山内くんに転生したのでBADEND回避を目指します!   作:あまざらし

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【1年生】混合合宿編 その2

 混合合宿が始まる前。

 そして、大方3年Bクラス包囲網が完成したころ、

 オレは最後の詰めのために、堀北先輩と連絡を取っていた。

 

 オレは今回の作戦は成功確率を1%でも上げたかった。

 だから密かにやり取りしている堀北先輩だけには、様々な原作知識が露呈しているはずだ。

 

 堀北先輩にとって今のオレはさぞかし奇妙な存在に見えることだろう。

 しかし先輩は計画を止める素振りも、無闇に口を滑らすこともしなかった。

 

 何時ぞやの占い婆さんが言っていた『動く時は大胆に動け』は、この試験を置いて他にないだろう。オレはそう思っていた。

 

 だからオレは包囲網を『確実に』するため堀北先輩にメールで相談する。

 

『堀北先輩。3年Bクラスに口が固くて、発言力があり、南雲の圧力に屈しない女性っているでしょうか? 該当する女性がいない場合はそれでも問題ありません』

『一人だけ心当たりがある。北神沙希だ』

『その人とアポイントって取れるでしょうか?』

『いつがいい?』

『特別試験開始がいつかをご存知ならその前日で、不明なら始業式で』

『わかった。前日で調整しよう』

 

 そして特別試験開始の前日、特別棟の裏手でオレは北神先輩と出会った。

「キミが学の協力者か。春樹後輩」

 そう言葉を放ち鋭い目を向けてくるので好戦的な人という第一印象だった。

 しかしすぐにオレに向かって微笑む。その笑顔はどこか大人っぽくて女性的な優しい雰囲気だ。

 先輩は背丈は少し低く、それとは反対に腰まで伸びようかという長く淡い青髪と深い青瞳という特徴的な外見をしていた。

 

 えっこの人本当にモブキャラなのか。原作にはいなかったよな……。

 明らかに他者とは違う強者オーラを纏った先輩だった。

 

「あなたが北神先輩でしょうか?」

「ああ、私はキミのことがもう既に気に入ってるから沙希先輩と呼びなさい」

 あ、多分この人良い意味で変人なパターンだ。南雲パイセンに流されないのってこういう人しかいないのか? オレは2年生のとある先輩が思い浮かんだ。

「あ、ありがとうございます。えっと──沙希先輩。本日はお願いがあって……」

 

 オレが説明する前に内容を察していたのか、沙希先輩が遮るように答える。

「大方、3年Bクラスの女子が折れるような言葉をかけて欲しいんだろ。春樹後輩」

(なんでそこまでわかるの。怖いんだけどこの人)

 

「学からキミが何やら動いているから助けて欲しいと言われてな。

 わざわざ危険を犯してまで今のBクラスに接近するなんて、『裏を知ってる』人間なら普通は考えられないだろ。逆算すると一番確率の高そうなお願いがそれだったんだ。正解かい?」

 オレは黙って頷き、協力を得られるのか確認を取った。

 

「ここに私が来たということは協力するということだよ。ただ無条件でもよかったが、一つ条件を出そう」

 てっきり普通の人だと思ってたから、ポイントで交渉する予定だったんだけどな。この人何要求してくるんだ? 全然読めないんだが。

 

「条件次第ですが、聞かせていただいても?」

「キミと仲良くなりたい。興味深いからね」

 そういってオレの連絡先を欲しがる沙希先輩だった。

 

「それだけでいいんですか?」

「ああ。私は友達が少ないからね。キミにはそう思えなくても意外と大切なことなんだ」

 そう言ってオレと先輩は連絡先を交換した。

 

 先輩はなぜかBクラスの包囲網についても把握しているようなので、猪狩先輩が折れそうに無い場合、タイミングを計って諦めるよう進言すると約束してくれた。

 

 約束してくれるのはいい。

 しかしなぜかこちらの行動を把握されていることが不安で一杯のオレは、どこでその情報を得たのか質問する。

 

