山内くんに転生したのでBADEND回避を目指します!   作:あまざらし

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【1年生】干支試験編 その4

 試験開始三日目。

 

 翌日に試験最終日を控えたオレたちは、本日は1日フリーの日となった。

 原作通り、牛グループの試験終了の知らせにより、既に試験を終えている寛治と健は、オレを置いて2人で艦内探検へ旅立っていった。

 

 楽しそうなことで。

 

 さてと。

 一方で明日勝負を決める必要があるオレは、とある人物と約束していた。

 

 Dクラスのリーダー 平田洋介である。

 

 目的は真剣に特別試験に臨む姿を、彼にアピールすること。

 真面目になった山内春樹、クラスメイトの好感度アップ大作戦を演出するには必須である。

 

「時間とって悪いな。誰もいないから好きなところに座ってくれよ」

「全然問題ないよ。でも珍しいね?」

 棘のないニュアンスで平田が応じる。

 

「まぁオレだってたまには真面目に課題に取り組むさ。

 それにあの大量の報酬を見ちゃうとな! 諦めきれなくて。

 なんとか優待者見つけたくてさ。いくつか聞きたいことあるんだよ」

「ということは山内くんは、優待者じゃないんだね」

 オレの一言で、この試験のポジションを把握した平田はそう返す。

 

「おう。春樹でいいぜ。こっちも洋介でいいか!」

 入学時の自己紹介で気軽に洋介と呼んでくれ、と言ってたはずだし問題ないだろ。

 

 クラスの立場を良くするためにどうすればいいか、

 それは軽井沢という先駆者が身をもって教えてくれてる。

 

 ”とにかく平田と仲良くなること”

 

 それ抜きにしても、めちゃめちゃいいヤツだろ。

 平田洋介くん。

 

「ありがとう。嬉しいよ。こちらこそよろしくね、春樹くんでいいかな」

 女子にモテることが仇となって、クラスの男子との交友関係は少なめなのか、洋介は心なしか嬉しそうだった。

 

 この人当たりの良さは現実だったら男子にも絶対人気あるはずなのに、謎だよな。

 Dクラスが欠陥品だから? そうかもしれない。

 

「おう、よろしくな。

 それで話を戻すけど洋介って優待者とか、各グループの詳細なメンバーとか把握してるか? 

 ある程度はグループチャットで知ってるけどさ……」

 

 ここからは正直茶番だ。

 オレが何をしたいのか、それは、

 

 ”山内春樹は可能性は低くとも、優待者を正解しうる情報を持っていた”

 

 そう思わせる証拠を残したいのだ。

 洋介と関わることで、オレに対する周りからの心象も少しは変化して欲しいという狙いもある。

 

 そして洋介は快くDクラスの優待者を開示してくれた。

 

 馬グループの南くん、そして竜グループの櫛田。

 

 それはグループチャットでは得られない情報だった。

 

 みんなには内緒にしてもらってもいい? 

 と前置きされ、もう一人の名前も開示された。

 

『兎グループの軽井沢』

 

 洋介が「大丈夫?」と不安そうに聞いてくる。

 その情報が共有されるとは思っていなかったオレが、明らかに動揺していたからだ。

 

「ああ。みんなには内緒にするし、あんまりこの話題も出さないようにするな!」

 ハッキリとしたオレの答えに安心した洋介は「よろしくね」と優しく念を押す。

 

 

 相談も終わった別れ際、なぜかオレは洋介から昼食を誘われる。

「彼女ほっておいて大丈夫かよっ」

 

 オレはそう茶化しつつも、一緒にお昼を食べることに同意した。

 お腹も空いたことだしな。

 

 俺達は部屋を後に、そろそろ馴染んできたレストランへ向かった。

 

 ◇  ◇  ◇

 

 レストランでは洋介の彼女である軽井沢が知らぬ間に合流し、なぜか三人で昼食を取ることとなった。

 

(軽井沢きたぁああああ)

 

 心のなかで悲鳴を上げる。

 今回の試験で可哀想な目にあう女の子。軽井沢恵。

 最終的には綾小路くんの彼女になるので、交流は控えるつもりだったんだよなぁ。

 

 今は洋介の彼女なわけだし、まぁこうなるか。

 二人の破局発表はだいぶ先なんだよな。確か。

 

「平田くんと山内くんが2人で一緒にお昼って、明日は雪でも降るんじゃないの?」

 出会い頭からオレに喧嘩腰な発言をする軽井沢。

 洋介が近くにいる限り、彼女はもう無敵である。

 

 オレが洋介に試験のアドバイスをもらってることを告げても、「ふーん」とつまらなそうに頷く軽井沢。

 知ってはいたが山内のことなど興味ないようだ。

 

 軽井沢はすぐに話題を変え、前世では既にテレビでも放送していた『もしかして入れ替わってる!?』な映画の予告が気になってて、今度見に行きたいという話から始まり、学校敷地内にあるケヤキモールのお店やアイテムの話題などを絶えず提供しはじめた。

 

 どんだけ会話レパートリーあるんだよ。

 

 本校内にある施設ケヤキモールの知識は、オレになってからイマイチ記憶に残ってないので、すごい有用な情報だった。

 ありがとな、軽井沢。

 

 周辺の施設の情報の記憶もなければ、山内の交友関係もチャットのログを見返し、その場のノリで対応していることも多い。

 

 いつかボロが出なければいいけどな。

 まぁ山内なら忘れてたでいけるか。いけるな。

 

 会話の主導権は常に軽井沢なこともあり、話題も周りの恋愛事情へと移った。

「それにしても、あんたと佐藤さん最近キョリ近くなってない? 

