先を知るだけの男   作:emiya halucon

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再会。そして戦い

一月後の事、俺はトールバーナに続く道を歩いていた。

前方を見ると、うっすらと次の階層へと続く塔と街並みが見えてくる。その光景を眺めながら、俺は考えていた。

 

(原作と変わらず、ひと月で2000人が死んだ。)

 

俺は、たったひと月で五分の一のプレイヤーが死んだことに実感を持てず、現実から目を背けるようにキリトが今、何をやって(フラグをたてて)いるかを想像していた。

 

(そろそろアスナ(後の嫁)と出会って、介抱している頃だろうな。)

 

そんことを考えているといつの間にかトールバーナの入口に着き、視界には【INNER AREA】と表示されていた。動くのはネズミ(アルゴ)から聞いた明日の夕方にある攻略会議だ。それまで俺は体を休めることにした。適当な宿に入り、ベッドに寝転ぶと、この街までの道のりがそれなりに険しかったのもあり、すぐに意識は夢へと落ちた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

翌日の夕方ーーーーー俺は、トールバーナの噴水広場にきていた。今から始まるようで、広場の中央に青髪の青年(ディアベル)が立っていた。それを確認した俺は、後ろ側の段差を見渡し、目的の人物"達"を見つける。

 

「よォ、キリト。ひと月ぶり」

 

それを聞いたキリトは一瞬固まった後、ものすごい速度でバッとこちらに振り向いた。

 

「ハル!」

 

「俺がソロで頑張ってる間にナンパとはやるじゃん」

 

「違う!これはーーーー」

 

キリトが必死に否定しているのを見たフード付きの子(アスナ)はキリトの意外な反応を見て、驚いているようだ。

 

「ーーーハル。いまさっきソロって言ってたがパーティは組まなかったのか?」

 

………まずい。あくまでアスナと出会わせるための嘘だったので、パーティは組んでいなかった。すぐに頭を回しあたりざわりのない返答をする。

 

「パーティをもうしこんでもなかなか相手がOKしてくれなくてな。結局ソロでここまで来たんだ」

 

「そうだったのか。まぁ俺も似たようなもんだしなんとも言えないな」

 

上手くごまかせたようでよかった。そんな会話をしているとディアベルが全体に声をかける。

 

「はーい!それじゃ、5分遅れだけどそろそろ始めさせてもらいます!ーーーーー」

 

そうしてあのトゲトゲ頭(キバオウ)がちゃちゃを入れに来る。

 

「ちょお待ってんか!」

 

全体が静まり返り、全体の視線がトゲトゲ頭へと刺さる。

 

「そん前に、こいつだけは言わしてもらわんと仲間ごっこはでけへんなーーーー」

 

しっかりとエギルに論破されたトゲ()を見つつ、俺は1層のボスのこと(ディアベルの死因)を考えていた。

 

ーーーーーAGI(敏捷性)を中心に振っている俺のステータスではボスのスキルを弾くことはできないだろう。つまり、ディアベルを助けるには、エギルのようなSTR(筋力)に振っているようなプレイヤーに攻撃を弾いてもらうか、そもディアベルを行かせない必要がある。だが、ディアベルが俺の制止を振り切る可能性がある上、俺の指示を聞いて素早く動けるプレイヤーがいるかどうかも分からない。

これでは助けることは不可能に近いだろう。

どこかに俺の指示に素早く反応できるプレイヤーでもいればいいんだが……………ーーーーいるじゃん。真横に。しかも全プレイヤーで一番反射神経が高いじゃん。

 

 

ーーーーーよし。作戦は決まった。あとは俺次第だ。

 

 

思考の海から浮上すると、目の前に騎士(ディアベル)様が前に来ていた。しばし考え込む様子を見せた後、爽やかに言った。

 

「君たちは、取り巻きコボルドの潰し残しが出ないように、E隊のサポートをお願いしてもいいかな」

 

翻訳すると「ボス戦の邪魔にならないよう、後ろで大人しくしてろ」だ。トゲの立たない言い方ができるのは、彼の人柄故か。それを聞いたアスナは一瞬、非友好的な反応を仕掛けていたが、キリトが無事手綱を握り、止めていた。

ディアベルが去った途端、左耳から剣呑な響きを帯びた声が聞こえた。

 

「……どこが重要な役目よ。ボスに一回も攻撃出来ないまま終わっちゃうじゃない」

 

「し、仕方ないだろ、三人じゃスイッチでPOTローテするにも時間が足りない」

 

キリトが理由を説明するも、箱入り娘殿には伝わらなかったようで疑問の声をあげていた。午後5時半、会議が終わり、集団はお友達同士で酒場やレストランへと消えていった。そんな中、アスナが疑問を投げかける。

 

「……で、説明って、どこでするの?」

 

「あ、ああ………俺はどこでもいいんだが、ハルはどうだ?」

 