「別に詳細は把握してないさ。学から連絡が来た時になんとなくだよ。それまでは全く想定してなかったさ」

 

 続けて先輩は優しい眼差しで、そしてオレへ賛辞を贈る。

南雲(アイツ)の裏を読むことは誰もが出来ることじゃない。どうやって3年Bクラスでもなく南雲の側近でもない1年生が『この段階で』知ったのかは無粋だから聞かないが。

 それに私は、こうして私を呼び出したキミの力を高く評価している。だから誇っていいよ春樹後輩。わかっている、誰にも言わないとも。何回も言うが私はキミを気に入っているからね」

 

 そして「相談はもう終わりだろ」とまた先読みして、オレだけを残して沙希先輩は去っていた。

 

 なぜあの人がBクラスなのかという疑問をオレの中に残して。

 

 

 ◇  ◇  ◇

 

 

 混合合宿も3日目。

 最初は慣れなかった豊かな自然の中で実施される授業も徐々に順応し始めたオレは、今日も松下千秋、佐藤麻耶の二人と一緒に雑談しながらの朝食を楽しんでいる。

 

 連日の松下の話を聞く限り、上級生達の動きは想定した中でもだいぶ良い流れで動いていそうだ。

 詳細までは聞いてないが、3年Bクラス連中も聞く限りでは至って真面目とのことだった。

 

 猪狩先輩の動向は謎だがな。

 

 手段を封じられ道連れする相手もいなくなった猪狩先輩の動きだけは気がかりだったが、そこは堀北先輩に聞いてみてもいいかもな。

 

 少なくとも姫さま(橘書記)は退学しない。

 そう断言できるほどには順調だった。

 

「山内くん、あたし半跏趺坐しか出来ないかも……」

 試験の話になり麻耶は苦い表情で嘆いていた。

 

 禅を組む時に両足をももの上に置いて組む結跏趺坐を行うのが基本と説明されたがなかなかハードルが高い。

 そういった場合は片足だけで組む半跏趺坐で良いとのことだが点数に影響はでるらしい。

 

 しかし山内はそれを苦にせず最初から両足で組むことができた。

 正直、山内が初めて役立ったような気さえした。山内すごいなお前。

 

「実はオレは苦にならなかったんだが……周りも結構苦労しているみたいだからな。

 無理だけはしないで、徐々に慣れてこうな麻耶」

 

「う、うん。ありがとねっ春樹くん! 頑張る!」

 

 2人の近況も聞き終えてオレよりも早くから朝食を開始していた麻耶たちは一足先に戻ることとなった。

 

 そしてその数分後、一人で朝食を摂っていたオレの前に珍しい人がやって来る。

 

「山内さんお久しぶりですね。どうですかAクラスのグループでの生活は」

「ああ、想像以上にみんなに良くしてもらってるよ 坂柳さん」

 

『坂柳有栖』である。

 

 座席の埋まりがまばらな中で、あえてオレの向かいに座ったということは何か話でもあるのだろうか。

 お付きの人神室さんがいるかと思ったが今日もいないのな。

 

「それは安心しました。ところで山内さんは私たちAクラスの小グループに自ら立候補されたそうですね」

「ああ。それはそうだけど?」

 

 多数がAクラス男子で占める小グループの中、唯一別クラスだから邪魔にならないか探りにでも来たのか? 

 

「でしたら山内さんは考えませんでしたか? 

 もし我々Aクラスが手を抜いて意図的に最下位を獲得し『連帯責任によってあなたを退学させる』なんてことを」

 

 坂柳を見ると紫色の瞳を輝かせ、なんとも愉快そうに笑いながら、新しいおもちゃでも見つけた表情をしている。

 

 コイツ本当にやる気なのか? 

