あの修行の後、キリトの提案により、別行動をすることになった。
ーーーー本当に大丈夫か?」
「ああ、ビーターの俺といると良くない噂が立つ」
「俺は気にしないぞ」
「俺が気にする」
キリトが食い気味にそういった。
「わかった、でもたまにはパーティ組もうぜ」
「ああ、その時はよろしく」
そうした会話をして俺たちは再び別れた。
ーーーーーーーーーーーーー
四ヶ月程の時が流れ、二十五層のボス部屋にて。
キバオウの怨嗟の声がボス部屋に響き渡る。
「………何人、死んだ」
「………解放隊も合わせて、四十四人」
俺の無意識の問いにキリトが答える。
ーーーーーまた、死んだ。
叫ぶキバオウをと俯いたディアベルを見て、その場にいたプレイヤー全てが沈鬱な表情を浮かべている。
そこに、クォーターボスを倒した喜びは一切なく、俺たちはただ、死んだ人間のことばかりを考えていた。
俺たち攻略組は亡霊のような顔をしているキバオウを連れ、二十六層の転移門を解放する。
転移してくる下層のプレイヤー達が俺たちを見つけ、喝采を送る。だが、俺たちの表情を見て察したのだろう。
少しづつ喝采は収まり、そこにいたプレイヤー達は何も言わず憐れみの視線を送ってくる。
「キリト、俺は下層の宿に行くよ」
「……ああ」
俺はその視線に耐えきれず転移門から下の層へ行こうとして、着いた先はーーーーー見たことの無い場所だった。
ーーーーーーーーーーーーー
ーーーーなんだここ?
転移門に入った俺が見たのは見なれた下層の街並みではなく、とても綺麗な平原だった。
「……とりあえず、周りを探索するか」
なにかの隠しマップなのだろう、と当たりをつけ、そこらを探索していく。
周辺を探索したが、なにかある訳でもなく。そこは、爽やかな風が吹く平原だった。
ーーーーーーまるで第一層のように。
頭の中にあの日の記憶が蘇る。まだ、夢を見ていたあの頃を。
そんなことを考えていると、目の前に何かが飛んでいた。
ーーー蛍か?
光の玉のような何かに誘われるように後ろをついて行く。
一時間ほど歩いただろうか。平原から森へ、そしてその森を抜けたところでそれを見つけた。
円形上に敷かれたレンガとその中心に立つ短剣を。
発見したその場に、
中心の短剣を抜き去った途端、空気が変わる。
ーーーートラップか!
そう思ったが、何も起こらず、俺は困惑する。
「いったい、なんなん……」
言い切る前に、頭上から嫌な予感を感じた俺は
その騎士が構えると同時に、体力ゲージが現れ、レンガに沿って見えにくい壁が立ち上がる。
「ソロでボス戦かよ!………やるしかないな」
俺が構えたのを見て、騎士が圧倒的な速度で切りかかってくる。
ーーーー早い。
咄嗟に左手に握ったままだった短剣と背負っていた直剣を交差させて防ぐ。
「っ!」
ーーーー重い。
ステータスが速度特化とはいえ、防いだ上でHPを数ドット削られる。
「……なんなんだよ!もう!」
こうして、俺の
速度を活かして、ヒット&アウェイ。これを繰り返し続けるも、相手の体力ゲージは殆ど減っていない。逆にまともに食らっていないはずの俺の体力は七割を切っていた。
(重い上に早いせいで避けれない、防ぐ以外の手段がない!)
そこからさらに打ち合い、俺の集中力は確実に削られていた。
(もう限界だ。攻撃へ反応しきれない)
首の皮一枚繋がっているものの、いつ切られてもおかしくない状況だった。
そして、ついにその時がくる。
「あっ」
剣が手から叩き落とされる。そして、ざしゅっ!という音とともに俺の体力ゲージがものすごい勢いで減少し、残り数ドットという所で止まる。
ーーーーー終わりか
そう思い、目を瞑り、来るであろう衝撃に備える。
ーーーーー?
だが予想していた衝撃は来ず、視線を上げると騎士が後ろを向いていた。
「また明日来るといい……」
その言葉が聞こえた瞬間。左手に握っていた短剣がひとりでに動き、中心へ戻った。
それを見届けた後、物凄い衝撃を受け、俺は森の中へと吹き飛ばされた。
(そういう感じか)
吹き飛ばされた体制のまま、俺は奴に勝つための方法を考える。
翌日。俺はまたあの広場に来ていた。
(今回で勝つ)
昨日、攻撃パターンを頭の中で反復し、対策を立てた俺は広場の短剣を抜いた。
昨日と同じとおり、騎士が現れ俺が構えると同時に切りかかかってきた。