「俺はその辺の酒場でいいけど、フードさんはそうじゃなさそうだぞ」

 

「ハルさんの言うとおり、誰かに見られたくないわ」

 

「なら、どっかのNPCハウスとかーーーー」

 

そうしてキリトの提案全てが叩き潰された後、アスナはため息混じりに話し出す。

 

「……だいたいこの世界の宿屋なんて、部屋ともよべないものばっかりじゃない。部屋にベッドとテーブルがあるだけで、それで一晩五十コルも取るなんて。食事とかはいいけど、睡眠だけは本物なんだから、もう少しいい部屋で寝たいわ」

 

「え………そ、そう?」

 

キリトが思わず首を傾げるのを見て、俺はアスナにおしえることにした。

 

「フードさん。この低層フロアで【INN】って看板がある場所はとりあえず寝泊まりできる店ってだけで、コルを払って借りれる部屋は宿屋以外にもあるんだぜ」

 

そう言うと、アスナの唇がぽかんと丸くなった。

 

「な…………そ、それを早く言いなさいよ………」

 

それを聞いてキリトが風呂付きの部屋に泊まっていると自慢した瞬間、アスナの目付きが変わった。それを見て俺は、(こいつよく墓穴掘るよな………)なんて考えていた。

 

その後素人童貞(キリト)お風呂魔人(アスナ)の圧に負け、自身の宿場へと案内して行った。

 

「…………帰るか…」

 

俺には泊まる所があるんだ。だから決して羨ましいとかそんなことはない。決してない。多分、きっと、maybe

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ボス戦当日。

 

午前十時に噴水広場に集合した四十四人のプレイヤーはどこか剣呑な雰囲気を漂わせながら、迷宮区に入るのを待ちわびていた。

 

そんな中、横のキリト(素人童貞)はアスナを見つめていた。

 

「………何見てるの」

 

「な、なんでもない」

 

(ヘッ!ざまぁみろ!)俺はキリアス大歓迎だが、それはそれ、これはこれだ!ヴァカめ!内心そう思っていると、

 

「おい」

 

後ろから、枯れたサボテン(キバオウ)がいた。俺は唖然としているキリトを横目に、キバオウの発言を聞く

 

「ええか、今日はずっと後ろに引っ込んどれよ。ジブンらは、わいのパーティのサポ役やからな」

 

「………………」

 

キリトは黙り込んだままだ。

 

「大人しく、わいらが狩り漏らした雑魚コボルドの相手だけしとれや」

 

「(わざわざ言いに来るなんて、ご苦労なやつだな)」

 

「なんやて!?」

 

?………反応を見るに、声に出ていたようだ。ボス戦前に変な事になっても面倒だ、誤魔化そう。

 

 

「ご苦労様って言ったんだよ、サボt…キバオウさん」

 

そういうとサボテン(キバオウ)は気に入らなさそうな顔をしながら去って行った。

 

そんな小競り合いもしばしば、ディアベルが声を張り上げる。

 

「皆、いきなりだけどーーーーありがとう!たった今、全パーティ四十四人が、1人もかけずに集まった!」

 

途端、周辺から歓声が飛び出す。ディアベルは全体を笑顔で見渡し、右拳を突き出して叫んだ。

 

「今だから言うけど、オレ、実は1人でもかけたら今日は作戦を中止しようって思ってた!でも………そんな心配。みんなへの侮辱だったな!オレ、すげー嬉しいよ……こんな、最高のレイドが組めて………。まぁ、人数は上限にちょっと足りないけどさ!」

 

ディアベルの激励が全体を浮き立たせる。

ーーーー危険だ。これほどのリーダーシップを持つディアベルを賞賛したいが、ここまで盛り上げれば油断を生む可能性があるだろう。

キリトもそう考えているのか、どこか不安げだ。

そうして、周りがひとしきり喚いたところで、ディアベルが歓声を抑えた。

 

「みんな………もう、オレから言うことはたったひとつだ!」

 

「…………勝とうぜ!」

 

そうして俺たちは迷宮区へと向かった。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

午後十二時半。

俺たちは誰一人犠牲を出さず大きな二枚扉の前にいた。

 

「……ちょっといいか」

 

キリトがアスナへとコボルドの攻略法を教えている。

 

俺は、その間にやるべきことを考える。

今回で重要なのは、ディアベルを死なせないこと、そしてキリトをに一人にしないこと。それを達成しなければ、解放軍は腐敗し、キリトは苦しむだろう。それを防ぐことが俺の任務だ。

 

そうして戦いは始まる。

 

「ーーーーーー行くぞ!」

 

ディアベルの一言と共に、俺たちはボス部屋へと駆け込む。入ると同時に部屋に明かりが灯り、部屋の主が咆哮する。そこには、前世、そして今世でも変わらない、毛皮を纏った獣人が、いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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