー。チケットありがとう。そういえば軽井沢さん達どこかなっ」

 とせっかく2人を探したのに「映画も始まるから別々でーっ」と一言残し、オレたちを置いていく軽井沢なのであった。

 ま、綾小路くんじゃなかったらそんなもんよな。

 

「じゃ、飲み物も買ったことだし席に向かおうぜ。楽しみだな」

「うん」

 

 そうしてオレは久々の休息を佐藤と楽しんでいた。

 

 

 ◇  ◇  ◇

 

 

「で、山内くんって本当に誰とも付き合ってないわけ? 堀北さんとか」

「逆に聞くが恋人いると思えるのかよ軽井沢。それに今学期は本当にそれどころじゃなかったからな」

 

 あえて言うなら勉強が恋人だったオレの今学期を思い返す。

 

 期末テストの『クラス順位4位 山内春樹』が発表された時の教室中のどよめきったらもうな……。

 

「確かに春樹くんのテスト結果凄かったからね。僕ももっと頑張らないとって思ったよ」

「ねっ、本当に本当に凄かったよね! クラス中が暫く静まらなかったし」

 好意的な反応2人と、

 

「私は真似できないな―。山内くんもおバカだったのにガリ勉になっちゃって」

 勉強バカめとイジる軽井沢。

 

「いや洋介じゃなくて、お前はちょっと見習って頑張れよ軽井沢」

 お前、佐藤より順位下だったのオレ知ってるからな。

 綾小路くんとイチャイチャしてたのかコイツ。オレは睨みつけた。

 

「あたしも次こそ頑張るよ。山内くん」

「ちゃんと結果付いてきてるからな。少しずつ順位上げてこうぜ」

「うん! ありがとね」

 期末の試験の後も定期的に佐藤には勉強を教えている。

 やる気が空回りしなければいいが、きっと次回はいい順位を狙えるとオレも思っている。

 

「ふーん、やっぱりなんかいい感じじゃない。相性良さげに見えるけどな―」と茶化す。

 コイツ露骨に佐藤とくっつけようとあの手この手でイジるのやめてくれませんかね。

 ホントに。綾小路くんの時はもっと落ち着いてただろお前。

 

「あのな──確かにそのデートは嬉しいが、まだオレは特定の誰かと付き合える状況じゃないんだよ」

「うわっ それってちょっと優柔不断すぎじゃないっ 佐藤さん可哀想じゃん」

「い、いや。あ、あたしは大丈夫だから……」

 とフォローする佐藤と軽井沢に駄目男の烙印を押されるオレ。

 

 やっぱり退学回避に向けての正念場なのにデートの約束なんかするんじゃなかったな。

 一時の感情に任せた提案を少しだけ後悔した。

 

「……オレにはどうしても達成したいことがあってだな」

「なにそれ。絶対いかがわしい事でしょ」

 睨む軽井沢。

 

「秘密だけどお前の考えていることでは100%ないとだけ言っておくぞ。

 そうだな軽井沢、一つ例え話してもいいか?」

「なによ」と疑い目のまま軽井沢は返す。

 

「自分が退学すると分かっている。

 お前はそれでも今の恋愛を楽しむか、そうならないように行動するのか。お前ならどっちだ」

 

 少し考えた後、軽井沢は答える。

「なにその変な質問……そんなの分からないって」

「まぁ軽井沢はそう簡単には退学にならないだろうがな」

 綾小路くん絶対守るだろうしなと思いつつオレは返す。

 

「僕は軽井沢さんも佐藤さんも、それに春樹くんも、クラスの誰も退学にはさせたくないけどね」

 オレたちの話に洋介が割って入る。

 

「ああそうだな。でも洋介。いつかはそんな未来が来るかもしれない。

 覚悟だけはしておくべきだ。全力で防ぐべきだけどな」

 

 無言になる洋介。

『一回目』だけはオレが全力で防ぐとも。しかしそれ以降は分からない。

 南雲や綾小路パパのせいで退学者をゼロにすることは今後は難しいだろうから。

 

 洋介にその覚悟だけはしてもらいたかった。

 

 

 ◇  ◇  ◇

 

 

 オレへの質問攻めな食事が終わると、オレと佐藤は2人で行動することになった。

 

 2人の行方は分からないが、何となく軽井沢だけは尾行してそうな気がするけどな。

 もしくは綾小路くんと鉢合わせしているのか。それかな。確か今日は桐山副会長と面会するんだっけか。

 

 たんたんと雪が降る外の寒さから逃れるように、今はよく行くカフェでオレたちは暖を取っていた。

 

「わ、私ね、このままじゃダメだと思って……」

 

 雑談もそこそこに、何か思い詰めたように佐藤が語りだした。

 何が駄目なのだろうかとオレが思案していると佐藤が続ける。

 

「”松下さん"。何か協力してるんだよね。私、知ってるんだ」

「えっ……」

 オレが言葉に詰まっていると、佐藤は別に怒るでもなく淡々と語る。

 

「最初はなんでなんだろって思ったんだ。

 でもね、よく考えたら松下さんって勉強もできるし、気が利いてる。それに何でも卒なくこなしちゃうんだよね。

 松下さんだけじゃない。椎名さんや堀北さんも私より全然頭いいもん。山内くんが頼りにするのちょっと理解できちゃったっていうか……」

 

 

「だからね『春樹くん』。

 私もっとデキる女になるっ! いつかびっくりさせちゃうから」

 

 佐藤は窓に映る雪景色に負けないくらい晴れやかに笑う。

 

「きっと出来ると思うよ。その──『麻耶』でいいのか?」

「うんっ でも勘違いされちゃうかな」

 このタイミングだと特にな。

 

「確かにな。でも今日の軽井沢見てるともう今更な気がする……。ま、仲も良いし変じゃないだろ」

「うんっ」

 佐藤麻耶にとって今日が少しでも楽しい日になってくれたなら良いなとオレは彼女を見つめる。

 心なしか嬉しそうな表情に見えるのはオレの願望なのだろうか。

 それとも原作だと涙する日なのを知っているからなのだろうか。

 

 麻耶の退学の心配が減り、オレの悪足掻きも終わったら、2人の関係はどうなっているのだろう。そんなことをオレは考えていた。

 

「プレゼント渡したかったんだ。大したものじゃないんだけどな」

 そういってオレはプレゼントを渡す。

 オレにもプレゼントがあるらしく、その場で交換会となった。

 

「開けるね?」と麻耶はプレゼントのシャーペンを取り出す。

 女子にも人気なシリーズらしくペンとしても高価な部類だ。

 最初は原作知識で、もっと別の物を購入しようと思ったんだけどな。

 

「合わなかったら捨てていいから」

「ううん、ありがと春樹くん。めっちゃ使うよ! 今度こそ私リベンジするから」

 麻耶は次のテストに向けて燃えているようだ。

 結果発表後の麻耶の様子を知っているだけに予想はしていたが、やっぱり前回の結果は相当堪えていたらしい。

 

 そして一方のオレはシックなカシミヤのマフラーを貰う。

 高そうだが大丈夫なのだろうか。

「いいのかありがとう。大切に使うよ」

 

「へへへ、こちらこそ。

 ところで春樹くんって昨日は何してたの? べ、別に追求してるわけじゃないんだよっ」

「……」

 

(松下と博士と一緒に偽造音声を収録していました ええ)

 

 オレはなんと言い訳すべきか考えていた。





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