山内くんに転生したのでBADEND回避を目指します!   作:あまざらし

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【1年生】干支試験編 その6

「頭を下げるなら、答え合わせをしてやってもいいんだぜ?」

「誰が」

 

 オレたちがデッキへと急ぎ向かうと龍園と堀北先生が絶賛口論中だった。

 あー龍園いたかー。

 

「二学期を楽しみにしとけよ!」

 Dクラスの面々を挑発した龍園がその場を立ち去ろうと振り向き、

 ちょうどオレたちとすれ違いになった。

 

 せっかくだから挑発しとくか? 

 やられっぱなしも癪だよな。Dクラス(みんな)

 

「龍園くんだよね」

「あン? 誰だお前」

 さすが不良。初手から喧嘩腰である。怖い怖い。

 

「Dクラスの山内春樹だよ。そんなことはどうでもいいんだ。

 同じクラスの椎名さんに”ヒントありがとう”って伝えておいてよ」

 Cクラスのクラスメイトを名指しされたからなのか、

 龍園が懐疑的な目でこちらを見る。

 

「何言って」

 

「”ABC殺人事件”」

 今のオレは気分だけは名探偵である。

 

「厳正なる調整の謎を解いた龍園くんならわかるよね」

「チッ。ひよりのヤツ、そういや鳥グループだったな。何か余計なことを……」

 遠くを見ながら、そう呟いた龍園はオレに、

「ひよりにはテメェで伝えとけ。山内だったな。覚えといてやるよ」

 一言残し、その場を去った。

 

 やっちゃったぜ。

 退学前に死ななきゃいいけどな。大丈夫かな。

 でも綾小路くんと違って、どうせ正解者としてちょっとは名前売れちゃうだろうしな……。

 

「山内くんあなたっ」

 堀北先生がこちらを見る。何故かご立腹のようだった。

 なんでお前、優待者回答したんだって顔してるな。これ。

 

「Dクラスのリーダーっぽい人が勢ぞろいじゃんか。

 でも、健と綾小路がいるのか」

「試験も終わったし鈴音のとこに来ただけだ」「オレはついでみたいなもんだ」

 と各々が告げた。

 

「春樹くん。何か知ってるんだね」

「ああ、待たせたな洋介。試験のカラクリを話すよ」

 洋介の座る席に近づき、そしてオレはこの試験の法則を説明した。

 

「なるほどねー。干支の順番と名字の順番が関連してるのね。

 でもこれすごいシンプルな法則よねー」

 軽井沢が発言する。

 

「ええ、でもこの4日間にこの法則を見つけるのはそう簡単じゃないわ。

 それに分かっていても、この情報だけで投票できるのはよっぽどの自信家か……」

 そういって堀北先生がこちらを向く。

「バカね」

 ひどい……。

 

 オレがバカにされたのが面白かったのか、健がニコニコしてやがる。

 ギロリ。睨み返しとこ。

 

「まあまあ、でもよくこの法則を見つけたね。春樹くん」

「それは龍園にも言ったけど、

 鳥グループで一緒だったCクラスの椎名ひよりって子から、

 多分”ヒント”をもらったんだよ。みんなその子のこと知ってるか?」

 

 オレが質問すると櫛田が答える。

「大人しめで読書が好きな女の子だよね。知ってるよ♪」

 表櫛田さんありがとな。

 

「その子が試験最終日の集まりで”ABC殺人事件”を読んでてさ。

 オレに本を見せながら『参考にしてください』って最終日に言ってきたんだよな。

 部屋に帰っても、それが妙に気になってな。

 Dクラスの優待者とグループリストを見てたら解けたんだ。なぁ佐藤」

 

「確かに椎名さん、山内くんに本を見せながらニコニコ話してたけど……、

 山内くんはただその子と話したかっただけなんじゃないのー」

 佐藤が茶化す。やめろや、協力せい。

 

「なるほど。アルファベット順の殺人事件と、五十音順の特別試験か」

 読書好きとして一言あったのか、ここで綾小路くんが初めてまともに会話に参加した。

 

「もしかして椎名さんは答えを……」

 そんな洋介の言葉をオレが被せる。

「ああ、今思えばその椎名って子、だいぶ前に試験の答えに辿り着いてたと思う」

 

「ならなんでCクラスはすぐ回答しなかったのよ?」

「おそらく龍園くんの悪趣味なお遊びでしょ。

 Aクラスを狙い撃ったと、さっきも発言してたのだし。

 鳥グループもこのリストを見るとAクラスの生徒が優待者だもの」

 軽井沢の純粋な疑問に堀北先生が回答し続ける。

 

「その点を踏まえれば、山内くん、あなたの悪運と妙な鋭さも役立ったわね。

 正直、結果が出るまではあなたは優待者を外したと思ってたわ」

 と余計な一言を追加して。

 

「山内。アンタもこの法則を見つけたんなら、

 みんなに教えてくれればよかったじゃない。

 クラスのみんなに教えれば1位も狙えたかもしれないのに……」

 軽井沢がオレの方を見て追求する。

 

「オレがこれを説明しても発表前じゃ誰も信用しないだろ。

 あとほら。これやってた」

 そう言って、おもむろに取り出したのは、

 堀北先生から借りた英単語帳。

 そして単語がびっしりと書いてあるノートだった。

 

「正直、オレも当たると思わなかったからさ。

 間違って堀北先生に怒られそうになった時の『保険』に、

 反省文代わりに英単語帳の単語を写経してた」

 

 それ見た堀北先生は

「呆れた。鋭いのかバカなのか判断できないわね……」とため息をついた。

 

 Cクラスは油断ならないことは理解したが、

 それでもDクラスはクラスポイントを大幅に増やせたのか、

 暗い時間にもかかわらず、この空間はどこか温かで賑やかな気がした。

 

 そう”保険”は大切だしな。

 

 実はオレは優待者を回答したあと、ある行動をとっていた。

 

 

 ◇  ◇  ◇

 

 

 佐藤に試験の法則を説明する前、

 そして、オレが英単語を呪文のようにノートに書き写す前、

 

 オレは茶柱先生と面会していた。

 

「サエちゃん先生。今、相談してもよいでしょうか」

「ああ、山内。

 そういえばお前のグループは先程、試験を終えたようだな」

 

 そう言って、先生はこちらを向ける。

 てか山内って茶柱先生のこと、サエちゃん先生呼びで合ってるよな? 

