山内くんに転生したのでBADEND回避を目指します!   作:あまざらし

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【1年生】春休みのある日 その3

「そういえば主。近々端末の大幅なアップデートが入りそうでござる」

 

 春休みになって数日経ち。

 オレの部屋に博士と松下が集合して今後について軽く相談する中。ノートPCを凝視している博士が未来予知のような切り出しをしてきた。

「博士、それはどういうことだ?」

「昨夜、一瞬だけ学内ページ上に端末のアップデートに関する情報が確認されたでござる。たしか『OAA』という名で、拙者も偶然拾っただけなので詳しくは追ってないでござるが……今はページも削除されている故」

 

(学校、やらかしたな……)

 『OAA』は俺たちが二年生に進級すると同時に配布されるアプリの名称だ。

 そのアプリの機能はこの学校に通う生徒一人一人の評価を総合的に判断し、全生徒に公開するというもの。

 ちなみに南雲パイセン肝いりのアプリだったはずだ。

 特にこの件はパイセンから説明を受けてないが。ま、裏で色々とやっているのだろう。

 

「へー、どういったアップデートかはわかるか?」

 何も知らない風を装いオレは質問を続ける。

 

「興味がなかったので詳しく確認しておらず。主が知りたいなら今から調査するでござるが?」

「いや安易に探索して、痛い目に遭うのは避けたいしやめておこう」

 だってもう中身知ってるし……。

 

「一度は公開されてたんでしょ? 次の特別試験に関することかも知れないし、他クラスより先んじて情報を得られるのなら調査するのも有りじゃない? それにもう他の誰かが掴んでるかもしれないし」

 松下のとても真っ当なアドバイスである。

 さて、どうしようか。調査することで南雲パイセンに露呈して、オレや博士が狙い撃ちされる危険性。何よりオレはそれを嫌った。

 バレないなら調査でもいいけど……。

 

「博士、誰か掴んでると思うか?」

「どうでござろうか……。

 ほぼ関係者以外は分からぬと思うでござるが。深夜0時頃に1分ほどサイトツリーに妙な更新があって拙者は知った故。更新はすぐ元に戻り、暫くしてページも削除されていたという経緯でござる」

「なるほどな。博士が凄すぎただけってことか。その博士ですら内容を確認してないなら深追いはやめとくでいいと思うぞ」

 

 松下にアイコンタクトする。

 知ってるから大丈夫だとオレは軽く頷いた。

 

「そっ、まあ山内くんがそう言うなら無理することないのかもね」

 松下もオレの意図を察してくれたみたいだ。すぐ話を合わせてくれる。

 どうせ後で追求されるだろうし、松下には説明しとくか。

 

 この場で南雲パイセンから直接『OAA』の説明を受けたと嘘の説明しても大きな問題にはならないはずだ。

 でも来月にはどうせみんなが知る情報に嘘ついてもな。原作知識を披露するリスクに見合う価値があるとは思えなかった。

 

 原作知識を公開しないで、博士に調査してもらった場合。

 きっと博士ならOAAの事前インストールくらいはやってのけるだろう。ただそれがきっかけで『山内はOAAを知ってるらしい』とか南雲パイセンに伝わったら面倒だしな。

 

 そういえばパイセンと言えば……。

 

「ところで博士。蒸し返すようで悪いが合宿前にやってた南雲先輩の位置情報の割り出しって大丈夫だったのか? バレたら不味いだろ?」

 

 当時は橘先輩を救うため必死だったから深追いしなかったが。

 あの行動がバレて、博士が退学処分になってしまったら困るからな。

 

「多少裏技を使ったでござるが。諸悪のIDを無断で拝借したくらいでそれ以外は問題無く。確か……あった。こちらを見るでござる」

 

 ノートPCに表示されていたのは、学校の技術情報? に関することのようだった。『アプリ開発者向けフレンドIDを用いたマップ表示について』という学内専用アプリの開発者向け資料のようだ。

 そこまでITの知識に明るくないオレの様子を見てか、博士は説明を続ける。

 

「このページは配布端末にインストールされたアプリに関する技術仕様でござる。ふむ。

 例えば『主』が『拙者』や『松下殿』の場所を知りたい場合はどうするでござる?」

 

 その機能を使ったことがある者なら簡単な質問だ。

 オレは悩まずに回答する。

「それはこのアプリの『フレンド一覧』から博士や松下を選択して、位置を確認するな」

 博士はその回答に満足したようで、流石でござると説明を続ける。

 

