山内くんに転生したのでBADEND回避を目指します!   作:あまざらし

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【2年生】春休みの緊急試合 その3

 急遽、明後日に試合が決まり、軽い方針をまとめて本日の集まりは解散となった。

 

 それから3時間程経過してオレはというと。

 

「でっ、明後日に急遽試合することになって明日は坂柳さんと交渉したいから、春樹くんは明日の予定をキャンセルしたいと」

「はい……おっしゃるとおりです。本当に、ごめんなさい」

「分かった、仕方ないよね。それならまた今度かなあ。

 でも残念だな。明日、春樹くんと一緒に選びたかったんだけどなぁ」

 

 まず最初に、麻耶と予定していたスケジュールの変更についての交渉に入った。

 

「ゔ、やっぱ早い方がいいだろうし、どこかで時間作ろ──」

「ウソウソ、冗談だからっ! そんな急ぎじゃないから心配しないで。

 それに春樹くん、別の日にちゃんと付き添ってくれるんでしょ?」

「ああ、それは勿論だって」

 

 オレは明日、麻耶の『メガネ』を選ぶ買い物に付き合う予定だった。

 

 麻耶は特に冬以降、勉強に真剣に取り組んでいた。

 その弊害なのだろうか。

 

 3月頃から少し視力が低下してしまったらしい。

 普段の生活にあまり支障はない軽度近視らしいが、遠くを見る時は困ることもあるだろう。

 深刻な視力低下ではないらしいが、補助的にメガネを購入することを医者にも勧められたとのこと。

 

「でもメガネ女子って何か賢そうだよね!」

 と本人もそこまで深刻な様子もない。まあ、否定は出来ないけどさ。

 

 正直、選ぶ相談相手はオレでいいかの方が不安だ。あんまり眼鏡に詳しくないし。最近の眼鏡ってどれもオシャレだろうし、全部可愛いって答える未来しか想像できない。

 

「ところで坂柳さんとの交渉って、春樹くん一人でやるの?」

「いや洋介か堀北先生にも声を掛けるつもり。あ、食事くらいはご馳走するからよかったら麻耶も来るか?」

 

 オレの軽い提案に、通話越しの麻耶はちょっと間を置いてから回答した。

 

「やめとくよ。野球の知識ないんじゃ役に立ちそうもないし。

 それに私さ、春樹くんの邪魔には……なりたくないから。

 でも当日は応援しに行くよっ。じゃ、春樹くん頑張ってね! またねっ」

 

 返しの別れの挨拶も早々に、麻耶は通話を切った。

 邪魔……? 

 

 彼女の最後の一言に引っかかりながらも、時間が惜しいオレは、次の相談相手の元へ約束を取り付けたのだった。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 麻耶との交渉後、オレはある人物の部屋へと出向いていた。

 Dクラスのリーダー堀北鈴音の部屋である。

 

 他の部屋となんら変わりない堀北先生の扉の前。

 それに美少女の部屋への訪問なのだ。だが心は何故か沈んでいた。

 

 それは……。

 

 正直、トラウマなんだよなぁ。

 そう、半年前のペーパーシャッフル試験で軟禁状態にされ、ひたすら問題を解かされていたあの部屋である。

 

 意を決しインターホンを鳴らし、待ってましたと苛立つ表情の堀北先生に迎えられる。

 が、その表情よりも彼女には思わず目に止まった変化があった。

 

 堀北先生が長い髪をばっさり切って、ショートヘアに変貌しているのだった。

 ああそっか。堀北先輩との別れの挨拶うまく出来たんだな。

 

「堀北先生、あの、髪切ったんですね。とてもよく似合って──」

「いいから始めるわよ」

「はい……ゴメンナサイ」

 

 そしてオレは今回の経緯を説明した。

 

「呆れた。じゃあ山内くんは南雲生徒会長にまんまと乗せられたのね」

「はい、そうなりますね」

「全く……少しはマシになったと思ったら。久々にクラスに面倒事を持ってきたわね。

 ただ決まってしまったことを悔いても仕方ない、前向きに捉えましょう。

 もし負けても失う物は山内くんのプライベートポイントのみ。勝てばクラス全体で最低15万ptを受け取れる。そう考えるのなら今回の試合も悪くないわね」

 

 あ、やっぱり負けた時はオレのポイント全額使うんだ。

 

「何かしら?」

「あ、いえ。なんでもありません」

「それで試合に参加するメンバーは今の所どうなってるの?」

 

 オレは、堀北先生に試合に参加承諾してもらえたメンバーを紹介する。

 1人目、山内春樹

 2人目、平田洋介

 3人目、須藤健

 4人目、池寛治

 5人目、綾小路清隆

 

 まずはこの5人だ。

 龍園乱入の時にその場にいたメンバーの中で、運動することに苦手意識のないメンバーの5人は参加してくれることになった。

 健は部活と時間が被るらしいが返上しての参加である。優しい。

 

