山内くんに転生したのでBADEND回避を目指します! 作:あまざらし
干支試験も最終日を迎えた。
今実施している集会を含めて、あと残り2回。
「ねぇ山内くん。今日最終日だけど、どうするの?
またトランプで嘘の癖がないか試すのか……それとも他クラスに『結果1』になるよう協力をお願いするの?」
「うーん。そうだな。今回はトランプでいいかも。
あと2回あるし。みんなが焦りだす最後の集会でAクラス交えて交渉するしかなさそうだしな!」
集会が始まる前の佐藤とのこんな掛け合いも、もう終わりだな。
残り2回もあると捉えるか、2回しかないと捉えるかは人それぞれである。
ただ裏切りが発生しない限りは一斉投票になることもあり、鳥グループはまだ比較的リラックスした様子だ。
オレたちDクラスと他クラスの何人かは、集会が始まりトランプに興じていたが、少し休憩しようと長谷部から提案をされ一時中断となる。
暇を潰すため、オレは周りの様子を観察する。
まずはAクラス。
優待者を抱えるクラスだが優秀なことに、この3日間ボロが出ることはなかった。
Aクラスは葛城の指示に従っているため、基本的に他クラスと馴れ合うことをしない。
議論にも不参加の姿勢だったので、当たり前といえば当たり前でもある。
しかし優待者を知るオレの視点だと、怪しいポイントもある。
オレたちが優待者の中島さんと話す機会は少なく、Aクラスとの対話の窓口はほぼ福山さんに集約されていたからだ。
それもこじつけと言えばそれまでである。
次にBクラス。
白波さんに一之瀬と何かの関係があるのかと、オレが凄まれる以外は比較的関係も良好で、原作通り協力的でチームワークがいいクラスだった。
そしてCクラスを見ると、
オレの少し後ろ側で、座って読書していた椎名ひよりがいた。
そんなオレの視線に気がついたのか、
「どなた……でしたでしょうか。すみません人の顔と名前を覚えるのが苦手でして。
確か、野球部のエースで、インターハイで怪我をされてリハビリ中の方だったような……」
そこだけ覚えてるのやめてくれないかな……。
自己紹介やっぱ変えるべきだよな。
「Dクラスの山内春樹っていいます。椎名さん」
恥ずかしくなったオレは名前だけを答えた。
「ああ山内さん。もしかして、読書にご興味が?」
と椎名は弾んだ声で聞いてくる。
そういえば、読書仲間探してるんだっけか。
綾小路くんがいるぞ。
「あー気を悪くしたらごめん。読書はあんまりかな。
読むとしてもライトノベルくらいだなぁ
ゲーム世界に閉じ込められる黒の剣士の物語とか」
あれは出版社違ったかな。
でも有名だから、この世界にもあるはずだよね。
「『ソードアート・オンライン』ですね。
ライトノベルは世界観や設定が新鮮な作品が多い印象ですね。
ちなみに私は様々なジャンルを読むのですが、一番はやっぱり推理小説が好きですね。
今読んでいるのもこちらでしてっ」
ドヤッとした表情でおもむろに椎名が今読書中のタイトルを見せつける。
アガサ・クリスティーの『ABC殺人事件』だった。
「この本はアルファベット順に連続殺人事件が発生するんですけどね……」
そして椎名は本のあらすじをオレに説明し始める。
(椎名やっぱりお前答え知ってるだろ!)
『ABC殺人事件』
『アルファベット順』
普通に考えたら、ただあらすじとこの本の見どころを饒舌に語っている推理小説オタクなのだ。
しかし今回の試験で”五十音順”が鍵になることを知ってるオレには意味深なチョイスである。
それともただの天然なのだろうか。
「山内くん。トランプ続きどうする?」
佐藤にオレは声をかけられる。
長谷部と一緒に休憩から戻ってきたようだ。
椎名と引き続き会話することに、若干の居心地の悪さを感じたオレはすぐ戻ることにした。
「一人で語りすぎてしまってすみません」
椎名は丁寧に謝りつつも、
「よかったら”参考に”してくださいね」
試すように微笑んでオレに告げた、別れ際の椎名の言葉が耳に残っていた。
「山内くんって椎名さんみたいな人がタイプなの?」
と元々ツリ目な佐藤だが、更にジト目で威圧している。
「なんだそれ。たまたま話してただけだよ」
「そういうハッキリしないのはモテないぞ―山内くん!」
濁した言葉が不満だったのか、佐藤の不平は止まらない。
だが、オレはそれどころではなかった。
もう茶番は終わりにしよう。
オレは、
”鳥グループの集会は、今回で最後にすることに決めた”
◇ ◇ ◇
鳥グループ
最終集会10分前
『佐藤悪いが回答するわ。答え分かったかもしれない』
To:高度育成高等学校
From: 山内春樹
re重要なお知らせ
中島理子
『鳥グループの試験が終了しました。結果発表をお待ち下さい』
オレは優待者を回答した。
最後の集会の10分前に送ることで、オレはあのメンバー達と再会することを避け、結果発表までみんなとは”別行動”をする予定だ。
山内のヤツ何をやらかしたんだと追求されそうな面々。
主に堀北先生、綾小路くん、洋介あたりだろうな。
原作通りならそれぞれのグループで最後の集会がまだあるはず。だから追求は後回しになるだろうという読みもあった。
佐藤から連絡が届く。