「拙者のやったことも大凡同じこと。要は『位置を確認するため』にアプリの画面をタップするか、法則に従ったコマンドを実行するか。その違いだけでござる。

 そういった技術仕様がまとまっているのがこのページで、学内ネットワークなら誰でも閲覧可能で規約を見る限り大きな制限もなし。だから拙者の実施したことも恐らく違反ではないと……似た『輩』の集まるヲタクなチャットで話に出たでござる」

 

 オレは右隣の松下を見る。

 松下も驚いた表情のまま、無言で首を何度も横に振った。

 知っているのは博士だけか。

 

 驚いたな……。博士の説明を信じるなら。

 つまり学校はこれを『あえて』公開しているということだ。

 学校はこういった技術を利用して特別試験に取り組んでも構わないというスタンスなのだろうか。まるで朝飯前のように話す博士をただただ尊敬しながらオレは頭を働かせる。

 

 確かに昨今、国内のソフトウェア産業は明るいとはいい難い。だからこそ、こういった人材育成は急務なのだろう。

 政府主導の高校ならこういった情報技術に強い人材に有利に働く、そんな仕掛けが『こっそり』散りばめられてもおかしくないってことか。

 

 更に言うなら。

 そう。

 ソフトウェアに詳しい生徒を上手に活躍させることが出来る人材(リーダー)もな……。

 

 南雲パイセンや堀北先輩は知っていたのだろうか。

 原作の範囲だとわからない。

 デジタル化に力を入れていた南雲パイセンは有能な人材を見つけては囲っていても不思議ではないし、堀北先輩だって元生徒会長として知っていた可能性も否定できない。

 

 綾小路くんはどうだろうか。

 こういった技術を利用している描写はなかった。だが当然、専門知識はホワイトルームで一通りインプットされているだろう。

 

 学校での生活は原作では描かれていなかっただけで、苦もなくこういった技術を使って思い通りの展開に誘導していた可能性もある。

 

 綾小路くんがあらゆる面で作中でも最強格なのは疑いようない。でも、あえて描写しないメリットもあるからだ。全容が見えない部分にこそ魅力が詰まっていることもあるからな。種を知らないマジックの方が面白いということだ。

 

 でも、あの綾小路くんなら人智超えた読みをしていた可能性の方が高いか。そっちの方が怖いのだけど……。

 

「博士、この情報を知っている生徒は何人くらいだと思う?」

 

 もし50人を超えるなら……。その時はこの情報は洋介や堀北先生に共有すべきだろう。

 しかしDクラスは一枚岩ではない。何よりあの櫛田がいるしな。

 もし限られた人数なら今いる3人で閉じておくべき。オレは直感的にそう判断した。

 

「拙者が知ったのは学校内のチャットで先輩に教えてもらったことがきっかけでござる。今は閉鎖された非公開チャットで当時は拙者を含め4人。

 あまり交友の広い界隈ではなかった故、おそらく知ってるのは我らを合わせても……生徒は多分10人もいないと思うでござる。

 学内の検索対象にも含まれておらず普通の方法では辿り着けない。

 このページに辿り着くには学校管理者以外だと通信傍受した人でないと難しいと、当時暴いた先輩が自慢していたでござるからな」

 

 ちなみにその先輩たちは1人を除き、その後すぐに退学処分になったらしい。

 何でも当時、気になってた女子のメールの通信ログを秘密裏に漁ろうとして、それが学校側に捕捉された制裁とのこと。

 

 博士は『拙者は真似はしなかったでござる』と得意げだ。

 

 バカと天才は紙一重というか……。ハサミも使いようというか。

 

 博士のチャット仲間の最後の1人は、今年で卒業した3年の先輩。

 博士も尊敬していて凄く世話になっていた先輩らしい。

 そっか。博士以外のメンバーが学校からいなくなったから非公開チャットは閉鎖しちゃったんだな……。

 

 その先輩とは一度会ってみたかったが、一足遅く、先輩は先日寮を出てしまったらしい。残念だな。他にも面白い話がありそうなのに……。

 

 こうして博士の信じがたいほどの説明は一段落し、結局、今回の件についてはオレと松下と博士、3人だけの秘密となった。

 

 恐らくだが、この技術仕様ページを見つけることもある種の試験なんだろうな。

 

「松下、オレも確認するが特別試験で利用できそうな点がないかだけは目を通してくれ」

「勿論。それにしても、こんなのがあるとはね」

 

(本当にな……)

 

 でもオレは胸が躍って、わくわくが止まらなかったんだ。

 

 この世界には、まだまだ原作じゃ知り得ないことが隠されている気がしたから。




このオリジナル設定を活かせるか不明。
今時の学習指導要領なら、こんな要素もありそうと思い書いたお話。
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