 幸村と博士はクラス代表は荷が重いと不参加に。

 だがあの場に居合わせていなかった追加メンバーもいる。

 

 6人目、三宅明人

 

 綾小路グループに所属する『みやっち』こと明人くんだ。

 その日は部活も休みらしく綾小路くん経由で参加してくれることになった。

 

 彼は喧嘩も強いし弓道部員でもある。乱闘騒ぎになってもこれで安心って訳ですね。

 やめろよ龍園……フリじゃないからな。

 

 7人目、本堂遼太郎

 

 あとは寛治経由で本堂遼太郎も飛び入り参加可能と連絡を貰っている。

 前回の特別試験のバスケで活躍した牧田は予定が合わないため参加は難しいことも伝えた。

 

「池くんや本堂くん、それと山内くんは心許ないけど他のメンバーは悪くないわね。つまり最低あと1人はAクラスから応援が必要ってことね」

 

 ナチュラルに俺達3人は貶されたが今回は何も言い返せない。

 でもあれ? 

 

「野球は9人だからあと2人では?」

「私も……今回は参加するわ」

 

 なんと! まさか堀北先生が参加してくれるとは予想外。

 

「なに不満なの?」

「いえとんでもない。あ、ありがとうございます! 堀北先生!」

「本当は嫌だったのよ……でも参加するからには負けは許されないから」

 

 そして一つ深い溜め息をついた堀北先生。もしかしたら綾小路くんに何か言われた後なのかもしれない。

 でもリーダーが参加してくれるなら安心だな。何より健のやる気を引き出せるだろうし。

 

 こうして試合に関する説明も終了し、堀北先生は静かにオレに問いかけた。

 

「お茶でいいかしら」

 

 その言葉には変わらず冷たさを含んでいたが、表情はどこか暖かみがあった。

 

「あ、お気遣いどうも。いただきます」

 

 そして彼女は慣れた手つきで急須から熱いお茶を注ぐ。

 それにしても、堀北先生もこんな風に気配りするんだな。

 意外な一面を垣間見たオレはお茶を一口飲む。その温かみが胸に染み渡った。

 

 こうして今回の試合に堀北先生も参加することが決まり。

 

 更に相談の末、明日は坂柳との交渉の後、軽く練習を交えてポジションを決める段取りとなるのであった。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 次の日、試合前日。

 ケヤキモール飲食店の一室にて。

 

「なら高円寺くんの参加する可能性は低いってことね。分かっていたことだけど」

「はい、そうですね」

 

 坂柳を待つ間、今朝オレが偶然コンビニで高円寺と出会って野球に誘った状況を堀北先生に説明していた。

「私は誰にも縛られないのだよ」とお決まりの高円寺である。軽く断られたということだ。

 

 強力なメンバーがDクラスで増えない状況を考えるに、この後行われるAクラスとの交渉の末の同盟成立は勝つために必須だろう。

 

 坂柳から指定された店の一室でオレと堀北先生は彼女の到着を待っていると。

 

「皆さんお揃いですね」

 コツンと杖の音を響かせ、Aクラスのリーダー坂柳有栖と、そのお供の神室真澄が俺達の前に姿を表す。

 

 そういえば神室とは初めて対面するなぁ。

 神室は初対面なのに開口一番「あんたが”あの”山内ね」と言い放つ。

 あの坂柳さん、一体彼女に何を吹き込んだでしょう……。

 

 閑散とした店内。その中の掘りごたつ式のお座敷に座る俺達。

 

 位置関係はオレが一番の下座。

 オレの正面に神室。右隣りに堀北先生。その正面の一番の上座には坂柳。

 なんとなく坂柳は上座に座る分には機嫌を損なうこと無いだろうしな。うんうん。

 

「坂柳さん。急なところ悪いのだけれど、時間もないことだし早速相談に移らせて頂戴」

「ええ、既に詳細は伝わってますよ。山内くんが衝動的に引き受けてしまったクラス合同試合の件ですよね」

 

 坂柳が穏やかに微笑みながらこちらを見つめる。

 しかし、その笑顔には何か裏が隠されているようで。

 やっぱり怖いよ。このコ。

 

「しかし、残念ですがAクラスとしては応じる理由が見当たりません。堀北さん。これはあなたも充分にご承知のはずです」

「ええそうね。耳の痛い話だけど重々承知してるわ。でも一つ提案があるの」

「試合に敗れた際のポイント支払いについて……でしょうか」

 

 坂柳はある程度先回りして、こちらの提案を推測していたようだ。

 

「ええ、その通りよ。仮に私達が敗れたとしても、プライベートポイントの負担は全てはDクラスが負う。これならどうかしら。悪くない提案だと思うのだけど」

 

 内訳は山内が全額負担なんですけどね。ははは。

 

