山内くんに転生したのでBADEND回避を目指します!   作:あまざらし

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【1年生】クラス内投票試験編 その4

 教室を出てから通話を試みて失敗した後、松下からメッセージが届く。

 

『20時に公園の広場で』

 

 約束の時間、目的地に近づくと既に待っていた松下の姿が見える。

 3月に入ったばかりで夜はまだ肌寒い。松下もまだコートを羽織っている。

 

「こうやって話すのは久々だな松下」

 

 思えば混合合宿が終わったことでオレのミッションが終わり、密に松下とやり取りすることは極端に減っていた。

 ポイント獲得に向けて、2人で議論するように会話していたのはどこか懐かしい思い出だ。

 

「そうかもね山内くん。先に断っておくけど、私の行動は間違ってないからね。

 今ならまだ取り消せるのだから。あなたには少し冷静になってもらおうと思ってね」

 そう言って松下はこちらを突き刺すような目で見つめる。

 

「冷静ってどういうことだよ」

「ポイントの使い道。あなたはクラス全員を助ける救世主願望に溢れているようだけど本当にそれが最善なの?」

 

 松下の提案は多少頭が回るものなら誰もが一度は考えることかもしれない。

 Cクラスの中でクラスに貢献出来ないものを切る。そしてプライベートポイントを残すという案だ。

 

「今までは大方あなたが予想した通りに動いていた。

 だから私も強く反対することはなかった。でも今回のテストだけは違う。

 追加特別試験であなただけを除外するなんて想定していなかったんでしょ。

 私にも事前に話さなかったし、初日のあなたの態度を見たら分かるもの。

 そもそも2000万ptを貯めるっていう話だけど、それが無理だから茶柱先生と契約したはずでしょ違う?」

 

「確かに想定外だったよ。クラスの力を頼るのは全くの想定外だ──」

 

 松下が遮るように問いつめる。

「それで届いたの? クラスメイトの力を使って2000万ptに?」

「……まだ届いてない。現状は1800万程度だ」

「あなたが1500万ptも自力でひねり出したのに、他の生徒は合わせて300万そこらしかない。言い方は悪いけど切るべき人間はいるんじゃない?」

 

 松下は何を求めているのだろうか。

「1500万ptは松下のおかげでもあるからな。オレだけの力じゃない」

「そういう茶化しは不要だって……全く調子狂うわね」

「松下が本当に言いたいことはなんなんだ?」

 

 松下は誰かを退学にさせるために、今更こんな回りくどいことをする人では無いと思っている。

 曲がりなりにも長い付き合いの中で彼女の性格は理解しているつもりだった。

 

 賢い松下なら無意味な行動をしない。だからオレは彼女の本心を知りたかった。

 

「はぁ折角あなたのために諭してあげたのに。このままじゃ私が悪者になるじゃない」

「そんなことないって。お前はいつもオレよりも正しい。だからなんでポイントを支払わないんだよ教えてくれ」

「改めて確認するけど、退学するつもりは無いってことね」

「ああ」

 

 強張った表情を少しだけ崩した松下は考えていたことを口にする。

「あの依頼方法ならクラスの力を加えてもまだ『ポイントが足りない』そう思っただけ」

 オレは頷く。実際に足りてないからな。

 

「もしこれがあなたの短慮な行動だったなら、私が最後まであの提案を拒否する。

 あの契約はクラス全員の同意、つまりポイント受け渡しが必要と明記されていた。

 なら私が最後まで拒否すれば、最終的にポイントは返却され契約も無かったことになる。

 当日あなたに批判票は間違いなく集まらない。他の誰か一人が消えるでしょうね」

「そうなると松下も危うい立場になりうるぞ」

 

 松下は「そんなことにはならない」と首を振る。

 

「この行動は別に感情に任せたわけではないから。

『2000万ptに届かない』

 もしそうなったら皆も山内くんを残すメリットくらいは理解できるでしょ。個人で1500万ptを貯めた人なんて他に誰もいないのだから。別の投票法について議論せざるをえない」

 

「なるほどな──ありがとう。松下はオレのためにストッパーになってくれたってことか」

 

 説明を聞くとすんなりとオレは納得できた。

 今回は松下に動いてもらうことも無かったので、特に連携していなかったから。

 それにポイントを入手できる見込みは高いが、今までとは異なり月城代理の介入で強引に動いていた面もあった。

 もし2000万ptに届かなかった時のために、ポイントを払わなかった松下の行動を感謝すべきだろう。

 

 図星でもあるのか少し照れた表情を見せる松下は少し話を切り替えた。

「で、誰から残りのポイントを貰うつもり? 言っておくけど納得できるものじゃないと承認しないからね」

「ああ『坂柳』だ。アイツには1つ貸しがある。いや……」

 

 

 洋介からメッセージが届く。

『あれから堀北さんたちの協力で合計『150万pt』調達できたんだ。

 それも返す必要の無いポイントだよ。

 もう少しで届く。明日クラスの皆に再度協力を仰げばきっと届くと思うんだ。

 明日また頑張ろう! 改めてありがとう春樹くん。本当にありがとう』

 

 裏で綾小路くん(主人公)が動いたな。おそらくだけど。

 

 オレはどこか嬉しかった。

 綾小路くんが動いてくれたのは、自分がクラスで必要と認められたような気がしたから。

 

