山内くんに転生したのでBADEND回避を目指します!   作:あまざらし

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【1年生】姫さま救出大作戦編 その3

 冬休みに入り、大晦日まで後数日、皆が部屋で休んだり大掃除をしている頃。

 

 オレは年末年始の休館日直前の図書館へ出かけていた。

 椎名ひよりに会うためである。

 

 本を借りる生徒はいるが、冬休みということもあり長時間滞在する生徒はごく僅かのようだ。

 そして長期休暇中によく2人で会話していた場所で、一人ぽつんと本を読みふける椎名の姿を発見する。

 

「椎名さん。今大丈夫か?」

「お久しぶりです山内くん。本日は勉強ではないのですね」

 

「ああ。実は椎名さんに用があって来たんだ。

 その……事情があって詳しくは話せないんだが、次の試験に関することなんだ」

「なるほど。ちなみに山内くんは今のCクラスの現状をどこまでご存知でしょうか?」

 

 確か二学期の登校最終日に龍園は失脚したはずである。

 

「龍園の噂の件か? 因みにあれは本当なのか?」

「よくご存知ですね。ええ、石崎くんの反抗により、龍園くんはCクラスのリーダーから失脚しました」

「なるほど」

(知ってます。それは表向きの理由だということも)

 

「ですので、もしかしたら私は山内くんのご期待に沿えないかもしれません」

「いや、それについては大丈夫だと思う。それほど難しいことじゃないんだ」

「わかりました。それでは話を伺いましょう」

 

 そしてオレは、次の試験が”もし”クラス対抗ではなく協力する必要がある場合、

 女子だけでもDクラスのある生徒と結託して試験に取り組んで欲しいとお願いした。

 

「ちなみにその生徒とはどなたなのでしょう? 佐藤さんですか?」

 椎名も佐藤のこと覚えているんだな。

 

「いや違う生徒だ。松下、松下千秋という子と協力して試験に取り組んで欲しい」

「松下さん……。すみません顔が浮かびませんね」

「ああ松下にもこのことは伝えているから、その点は大丈夫だと思う。向こうから話が来ると思うから。椎名さんは迎え入れてくれたらと」

「しかしCクラスに不利益があると思ったら、流石に承諾出来かねます」

「それはもちろん。椎名さんの判断で断ってもらって構わない」

 

 椎名さんは少し悩むように顎に手を当てて

「それが”あなた”にとって必要ということなんですね」

「あ、ああ? そういうことで構わない」

 

 要領を得ない質問だがオレにとって必要かと言われたらそうだ。

「でしたら受けましょう。それは”私にとっても”望んでいたことなのですから」

 

「ところで私たちは今回、協力関係にあるわけですよね」

「そうなるな」

 

「でしたら……」

 

 その後、オレは次の約束まで、久々にゆったりとした時間を過ごした。

 

 

 ◇  ◇  ◇

 

 

 その日の午後、オレと松下は橘書記と密かな会合を開く。

 

「千秋ちゃんと……山内くん? でしたっけ。こんにちは」

「こんにちは橘先輩。本日はお越しいただきありがとうございます」

 

「それは構わないのですが、一体何の相談なのでしょう」

 少し居心地が悪そうにする橘書記ちゃん。

 

「それはこれからご説明します。まず質問なのですが、橘先輩は次の特別試験についての情報を既に入手しているでしょうか?」

「いえ、私はもう生徒会ではないですから。堀北くんはもしかしたら知っているかもしれませんが。今、教員と調整をしているのは現生徒会長の南雲くんでしょうね」

 まぁそうだろうな。入手してても気づけないのが今回の南雲パイセンの策略だが。

 

「わかりました。今回は橘先輩と、あとその……南雲先輩について偶然聞いてしまったことがあるんです」

「ええっ! わ、私、別に南雲くんはただの生徒会の後輩ですし、付き合ってるとかありませんよっ! 何の関係もありません!」

 