「確かにそうですね。その契約ならポイントという観点では、Aクラスの損失はゼロでしょう」

 

 しかし坂柳は首を縦に振らず、代わりにイタズラな笑みを浮かべた。

 

「でも堀北さん。それはあくまでプライベートポイントという局所的な観点でのみの損失です」

「何がいいたいのかしら」

「想像してみてください、もしAクラスが試合で全力を尽くしたらどうなるか。その結果、クラスの優秀な生徒たちの運動能力が広く知られることになる。学校内でそのような情報がどれほどの価値を持つか、堀北さんなら分かるはずですよね?」

 

 特別試験以外で実力を発揮すること。その問題点を坂柳は指摘する。

 

「確かに、その点は認めるわ。でも私達は今回の試合でAクラスから最低2人、手を抜かない生徒を確保したいの。もしそれが実現しないなら、交渉の意味はない。残念だけど私たちはDクラスだけで挑むしかないわね」

 

 坂柳に挑戦的な言葉に対して、交渉で一歩も引く気はない堀北先生。

 仮に負けても失うものは少ない。

 そう判断してのことだろうか。

 

 オレは失うものが多いのですがね。

 

 坂柳はしばらく考えるような仕草を見せる。

 そして彼女の視線は堀北先生ではなく、オレへと注がれていた。

 

 堀北先生もその違和感に気がついたようだ。

 

「坂柳さん? 山内くんがどうかしたのかしら」

「いえ、そうですね。山内くん、あなたも堀北さんと同意見ということでよろしいのですね?」

「そうだな。坂柳さんの協力を得たい。そう思ってるよ」

 

 オレの答えを受けて、彼女はゆっくりと瞳を閉じて、今日最も満ち足りた表情を見せた。

 

「ふふっ、でしたら今回は山内くんに”貸し”ということにいたしましょうか。

 いえ、失念してましたね。山内くんには以前恩を受けていたこと、私としたことがうっかり忘れていたようです。今回でそれを清算するということでしたら喜んで引き受けましょう。ですが本当にそれで宜しいのですか? 山内くん」

 

 こんな小さなことで貸しを返して、私への安全が無くなることを承知しているのか。もしかしたらお前を退学させちゃうかもよ? 

 オレをじっと見つめる彼女は、そんな愉快な目をしていた。

 

 やっぱり断ろうかな。オレがそう思ったときだ。

 

「なんだ、そんなことで構わないのね。なら問題ないわよね山内くん」

「あ、はい。問題ありません」

 

 容赦のない堀北先生の決断である。

 

「では交渉成立ですね。Aクラスからは『鬼頭くん』と『橋本くん』。この2人でしたらすぐお貸し出来ます」

 

 鬼頭隼に橋本正義。

 2人とも運動能力では、全く問題ない人選だ。

 

 こうしてAクラスとの同盟はなんとか結ばれたのであった。

 

 交渉の内容は、

 勝った場合はメンバーの比率からDクラスが20万ptをAクラスが10万ptを獲得。

 

 坂柳への貸しを今回利用したことで、

 負けた場合もDクラスが20万ptをAクラスが10万ptと同じ比率で負担することなった。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 あっという間に試合当日となり。

 

「それでは2年ADチームのスターティングメンバーです」

 2年ADチーム(堀北チーム)

 1.(捕)平田洋介

 2.(一)橋本正義

 3.(三)鬼頭隼

 4.(遊)須藤健

 5.(二)堀北鈴音

 6.(中)綾小路清隆

 7.(右)三宅明人

 8.(左)池寛治

 9.(投)山内春樹

 

「続いて2年BDチームのスターティングメンバーです」

 2年BDチーム(龍園チーム)

 1.(中)柴田颯

 2.(三)小宮叶吾

 3.(遊)龍園翔

 4.(捕)山田アルベルト

 5.(一)神崎隆二

 6.(二)伊吹澪

 7.(左)近藤玲音

 8.(右)園田正志

 9.(投)石崎大地

 

 豪華な実況席でマイクを使い、本日の出場メンバーを読み上げる三年生の朝比奈なづな。

 そのたびに歓声が飛び交う観客席。

 

 南雲パイセンって相変わらず、セッティング能力高いよなぁ。

 

 審判は三年生の生徒会や野球部員が主体となって、2年生の合同クラスによる野球対決が遂にスタートした。

 




メガネは原作須藤くんのパクリです。

スタメン、守備位置の議論は尽きないと思いますが、参加出来そうで戦闘民族多めのC,Dクラス中心で選択。

ポジションや打順は割と適当に決めたのですが捕手だけは、
平田くんの溢れる正捕手っぽさ
山田という名前と体格(ドカベン)
から捕手にしたろうと配置しました。

試合描写を淡々と書くと謎の野球小説始まりそうなので『よう実』っぽさは残したいなと試行錯誤中です。
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