僕の姉はナイスネイチャ 作:ネイチャは下半神
僕には姉がいる。ヒトである僕とは違う、ウマ娘の姉が。
別にそれ自体は珍しいことじゃない。姉弟で種族が違うなんてよくあることだ。
「ただいま〜。ネイチャさん、久しぶりに帰ってきたよ〜」
ただ他とは違うことがあるとすれば、僕の姉はめちゃくちゃ可愛い。
────弟は、シスコンだった。
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僕の姉は卑屈だ。
褒められ慣れてないのか、自分の話になると照れ隠しかすぐに話題を逸らそうとする。トレセン学園に通ってからは特にそれが顕著だ。まあ恥ずかしがり屋なのは元からだけど。
「今回はどれくらい家にいれるの?」
「たぶん1週間くらい? ごめんねー、顔も全然見せなくて」
「ううん、忙しいのは知ってるから」
「いやー夏休みって言ってもほとんど休めないんだから、学生にはキツいよ」
やっぱり練習とかって厳しいの?
喉の奥まで出かかっていた言葉を慌ててしまいこむ。姉がこの手の話題を嫌って避けてるのは知っている。
僕から聞くのは論外だ。
「お姉ちゃん、なんだか年寄り臭いよ」
「ふーん……そんなこと言うのはこの口か〜?」
「……痛いって」
軽く冗談を言えば、僕の頬をつねってきた。ウマ娘の力で引っ張られたら怪我どころじゃ済まないが、姉は優しく引っ張ってくれる。
すごく、気持ちよかった。
────弟は、
「……実は、さ。今度のレース小倉記念に出る予定なんだ」
けどその日は本当に珍しく、自分からレースのことを話題にしてきた。
家にいる時は絶対に口にしなかった姉のことだ。何か心境の変化でもあったのだろうか?
「小倉記念って、来月末にあるG3の?」
「うん……まぁその前に、今月末と来月の頭にレースで勝たないといけないんだけどね」
そんなに出るのに、休んでて平気なの?
思わずそう聞いてしまいそうになる。姉から話題を振ってくれたのだから、何も問題ないはずなのに。
ずっと触れてこなかったせいで、僕の方から話題を避けるようになってしまった。
「そんな心配そうな顔しなくても平気だよ。これでも、スケジュールはちゃんと管理してるし。前2つのレースだって前哨戦だけど気は抜いてない」
心配していたのが顔に出ていたらしい。僕を気遣ってか、姉はいつにも増して自信ありげに答えてくれた。
正直、姉がG3に挑戦しようとしていることは素直に嬉しい。
姉が出走したレースは
────弟は、
「そっか。お姉ちゃんなら小倉記念もきっと勝てるよ」
「ありがとう。その時は京都まで応援に来てね」
「うん! ……うん? 京都?」
「そう、京都。小倉記念に勝ったら次は京都新聞杯に出る。それも勝てれば狙うのは、
「っ……」
言葉が出なかった。
僕の姉は冗談でこんなことを言うタイプでは無い。つまり本当に、本気で菊花賞を取りに行くつもりなのだろう。
「……菊花賞って、G1の?」
小倉記念と同じく、ただの確認。けれどその意味合いはまるで違う。
僕の質問に、姉は答えない。
口を開け閉めしては、何かを答えるのを
「…………やっぱり、分不相応、かな」
「いや、自分でも分かってるんですよ。どうせかないっこないって。そもそも、出れるかすら怪しいわけですし」
僕はそうは思わない。姉の実力は十分だし、才能だって他のウマ娘に引けを取らない。
けれど姉はそう思っていないのか、自分を下げるような発言が続く。
「アタシでも頑張ればなんて、さすがに高望みしすぎだって分かってるんですよ……」
こうなった姉は止まらない。一緒にいるのが家族であることすら忘れて、敬語で話す様はとてもつらそうで。
ともすれば泣き出してしまいそうな姉の姿は本当に苦しそうで、とてもじゃないが見ていられなかった。
「わっ、ちょ……」
「大丈夫、お姉ちゃんは強いよ」
姉に安心して欲しい。そう思って僕は姉のことを抱きしめた。
けどなんだろう、これは。すごく、良い匂いがする。
「お姉ちゃんが弱いなんて、僕はこれっぽっちも思わない。お姉ちゃんなら菊花賞を取れるって、本気で信じてるよ」
え、待って待って何これヤバい。シャンプー? シャンプーのせい? 学園で変わったから? にしたってお姉ちゃんの匂いも相まってなんて言うかものすごく……すごい。
「自信を持って。大丈夫、僕はいつだってお姉ちゃんの味方だよ」
お姉ちゃん、好きだ。
────弟は、
「…………ありがとね」
落ち着いたのか、姉は僕から離れて微笑んだ。
……もう少し抱きしめていたかった。
「い、いやー、こんな弱音吐くつもりで帰ったんじゃないんだけどなー」
「ふふっ……別に実家にいてまで強がらなくて良いんだよ。家族なんだから」
「う……でも弟の前くらいは、カッコつけたいじゃん?」
「? お姉ちゃんはいつでもカッコいいよ?」
「〜〜〜〜!! お世辞はいいから!!」
「えー?」
本心なんだけどなー。そう言うか迷って、けれどどこか満足そうな表情の姉を見て口を閉じた。
言ったところで、姉は恥ずかしがるに決まってる。
僕が分かっていればいいんだ。
姉はカッコいいんだと、強いウマ娘なんだと。僕だけは信じてる。これまでも、これからも。
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(うわ〜やっば〜〜〜。久しぶりの弟の匂い、最っ高なんだけど。それにアタシのことカッコいいって……もし菊花賞で1着だったら、また抱きしめてくれるかな……ふふっ)
────姉は、
ネイチャの弟概念を見て衝動書き。
好評なら続くかも。