仮面ライダーFIRX ~歌と夢が煌く万華鏡~   作:名もなきA・弐

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 短い、短いですが……ここで投稿せずしていつ投稿するのかっ。
 後ですが今回オリキャラが登場します。


EP1-1 夢の怪物、チョウササイカイ

ほんの数時間前。

S.O.N.G.がデザイアエナジーの反応を検知する前に遡る。

あちこちが荒れたゲームセンター周辺には、パトカーや制服を着た警察官が現場検証を行っていた。

 

「しっかし、何をどうやったらこんな惨状になるんだ?」

 

慌ただしく動く警察官たちを横目に、ダークブラウンのコートを羽織った男性が低い声でそうぼやく。

顎鬚を生やした何処かうだつの上がらない顔立ちだが、衣服越しでも分かるほど鍛えられた体躯と長身をした彼は棒付きキャンディを咥えながら、周囲を見渡す。

 

「特異災害やら何やらがようやく大人しくなったかと思えば、謎の行方不明事件に怪物騒動……一体全体何が起こってんだか」

 

彼『陸井笙詠(くがいショウエイ)』は奏音の警察署に所属するごく普通の刑事だ。

その仕事柄、特異災害時の避難誘導なども行っており、本人の意図せずして常識から外れた出来事に遭遇することも多い。

そんな微妙に運の悪い彼は匿名の通報を受けた現場を一通り調べ終えると、数人の捜査員に確保された茶髪の青年に視線を向ける。

気絶していたことから巻き込まれた被害者かと思ったが、目覚めてから支離滅裂ながらも犯行を自白するような発言を繰り返していることから、何らかの関係があると判断し詳しい話を聞くつもりだ。

その青年をパトカーに乗せようとした瞬間、頭上から降って来た『何か』がけたたましい音を立てて車体に直撃した。

 

「うおおおおおおおっ!?」

 

突然の衝撃に警官たちも驚く中、一際大きな反応を見せた彼はパトカーをへこませた『何か』の正体を見た……見てしまった。

 

『やっと、見つけたぁ……!』

「何だ、ありゃあ……」

 

黒い素体のような身体の上半身に薄汚れた白い包帯と錆びた金の装飾を巻き付けた異形で両手足にはチャリオットの大型車輪が取り付けられている。ファラオのような王冠を被った白いデスマスクの顔を持ったジッパーの怪人。

刑事どころか今までの人生で見たこともない異形に理解が追い付かず、呆然としてしまう。

しかし、歪な着ぐるみのような怪人……マミー・アヴァストルは気にすることなくゴーレム・アヴァストルとなって暴れていた青年の胸ぐらを掴み、喜色の声をあげる。

 

「ひっ!?な、何なんだよお前っ」

『酷いなぁ。お前たちに散々お小遣いをあげていたのに』

 

地面へ乱暴に下ろしたマミーはせせら笑いながら胸元に手を当てると、そこからラメ入りの小さなディスクが内包されているデバイスを取り出す。

同時に身体のジッパーが音を立てて開いていくと、その中から出てくるように人間の姿……眼鏡をかけた男性へと変わる。白いワイシャツにズボンと一般的な服装だが、その瞳には陰湿さと傲慢さが隠しきれていない若い青年へと。

薄い笑みを張り付けたその青年に笙詠と警察官たちが驚く中、一際反応を示したのは茶髪の青年だ。

そして、驚愕のまますぐに口を開いた。

 

「ツ、ツヅミか!?まさかお前もっ」

「まさかリーダーもアヴァストルになったとは驚いたよ。だけど、仮面ライダーに負けたんじゃもうグループの中心にはいられないでしょ?」

 

「だから」とツヅミは見下しながら、包帯で全身を覆ったイラストの透かしが入ったアイテム……カレイドディスクを見せびらかすように告げる。

 

「俺が中心になってやる。金のない雑魚どもをひれ伏し、俺がグループの『王』になってやるよっ!!」

【SAISEI MUMMY!!】

 

スイッチを押して起動したカレイドディスクをすぐさま体内に取り込むと、ジッパーが開閉される音を響かせながら彼はマミー・アヴァストルへと変異。

上半身に巻き付けた包帯を伸ばし、茶髪の青年へと巻き付けていく。

 