『山内くん! こっちにも終了の連絡来たんだけどー
本当に送っちゃったの? わかったってどういうこと?』
”茶番”に付き合ってもらった佐藤にはすぐ説明したい気持ちもある。
『せっかくだから説明したいんだが、この後すぐ予定があってな明日でいいか?』
『えーなにそれー! ちょっとくらい待つから説明してよ!』
明日への誘導は失敗し、佐藤からすぐにと急かされる。
4日間も取り組んできた課題の法則。
その答えが目の前にぶら下がってるからか、『なるはや』で知りたいという佐藤の要望を通すことに。
結局、今回のネタバラシを説明するため、オレたちは夜遅くの22時半に集まることになった。
◇ ◇ ◇
試験発表を迎える30分ほど前。
佐藤へ説明するため、オレは待ち合わせした場所へ向かっていた。
デッキの休憩所には、堀北先生はじめとするDクラス首脳陣が集まるはず。だから集合場所は別に指定している。
目的の場所に到着すると、椅子に腰掛け左手で髪をくるくると触りつつ手持ち無沙汰にしている佐藤を見つけた。
オレに気がついた佐藤は手招くように手を振っていた。
「遅い遅い! ちゃんと説明してくれるんだよね! もう待ちくたびれたんだからー!」
「悪い悪い」と一言断り、オレはいくつかの資料を置いて向かいに座る。
風呂上がりだったのか、佐藤からシャンプーの心地よい香りがした。
(遅くなってごめんな佐藤)
心のなかで謝りつつ時間もないので、オレは佐藤に今回の試験の法則を噛み砕いて説明する。
・干支の順番であること
・グループメンバーを五十音順に並び替えること
・この法則にDクラスの優待者がすべて当てはまっていること
と今回のポイントを解説していく。
そしてこの法則を発見したら我慢できずに送信してしまったことを告げた。
「本当だ! たしかにこの法則通りだよ!」
佐藤はリストのメンバー表にひらがなを書き足し、並び変えて確認しているようだった。
「でもこれ、なんでDクラスのみんなに教えなかったの?
全グループでやればすごいポイントもらえたんじゃない?」
当然の疑問だった。
「それも考えたんだが、法則が確認できるのはDクラスの分だけだろ。もし外した時を考えてみろ。
間違った分だけクラスポイントがマイナスになる。
前回の試験で折角225ポイントも獲得したのに、ミスったらみんなの士気が落ちちゃうだろ……」
本当は違う理由だ。
特別試験の結果では、原作とあまり大きなズレを作りたくないという、単なる”オレのわがまま”だ。
「それに、オレなんかが思いつく法則が本当に正解なのかっていう不安も正直あった。
ミスしたのがオレだけだったら-50クラスポイントと、みんなへの土下座で済む」
佐藤は少し首をかしげていたが、
「うーん。確かにもしこれが間違ってたら、山内くんはただじゃ済まないもんね……」
と自分のことのようにゾッとする佐藤。
「わかってくれたか」
「あ、そろそろ結果発表になるよ」
結果発表が23時。発表まで残り数分ということもあり、折角なのでその場で答え合わせをしようとオレたちは無言で結果を待つ。
23時を迎え、2人の携帯にメールが届いた
『酉(鳥)裏切り者の正解により結果3』
佐藤は目の前で飛び上がる。
「えええー。すごぉ! やっぱり正解してるじゃん!
鳥グループだもんね。山内くん50万ってこと!?」
そして、感情が高ぶったように騒いでいた。
「ああ、正解だったみたいだな」
そしてオレはホッとしたような演技をして、準備していたオレの端末から佐藤の端末へプライベートポイント5万ptを送った。
ちなみにオレ山内は残ポイント2万ptと少ししかなかったので、
洋介からポイントを借りたことは内緒である。
「協力してくれたからな。手持ちが少なくて悪いが。
これ佐藤の報酬ってことで。それで佐藤、追加でお願いがあるんだけどさ」
正解にテンションが高まったり、「ええっ」とポイントを遠慮したりと佐藤は状況に戸惑っているが、オレは無視して話を続ける。
「実はオレさ。できれば『プライベートポイント1000万pt』集めたいんだ。もしよかったら佐藤。これからも協力してくれないか」
断られたら仕方ない。
それに何か具体的な解決策が浮かんだわけでもない。
佐藤とはきっと”短い付き合い”になるはずだ。
でもオレのバカな提案も気軽に協力してくれた彼女なら。
オレは密かに計画している無謀な作戦を、佐藤に打ち明け協力を仰いだ。
「まだ、混乱してるんだけどさ。山内くんホント印象変わったなーって思ってたんだけどさ。でもね。
1000万ptとか無茶な発言は”らしい”よね!」
カラリと佐藤は笑った。
「仕方ないなー。いいよ。私でよかったら協力するよ!」
「サンキュー。てなわけで佐藤! 早速で悪いがちょっと協力してくれ」
話を合わせるだけでいいからと、佐藤の腕を掴む。
協力が得られ、内心では心底ホッとしていたが時間も迫っている。
「ちょ、ちょっと山内くん! こんな夜遅くに女の子連れ出すの。どうかと思うんですけどー!」
佐藤の叫びは無視して、オレは強引に佐藤を連れ出す。
申し訳ないが、まだやりたいことがあるんだよな。
解決編前編です。本日中に次話掲載します。