仮面ライダーFIRX ~歌と夢が煌く万華鏡~ 作:名もなきA・弐
シンフォギアと仮面ライダーをクロスした作品は多いですが、オリジナルライダーのクロスは少ないなと思い投稿しました。
今回は一から作ったものではなく、とある方から頂いたアドバイスと原案を参考にライダーシステムなどを考案しました。本当にありがとうございます。
まずはプロローグから。
暗く、淀んだ空だった。
雲一つ存在しない、不気味な色が広がっている。
周囲に街灯は存在せず、あるのは月明かりだけ。
そんな中、鐘の音が聞こえた。
壮大で、幻想的な音が世界を支配する。
それは祝福の鐘だ。
神秘に満ちたその音は吸い込まれるように伝わってくる。
そこは人知れず、何処かに建てられた不気味な洋館。
どの国の、どの場所なのか、そんな判断すら難しい……風の音さえも容易く呑み込むほどの静けさが、洋館を中心に辺りを支配していた。
「『だが、兵士の一人が槍で彼の者の脇腹を貫いた。そうすると、すぐ血と水が流れ出た』……」
その洋館にある大広間には、いくつもの影があった。
その内の一人である白いフードを目深に被った男性は、分厚い福音書を片手に持ちながら開いたページに書いてある一文を低く艶のある声で朗々と読み上げる。
そうして福音書の一節をある程度読み終えると、その福音書を閉じた。
窓にある景色を見上げながら、再び口を開く。
「神が、ついに世界を手放した」
それは、救いを求める者たちからすれば辛く残酷な真実。
人類の手に必ず訪れる明日を委ねられたという事実。
だが、フードの彼は笑っていた。
彼は……彼らは神になど意を返さないからだ。
「ようやく、ようやくだ。我々はこの時を待っていた。神の目から逃れ、耄碌した亡霊どもから隠れ潜み、そして今!奇跡を起こす者たちが全てを託して去った」
彼は語る。
我々は加護に飼い慣らされた家畜ではないと、我々は与えられた奇跡に縋る愚者などではないと。
我々は、強い者に従う弱者などではないと。
「今度は我々だ。我々の手番だ、我々が奇跡を起こす。我々自身が全てを叶える。夢を願う挑戦者たる我々が、動き出す時が来たのだ」
そこまで語り終えた彼に代わるように、彼の言葉を聞いていたフードを被った別の人物が口を開く。
「私たちは願う者、私たちは夢を抱く者、歪な欲望を抱え込んで生きる矮小な生命体……それ故に、誰でもあって誰でもない」
若い青年の声でそう告げた途端、身体から赤い光が溢れ出たかと思えば、腕に挿さっている管のような物へと吸い込まれる。
そうして送られた光は大広間の奥にある玉座……に突き立てられている黄金の槍へと注入されていく。
見れば他の人物にも似たような管が腕に挿入されており、そこから何かを吸い出しているようだ。
次に勢いよく立ち上がったのは、メンバーの中ではやや小柄な人物だ。
「傲慢は終わり、見せ掛けの幸福は裂かれ、歪んだ欲望は潰える……そして、偽りの正義も砕け落ちるっ!!」
両腕を上げ、変声期の終わった高い声色で感情のままに叫べば、彼の腕からは激情に染まった緑色の光が管を通して槍へと注がれる。
「全てが終わり、全てが消える。そうして、最後に残った美しい夢だけが私たちを照らしてくれる」
別の人物……言動からして女性らしい人物からは桃色の光が溢れ、吸い上げられた光が黄金へ注入される。
続けて、残りの二人から吸い取られた白銀と青の光が流し込まれると、心臓のような鼓動を鳴らした槍が、少しだけ輝きを取り戻す。
まるで意思を持つかのように、人間の夢を望むように、より強い欲望を求めるように光り輝く。
福音書を持った人物を中心に彼らは集まる。
そして、全員が手に持った奇妙な道具を掲げた。
「共に行こう。想い焦がれた夢の先へ、我々の求める欲望を手に入れるために!」
最後に福音書の人物がそれを最初に起動した瞬間、黒い光が槍へと注がれた。
新たな物語が、新たな脅威が、暗躍の影が表の世界へと踏み出そうとしていた。
……話をしよう。
世界が終わりを迎えようとした時の話だ。
この世界では、一人の女が月を破壊しようとした。
この世界では、英雄に執着する男が人類を破滅させようとした。
この世界では、奇跡を憎んだ少女が世界を分解しようとした。
この世界では、奴隷の娘が支配から人々を解き放つべく神の力を求めた。
神の力を求め、様々な思惑と共に暗躍した者たちがいた。
数多くの悲劇があった。惨劇もあった。
それでも世界は終わらなかった。