「っ、撃てっ!」

 

既に我に返っていた笙詠が拳銃を取り出して、他の警察官へ指示を飛ばす。

動揺しながらも、冷静さを取り戻した彼らは目の前に現れた怪人に発砲する。

しかし、夢の災厄であるマミーに現実世界の武器は通用しない……鬱陶しい様子で彼らを睨みつけると、ドリームキャッチャー状の魔法陣を展開して兵隊を出現させる。

 

『そいつらを排除しろ』

 

短い指示を受けた兵隊は銃弾を物ともせずに襲い掛かって来る。

恐怖しながらも警察官たちは己の使命を全うすべく必死に抵抗する中、笙詠がマミーの身体を捕まえてどうにか足止めをするが人間と怪人では地力が違う。

あっさりと投げ飛ばされてしまった彼が諦めずに立ち向かおうとした時だ。

 

「変身!」

【Show me a heart! Requiem Wo Hibikasero!!】

 

 

軽快な音声と共にマミーの身体が大きく吹き飛ばされた。

地面を転がる怪人に驚きながら、自分を守るように現れた戦士の後姿を見る。

 

「大丈夫か、お巡りさん?」

 

まるでマイクを通したようなはっきりとした高く中性的な声……いや、聞き覚えがある声色。

 

「お前、拓斗か?」

「んあ……てエイさんかよっ!?」

 

戦士……自分の本名を呼ばれたフィルクスが後ろを向けば、そこにいたのは腐れ縁の刑事。

変身者の拓斗が完全にグレていたころ、色々と世話になった恩人の一人だ。

気づけば警察官たちに襲い掛かっていた兵隊たちも武装した色とりどりの少女たちの手で追い詰められている。しかも、その中には響の姿もいる。

 

「待て待て待てっ、どういうことだ拓斗!何か知っているのか、んんっ!?」

「あー……取り合えず話は後でっ!怪我した同僚でも助けてろよ!」

 

詰め寄る彼に慌てた様子のフィルクスは起き上がったマミーと対峙する。

銃剣を構える彼にアヴァストルが唸り声を漏らすと、兵隊を自分の近くに集める。

隊列を整えてから手に持った半月刃や銃など襲い掛かるのかと思ったが、不意に頭部の赤いパネルが点滅した。

何事かと用心する響たちだが、頭部のパネルをを一斉に外した兵隊たちは気にすることなく身に纏っていた戦闘服のような衣装を剥ぎ取り、それぞれが手早く赤・青・緑の衣装へと着替え始める。

錆びて壊れたジッパーの破片が残った道化師を思わせる衣服。帽子と赤く丸い鼻を持った仮面、露になった木を思わせる細く茶色い手足と関節部分にある銀色のビス。

 

『オォォォ……ッ』

「なっ」

「ひええええっ!?」

 

まるで人形を彷彿させる本性に調やクリスたちは絶句し、切歌に至ってはその不気味さに思わず可愛らしい悲鳴をあげる。

古来より人形は観賞用として貴族を中心に収集されてきた玩具や芸術品の一種だが、呪術や儀式の器として用いられていた悍ましい側面もある。そういった曰く付きは「ヒトガタ」とも呼ばれ、災いを振り撒く人形に至っては恐怖や崇拝の対象ともされてきた。

愛着と恐怖の概念を溜め込み、デザイアエナジーの糸によって動き回る操り人形。

『マリオネット・アヴァストル』……夢の災厄にとって愛おしい使い魔としての正体を晒した人形たちが迫る。

 

「嘗めんなっ!」

「ふっ!」

「デ、デスッ!!」

 

武器を振り下ろそうとする人形の一体にアームドギアの銃口を押し当てたクリスが零距離射撃で吹き飛ばすと、それに続けて調や切歌も追撃を開始する。

更に響の重い一撃がマリオネットたちを蹴散らす中、フィルクスはマミーに向かって走っていた。

自分が標的だと気づいたアヴァストルはすぐさま包帯を伸ばして迎撃するも、その全てがデザイアエナジーを纏わせたカレイドブレードで斬り裂かれる。

 

