殺し屋の教え子
俺の下に情報が来るのにそう時間はかからなかった。先生はー-
捕まった
情報によると、俺の後輩に裏切られたようだ。
俺はいずれこうなることはわかっていたので、敢えて忠告をしていたのだがそれを守らなかったようだ。
先生は何でも知っているように見えて、意外と無知なところがある。
先生は心理学を極め完璧に支配したつもりだったのだろうが、人間の成長の可能性と好奇心については知らなかったようだ。
ちなみに、先生の下をすでに離れていた俺は捨て子を演じて数カ月孤児院に入っていた。
そうして表社会に出ることに成功した俺はどうせなら持っている
念には念をということで孤児院で支給された中学3年の教科書をパラ見した。
正直余裕過ぎた。先生には最低でも東大のレベルまで叩き込まれたので中学の範囲など造作もなかった。
今は自宅で一人暮らしだが、孤児院にいる間は個性の使用が禁じられ…というか幼少期依頼一切使っていないので実戦で使うには程遠かった。
そこで定期的に座学もしつつ個性の特訓を行うことにした。もちろん人の来ない広い場所で。
そんな訳で場所は少し遠いが、バスで1時間ほどの場所にある山の中ですることにした。
山道から離れた森の中なので来るのは野生の動物くらいだ。まず手始めに、俺は近くにあった水たまりに目を付けた。あれに向けて個性を発動する。
「……」
目を閉じて、集中する。強すぎても弱すぎてもダメ。適切な出力を維持しなければならない。
…ブクブクブク
暫くすると水が沸騰し始めた。成功だ。ちなみに何をしたかというと、目の前にある水分子を振動させた。つまりは電子レンジと同じである。
俺の個性は(電磁界)。電界と磁界を生み出し操ることができる。それは同時に電流や電圧を発生させられるということを意味しているのだが、詳しく知りたい方はググってくれ。
今はそんな個性を利用して水たまりに向けて電磁波を送り、水分子を振動させ、その摩擦で熱を生み出し沸騰させたという訳だ。7年ほどブランクがあるにしてはよくできたほうだと思う。何せ温泉を作ったのだから。100℃の。
これを何回か繰り返すことにした。沸騰する具合をうまく調整する必要があるのでかなり疲れるしいい練習になる。
そうしてしばらく練習しているとかすかに物音がした。背後の茂みからだ。何かがいる。
俺はすぐに対処できるよう神経を研ぎ澄ませる。
ガサ…
再び物音がした。その方を振り向くと…
「ブギィ…」
イノシシが現れた。山奥なので無理もない。普通の人なら逃げるところだが、俺にとっては好都合だった。
「入試の前から模擬戦ですか…悪くない」
「ゴフッ…ゴフッ」
相手は強い殺気を放っている。両者ともに殺る気は十分だ。
「ブギィ!!」
相手はお得意の突進を繰り出してきた。しかしそう来ることは火を見るよりも明らかだ。
「…!」
俺は個性を発動させる。このままナーヴ〇アの如く脳を蒸し焼きにしてもいいがそれでは練習にならないので倦怠感を味わう程度に調整する。
「ブウ…ゴフッ…ゴフッ」
明らかに動きが鈍くなった。あとは後頭部を攻撃して脳を揺らすだけだ。
ドガッという音を立てて相手の後頭部に回し蹴りを食らわせた。脳を揺らされた相手は目から光を消して倒れる。
「ふう…」
殺すだけなら簡単だがそれをしてはならないのがヒーロー。殺さずに相手を捕らえなければならないので難しい。
しかし獣が相手で音を上げてなどいられない。俺はこの後もしばらく練習に励み、5時を回ったあたりで練習を切り上げて家に戻った。
帰りのバスに揺られていると、ノーマルモードのオールマイト…八木俊典と言ったほうがいいか。それとモッサモサの緑髪の少年が海浜公園のゴミを片付けていた。ゴミがある程度片付いた海浜公園からはその少年の燃え滾る熱意が感じ取れた。
最後まで読んでいただいた方ありがとうございます。こちらも不定期更新ではありますがお付き合いいただければ幸いです。次回はいよいよ入試です。主人公の名前も登場するのでぜひ読みに来てください!