先を知るだけの男   作:emiya halucon

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地獄の始まり

そうして別れを告げ、数ヶ月が経った。

 

2022年11月6日 日曜日

 

この日、俺は再びナーヴギアを被り…………深呼吸をしていた。

 

………ビビりとか言うなよ。こちとら今からデスゲームになると分かってるところに凸るんだよ!クソ怖ぇよ!(チキン)

 

「フゥ………いくか……」

 

「リンクスタート!」

 

(次このセリフを言うのは2年と少し後だな)

 

そう思いながら意識はソードアート・オンラインの中へと飛んでいく。

 

ベータテストの際、作ったキャラデータですぐさまログインする。

 

ーーーーーーー最初に感じたのは自身を撫でる緩やかな風と美しい街並みだった。

 

帰ってきた……帰ってきてしまったんだ。この世界に。

 

これから先、地獄になる世界に。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ログインしてからの行動は決めている。キリトと合流することだ。

 

関わると決めたのもある、だが何よりもこの世界に転生して始めて出来た[友達]なのだ。だから真っ先に会いたかった。

 

キリトが居るであろう裏道の武器屋へと走るとすぐにあの勇者然とした逞しさを感じる顔を見つけた。

 

「キリト!」

 

相手もこちらに気づいたようで、笑みを浮かべてこちらに近づいてきて

 

「お前ならすぐにログインすると思ってたよ」

 

「俺はてっきり攻略を始めてるもんかと思ってたよ」

 

「行こうかと思ったけどどうせ、どこぞのゲーム廃人がすぐ来ると思ってな」

 

「どの口が言ってんだよ」

 

そうやって談笑をしていると誰かから声を掛けられ、後ろを振り向くと、そこに居たのは見覚えのある赤髪にバンダナをつけたプレイヤーだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

始まりの町から、西の方角にある草原へ俺たちは来ていた。

 

見覚えのある赤髪のプレイヤーの名は俺の予想通り、クラインだった。

 

原作と同じく、迷いなく裏道に入った俺たちを見てベータテスターだと当たりをつけ、今こうして、ソードスキルを教わっている。

 

 

ーーーとはこうズバーン!て打ち込む感じで………」

 

 

そうこうしているうちにクラインはソードスキルの感覚を掴んだようでイノシシを倒して、歓喜に打ち震えていた。

 

……………まぁ、雑魚だと知るとかなり落ち込んでいたが

 

そうして、運命の時が来る。

 

「あれっ?」

 

クラインの声が響く

 

「なんだこりゃ。…………ログアウトボタンが、ねぇよ」

 

その一言に俺は覚悟を決める。

 

「なぁ、ハルお前も確認してくれ」

 

キリトに言われるがまま、俺はウィンドウを開きログアウトボタンを確認する。

 

「俺もない」

 

クラインが頼んでいたピザが食べられないことを悲観し、キリトと会話をしていた時。

 

鐘のような音とともに俺たちは青い光に包まれ飛ばされる。

 

…………………来たか

 

光が薄れると同時に風景が戻る。が、そこは草原ではなく広大な石畳に周囲を囲む街路樹と、中世風の街並み、そして正面遠くに黒光りする宮殿。

 

間違いなく、俺たちは始まりの町の中央広場にいた。

 

他のプレイヤーと続々と広場に転移されてきている中、俺はこれから起こる事にどこか興奮していた。

 

(馬鹿な話だ。これから地獄が始まるのに、興奮してるなんて)

 

「あっ………上を見ろ!!」

 

誰かが叫ぶ

 

俺たちは上を見上げ、そして、そこに異様なものを見る。

 

第1層の天井でもあり、第2層の底でもあるその場所を、英文が埋めていく。

 

広場のざわめきが無くなり、そこにいるプレイヤー達が耳をそばだてる。

 

そして、血液の雫のようにどろりと垂れ下がったナニカが空中に彼を形作る。

 