 

「はい。試験が終わったので自習がてら集中したくて。

 一部屋借りたいのですが。

 どこか借りられませんか?」

 

「ほう? お前が自習を。何か心境の変化でもあったのか?」

「まぁそんなところです。

 前の試験は寛治が活躍してましたしオレも頑張りますよ」

 もう寛治のこと持ち上げるの疲れてきたわ。

 

 そしてオレはサエちゃん先生から予備の部屋の鍵をもらった。

「先生。もう1つ相談があるのですが」

「何だ?」

 

 次が本題だった。

 オレは先生とある取引がしたかったのだ。

 

「来年の1月から3月に、もしオレが退学処分になった場合、

 どんな事があっても"退学を取り消し"にするには何ptプライベートポイントが必要でしょうか?」

「どういうことだ?」

 

 先生もいきなりの質問で困惑しているようだった。

「先生。もしオレが今退学処分になった場合、

 それを取り消しにするにはプライベートポイントが何ポイント必要ですか?」

「それは2000万ptだな」

 迷いなく先生が答えた。

 

「もし今、この瞬間にオレが退学になったら、それを取り消しにするには2000万ptが必要。

 これはわかりました。

 では例えばオレが退学する前日に、『次の日の退学』を取り消しする契約をしたとしましょう。

 その場合、オレが次の日に”退学しない”こともあるわけですよね。

 未来のことですから。

 もしオレが退学しなかった場合、その契約は無効になり、

 先生にポイントを支払って得たものが”ゴミ”となってしまいます。

 それが同じ2000万ptだと、割に合わないと思いませんか?」

 

「なるほど。そういうことか。

 つまりお前は未来に発生する退学処分の取り消しは、2000万ptより安く買いたいということだな」

「はい。そういうことです」

 

 さて、どうなるかな。

「で、最初にお前は言ったな。来年の1月から3月と。なんでその期間限定なんだ?」

 まあ、そこは疑問に思うだろうな。特に今の段階なら。

 

「占いです」

「なんだって?」

「よく当たると有名な占い師にバカンス前に占ってもらったんですが、

 ”来年の1月から3月の間にお前、この学校から消える可能性がある”

 って言われたんですよ」

 もちろん嘘である。

 ただよく当たる占い師がいるのは本当だ。

 

「つまりそれ、オレ退学するってことですよね。

 だから今のうち保険を打ちたいんですよオレ!」

 

 そういうと茶柱先生が見たこともないポカンとした表情をした後、

 笑った。

「なるほどな。ほう占いと来たか」

「なにが可笑しいんですか! こっちは本気なんですよ!」

 ふふふ。馬鹿っぽい山内の演技できてるじゃんか。

 

「分かった山内。1000万ptにしてやろう」

「1000万?」

「そうだ。お前がプライベートポイントを1000万pt支払ったら次の日から、来年3月までの間にお前が退学処分となった場合、

 ”どんなことがあろうとお前の退学を取り消しにする”契約をしてやろう」

 

「つまり前日に支払えば、次の日から来年3月までは退学を取り消しに出来るってことですね。

 ただ1000万ptって高くないですか?」

 そう、退学取り消しはでかいが1000万ptをドブに捨てる可能性もあると考えれば、

 割高に感じる。

 

「勘違いしてもらっては困るが、学校側が下す退学という処分はそれほどまでに重いのだ。

 そしてもう1つ。それはお前の評価のせいだ。山内」

「えっ……」

「例えば、平田が来年の3月までに退学する確率と、

 お前が退学する確率どっちが高いと思う?」

 なるほどな……正当な理由だ。

 

「……オレですね」

「そうだろう。つまり確率が高ければその分、

 退学を取り消すための保険料も高くなるってわけだ山内」

 

「わかりました。でも先生。

 ご存知だとは思いますが、オレはまだ1000万ptを持ってません。

 もし1000万pt集められたら、この件忘れずに取引に応じてくれますね?」

「ああ、約束しよう。今日から来年の3月末日までこの取引は有効だ」

「もし、その約束を反故した場合は?」

「お前にその場で2000万ptポイント支払い、その2000万ptで退学を取り消し扱いにしてもいい」

 おお、それは助かるな。

「本当ですか?」「ああ」

 交渉終了だな。

 

 1000万ptか。……でも半分にはできたんだよな。

 

「わかりました! ではっ」

 

 そうして録音していたボイスレコーダーを止めて見せて先生に一言、

 

「頑張って1000万pt集めてきますよ! 

 サエちゃん先生失礼しました!」

 

 そしてふざけたように敬礼し部屋を出たオレは、

 英単語帳を書き写しに向かったのであった。

 

 そうして今回の特別試験は幕を閉じた。




干支試験編終了。
退学回避のため山内くんが山内くんをやめた試験でした。それでも前途多難。

ここまでは物語を確定させてましたが、ここから方針を固めるため、
少しだけ時間を置いて投稿することになるかと思います。

原作では退学の取り消しとなっていたので表記を統一するよう修正
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