山内くんに転生したのでBADEND回避を目指します!   作:あまざらし

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【1年生】クラス内投票試験前

 混合合宿が終了し、一段落したのも束の間。

 

 オレたちCクラスにまた一つ異変が起きる。

 洋介と軽井沢が別れたというニュース。

 

 Cクラスのビッグカップルの破局ということもあり、放課後のクラスの話題はこれ一色だ。

 

「やっぱりね私も洋介くんに頼りっぱなしじゃ駄目だって思ったのよ」

 と軽井沢は周りの女子たちに話しているが、オレや綾小路くんには通用しない。

 ダウト。元々付き合ってないぞ2人は。

 

 そういえば原作だと山内って、洋介をひたすら茶化してたよな。

 綾小路くんが仕掛けるCクラスの掲示板の噂話も、いちいち突っかかって好感度を下げるというバカなことする。

 それが山内クオリティ。

 

 一方でオレは静観することにした。

 試験も近いし勉強しよう。

 

「山内春樹さんはいらっしゃいますか?」

 透き通る女子生徒の声が聞こえてきた。

 聞き覚えのある声だ。あとこの展開も記憶にあるわ。

 

 声がする方へ目を向けると、『坂柳有栖』がいた。

 坂柳が山内に接触する時期ってここだったか。

 

 いや、待てよ。

 でもオレ混合合宿で別に坂柳を押し倒したりしてないよな。

 

 原作では混合合宿中に坂柳を押し倒してしまい、大して謝りもせず立ち去った山内。

 それがキッカケとなり山内は坂柳に目を付けられ退学するというストーリーだったはず。

 

 確かに混合合宿で坂柳とも会話はしたが、ヒートアップしていたのは『ひより』の方だろ。

 オレじゃない。

 

 しかしクラスメイトの視線がオレ1点に向いている状況の中で無視するわけにもいかないか。

 

「こんにちは坂柳さん、どんなご用でしょうか?」

 至って冷静に対処しよう。

 

「あの──ここでは少し話せないので別の場所で良いでしょうか」

 坂柳の声のトーンが少し高くなる。全て計算された動きだと分かっていても可愛いものはかわいい。

 

「よくない!」麻耶が間に割って入る。

 やめたほうがいいぞ麻耶。坂柳に目を付けられたら下手したら退学になるから。

 

「あら、あなたは佐藤麻耶さんですね。勿論存じ上げてますよ。

 しかし私と山内くんの『2人だけ』の話なので。すみませんがお引取り願いますね」

 

 そんな挑発的な態度で麻耶をあしらう坂柳。

 坂柳くらいになると全生徒把握しているんだろうな……。

 これはさっさと坂柳を連れて教室出たほうがいいな。

 

 そう思い、麻耶に近づきひそひそ話をする。

 

(麻耶、多分だけど坂柳の話、恋愛相談だと思うんだ。オレたまたま坂柳が気にしている男子を知ってな。だからその相談だと思う)

(えっ……そうなの? でも相談だったらAクラスの子の方がいいんじゃない?)

 まだ怪しんだ表情をする麻耶。

 鋭い指摘だった。

 

(ただその男子──実はこのクラスなんだよ)

 

「えっ!?」麻耶が思わず驚きの声を出す。

(えっと……このことは内密にな。あんまり広めたくないらしいんだ)

(う、うん)

 

 嘘は言っていない。オレは、坂柳が綾小路くんのことを気にしている事を『知っている』のだから。

 しかし今回の相談がその件でないのは確実だろうがな。

 

「てなわけでクラスのマイナスになるようなことは拒否するから安心しろ。行ってくる」

 

 そういって坂柳と教室を出る。

 坂柳のペースに合わせてゆっくり歩くこと。それが大切だ。

 

 なんてことはない。今も、オレは坂柳が苦手なのだった。

 

 

 ◇  ◇  ◇

 

 

 話し合う場所を探す坂柳。

 だがオレと坂柳の関係を調べたいCクラスの野次馬たちがストーキングしている。

 

 最終的に少し高級な飲食店の個室に入って話すことになった。

 

「時間を作っていただきありがとうございますね。

 山内さん。それにしてもクラスで人気があるようですね」

 

 ストーカー撒くのが大変だったと言いたいわけですよね。

 

「そのすみません。お茶くらいだったら奢りますんでどうかご容赦を」

「いえお気遣いなく。では早速始めましょうか。本日は他ならぬ山内さんあなたにお願いしたいことがありまして」

 そう言うと上品に紅茶を飲む坂柳。絵になるやつである。

 敵じゃなければ好きになりそうだった。

 

「具体的にはどのようなお願いなのでしょうか?」

「一之瀬帆波さんはご存知ですよね」

「ええ、それは彼女は有名人ですから」

「では彼女に今流れている噂話はご存知ですか?」

 