「残りはたった50万ptでいい。坂柳に頼らなくてもクリア出来そうだ」

 オレは洋介のメッセージを見せる。

 

「そう……なら目標達成ね、おめでとう山内くん。分かっているでしょうけど二年生になったら協力する。忘れてないよね」

「ありがとう。覚えてるよ、Aクラスの件だろ協力するさ」

 

 オレの言葉に満足したのか、松下はこちらを向いて少しだけオレに近づき歩みを止める。

 

 松下は表情を和らげ、

 

「私、あなたの事『好きよ』山内くん」

 

 突然の告白をした。

 

「えっ……ちょっ」

 オレが言葉に詰まると、松下はいたずらっぽく笑う。

 

「──なんてね冗談よ。少しは驚いた? それじゃ約束を忘れないでね山内くん。4月からもよろしくね」

 

 松下はそのまま振り返り、月明かりに照らされた広場から離れていった。

 

 

 ◇  ◇  ◇

 

 

 そしてオレたちは試験当日を迎える。

 

 結論から言えば、残りの約50万ptは櫛田が全額提供を名乗り出てくれた。

 その時のクラスの熱狂ぶりは凄くて、次の月にポイントが入ったら希望者は櫛田へ5000ptをカンパするらしい。

 これが人望の差ってやつだろうな。オレの貢献はもう忘却の彼方へ追いやられていそうだった。

 

 全部美味しいところ持っていきやがった。櫛田め……。

 ただ表は本当に可愛いから困るぜ。

 

 さてそんなわけで運命の試験結果発表である。

 

「ではまず称賛票の上位3名の発表から行う。

 3位は──平田洋介

 ついで2位は──櫛田桔梗

 1位は──綾小路清隆。おまえだ」

 

 やっぱりそういう結果になるか。

 今回は堀北先生による調整で投票先を完全にコントロールしたため、称賛票の順位は他クラスに依存する結果となる。

 Aクラスのほぼ全ての票が綾小路くんに流れたはずだから当然の結果だろう。

 

 称賛票の結果にクラスみんなが驚愕していて少しざわついている。

 確かに驚かないのはオレと松下だけもしれない。オレも周りに合わせよう。

 

「そして批判票の1位は37票を獲得した生徒。残念ながらお前だ、山内春樹」

「はい」

「お前は2000万ptを所持しているか。あるなら退学を取り消すことができる」

「はいサエちゃん先生。取り消しお願いします」

 

 少し疑うような素振りで茶柱先生はオレを見る。その後流れるように端末のポイントを確認する。

「確かに受け取った。これでお前の退学は無しだ。良かったな山内」

 

 そして直後、オレは歓喜の渦に包まれる。

 

 こうして追加特別試験はオレの退学を取り消して終了となった。

 

 

 ◇  ◇  ◇

 

 

 追加特別試験が終わりクラス中が一息ついたところで、クラスの皆はなぜオレが『1500万pt』ものポイントを抱えていたのか気にしていた。

 

 因みに本当の内訳はこうだ。

 

 ポイント内訳(本来)

 堀北学:  1100万

 月城代理: 300万

 南雲雅:  50万

 手持ち:  33万

 合計:   1483万pt

 

 しかしこれだと堀北学経由が多すぎる。

 オレは南雲パイセンにこの内訳がバレることを危惧した。

 

 そこでオレは『嘘を含めて』クラスに簡単に経緯を説明する。

 

 ・半年前に占い師から、今月の山内は退学の恐れがありと占われた。

 ・期限付きでポイントを事前に支払うことで、本来のポイントよりも安く退学取り消しできる契約を茶柱先生と結んだ。

 ・契約時に事前支払いに必要なポイントは『200万pt』だった。

 ・契約を破棄することで教員から『1000万pt以上』を受け取った。

 

 事前支払いに必要なポイントは本来なら1000万ptだ。

 しかし具体的な交渉金額は表に出ていない。

 表に出さないように茶柱先生にお願いしているから。

 

 事前支払いが安いポイントだったと嘘をつくことで、契約破棄による1000万pt以上という破格なポイントも少しは妥当になる。

 

 更に今回の件をキッカケに同様の契約は月城代理により禁止されたらしい。ならば今後交渉をする人物も暫く現れないだろう。

 

「でも200万ptって安くないか?」という質問はクラスメイトから当然受けた。

 オレは「3月という一ヶ月間だけの契約だったので安くなった」と説明し納得させる。

 もちろん本当は半年の契約だったので嘘である。

 

 そうしてつつがなく説明も終了し、オレはクラスの危機を運と機転で見事防いだと称賛されたのだった。

 

 

 補足すると実は松下を除き、クラスでもう1人だけ詳細を知っている人物がいる。

 

『堀北鈴音』だ。

 

 彼女だけには投票の前日に本当の内訳と契約内容を説明していた。

 兄の手伝いをして大量ポイントを貰ったと。

 

 というのも堀北先輩が妹には今回の試験中にオレの協力について軽く言及していたようで、既にバレていたからだ。

 

『兄さんはあなたに頼りすぎるなと言ってたわ。どういうことかしら』

 彼はなんとも曖昧で困る言葉を残していった。




ポイント全内訳
堀北学:  1100万
月城代理: 300万
南雲雅:  50万
手持ち:  30万
櫛田桔梗: 50万
平田、堀北:150万
(綾小路くん)
クラス:  320万
合計:   2000万pt


明日、1年生編の最終話予定です。
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