「オラッ!」

『がっ!?』

 

瞬く間に距離を詰められたマミーの鳩尾に鋭い膝蹴りが命中。身体が「く」の字に曲がったところを逃すことなく至近距離の散弾を浴びせる。

「こいつっ」と怒りに任せたマミーが腕を振り下ろすも、単純な攻撃が当たるはずもない。

身体を軽く反らして躱し、カウンターとばかりに手痛い一撃が叩き込まれた。

 

『くそっ!くそくそくそっ!俺は、俺はファラオだぞっ!?お前みたいなガキにいいいいいっ!』

「終わらせてやる」

 

赤黒いデザイアエナジーを放ちながら激高するマミーに何処吹く風と、フィルクスが止めを刺すべくドライバーを操作する。

これで完全な決着……そのはずだった。

 

【ERROR……!】

 

聞こえたのは必殺技を発動する音声ではなく、異常を知らせる無機質なもの。

思わず響たちの視線がフィルクスに集まる。

そして、困惑しているのは本部や彼女たちだけではない。

 

「……へっ?」

 

震えている手を呆けた声と共に見つめる。

そしてカレイドドライバーを見下ろした瞬間、すぐに異変が始まった。

 

「ぐっ!?ぐああああああああっ!がっ、ううっ、あああああああああっ!?」

「拓斗っ!?」

 

フィルクスの全身に紫の電流が走る。

複眼が明滅し、過剰に生成・放出されたデザイアエナジーが彼を蝕んでいく。

それは内側から身体を焼かれ、破壊されて行くような感覚……過剰な負荷による肉体へのダメージが襲い掛かっているのだ。

苦痛の悲鳴にクリスたちが思わず振り向くと、その僅かな間に四足歩行となったマミーが四肢に装着した車輪を使って逃走してしまった。

 

「あ……!」

「あたしが追うっ!お前たちはそいつをっ!!」

 

一先ずクリスにアヴァストルの追跡を任せ、残った響・切歌・調の三人が彼の元へと駆け寄る。

電流と激痛に苦しむフィルクスに響が触れようとするも、その手を紫電が払う。

どうすれば良いか困惑する中、本部にいたラプソの叫びが響く。

 

『ヒビキ、ドライバーを外すんだ!それで変身が解けるっ!』

 

焦りの色が見える声の指示に響が迷うことなくバックルに手を伸ばす。

カレイドドライバーからは火花が激しく散っており、触れようとした彼女を暴発したデザイアエナジーが襲う。

 

「っ!うううああああああああっ!?」

「やめ、ろ……響っ、早く手を……!」

「あぐっ!絶対に離すもん、かああああああああああああああっ!」

 

苦しむ響をフィルクスが強引に突き飛ばして距離を取ろうとする。

しかし、それでも彼女は諦めないし屈しない。

歯を食い縛り、自身を蝕む電流に臆することなくカレイドドライバーを両手でしっかり掴んだ。

 

「ぐうううっ!こんのおおおおおおっ!!」

 

煙を上げるカレイドドライバーをフィルクスの腰から無理やり剥ぎ取り、そのままの勢いで放り捨てた。

転がるバックルのスロットから排出されたバルムンクのカレイドディスクには皹が入っている。

瞬間、フィルクスと響の変身が強制的に解除された。

幸いにもドライバーに安全装置が働いていたため拓斗と響の身体に特別異常はなく、意識をはっきりとしている。

 

「はぁっ、はぁっ!この馬鹿響っ、なんて無茶を……」

「大丈夫っ。このぐらい、平気へっちゃらだから」

 

昔と全く変わらない彼女の笑顔に釣られて呆れたように短く笑う。

 

「拓斗さん、大丈夫ですかっ」

「ん?ああ、思ったよりかは平気だ」

 

幸い、肉体と精神にダメージを負ったが立てないほどではない。響に肩を貸してもらいながら、軽く呼吸を整える。

切歌も安堵しており、アヴァストルの追跡をしているクリスの援護に回ろうとしたが……。

 

「ちょーっと待った」

 