……話を続けよう。
世界が終わりを告げようとした時、誰もが空を見上げた。
ある者は、奇跡を見たといった。
ある者は、流れ星を見たと言った。
ある者は、音を聞いたと言った。
ある者は、歌が聞こえたと言った。
ある者は、明日を見たと言った。
悲劇と同時に、多くの奇跡があった。
血を流し、絶望に打ちひしがれながらも奏でた歌があった。
世界を救う歌があった。
未来を取り戻す歌もあった。
神様さえも知らない光が新しい歴史を作った。
人々の未来を手に取り、そこで『彼女たち』の物語はようやく終わる。
そのはず、だった。
時間は少しだけ巻き戻る。
少女たちが未来を手に取る決戦の最中に、とある場所で異変は起こっていた。
日本から少し離れた孤島……そこに建てられたビル。
『アルバイト』として集められた大勢の人間たちの中に『彼』も入っていた。
内容は至ってシンプルで自分に向いている内容、真っ当なところからの募集だったこともあり、単なる好奇心で少年は参加したのだ。
それは集まった人々も同様だろう。
しかし、悲劇はすぐに始まった。
「……はっ?」
響く爆発音。この世の者とは思えぬ悲鳴と叫び、平穏とは程遠い非日常の音が恐怖を広げていく。
助かろうと抵抗する者、他者を犠牲にしようとする者、混乱し今ある現実から逃避している者……様々な行動を起こす中、建物中に出現した黒く太いケーブルがまるで意思を宿したかのように蠢く。
そして、力を持たぬ人間たちを襲うと男女問わず『何か』を吸い出していた。
淡い光を放つ『何か』を吸い取られた人間たちは意識を失ったかのように倒れ、その様子を見て生き残った者が増々パニックに陥る。
「何なんだよ、これっ」
少年は、身体を震わせることしか出来なかった。
突如として放り込まれた危機に身体が追い付かない。
襲われている人を助けたい想いと、すぐに逃げ出したい生存本能による矛盾が行動を鈍くさせている。
そんな彼の心情など知る由もなく、人々の恐怖を煽るように人の形をした不気味な異形が落ちて来た。
まるで人形のように無機質な異形は群れとなって人間たちを定めると、ゆっくりと近づいてくる。
『……?』
だが異形の群れが進むことはなかった。
情が湧いたわけではない。
ただ単に、目の前に躍り出た『存在』によって足を止められたのだ。
それと同時に鋭い残影が横一直線に放たれる。
『ッッ!?』
気づいた時には、異形の上半身は全て地面へと音を立てて落ちた。
感情があるのか分からないが、少なくとも残りの群れは明らかに狼狽し、狼狽えているようだ。
「こっちだ!」
その存在……フルアーマーで全身を覆った戦士が生き残った人間たちに向けて叫ぶ。
黒のアンダースーツの上から銀色に輝くプレートアーマーとマスクを纏い、橙色の複眼を光らせる仮面には、時折複眼と同じ色に発光するゲーミングヘッドホンを模した黒いヘッドギアが装備されている。
そして、右胸には青いジッパーが飾緒のように垂れ下がっていた。
そんな機械鎧の戦士は日本刀のような形状をした白銀に輝く武器を持ち、人々を誘導する。
自分じゃ力不足なのを痛感していた少年もその場から離れようとしたが、ふと倒れている人たちの安否が気になり振り向いてしまう。
『
「分かってる!」
見れば、二足歩行で動くぬいぐるみがシャボン玉のような球体で拾い上げており、知り合いらしい一人と一匹はやり取りを交わす姿を見る。
だが、あの戦士の正体が確信出来た。
「なぁっ!あんた……」
「早くしろっ、『
問い詰めるよりも先に動いた戦士が彼を担いで強引に戦線を離脱する。
向こうも正体を隠す気がないのか、それとも意識を向けていないのか人知を超えた身体能力を持って急いで外へと出る。
『~~~~~ッ』
「邪魔をするなっ!」
道中で足止めしてくる異形やケーブルを一振りで斬り裂き、予め用意していた潜水艦のある場所へと案内する。
潜水艦には特別な細工が施されており、自動で帰路に向かうようにしてある。
倒れている人を含めた全員を潜水艦に放り込むと、ぬいぐるみが一人で呟いた瞬間、緊張が解けたように眠り始める。
少年は何故か起きていたが、緊急事態なのもあり然程深刻に捉えていないようだ。
ぬいぐるみと少年も乗り込み、後は戦士だけだというその時。
「がっ!?」
背後からの衝撃に火花が飛び散った。
慌てて振り向けば、そこにいたのは先ほどとは違う異形。
姿ははっきりと視認出来なかったが、簡素な容姿をしていた異形とは異なり鋭利な部分が合ったりと明確な特徴がある。
