山内くんに転生したのでBADEND回避を目指します! 作:あまざらし
追加特別試験が発表された放課後。
寮へ帰る途中、オレはある人物に呼び止められる。
『南雲雅』だった。
「おい山内。山内春樹で合ってるよなお前?」
「はい、そうですが南雲生徒会長ですよね。一体何のご用でしょうか?」
そういって呼び止めた南雲パイセンはオレにある提案をした。
堀北先輩との件かと思ったが、全くの別件のようだ。
ある意味関連はしているのだが。
「えっ、この件はもうある程度進んでますよ? それに生徒会が入るとなると、規模も大きくなるのでは?」
「勿論それについては生徒会が全力でサポートするさ」
「ちなみにこの件、なぜ先輩がご存知なのでしょう?」
「ああ一之瀬から聞いたからだ」
なるほどそういうことか。一之瀬にも手伝ってもらってるからな。
「そうですね。でも流石に別々にした方が……」
オレが謹んでお断りしようとしていると、
南雲パイセンはニヤリと何か悪巧みする表情でオレに交渉する。
「今──ポイント必要なんだろ?」
「……それはそうですが」
南雲パイセンは、オレにひっそりとある提案を耳打ちする。
「それって即日頂けるんです?」
オレは悪くない条件だと思い質問した。
「ああ、今この場でもいいぜ」
「ならわかりました。勿論信頼してますが生徒会もちゃんと協力してくださいね。でないと人も金も足りなくて破産しちゃいますから」
「当然だろ。オレが絡むんだから大成功させてやるよ。
じゃあお前ら1年が落ち着いた後から、ちょくちょく動くからそのつもりでな。ちゃんと生徒会に足運べよ」
そう言ってもう用は済んだとばかりに、南雲パイセンは去っていった。
ああ、オレは悪魔に魂売ったのだろうか。
ただ『あの件』ならさほど問題にもならないだろう。
そう結論づける。
◇ ◇ ◇
追加特別試験二日目
放課後になり俺は、茶柱先生に案内された教員室の応接室で待機している。
出されたお茶を飲んでいると、人影が2人見え、それほど待たず扉が開かれる。
入ってきたのは茶柱先生と月城代理だった。
立ち上がり挨拶しようとすると、月城代理に「座ったままでよろしい」と言われたオレは再び座り直す。
なぜ月城代理がいるのか。オレの当然の疑問に茶柱先生が答えた。
「今回の追加特別試験でお前との契約した内容を無効にした件について、月城理事長から直接ご説明したいとのことだ。黙って聞いていろ」
と茶柱先生が圧をかけてくるのでオレは素直に聞くことにした。
「さて、山内春樹くんだったね。
それにしてもこの契約書はよく出来ていますね。まるで今回の試験のために作られたようです。
茶柱先生が言うには占い師の言葉を信じたとのことだが本当かね?」
「はい、契約書を作るだけならタダなので茶柱先生に相談した上で作成いたしました」
勿論嘘であるが、そんなこともあるだろう。
誤魔化せる範囲である。
「ふむ。私も風水を嗜むことはあるが、占いというのもバカにならないものだね」
そう言って月城代理は笑いながら説明を続ける。
「山内くん。今回キミは全く悪くないんだよ。
しかしこの書類があることで、キミのクラスは相当有利な試験になってしまうことは理解しているね。なぜなら他のクラスの半分のポイントで試験をクリアできてしまうのだから。
そのため今回だけはキミを試験参加者から”除外”させてもらった。キミとしても退学を確実に回避できるんだ。それは嬉しいことだろ?」
ゆっくりとした口調の月城代理は、穏やかながら威圧しているようにも思えた。
「ご説明ありがとうございます月城理事長。
確かに私が退学にならないという点についてはとても安心感があります。
しかし1年間共に学んできたクラスメイトが去るという試験です。それを黙って見守るだけというのはとても辛いこと。それに私だけ除外されることでクラスメイトからの、周囲の目も気になります」
ふむ……と顎に手を当てる月城代理。
「では何かね。キミもこの試験に参加したいというのかね?」
「参加可能なのですか? この契約書を有効にした上で」
「それは出来ない相談だ。重ねて謝るが、それは出来ない。だがこれを破棄するなら考えよう」
そういって月城代理はオレを見つめる。
「月城理事長。その──この契約をタダで破棄するというのはとても横暴に感じます。いくらかポイントを頂けませんか?」
オレは恐らく月城代理がこの契約書をもみ消した時点で、そのままの参加は無理だと予測していた。
ならいくらかポイントを奪う。最初からそのつもりだった。
月城代理の目が鋭くなる。
「いくら欲しいのかね?」
「500万ptはいかがでしょうか」
「流石に高すぎる。そうですね退学取り消しに必要なポイントの10%、200万ptならよかろう」
200万か……うーんどうなんだ。1250。あと750万必要間に合うのか?
「恥を忍んで言いますがもう一声お願いできないでしょうか。
占いと言えども、事前にこの契約を結んだのはクラスの実力とも取れます。それを先生方のご都合で捻じ曲げているのです。その点を考慮した上で。もう一声だけ」
「わかった……。では300万渡そう。
それ以上は譲歩できない。この契約も今月末までですよね。相当良い条件だと思いますがね」
「……わかりました。では300万ptでお願い致します」
そうしてオレは茶柱先生との契約を破棄した上で、その場で300万ptを入手する。
手元の残高は483万ptと表示されている。
「180万pt集めるだけでも大したものだと思うよ山内くん。
それではクラスで協力して頑張ってきなさい。もしかしたら誰も退学にならずに済むかもしれないのだから」
そういって月城代理は1人その場から消えた。
まるでオレたちが2000万ptを集めるのは不可能だと即断したような表情だった。
Bクラスですら1600万pt集めるのが限界だったのだ。
300万pt渡す程度ならクリア不可能だと月城代理は判断したに違いない。
オレは念のためポイントを堀北学に預けたままにして、やはり正解だったと安堵していた。
「契約を破棄してすまないな山内。ところで何か策はあるのか。それともこれは次の試験に向けてのポイントか?」
「まだなんとも……そうだサエちゃん先生。悪いと思っているなら一つお願い聞いてもらってもいいですか? そんな難しいことではないので」
そういってオレは茶柱先生にあるお願いをする。
「──その程度なら問題ない。話を合わせよう。もしかして山内、もうお前は……」
「先生、そんな期待しないで下さいよ。オレも急ぎの予定があるので退室します。お先に失礼しますね」
そう言ってオレもこの場から消えた。
向かうは堀北学。彼から早急にポイントを受け取る必要がありそうだ。
オレは堀北先輩と秘密裏に合う約束を早急に取り付けた。