 なんかあやしいのよねー。そこんとこ、どうなのよ?」

 

 何も出てこないやつに恋愛の話題を振るな、軽井沢。

 

「どうと言われてもな。同じチームで仲良くなったとは思うけど。

 まあ佐藤はかわいいし、試験に協力的だし……あと”軽井沢と違って”傲慢じゃないしな~」

 

 からかいがちに軽井沢と比較して、佐藤を持ち上げることにした。

 嘘は言ってないし問題なかろう。

 あの山内が女の子を褒めない事はないだろうしな。

 

 だが、なぜか貶したはずの軽井沢は満足気に右を見やる。

「へーだってさ! 佐藤さん!」

 え? 振り返って、慌てて軽井沢の視線の先を辿ると、篠原たちと昼食を楽しんでいたらしい佐藤が真っ赤な顔でこちらを見ていた。

 

 佐藤お前いたのかよ。声くらい掛けてよ。

 会話に集中してて、気がつかなかったわ。

 

「そ、そんなことないよ! 恥ずかしいな……山内くんとはグループで仲いいけどさ!」

 話題の佐藤はかわいい照れた表情で恥じらっている。

 

 にしても佐藤はあまり褒められ、慣れてないのだろうか。

 ギャルなのに。

 この世界、美少女多すぎるからか? 

 

 いや、お前も美少女だぞ佐藤。自信持ってけ。

 

「そういえば……」

「痛っ」

 オレは軽井沢に足を蹴られた。

 後ろ向いている時に酷い。

 

「アンタ、あたしも優しいでしょ!」

 犯人の軽井沢は比較対象にされたことがご立腹だったらしい。じゃあ足蹴るなよな……。

 

 俺達の会話に洋介は軽井沢を軽くたしなめつつも、クスッとおかしそうにしていたが、その後は出来る男、平田洋介。

 彼女のご機嫌取りに努めていた。

 

 それにしても佐藤。

 綾小路くんに告白を振られても一途なままだったよな。

 

 もう綾小路くん、軽井沢から略奪するか? 

 クリスマスの綾小路くん対応マニュアルでもこっそりリークしたら可能性あるのでは? 

 佐藤、ハプニングでの対応が鍵だったはずだぞ! 

 

 でも綾小路くん内面を見るに、脈なしというか、脈あるやつがいたら見てみたいというか。

 付き合っても悲劇が待ってそうというか。

 

 照れている佐藤の未来を案じつつ、オレはこれ以上の面倒な追求から逃れることにした。

 

「本当の事言うと、オレよりも長谷部と仲良くなったって感じだな。佐藤は」

 

 そう。

 オレたち3人は試験期間中、思いの外打ち解けていた。

 

 特に佐藤と長谷部が。

 

 最初は乗り気でなかった長谷部も、佐藤の見た目に反した純真さに絆されたのだろうか。

 あるいは試験の期間中くらいはオレと話すことを許したか。

 

 三人全員いわゆる人狼ゲームの村人だったこともあり、それなりに優待者を見つけるための戦略(トランプやトンデモ推理トーク)に、長谷部も付き合ってくれていた。

 

 大体、原作で一之瀬が兎グループでやってたことのパクリである。

 トランプを提案してみたら一之瀬ラブな白波さんが、

「これ帆波ちゃんがやろうとしてたヤツと同じ……」

 と呟きながら、こっちを凝視してきたし。

 

 短い2日という日程でも、特に2人で長時間過ごしていた佐藤と長谷部は、

 佐藤は長谷部を『波瑠加さん』と、

 長谷部は佐藤を『まやりん』と長谷部お得意のあだ名で呼ぶ仲にまでなっていた。

 

 山内?

 勿論、オレは除け者である。

 

 でも原作の二人はあまり関わってなかったはずよな。

 これってつまり原作の山内は、実はこの2人の仲引き裂いてたって事なのでは!?

 どんだけ悪影響与えてるんだ……山内。

 そりゃ退学するはずである。

 

 そうこうする間に、別テーブルの篠原たちが食事を終えたらしい。

「そっちで話してきなよ」と篠原はニヤニヤしながら佐藤を置いていった。

 なんかこれもまた青春って感じするよな。

 このお節介な気遣い。

 

 まあ軽井沢と佐藤も話さない仲ではない。

 てか原作だと、親友に近いくらいに仲は良くなるしな。

 こうしてオレたち4人のにぎやかで楽しい昼食もつつがなく終了した。

 

 部屋へ戻る途中、次の特別試験に向けて体を鍛えたかったオレは、スポーツマン洋介をトレーニング施設に誘う。

 集会の時にBクラスの墨田くんから、豪華客船内に施設があることを教えてもらっていたからだ。

 

 運動音痴なのは知ってる。期待してないから安心しろ山内。

 ちょっと足掻くだけだ。

 

「ざんねんでした―。

 今日は平田くんは私との大切な用事があるの。ねっ平田くん!」

 

 しかし、なぜか軽井沢に断られた。

 おかしいな。偽装カップルの二人がイチャラブな時間を過ごす訳ないよな。

 

 あれ? これ綾小路くんが仕掛ける地下で軽井沢ボコボコにされるイベントでは? 

 か、軽井沢、頑張れよ。Dクラスの未来はお前にかかってるぞ。

 あとお前騙されてるよ……。勿論、言えないけどさ。

 

 ちゃんと最後は綾小路くんに守ってもらえよな、軽井沢。

 こうして洋介たちと分かれたオレと佐藤。

 

「仕方ない……じゃあ佐藤、筋トレすっか!」

「いやいやおかしいでしょ! しないから!」

 佐藤もノーといえる日本人のようである。

 

 そしてオレたちは、試験最終日を迎える。

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