山内くんに転生したのでBADEND回避を目指します! 作:あまざらし
真嶋先生の説明が終了し、試験で同じグループとなった佐藤麻耶から声をかけられる。
「ねぇ山内くん。今回の試験内容分かった?」
「大まかにだけどな! どうかしたのか?」
普段の山内だったら「完璧だぜ! オレに任せな!」とか誇張表現しているのだろうな。
今回に限ってみれば、それこそ完璧に理解してるのがなんか悲しい。
まだ優待者すら発表されてないのに、オレ、実は答え分かってるんだよ佐藤……。
「だって山内くんずっと用紙と睨めっこしててさっ スゴく真剣って感じじゃん!」
山内が真剣なのが物珍しいのか、佐藤は不思議そうな表情だ。
今回の試験は正解する予定だから演技していたのだが、ひとまずオレは”寛治が活躍しててさ~”戦法を使うことに。
しばらくおまえはオレの英雄になってもらうぞ。池寛治よ。
あの堀北先生でも騙せたのだ。
「無人島、すごかったよね― 池くん」
佐藤にも問題なく通じた。
だが立て続けの特別試験で佐藤は不安なのだろう。
「で、今回の試験ってどうしたらいいのかな?」
そんなふんわりとした相談を受ける。
「佐藤もルールはだいたい把握してるんだよな?」
「うん、長すぎてちょっとアヤシイとこもあるんだけどね……。
たださ、もし優待者になったらどうしようとか悩んじゃわない? 私だけ?」
実際に佐藤が優待者になることはないが、なかなかに的を射た相談だった。
優待者以外は比較的気楽だが、優待者にはプレッシャーが掛かる試験だからな。
優待者になったときの振る舞いか。
Aクラスがやっていた『正解は沈黙』と言わんばかりに集まりに参加しないか、
綾小路くんみたいに同じクラスの別の生徒とSIMを入れ替えて優待者役をやってもらうの2通りしか知らない。
綾小路くんが行動開始したのも終盤だし、どちらにせよ最初は気楽に参加すればよいかもな。
「確かにな。でも優待者の発表は明日の朝って書いてあっただろ。
今は深く考えずに、もしDクラスの誰かが優待者になったら3人で情報共有しようぜ。あとは平田や堀北にどうすべきか相談すれば安心だろ!」
「そっかーそうかもね! それにしても、うーん。
やっぱなんかいつもと雰囲気違くない?
山内くん、今回すごい場慣れしてるっていうか……」
あっ、まずい。
「まっそれだけ今回の試験に全力ってことよ!
Dクラスの全体チャットにもちょっとだけ情報流れてただろ。
オレ、あの辺りもすごいチェックしてたんだぜ」
こういう時、ちょっと早口になっちゃうオレって優待者向いてないな……。
「確かに最初の組の子が書いてたけど。
でもすぐ説明会あるから、あんまり頭に入って来なかったし。
みんなも”どういうこと? ”って茶化す感じだったよねー」
初期のDクラスは個人主義というか、クラスで結束してる描写は少なかったしな。
まだモチベーションは低めなのかもしれない。
佐藤とのやり取りに気を取られていると、Dクラスでもう一人の同じグループ仲間の長谷部波瑠加が静かに部屋から退出しようとしていた。
「長谷部さん待って待って!
よかったらさ、今回の試験協力するために3人でグループチャット作らない?」
佐藤麻耶。さすが人付き合い上手なギャルである。
すかさずオレも「作ろうぜ!」とノリ良く賛同する。
しかし肝心の長谷部はオレの方を一瞥し、
「いや、私は遠慮するよ」と冷たく拒絶するのだった。
オレを見た時、長谷部の目は笑っていなかった。
(これ
水泳授業でも山内やらかしてたし、
正直、長谷部が嫌悪してる筆頭なのでは?
山内春樹って。
ごめんなさい。
まだ一言も話してないけど、なんかごめんなさい。
「ごめんオレがいるとやりにくいよな、長谷部……。
でもオレも今回は真剣に取り組むつもりだからさ。良かったらグループチャットだけでも入らないか?」
ひとまず謝ろう。
そしてNOと言えない空気出すんだ。
日本人特有のあの断りづらいあの空気感だ。
もし普段の山内なら、「なんだよノリが悪いぞ! 長谷部ー」とか言っておちゃらけてたんだろうな。
10割山内のせいなんだぞ、山内。
大方、図星だったのだろう。オレの謝罪に長谷部は若干たじろぐ。
もしかして許してくれます!?
そんな展開を微かに期待していたが、
「誘ってもらったところ悪いんだけどさ。今回の試験、私、今のところやる気でないんだよねー」
結果は拒絶。
謝罪しても許されないほど山内の印象はサイアクと……。残念ながら長谷部は同意は得られず、グループチャットの件はお流れになった。
前向きに捉えるなら原作でも長谷部って綾小路グループ以外はどうでもいいって対応してたしな。
これでも充分気遣ってもらったのかもしれない。
「そっかー じゃあ助けが必要なときは協力しよっ。
私じゃ、あんまり頼りにならないかもしれないけどさ……」
オレはその時、照れながらもフォローする佐藤が天使に見えた。
「山内くんも何か分かったらメールで教えてよね!」
そして長谷部が去った後、佐藤も軽やかに退席する。
ちなみに佐藤と山内の仲はそれなりのようで、オレは既に彼女の連絡先を知っているようだった。
◇ ◇ ◇
翌日、オレに予定調和な一通のメールが届く。
『厳正なる調整の結果、あなたは優待者に選ばれませんでした』
そしてその日の午後から特別試験が開始された。
鳥グループの各クラスが一堂に介し、自己紹介をしている。
予想外に鳥グループは、それなりの有名人が選出されている。
Aクラスの生徒はイマイチ思い出せないが、
Bクラスには一之瀬帆波ちゃんラブな白波さん。
Cクラスには龍園組特攻隊長の石崎くん。
そして、オレが最も気にしているのは、
「Cクラスの椎名ひよりです。
卒業までの目標は図書室にある本を全部読むこと……ですかね。
趣味は読書。皆さんよろしくお願いします」
控えめな澄んだ声にのせ、ふわりとした印象のCクラスの重要人物、椎名ひよりが自己紹介をしていた。
今回の干支試験。
原作では最終的にCクラスは優待者特定の法則を間違いなく見つけ出し、他クラスを苦戦させていた。
そして原作では書かれていなかったが、オレは今回の試験で一つ予想してる点がある。
おそらくCクラスで最初に優待者の法則を見つけ出したのは、
『椎名ひより』
ではないかと……。