 確率としては非常に低いと思っている。しかしゼロでもない。

 オレはそう考える。

 

 もし本当に実行されると、入手予定の1000万ptをここで使わないといけなくなるが……。

 

「組んだ時は可能性もあったけど、責任者が優秀な先輩グループを選んでたからな。

 正直可能性は低いと思ってるよ。まさかそのつもりなの?」

 

 オレがそう答えると坂柳はにこりと微笑む

 

「いえ山内さん。選択肢の1つですが、今回、私にはそのつもりはありません。

 実行しないと約束いたしますよ。

 しかし不思議ですね。実際に話してみるまで確信が持てませんでしたが、あなたは意外と周りをよく観察している」

 

 褒めているのか貶しているのかよくわからない表現だった。

 

「坂柳さんと山内くんー! おはよーっ」

 

 大きな声がしたと思ったら側で立っていた一之瀬帆波がこちらの話を聞いていたようだ。

 隣には椎名ひよりもいる。2人は一緒の小グループだしな。朝が一緒でも不思議ではない。

 

 そのままの流れで一之瀬は坂柳の隣に、オレの隣にひよりが座った。

 

 なんだこれ。なんで主要メンバーがここに集まってきてるの!? 

 

「おはようございます。山内くん」

「おはよう『ひよりさん』。今日も元気そ……眠そうだな」

 

 ひよりはすごい眠そうな顔をしていた。

 朝は苦手なのかもしれないな。

 

「昨日、読んでいた本のやめ時が分からず、少しだけ夜更かしを。

 それにしても坂柳さん、何か聞き捨てならない会話が先程聞こえましたが。山内くんを退学に陥れるとはどういうことでしょうか」

 

 脳が働き出したのか、

 後半の椎名は歯切れよく、坂柳に先程の発言の真意を問いただす。

 

「ええ、椎名ひよりさん。グループ決め以来ですかね。

 実行は致しませんがそういった強硬策に出る可能性についてのお話を少し」

 

「山内くんを驚異に感じるのは多少なりとも理解はできます。しかしその手段としてはとてもお粗末で『邪道』ですね。きっと『王道』を歩めないから、そのような考えをするのでしょう」

 

 と温かいコーンスープを一口飲んだ後、冷たく坂柳をあしらうひより。

 

 ひよりよ……。

 もしかしてお前に怖いものなんて無いのか。

 

 あとその言葉、

 地味に南雲パイセンにもダメージを与えるからやめてくれ。

 南雲パイセンいないよな……。

 

 オレがひよりを諌めようとするが、その前に坂柳が苛立った表情で言葉を返す。

 

「ふふっ椎名さん。どうやらあなたは山内さんを高く評価しているようですが、彼にそこまでの価値はありませんよ」

 

 それはそうだとも。坂柳さん、あなたが正しい。

 オレは全力で頷いていた。そしてもう止まってくれとただただ祈る。

 

「それは坂柳さんが何も知らないだけです。まあ、あなたは何も頼られてないのだから仕方がないのでしょう。私や一之瀬さんとは違って」

 と意味深な様子で勝ち誇った表情をするひより。

 

 おい誰かー! 誰かいないか! 

 椎名ひよりを止めてくれー。でないとオレ退学するかもしれん! 

 

「いや私も山内くんに頼まれ事なんてされてないけどね。

 にゃはは。それにしても山内くん、キミって何者なのかな。やっぱり只者じゃなさそう!」

 と一之瀬までじーっと大きくつぶらな瞳でオレを凝視する。

 本当に勘弁してくれ。

 

 そんなタイミングで「まぁ冗談なのですがね」とひよりが悪戯に笑うと、

「そうだろうと思いました。正面の山内さんの焦る顔、中々に面白いものでしたよ」

 穏やかに微笑む坂柳。

 

 なんだ冗談かよ。クラスの軍師二人でビックリさせないでくれよ。

 オレがほっと一息ついて、一之瀬の仲裁もあり穏やかな朝食に戻った──かと思われた。

 

「ちなみにその策を実行しても、私が全力で防がせていただきますけどね」

「それは面白いですね」

 

 そして再び味がしなくなった朝食を終えたオレは、

『本当に止めてね』と坂柳にお願いをしてその場から逃げるように立ち去るのだった。




3年生のキャラクターが少ないのでオリキャラでカバーする方針に。
もしかしたらこんな強キャラっぽい人も裏にいたかもしれないと妄想する。
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