凄く良い笑顔で警察手帳を掲げながら、有無を言わさぬ様子の笙詠。

見れば周りの警察官たちはいなくなっており、恐らく彼が自分たちの気づかぬ内に言い包めて退散させたのだろう。

当時と変わらぬ手回しの良さに感嘆しながらも、拓斗と響は乾いた笑いをする。

 

「えっと、刑事さん。これにはあの……」

「少しお話ししようか、響ちゃんもお友達と一緒に」

 

笑顔でそう詰め寄る彼に、最早逃げ出す余裕も気力もなかった。

 

 

 

 

 

人を拒絶し、魔を受け入れるこの洋館には談話室が存在する。

アンティークの装飾品で統一されたソファやテーブル、ゴミ一つない清掃された広い空間を控えめに自己主張するシャンデリアが淡く照らしている。

それは宛ら貴族が社交場としているような豪華な一室であり、チェス盤やゲームを行うためのテーブルなどが配置されている。

その部屋に、ラッパのような銃口を持つ変わったデバイスを携えた二体の異形がソファに座っていた。

 

『んで、何を企んでやがる?』

 

魔法陣から映し出されるライブ配信から視線を外し、向こう側のソファで腰を下ろしているフードの異形に声を掛ける。

大柄な体格に重厚な鎧と毛皮を纏った獣のような異形は淡く発光する瞳を持つ頭部を向ける。

苛立ちを隠さない何処か若々しい声色に黒いフード……自らを「アララギ」と称していた怪人が「はて」と小首を傾げる。

 

『企む、とは?』

『アララギなんてだっせぇ偽名使ってまで雑魚の世話してどういうつもりだって聞いているんだよっ!「ジャック・ザ・エイド」!』

『チャンスは平等に、ですよ。例え見込みなしだろうと、それ相応の機会は与えてあげた方が良いでしょ?「ジャック・ザ・バーサーク」』

 

アララギ……ジャック・ザ・エイドと呼ばれた彼はフードを脱ぎ捨てながら飄々とした態度を崩そうとしない。

至る所に黄金のジッパーが施された赤く毒々しい身体の彼は、洋館に配置されているマリオネットが注いだ紅茶を嗜んでいる。

余裕の態度を崩さないエイドに舌打ちすると、バーサークは不機嫌な態度を崩さないまま話を続ける。

 

『最近になってお前が選ぶ連中は総じてまともな夢を持たないチンピラのカスどもだ。大方、新しく出てきた仮面ライダーの力量を図るための手駒ってところだろ』

『否定はしませんよ』

『だが、今回のマミーに限ってはわざわざサポートしている理由は?あんな奴が俺たちと同じ領域にまで辿り着くとは思えねぇ』

 

マミー・アヴァストルはゴーレム・アヴァストルだった男が中心のチンピラグループで下っ端だった男だ。

ただの金蔓で強い者に逆らえない小悪党では魔法が成長するとは考えられない。

バーサークの問いにエイドは少しだけ笑う。

 

『下っ端が、いつまでも格下のままでいると思いますか?』

『あぁっ?』

『無駄に金がある人間ってのは、その分だけプライドも高い。そういった人種は自分が優位でないと気が済まない。「自分がグループの中心になる」という夢を抱いたマミーの愚かで素晴らしい末路を、ゆっくりと楽しみましょう』

 

不気味に笑う彼にバーサークもほくそ笑む。

彼らは夢そのもの……人間としての理性や姿をも捨てた名無しの魔道師。

他人の夢を使い潰し、自分たちの手で作り出した『娯楽』に興じる魔人に他ならない。

 

『では、私はこれで。自由に動ける貴方たちと違い、()()()()()()もありますので』

 

空になったティーカップをテーブルに置いて席を立ったエイドの頭上に円陣が出現。

円の中に筆記体で「Log out」と記された魔法陣から降り注がれた光の中へ吸い取られるように……或いは呑み込まれるように姿を消した。

後に残されたバーサークも鼻を鳴らすと、ソファに座り直した。




 ダブルでいうジンさん。ドライブでいう現さんポジションとなるオリキャラのエイさんこと陸井笙詠、アヴァストルの事件は基本的に愉快犯気質の犯行が多いため自然と彼の力が必要になるので登場させました。
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