あれから数分、ボスの攻撃に対し、俺たち三人は苦戦を強いられていた。
クライン達は軍の連中を部屋の外へ引き出そうとしているが、俺たちが中央で戦ってる上、コーバッツが動こうとしないために遅々として避難が進まないのが現状だった。
さらに、ボスの攻撃は
正直、ジリ貧だった。
そんな中、キリトがまともに攻撃を受けてしまった。
「ぐっ!」
「キリト!」
「キリトくん!」
次いで振り下ろされた二撃目をキリトが弾き、無理やりブレイクポイントを作った。
「ハル!アスナ!十秒持ちこたえてくれ!」
ーー来た!
「任せろ!」
俺はそういうと、
ほんの数秒の攻防の後、後ろからキリトの声が聞こえた。
それを聞いた俺とアスナは全力のソードスキルを放った。
光芒を引いた一撃がボスの剣と衝突して火花を散らす。
大音響と共に双方がノックバックし、間合いが出来た。
「スイッチ!」
キリトがそう叫ぶと同時に飛び込んだ。
攻撃を弾かれ、動きを止めていたボスがキリトに向かって剣を振りかぶる。
蒼炎を纏ったその剣をエリュシデータで弾き、間髪入れず先程の隙で装備したダークリパルサーを背中から抜き、そのまま、ボスの腹に叩き込んだ。
「グォォォォ!」
憤怒の叫びを上げながらボスはその大剣を振り下ろした。
キリトがそれを両手の剣を交差して受け止め、押し返した。
そうして体制が崩れたボスをあの十三撃が襲う。
「うおおおおああ!!」
キリトが咆哮とともに左右の剣を叩き込む。
ーーーどれだけの攻撃を受けようと。
「ハルくん!?」
アスナの驚愕する声が聞こえる。が、構わず飛び出しキリトに襲いかかる攻撃を弾いた。
キリトの方を見るとアスナと同じような顔をしてこちらを見ている。
それに対して、叫んだ。
「全部防ぐ!だから、やれ!」
そう叫んだ俺に頷いたキリトが先程よりも、もう一段階早く攻撃を繰り出す。
その連撃を止めようとするボスの攻撃を逸らし、弾き、相殺。
そして俺とキリトの攻撃が重なりーーー
「「ウォォォォ!!」」
ーーー咆哮とともに、
「ゴアァアアア!!!」
瞬間、ボスが絶叫し、その全身が硬直した直後。
グリームアイズは、膨大な青い欠片となり、爆散した。
それを見届けた俺たちは納刀し、自身の体力ゲージを確認する。
まともにヒットしなかったとはいえ、俺の装備が比較的軽装なのもあり体力は少々減っていた。
それを見て、ふっ、と体から力が抜け、意識が暗転した。
ーーーーーーーーーーーー
「………ル!ハル!」
クラインの叫びに意識が呼び起こされる。
「………起きて直ぐに落ち武者の顔を見ることになるとは」
「やかましいわ!」
クラインに軽口を叩きながら、体を起こす。
「バカッ……!無茶して……!」
その声の方を見ると、アスナがキリトに抱きついていた。
「……あんまり締め付けると、俺のHPがなくなるぞ」
冗談めかしてキリトがそう言うと、アスナが真剣に怒った顔をして、回復用のポーションを口に突っ込まれていた。
「フッ」
その様子があまりにも面白くて笑みがこぼれる。
キリトから抗議の視線が飛んでくるがそれを無視して、真っ先にクラインに問う。
「軍は?」
「……コーバッツの野郎が撤退しなかった時はヒヤヒヤしたが、なんと、誰も死ななかったぜ!」
それを聞いて、溜まった疲労とともに息を吐き出す。すると、クラインが当然の疑問を投げかけてきた。
「そりゃあそうと、オメェら何だよさっきのは!?」
「……言わなきゃダメか?」
キリトがそう言うと、クラインが直ぐに言葉を返した。
「ったりめぇだ!見たことねぇぞあんなの!」
気づくと部屋にいる全員が沈黙して俺の言葉を待っている。
キリトと顔を見合わせ、お互いに頷くと、先にキリトが口を開いた。
「ーーエクストラスキルだよ。《二刀流》、で」
「俺も同じくエクストラスキル。《神速》」
おお……というどよめきが、いつの間にか戻ってきていた、コーバッツ含めた軍の連中と、クラインの仲間の間に流れた。
「しゅ、出現条件は」
「「解ってりゃもう公開してる」」
クラインの疑問に一言一句違わず、同じ言葉を吐く。
首を横に振った俺たちに、
エクストラスキルは出現条件が分かっていないスキルが多い、但し、俺の場合はほぼ確実にユニークスキルだろう。
そんな確信があるのは俺のスキル、《神速》の内容のせいだ。
このスキルを手に入れたのは1年ほど前の事。第四十層フロアボス攻略会議の少しあとーーーー
その日の俺は、会議が終わってすぐに、迷宮区でレベリングをしていた。
四十体程のエネミーを倒すとレベルが上がったので、安全エリアにてスキルを割り振っていた。
ウィンドウを見ながら、どのスキルを強化するかを考えて、ウィンドウをスクロールすると、見慣れないスキルが見えた。
(なんだこれ?神速?)
