先を知るだけの男   作:emiya halucon

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竜使いとの出会い

あれから二週間が経ち、俺は攻略組と共に五十層を攻略した。その際、キリトが遂に《エリュシデータ》を手に入れた。

 

それから一ヶ月と少しが経った頃、キリトが俺の事を三十五層へ呼び出した。

街に出てすぐ、ええーそりゃないよと、不満の声が聞こえた方を見るとキリトとちっこい女の子がむさいオッサンたちに絡まれていた。

 

「キリト!」

 

「来てくれたかハル」

 

静かになったオッサン達を横目に見ながら続ける。

 

「お前から呼ぶのは珍しいからな。ところで、なんでナンパされてるんだ?」

 

「違う!」

 

いつものようなやり取りをしていると、横のちっちゃい女の子(シリカ)がキリトに聞く。

 

「キリトさん、この人は……」

 

「こいつは仲間のハルだ。今回の事で協力してもらう事にした」

 

「何に協力するかは知らんがとりあえず勝手に決めたのは許さん」

 

「そうだシリカ。こいつにはあるスキルがあってだな……」

 

「すいませんでした。協力させていただきますキリト様」

 

あっぶねー。こいつ、俺が隠してる事で脅してきやがったぞ。立ち直って欲しいとは思ったが、こんな方向に捻じ曲がるとは。

そう思っていると横から声がかかる。

 

「おい、あんたらーー」

 

その声に視線を向けると、そのままキリト達に絡んでいたプレイヤーが話を続ける。

 

「見ない顔だけど、抜け駆けはやめてもらいたいな。俺たちはずっと前からこの子に声掛けてるんだぜ」

 

「そう言われても……成り行きで……」

 

キリトが困ったような顔で、頭を搔く。

 

(このコミュ障め)

 

そう思った俺は、キリト達の前に立ち口を開く。

 

「この子とは今会ったばかりだが、いい大人が寄ってたかって女の子を所有物みたいに扱うなよ」

 

「しょ……所有物なんて…」

 

男達が反論しようとするが、俺はそれをねじ伏せ、続ける。

 

「だってそうだろ、俺たちが先に誘ってたんだからこっちに来いって、彼女の意思を無視してるじゃないか」

 

男達はバツが悪そうな顔で、どこかへ去っていった。

 

「あ、あの…ありがとうございます!」

 

「大したことじゃない。けど、ああいう手合いはキッパリと断る事だ」

 

「は、はい」

 

「こいつは言い方はキツいが、良い奴なんだ。仲良くしてくれ」

 

キリトから謎にフォローが入る。

 

「余計なお世話だ」

 

「ふっ……ふふふ」

 

「?…なんだよ」

 

「いえ、おふたりとも仲がいいんだなって」

 

それを聞いて、お互いに顔を見あわせた後、すぐにシリカの方を向き、

 

「「まさか」」

 

前言撤回、仲良しかもしれん。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

シリカの案内で俺たちは《風見鶏亭(かざみどりてい)》の前にいた。

 

「あ、おふたりのホームはどこに……」

 

「ああ、いつもは五十層なんだけど……。面倒だし、俺もここに泊まろうかな」

 

「なら、俺もだな」

 

「そうですか!」

 

嬉しそうにシリカが両手をぱんと叩いた

 

「ここのチーズケーキがけっこう行けるんですよ」

そう言いながら俺たちの袖を引っ張って宿屋に入ろうとした時、隣の道具屋から四、五人の集団が出てくる。

 

ーーーー来たか

 

最後尾の女性プレイヤー(クソビッ〇)がシリカを見て近づていてくる。

 

「あら、シリカじゃない」

 

ロザリア(クソビッ〇)が話しかけて来た。

 

「………どうも」

 

呼び止めたロザリアにシリカが仕方なさそうに返答する。

 

「へぇーぇ、森から脱出できたんだ良かったわね」

 

ロザリアは、どこか喜色を感じさせる声色でそう言った。

 

「でも、今更帰ってきても遅いわよ。ついさっきアイテムの分配は終わっちゃったわ」

 

「要らないって言ったはずです!ーーー急ぎますから」

 

会話を切り上げようとするシリカを尚もロザリアは話し続ける。

 

「あら、あのトカゲ、どうしちゃったの?」

 

シリカが唇を噛む。当然だ、使い魔は格納できない。居ないということはそういうことだと分かってるだろうに、ロザリアは発言をやめない。

 

「あらら、もしかしてぇ………?」

 

「死にました……でも!」

 

「ピナは、必ず生き返らせます!」

 

いかにも痛快と言う風に笑っていたロザリアが少し驚きの表情を見せた後、小さく口笛を吹く。

 

「へぇ、てことは《思い出の丘》に行く気なんだ。でも、あんたのレベルで攻略できるの?」

 

「「できるさ」」

 

俺とキリトが同時に答える。

 

「そんなに難しいダンジョンじゃない」

 

ロザリアはあからさまに値踏む視線で俺たちを眺め回し、再び嘲るような笑みを浮かべた

 

「あんたたちもその子にたらしこまれた口?見たトコそんなに強そうじゃないけど」

 

悔しさからか、シリカの体が震えている。

 

(一人で戦うことすら出来ない臆病者のくせに)

 

「なんだって!?」

 

ーーーーおっと、口に出てた。

 

「さぁ、なんの事だ?」

 

ロザリアがこちらを睨みつけるが、俺たちはそれを無視して《風見鶏亭(かざみどりてい)》へ入った。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

風見鶏亭(かざみどりてい)》のチェックインを済まして、カウンターで注文を済ました俺とキリトは、シリカの座る席へと向かう。

腰掛けた俺たちにシリカが口を開くも、キリトが手で制し、軽く笑いながら言った。

 