ーーーーーーそこには

 

真紅のフード付きローブを身にまとったGM(茅場晶彦)の姿があった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

それから語られたのは、原作通りの事だった。

 

ログアウト出来ないのは仕様であること。

 

この世界で死ねば現実でも死ぬこと。

 

 

 

 

そして、解放されるにはこのゲームをクリアすること。

 

 

茅場が現状を説明したあと、俺たちのインベントリに手鏡が送られる。

 

何の変哲もない手鏡。だが、そこにいた人々に現実を認識させるには十分なものだった。

 

俺やキリト、クラインそれ以外にも視界に移るプレイヤー全員を白い光が包み込む。

 

二、三秒で光は消え、元の風景が現れる。

 

そうして目の前にいたのは、中性的なイケメン(キリト)野武士(クライン)だった。

 

キリトやクラインがお互いが誰かを確認している。

 

俺はそれを見ながら場違いな事を考えていた。

 

ーーーーーーーーこの主人公(キリト)イケメンすぎる!!。

 

そんな事を考えていると、キリトとクラインから声を掛けられる。

 

「「お前がハルか!?」」

 

突然声をかけられ、びっくりしたが手鏡を見て驚いた振りをして答えておく。

 

「あ、あぁ、そうだ。」

 

何故リアルな顔が再現されているのかキリトとクラインが話しているのを尻目に、俺はこれからの事を考える。

 

ーーーーーこの後、キリトに連れ出されたクラインとの感動的(^U^)な別れがあるはず、それに備えて別れ際の捨て台詞を考えてよう。

 

そんな事を考えていると、キリトに街路へと連れ出され、共にこの街を出ることを提案される。

 

「いいか、よく聞け。俺はすぐにこの街を出て、次の街に向かう。お前達も一緒に来い」

 

その言葉の後、理由を長ったらしく説明したキリトに俺は即座に返答を返す

 

「俺は行くよ。クラインは?」

 

「俺は……俺は、前に言った通り、他のゲームでダチだった奴らと一緒に徹夜で並んでソフト買ったんだ。そいつらもさっきの広場にいるはずだ。置いて………いけねぇ」

 

キリトは息を詰め、唇を噛む。

 

原作と違いベータテスターである俺がいることを考えても、クラインの仲間を、連れて行くのは厳しいだろう。

 

彼らの正確な人数は覚えていないが4人はいたはず、俺たち2人ではその人数を守りながら次の村まで行くのは困難を極めるだろう。

 

クラインはキリトの考えが読めたのだろう。

 

「いや…………おめぇらにこれ以上世話んなるわけにゃ行かねぇよな。俺だって前のゲームじゃギルドのアタマはってたしよ。大丈夫。今まで教わったテクで何とかしてみせら。それに………これが全部悪趣味なイベントの演出の可能性だってあるしよ。だから、おめぇらは気にしねぇで、次の村に言ってくれ」

 

キリトがどこか苦しそうな顔でクラインに別れを告げ、続いて俺も別れを告げる。

 

そうして街路から街を抜けようとすると、クラインに声をかけられる。

 

「キリト!ハル!」

 

俺たちはクラインの方を向く。

 

クラインが何かを言おうと頬が動くが、続く言葉はなかった。

 

俺たちは1度手を振り、体を次の村へと向けた。

 

五歩ほど離れたところで、もう一度俺たちの背中に声が掛けられた。

 

「おいキリトにハルよ!おめぇら、本物は案外カワイイ顔してやがんな!結構好みだぜオレ!!」

 

俺たちは向き合って苦笑いし、肩越しに叫んだ。

 

「「お前もその野武士ヅラの方が二十倍似合ってるよ!!」」

 

そうして俺はこの世界で二番目に出来た友人に背を向け、ひたすら歩いた。

 

始まりの北西ゲート、広大な草原と深い森、それらを超えた先にある小村ーーーそしてその先に続く地獄を見据えて、俺たちは走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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