 と早とちりにも手を横にバタバタさせて否定している橘書記ちゃん。

 何このポンコツ。かわいいな。

 

「橘先輩が堀北先輩を大好きなのは見ていればわかりますので……。誰もそんな勘違いしないので安心して下さい」

「ええっ! それはそれで困るっていうか……。嘘、みんな知ってるの!?」

 

(周りはみんな気づいてるだろうな)

 そう思って松下を見ると、松下も黙って頷いていた。

 

「先輩、本題です。心して聞いて下さい」

「は、はい……なんでしょう」

「次の特別試験であなたは南雲先輩の罠によって退学させられようとしています。その情報です」

 次の瞬間、橘書記はサーッと血の気が引く。

 そうしてオレは、オレたちで用意した密会シーンの音声を聞かせる。

 

 音声を聞き終えた後、これが偽造音声だと気づくこともなく、

 目の前の橘書記は目尻に涙を蓄えて、そして泣き始める。

「どうしましょう、どうしましょー

 男女別ってことは堀北くんもサポート難しいってことですよね! 私このままだと絶対退学しちゃいますよ!」

 

 なんだこの先輩。まじでポンコツかわいいな。

 同じことを思っていたのか松下もどこかほっこりした表情をしていた。

 

「茜先輩。大丈夫です。私たちがフォローしますから。そのための相談なんですよ今日は」

 松下が頭をなでてポンコツ先輩を励ます。どっちが先輩なのやら……。

「ぐすんっ。ホントですかー」

 

「ええ、本当です。ただこれには橘先輩の頑張りが不可欠なんです」

「は、はい。でも私だけで頑張れるのでしょうか……」

 橘書記の発言は、3年Aクラスの弱さを垣間見た気がした。

 いや、この先輩がポンコツなだけなのかもしれないが。

 

「確かに南雲先輩はあなたを退学させようとしてます。ですが、本当の狙いは別だと思ってます。

 それは──堀北先輩にダメージを与えることなんです。

 橘先輩、あなたの頑張りが堀北先輩を救うんですよ!」

 

 その言葉が響いたのかは分からないが、

「堀北くんを……わかりました。これでもお姉さんですからね。私、頑張っちゃいます!」

 そう答えた橘書記は覚悟を決めたようだ。

 

「では、堀北先輩が考えた作戦を説明しますね」

 

 そしてオレは3年Bクラス包囲網について説明した。

「C、Dクラスで信頼のできる女子生徒ですか……Cクラスの相田美穂ちゃんとDクラスの竹田ひかりちゃんがいいかもしれません。口も固く元生徒会にも協力的です。Bクラスとの交友も深くないので」

 

「なるほど。わかりました。その会合の取りまとめは橘先輩にお任せできますか?」

「ええ、任せて下さい。そういうのは得意ですから! でもなぜ今回の件は堀北くんから直接説明しなかったのでしょう」

 

 ポンコツだと思ってたけど、ちゃんと鋭いところもあるじゃないか橘書記。

 偉いぞ。俺は内心褒めていた。

 

「ええ。今回の件は橘先輩が『鍵』です。

 そのため南雲先輩も堀北先輩と橘先輩の接触については細心の注意を払っています。

 だからオレたちで共有した方が、相手が油断すると堀北先輩も思ってのことでしょう。

 なぜなら、これも堀北先輩の指示なのですから」

 

「なるほど。そういうことですか。私が鍵ってやっぱり緊張してきますねー」

 まぁ堀北先輩の指示ではなく、オレたちの案なので嘘なんですがね。

 

 そしてオレたちは年明けに会合を開く調整を行い解散した。

 

 

 ◇  ◇  ◇

 

 

(Side 堀北学)

 

 俺は不可思議な生徒と出会った。その名は『山内春樹』。

 

 二学期の期末試験の少し前に、橘から妹さんが危ないかもしれないという妙な噂を聞いた。

 