 一之瀬帆波の犯罪者事件か。

 確か今はいくつかの誹謗中傷を軽くクラスで聞くくらいだった。

 

「軽く誹謗中傷な噂を耳にするくらいだな」

「ほう誹謗中傷ですか。ですが真実かもしれませんよ」

 

 そうやってオレを試す姿は実に坂柳らしい。

 

「まぁそうだな。オレが聞いた話は嘘に聞こえたが全部は知らないからな。実は運動が『得意でない』とかだったら真実だな」

「ふふっ。それは可愛いらしい一之瀬さんの真実ですね。まぁいいでしょう山内さん。あなたにお願いするのは一之瀬さんに関してです」

 

「全然話が見えてこないけど、オレはそこまで一之瀬さんと親しくないよ?」

「当然把握しておりますよ。ですからその噂を流す犯人を見つけろという依頼ではありません」

 だって犯人あなたですもんね。オレは笑いを堪えるのにちょっと苦労した。

 

「では何でしょう?」

「何もしないでいただきたいのです。山内さん」

「はぁ」

 気のない返事をしてしまう。しかし不思議なお願いである。

 なぜなら一之瀬帆波とほぼ接点のないオレは、犯人探しをするとは思えないからだ。

 

「そういうのはBクラスの生徒に言うべきなのでは?」

「いえ、お願いすべきなのは山内さんです。

『椎名ひより』さんとご友人のあなたにお願いしているのです。

 山内さんは彼女にお願いされたらきっと断らない。違いますか?」

「そういうことか」

 

 初めて坂柳の言いたいことが見えてきた気がする。

 前回の混合合宿でひよりと一之瀬は仲良くなっている。

 だから一之瀬がつらい状況にあったらそれを打破しようとするはずだ。

 そこでオレに依頼を出すか。可能性はあるな。

 

「いかがでしょうか山内さん。このお願いを聞いていただけたら相応のお礼は致します」

「でも不思議ですね。どうしてそこまでオレの介入を防ぎたいんでしょう。この件オレが解決できるとも思わないですよ」

 

「謙遜は美徳とはいいますが山内さん。

 あなたはもう頭の中で解決策を考えているのではありませんか。それを是非、実行に移さないでいただきたいのです」

 

 なんだっけ坂柳ってコールド・リーディングとやらで相手の思考読めるんだっけ。

 怖っ。流石に原作知識で解決策知ってるまでは読めないだろうけど。

 

「そ、そんなことありませんよ」

 オレは曖昧に誤魔化した。

 

「でも坂柳さんからの依頼を受けるのはちょっとな」

「それはどうしてでしょうか」

 

「いやだってあなたが犯人でしょ。共犯者になっちゃいますよ」

「ふふっ山内さんは私が犯人だとおっしゃるんですか。証拠もないのに」

「証拠は出てこないでしょうね。だから──いやなんでもありません。今の話は忘れて下さい」

 

 どうせ相手は自白しないのだ。お願いの件を考えるべきだろう。

 結論から言えば『受けるべき』だよな。

 一之瀬には悪いが、受けようが受けまいがこの件は綾小路くんが解決するわけだ。原作からズレてないし。

 

「お礼というのは具体的には?」

 

「そちらの要望に沿ったものにしたいと思います……なにかご希望はありますか? 

 例えば──Aクラスに移動したいとか」

 オレは驚く。報酬がでかすぎる。

 なんでそこまでオレに邪魔されたくないの? 

 オレに対する謎の高評価に警戒する。

 

「そう警戒されないでください。これは必要なことなので報酬は弾みますよ」

「じゃあ一ついいかな」

 

 その後オレは報酬の件は保留にして貸し1つにするようにお願いした。

 もし今後、オレに困ったことがあったら坂柳は助けるという取り決めである。

 

 1000万ptを集め終えた今、少なくとも2年生になるまでは坂柳はオレを退学に出来ないはずだ。

 だからその後、イレギュラーな出来事に巻き込まれたら助けてもらおう。

 

 坂柳の承諾も得られた。

 きちんと接してみたら意外と坂柳の印象は悪くなく、次第に恐怖は薄れていった。

 

 山内の天敵と2人きりで会話した後のオレの感想は、そんな呑気なものだった。

 

「そういえば今日の話、麻耶──佐藤麻耶には、坂柳さんがCクラスに気になってる人がいるという恋愛相談ってことになってまして。もし追求されたら話を合わせていただけたら。これお返しになりませんよね」

 

「なるほど承知致しました。その程度なら問題ありません。

 それにしても山内さん。あなたのその発言、知っていての誤魔化しなら、やはり『油断なりませんね』」

 オレを深く探るように見つめる坂柳。

 ごめん、やっぱ怖いわ。坂柳。

 

 その時、如何に動こうともオレは坂柳に振り回される予感がした。

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