そこには、見たことも聞いたことも無いスキルがあった。
慌ててスキル詳細を見ると、とんでもないことが書いていた。
《神速》(パッシブ)
敏捷性+30%
装備重量が特定以下であればスキル使用可能。
ソードスキル使用後、一定時間防御力-20%
(この効果はソードスキル使用の度、効果時間がリセットされる)
書かれていたのはその三つ、一番上は素直にありがたいが、それ以降が非常にまずい。
その文章を見た俺は直ぐにウィンドウを切り替え、今の装備より少し重い装備に替え、ソードスキルの構えを取る。
だが、ライトエフェクトもシステムのアシストも発生する気配がなく、ただ、安全エリアで構えを取る変人と化しただけだった。
咳払いをして仕切り直し、いつもの装備に戻し、ソードスキルを放つ。
問題なく発動したものの、体力ゲージの下を見ると、防御力ダウンのデバフがかかっており、それを見て、俺は頭を抱えた。
「嘘……だろ?」
この世界において致命的な
迷宮から出て、宿に帰った後、このスキルがユニークスキルだと確信した俺は、
数日後、擬似的な二刀流が可能なことに気づいてからは、嬉しいような悲しいような複雑な気持ちを抱えながら、エネミーに八つ当たりした。
まぁ、短剣と軽めの直剣ぐらいでしか二刀流出来ないけどな!
ーーーーーーーーーーーー
場面は戻り、七十四層。
「ったく、水臭ぇな二人共。そんなすげぇウラワザ黙ってるなんてよう」
「スキルの出し方が判ってれば隠したりなんかしないさ。でもさっぱり心当たりがないんだ」
「俺もだ。………つっても俺の場合はキリトと違って代償が致命的だけどな」
「カワイソウダナー」
キリトが棒読みでこちらに話しかける。
「てめぇの訓練手伝ったのは俺だぞ!」
「その節はどうもありがとうございました」
「感謝の気持ちが感じられねぇ!」
いつもの軽口が始まる。が、それより軍の連中だ。
「……コーバッツ」
俯いているコーバッツに話しかける。直ぐに顔をあげたコーバッツに語りかける。
「あんた、指揮官なんだろう?」
「……そうだ」
自分一人で勝手に死ぬのとはワケが違う。
「あんたは部下の命を預かる立場だ。それだけは自覚しとけ」
「……ああ」
素っ気ない返答をしたコーバッツは自らの判断が間違っていたことには気づいたようだった。
短い言葉を交わし、キリト達の方へ戻ると、軍の連中がキリトとアスナに礼を言っていた。
「ハル、転移門アクティベートしに行くぞ」
「キリトは……」
突然話しかけてきたクラインの視線の先を見ると、なんだかイイ感じの空気を感じた。
「……なるほどな」
それを見て、訳を理解した俺はキリトに近づき、一言。
「キリト」
「?」
「
「?……ああ」
相変わらずの朴念仁とアスナを放って、俺達は七十五層へ上がった。
なかなか進まない