 橘から話を聞くとなんでも鈴音がある男を連れ込み、『監禁』して部屋から出さない実態にまで発展しているらしい。

 だとするなら危険なのは男ではなく、鈴音の方ではないかと俺は思った。

 しかし『あの妹』が部屋に連れ込むような人間がいるとは、『アイツ』以外では想定外だった。

 

 名前を聞くと『1年Dクラスの山内春樹』というらしい。

 綾小路ではない。

 入学当初は学年最底辺の成績だが、どうやら最近は実力を付けているらしい。

 俺は鈴音がどうしてここまで入れ込んだのか気になり、真相を探るため直接コンタクトを取った。

 

(例えば──南雲雅の策略によってクラスメイトに危機が訪れるとか)

 

 結果的に言えば、山内は白だった。

 しかし今となれば、その噂を広めたのも山内の可能性が高い。

 

 それに山内は南雲の動きを掴んでいるようだった。

 まるで未来予知のような正確さで。

 

 期末試験が終了し、終業式に向けて動き出す頃、一通のメールが届く。

 

『堀北先輩。

 お忙しいところすみません。

 3年Bクラスの石倉先輩と猪狩先輩2人の音源(ある程度の長さ)は入手可能でしょうか? 

 南雲の動きを防ぐために必要となる可能性があります。

 あとこの件についてはオレが絡んでいることは内密にお願いたします。

 しばらくしたら橘先輩からこの件に関して確認がくるかもしれません。

 この件は先輩主導で動いていると話を合わせていただけたら非常に助かります』

 

『わかった。いつまでに必要だ』

 

『できれば終業式までにあると助かります』

 

 

 このメールで不可解な点は2点ある。

 1点目は猪狩だ。

 石倉は3年Bクラスでリーダー的なポジションにいるため色々な想定ができるが、

 猪狩はそこまで主要なメンバーでないはずだ。

 なぜ山内が猪狩の音源の入手にこだわったのかが不明だった。

 

 そして2点目はこのメールの時期だ。

 今だから一つの仮説に行き当たる。

 しかし、このメールが来た時期は12月中旬だ。

 12月中旬は次の特別試験の件で『南雲すら』動いていない。それは確定だ。

 桐山から連絡が来たのが、2日前の12月27日頃。

 

 つまり、次の特別試験のリーク情報を入手した現在の俺だからこそ、山内が考えている南雲の策略とやらが朧気ながら見えてくる。

 しかしあいつは戦略を立案した南雲より前にこうなることを予想したとでも言うのだろうか。

 とんだ笑えない冗談だ。まだ『未来から来た』と言われたほうが納得できる。

 

 

 そして本日12月29日に橘からメールが届く。

 

『堀北くん。例の密会の件山内くんから聞きましたよ。私、頑張って退学を退けますね! 

 この件は関係者以外には内密にですよね。勿論わかってます!』

 

『そうだ。くれぐれも内密に頼む。本人にも言われていると思うが、山内の名前も表にだすな』

 

『はい勿論です! バレたら南雲くんに睨まれるって怯えてましたから。それではおやすみなさい』

 

 あいつは何者なのか。

 

 しかし俺は、これが南雲の策略だとも思えなかった。

 

(ただ、オレはどうしても欲しい物があるんです。

 プライベートポイント1000万pt。1000万ptをどうしても集める必要があります)

 

 山内春樹は俺が出会った中でトップクラスに怪しい人物だ。

 しかし、あいつの本質は間違いなく『善』だった。

 綾小路とも違う。南雲とも違う。

 

 山内春樹は自分を犠牲にして他人を守るタイプだ。それに無意味に人を騙すタイプでもないことを俺は直感で理解した。

 

 だから判断するしか無いのだろう。

 

 なぜ山内がこんなことをしているのかは、次の特別試験の結果で。

 己の目で。

 

 不思議とその結果が待ち遠しいと俺は思った。




堀北学から見た山内はこんな感じなのではと追加。
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