僕の姉はナイスネイチャ   作:ネイチャは下半神

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公式設定ほど幼くないかもしれない。


僕の姉はナイスネイチャ

 僕には姉がいる。ヒトである僕とは違う、ウマ娘の姉が。

 別にそれ自体は珍しいことじゃない。姉弟で種族が違うなんてよくあることだ。

 

「ただいま〜。ネイチャさん、久しぶりに帰ってきたよ〜」

 

 ただ他とは違うことがあるとすれば、僕の姉はめちゃくちゃ可愛い。

 

 ────弟は、シスコンだった。

 

 

 

*************************

 

 

 僕の姉は卑屈だ。

 褒められ慣れてないのか、自分の話になると照れ隠しかすぐに話題を逸らそうとする。トレセン学園に通ってからは特にそれが顕著だ。まあ恥ずかしがり屋なのは元からだけど。

 

「今回はどれくらい家にいれるの?」

「たぶん1週間くらい? ごめんねー、顔も全然見せなくて」

「ううん、忙しいのは知ってるから」

「いやー夏休みって言ってもほとんど休めないんだから、学生にはキツいよ」

 

 やっぱり練習とかって厳しいの? 

 喉の奥まで出かかっていた言葉を慌ててしまいこむ。姉がこの手の話題を嫌って避けてるのは知っている。

 僕から聞くのは論外だ。

 

「お姉ちゃん、なんだか年寄り臭いよ」

「ふーん……そんなこと言うのはこの口か〜?」

「……痛いって」

 

 軽く冗談を言えば、僕の頬をつねってきた。ウマ娘の力で引っ張られたら怪我どころじゃ済まないが、姉は優しく引っ張ってくれる。

 すごく、気持ちよかった。

 

 ────弟は、変態(シスコン)だった。

 

 

「……実は、さ。今度のレース小倉記念に出る予定なんだ」

 

 けどその日は本当に珍しく、自分からレースのことを話題にしてきた。

 家にいる時は絶対に口にしなかった姉のことだ。何か心境の変化でもあったのだろうか? 

 

「小倉記念って、来月末にあるG3の?」

「うん……まぁその前に、今月末と来月の頭にレースで勝たないといけないんだけどね」

 

 そんなに出るのに、休んでて平気なの? 

 思わずそう聞いてしまいそうになる。姉から話題を振ってくれたのだから、何も問題ないはずなのに。

 ずっと触れてこなかったせいで、僕の方から話題を避けるようになってしまった。

 

「そんな心配そうな顔しなくても平気だよ。これでも、スケジュールはちゃんと管理してるし。前2つのレースだって前哨戦だけど気は抜いてない」

 

 心配していたのが顔に出ていたらしい。僕を気遣ってか、姉はいつにも増して自信ありげに答えてくれた。

 正直、姉がG3に挑戦しようとしていることは素直に嬉しい。

 姉が出走したレースは()()()()()()が、贔屓目(ひいきめ)なしに見ても重賞を取れるくらいのポテンシャルは十分にあるはずだ。

 

 ────弟は、ガチ勢(シスコン)だった。

 

 

「そっか。お姉ちゃんなら小倉記念もきっと勝てるよ」

「ありがとう。その時は京都まで応援に来てね」

「うん! ……うん? 京都?」

「そう、京都。小倉記念に勝ったら次は京都新聞杯に出る。それも勝てれば狙うのは、()()()

「っ……」

 

 言葉が出なかった。

 僕の姉は冗談でこんなことを言うタイプでは無い。つまり本当に、本気で菊花賞を取りに行くつもりなのだろう。

 

「……菊花賞って、G1の?」

 

 小倉記念と同じく、ただの確認。けれどその意味合いはまるで違う。

 僕の質問に、姉は答えない。

 口を開け閉めしては、何かを答えるのを躊躇(ためら)っているようだった。

 

 

「…………やっぱり、分不相応、かな」

 

 (しば)しの沈黙の後、根負けしたように声を絞り出した。それは昔からよく聞いていた姉の、()()()()だ。

 

「いや、自分でも分かってるんですよ。どうせかないっこないって。そもそも、出れるかすら怪しいわけですし」

 

 僕はそうは思わない。姉の実力は十分だし、才能だって他のウマ娘に引けを取らない。

 けれど姉はそう思っていないのか、自分を下げるような発言が続く。

 

「アタシでも頑張ればなんて、さすがに高望みしすぎだって分かってるんですよ……」

 

 こうなった姉は止まらない。一緒にいるのが家族であることすら忘れて、敬語で話す様はとてもつらそうで。

 ともすれば泣き出してしまいそうな姉の姿は本当に苦しそうで、とてもじゃないが見ていられなかった。

 

「わっ、ちょ……」

「大丈夫、お姉ちゃんは強いよ」

 

 姉に安心して欲しい。そう思って僕は姉のことを抱きしめた。

 けどなんだろう、これは。すごく、良い匂いがする。

 

「お姉ちゃんが弱いなんて、僕はこれっぽっちも思わない。お姉ちゃんなら菊花賞を取れるって、本気で信じてるよ」

 

 え、待って待って何これヤバい。シャンプー? シャンプーのせい? 学園で変わったから? にしたってお姉ちゃんの匂いも相まってなんて言うかものすごく……すごい。

 

「自信を持って。大丈夫、僕はいつだってお姉ちゃんの味方だよ」

 

 お姉ちゃん、好きだ。

 

 ────弟は、重症(シスコン)だった。

 

 

「…………ありがとね」

 

 落ち着いたのか、姉は僕から離れて微笑んだ。

 ……もう少し抱きしめていたかった。

 

「い、いやー、こんな弱音吐くつもりで帰ったんじゃないんだけどなー」

「ふふっ……別に実家にいてまで強がらなくて良いんだよ。家族なんだから」

「う……でも弟の前くらいは、カッコつけたいじゃん?」

「? お姉ちゃんはいつでもカッコいいよ?」

「〜〜〜〜!! お世辞はいいから!!」

「えー?」

 

 本心なんだけどなー。そう言うか迷って、けれどどこか満足そうな表情の姉を見て口を閉じた。

 言ったところで、姉は恥ずかしがるに決まってる。

 僕が分かっていればいいんだ。

 姉はカッコいいんだと、強いウマ娘なんだと。僕だけは信じてる。これまでも、これからも。

 

 

 

*************************

 

 

(うわ〜やっば〜〜〜。久しぶりの弟の匂い、最っ高なんだけど。それにアタシのことカッコいいって……もし菊花賞で1着だったら、また抱きしめてくれるかな……ふふっ)

 

 ────姉は、重症(ブラコン)だった。

 

 

 

 

 




ネイチャの弟概念を見て衝動書き。
好評なら続くかも。
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