山内くんに転生したのでBADEND回避を目指します! 作:あまざらし
(Side 松下千秋)
思えばアイツが私に相談を持ちかけてきたのは、初めから今回の面倒事を任せるためだったに違いない。
三学期も始まってすぐのこと。
次の特別試験のため今は全校生徒がバスで移動中だ。
私たちはバスに乗る前にジャージ着用の指示と、何日分かの着替えを持ってくるよう推奨されただけである。
Cクラスのバスが移動開始してからしばらくの時間が経過し、茶柱先生が次の特別試験『混合試験』について説明を始めた。
これから山中にある林間学校へと移動する。
その中で7泊8日の授業を実施し最後にテストを行う。
授業内容は『座禅』などといった一風変わった内容で構成されている。
(確かアイツから聞いてた試験項目は禅、筆記試験、駅伝、スピーチだったはずだ)
個人戦ではなく各学年ごとに小グループを作成する。その小グループが3学年合わさり大グループとなる。
小グループは1人責任者を定める。
大グループの順位によりテストで優秀な結果を収めた大グループにはクラスポイントやプライベートポイントが与えられる。
そして最下位の大グループかつ基準点を下回る小グループの責任者は『退学』となる。
退学する生徒は『連帯責任』として一人道連れにできる可能性もある。
茶柱先生が説明しているのは、アイツが言っていたことと同じだ。
アイツの言う物語では3年Aクラスの橘茜先輩が連帯責任によって退学となる。
堀北先輩はクラスポイント300ptとプライベートポイント2000万pt支払うことでそれを取り消すとのことだ。
毎度のことだが事前に知らされた通りの試験内容。
それは私が依頼を遂行しなければならないことと同義。
はぁ。我ながら面倒な仕事を引き受けてしまった。
仕方ない。さくっと終わらせましょう。
もうすぐ回収される端末から一通のメッセージが送られてくる。
『後は頼んだ。今回だけは全力で頼む』
ええ、頼まれましたよ。
しかしもう私は自覚もしているんだ。
これまでの面倒事も、そして今回の事も、内心どこか楽しんでいることに。
バスに揺られながら目的地へ到着するまでの間、私は一人今までのことを思い返していた。
◇ ◇ ◇
(Side 橘茜)
3年生女子の間で小グループを作成する最中。
「私たちBクラスの要求を受け入れられないっていうの?」
猪狩さんは私達Aクラスに対して高圧的な態度を取っています。
「ええそうね猪狩さん」
そこにCクラスの代表である美穂ちゃん、相田美穂ちゃんが割って入る。
「残念ながらAとCとDクラスは小グループを組める状態なんだよ」
Dクラスの竹田ひかりちゃんが呼応し、美穂ちゃんと連携する。
猪狩さんは想定と違うと焦りの表情が隠せていなかった。
「Bクラスの方が何を考えているのか”知りません”。ですが、B以外のクラスの方々は協力的です。そうですよね皆さん」
私が確認すると、
「はい」「ええ」「そうね」と多くの生徒が呼応する。
今回の小グループ作成の肝は、小グループは単独のクラスでは『作成出来ない』という点にある。
A、C、Dの3クラスで連携が取れてしまうと最終的にここがネックになりBクラスは譲歩せざるをえない。
Bクラスの生徒の”一人”もその気配を感じ取ったのか、
「猪狩、もう譲歩しないとBクラスは小グループを作れないかもしれない」
一人がそうつぶやくと、この様子を見かねた猪狩さん以外の生徒も徐々に旗色が悪いと思ったのだろう。いくつか要求を飲むのでBクラスも小グループに入れてもらうように提案する。
「ではまず猪狩さん。あなたはBクラスの窓口から外れていただきます」
そう言って微笑む美穂ちゃんはどこか好戦的だった。
それからはスムーズに3年生女子の小グループ作成は進んだ。
6グループの小グループの中でBクラスが大人数に”ならないように”調整した。
だいたいが3人程度しか編成できないBクラスは仮にテストを不真面目に行っても基準点を下回るようなことは早々ない。
仮にBクラスの誰かが責任者となり最下位になって連帯責任を実行しようとしても、過半数をBクラス以外で構成することでみんなで否認できるようにしたのだ。
更に私が組む小グループには、猪狩さんが配置されないように構成する。
これも首謀者である猪狩さんと私が同じグループにいるのは単純にリスクだからだ。
そして私のグループはBクラス以外の生徒は比較的優秀な生徒で固められていた。
至れり尽くせりで”お姫様”になった気分ですね。
なんか照れちゃいます。
「あなたたちBクラスの考えていることなんて『堀北くん』には筒抜けなんですから、精々真面目にやりなさい」
美穂ちゃんのその一言が効いたのか、Bクラスの大半は悔しそうな表情で交渉を諦める。
そして大グループの結成でもいくつかの調整が行われた。
「松下さん。橘さんがいるグループを選ぶで良いのですね」
「ええ、椎名さんお願いね」
「3年生でも優秀な方が多そうですから、私としても特に異論はありません。わかりました」
基本的には、1年生が2,3年生のグループを選択する方針となり、私たちは1年生の椎名ひよりさんが率いている小グループと合流した。
そこには千秋ちゃんもいますし、生徒会に参画した一之瀬さんもいる。
真面目にやっていればまず最下位は避けられる構成となっていた。
多分これも裏で千秋ちゃんや山内くんが頑張ってくれたんでしょうね。
次に2年生と合流するわけなのですが、3年生と1年生のグループが”決まった後”では、
南雲くんが私を退学させることは割と困難になるはずです。
まず3年生と1年生の平均点が高水準になるはずだからだ。
そうするともし私の大グループで最下位を取るためには、2年生の点数を著しく低くする必要がある。
しかしその場合、退学となる基準点を下回るのはおそらく2年生だけになるでしょう。
南雲くん傘下の誰かが退学になるなら駒が減るだけ。だから実行しないでしょう。
全て堀北くんの計画でそうなるよう調整しているのですから。
そうして私の所属する大グループが確定する。
今回の特別試験、私はとても嬉しかったのです。
なぜなら普段なら全て一人で解決してしまう堀北くんが、南雲くんの目があるとは言え私たちを頼りにしてくれたから。
特にAクラス女子の結束力は今までで一番高い気がします。
これまでの特別試験で、最も安心できる試験になる。
私はそんな予感がするのです。
◇ ◇ ◇
一方そのころ1年生男子。
「Aクラスは多数のメンバーで構成した小グループを作る。責任者もAクラスが引き受ける。
連帯責任も実施しない。だれか1人他クラスからメンバーを呼びたい」
「はい!」
「春樹くん! キミが行くのかい?」
「ああ、まぁAクラスは多分変なことしないと思うし。洋介もそう思うだろ」
あと、原作でも山内がこのチームに合流してたからな。
この小グループ、堀北先輩と同じ大グループになるんだよな。
南雲パイセンが変なこと口走っても、先輩が口裏合わせているか確認しとかないと。
ところで女子側のみんな頑張ってるかなー
そして『あの人』ちゃんと演技してくれたのかな。
あの感じだったら大丈夫だと思いたいけど……
女子のほうが気がかりなオレなのであった。
最終話までざっとですが書き終え、追加するかもしれませんがあと7、8話の予定です。