『怪人』……明確な意思を持った存在が、ゆっくりと戦士に近づいてくる。
「まさか……!」
驚く間もなく、怪人が地面を蹴って戦士へと迫る。
後ろにある潜水艦を破壊されないよう、日本刀を振るって応戦するが徐々に追い詰められる一方だ。
やがて、怪人の一撃が戦士の顔面を穿った。
マスクに皹が入り、蓄積されたダメージが戦士の身体をふらつかせる。
「ぐっ」
呻き、顔を抑える様子を見た少年が思わず叫んだ。
「■■さんっ!」
「来るな!」
皹割れた仮面を向けることなく、その戦士は自分の本名を呼んだ少年を止める。
刀を杖代わりに倒れそうな身体を支え、迫る脅威から護ろうと立ち塞がる。
ほんの少しだけ、ぬいぐるみに視線を向けると全てを察して潜水艦を動かす準備を始める。
そんな中で、少年に向けて告げる。
「……行けっ!もう誰にも縛られるな、その胸に宿った想いは誰にも奪われるな!お前の願った想いは、お前の
その言葉を、少年は最後まで聞くことが出来なかった。
発進した潜水艦が少年と戦士の距離を遠ざける。
少年の声は、戦士に届くことは永遠になかった。
物語は、少女の歌が繋ぎ留めた明日へ変わる。
時刻は夕方から夜へと傾く人気の少ない時間帯。
視認の難しい闇の中、紫の影が浮かび上がる。
暗闇でもはっきり視認が可能な存在感を放つ影を追うように、僅かな影が見えた。
『邪魔を、俺の夢を邪魔をするなあああああああっ!」
絶叫が響く。
強い欲望を、強い執着を、自らの夢を現実にしようと蠢くエゴと狂気の雄叫び。
やがて、その姿が徐々に浮き彫りとなる。
『くたばれええええええっ!!』
夢の障碍となる存在を目の前から消し去ろうと、紫の影を狙っていた怪人が右手に持った棍棒を振り下ろす。
デスマスクの如き白い仮面に素体を思わせるような黒い身体の上から小鬼を思わせる緑色の装甲を纏い、身体の各種には銀色の巨大なジッパーがある。
まるでゴブリンの着ぐるみを着込んだような怪人だ。
しかし、その威力は『擬き』でも『ごっこ遊び』でもなく対象を破壊し再起不能にすることなど容易い。
棍棒は紫の影……機械鎧を纏った騎兵の顔を狙うが、結果は失敗へと終わった。
単調な攻撃を難なく躱すと、カウンター気味に放たれたヤクザキックが怪人に叩き込まれる。
『うげっ!?』
呻く怪人を無視し、その騎兵は強烈な膝蹴りを顔面に命中させてから思い切り蹴り飛ばした。
為す術なく地面を転がる怪人を見据えたまま、騎兵は余裕の態度を崩さない。
「刮目しな」
そう宣言した騎兵の姿がはっきりと見え始める。
紫のアンダースーツに蒼い機械鎧を纏った姿で必要最低限の箇所……胴体と両肩、両脚と頭部に装着されている。
紫の仮面の額には赤い結晶型のシグナルがあり、それを保護するように左右から二本ずつ紫の結晶が角のように生えている。
蒼く輝いた複眼を持つマスクを覆った頭部にはゲーミングヘッドホン型の黒いヘッドギアが複眼と同じ蒼色に淡く発光していた。
禍々しくも戦士としての高潔さを兼ね備えた仮面の騎兵。
歪な夢に溺れた怪人を潰す彼を、人々はこう呼んだ。
────仮面ライダー────
まだ見ぬ歴史が、始まる。
誰もが願い、想う。
一番になる。空を飛ぶ。お金持ちになる。
大切な人を守る。未知の土地を探索する。
あの料理を食べる。皆を導く。世界を平和にする。
そんな想いを大なり小なり人々は己の内に奏でている。
欲望や願望、自らの欲は「夢」と呼ばれ、それを願う力たる『
このデザイアエナジーを用いて内に秘めた夢を叶える手段、己の欲望を一時的に具現化させる異端技術を人々はこう呼んだ。
魔法……。
これは、夢を纏う幻想騎兵のお話。
本編はまだまだ先ですが気長にお待ちください。
ではでは。ノシ
以下、シンフォギア放映時に流れていたTVCM擬き。
黒幕※「このタイミングで最終決戦とか本当に空気読んで。危うく計画が頓挫するところだっただろうが」
シェム・ハ「我悪くないもん」
黒幕「可愛くないんだよ。若者の身体使って遊ぶんじゃあない、年を考えろ」
シェム・ハ「遺憾である」
黒幕「とにかく、ここからは我々人間のターンだ。ロートルはロートルらしく、さっさと隠居して茶でも啜っているのだな」
シェム・ハ「大言だな。万華鏡の如き夢想がどのような輝きとなるのか、静観させてもらうとしよう」
黒幕「最後の最後で綺麗に締めたよこの神」
※黒幕の声はプライバシー保護のためゆっくりボイスとなっております。