「まずは食事にしよう」

 

ちょうどその時、ウェイターが湯気の立つマグカップを三つ持ってきた。

目の前に置かれたそれには、不思議な香りの赤い液体が満たされている。

 

「パーティ結成を祝して」

 

というキリトの声にこちんとカップを合わせ、全員が熱い液体をすすった。

 

「……おいしい……あの、これは?……」

 

キリトはにやりと笑うと、言った

 

「NPCレストランはボトルの持ち込みもできるんだよ。俺が持ってた《ルビー・イコール》っていうアイテムさ。カップ一杯で敏捷力の最大値が1上がるんだぜ」

 

「そ、そんな貴重なもの……」

 

「酒をアイテム欄に寝かせても味が良くなるわけじゃないしな。俺、知り合い少ないから、開ける機会もなかなかないし……」

 

「自分で言ってて悲しくならないのか?」

 

「うるさいな」

 

そんな会話にシリカは笑いながらもう一口飲んだ。やがてカップが空になり、視線をテーブルの上に落とし、呟いた。

 

「……なんで……あんな意地悪言うのかな……」

 

その発言にキリトが真顔になり、カップを置き、言った

 

「君は……大規模ネットゲーム(MMO)はSAOが……」

 

「初めてです」

 

「そうか。ーーーどんなオンラインゲームでも、キャラクターに身をやつすと人格が変わるプレイヤーは多い。善人にも悪人にもなる、所謂ロールプレイと従来入ってたんだろうがな。でも俺はSAOの場合は違うと思う」

 

キリトの目が鋭くなる。

 

「今はこんな、異常な状況なのにな……。そりゃ全体が協力してクリアを目指すのは不可能だってのは解ってる。でもな、他人の不幸を喜ぶ奴、アイテムを奪う奴、ーーー殺しまでする奴が多すぎる」

 

キリトは怒りと悲しみが混じった目でシリカの目を見る。

 

「俺はここで悪事を働くプレイヤーは、現実世界でも腹の底から腐ったやつなんだと思ってる」

 

その言葉に気圧されたシリカの表情に気づき、すまない、と軽く笑いながらキリトは言う。

 

「……俺だって、とても人のこと言えた義理じゃ」

 

「キリト、もういい」

 

「……すまん」

 

それを見てシリカが何かを悟ったような表情を見せ、口を開いた。

 

「キリトさんは、いい人です。あたしを、助けてくれたもん」

 

「……俺が慰められちゃったな。ありがとう、シリカ」

 

「………別に感謝されたい訳じゃないが、俺はどうなの?」

 

俺がそう言うと、キリトとシリカが吹き出す。

 

「笑うことないだろ!?」

 

「「だって面白いもん」」

 

「扱いが理不尽!」

 

そんな会話をしていると、時刻は既に夜八時を回っていた。

明日の四十七層攻略に備えて早目に休むことにして、俺たちは《風見鶏亭(かざみどりてい)》の二階に上がった。

キリトと俺が取った部屋は、偶然にもシリカを挟む形になった。

顔を見合わせ、笑いながらおやすみを言う。

そうして俺は部屋に入る振りをして、すぐにキリトの部屋に行く。

 

「邪魔するぞ」

 

「おう」

 

扉の横に陣取り、話を聞く。

 

「んで、さっさと本題に入るが、珍しく呼び出して何の用だ?」

 

「少し前の話なんだがーーー」

 

そこで俺は、壊滅したギルド《シルバーフラグズ》のことを聞いた。

 

「……なるほどな、いつものお節介か」

 

 

「お節介ってわけじゃない………ただ、」

 

「[同じだ]って?」

 

「………」

 

「やめとけ、お前とそいつは何もかも違う。同情するのは逆に失礼だ」

 

「そうだな……」

 

そんな会話をしていると、扉を二度叩く音が聞こえた。キリトが応答するとシリカが入ってくる。

 

「あれ、どうかしたの?」

 

「あのーーーええと、その、あのーーよ、四十七層のこと、聞いておきたいと思って!」

 

鈍いキリトは訝しむ様子もなく頷く。

 

「ああ、いいよ、階下に行く?」

 

「いえ、あのーーー良かったら、お部屋で……」

 

「言っとくが、二人きりじゃないぞ」

 

「へっ?わっ!」

 

扉の横にいて気づかれなかったのだろう、シリカが驚いた様子でこちらを見る。

 

「いっ居たんですね!」

 

「酷くない?」

 

そんなことがありつつも、キリトが《ミラージュ・スフィア》を使い、シリカに説明していく。

 

「ーーこの橋を渡ると、もう丘がみえ……」

 

不意にキリトの声が途切れ、こちらを見る。それを見た俺はすぐさま扉を開けた。

 

「誰だっ……!」

 

扉を開けると、誰かの背中が見え、階段をどたどたとかけ降りていった。

 

「な、何……!?」

 

シリカが疑問の声を上げる。

 

「……聞かれてたな……」

 

「扉の真横にいたのにすまんな」

 

「気にするな、お前の索敵スキルは俺程じゃない」

 

「聞かれてた、って……ドア越しじゃあ声は聞こえないんじゃ……」

 

「聞き耳スキルが高いとその限りじゃないんだ。そんなの上げてるやつは……なかなかいないけど……」

 

「でも、なんで立ち聞きなんか……」

 

「ーーー多分、すぐに解るさ。ちょっとメッセージ打つから、待っててくれ」

 

それを聞いたシリカは、ベッドに丸くなり、キリトの横顔を眺めながら寝てしまったようだ。

 

(俺の影、薄くない?)

 

この後部屋に戻り、ふて寝した

 

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