始まりの男、そして九人目の戦鬼   作:Hetzer愛好家

3 / 5
今回は本郷寄りの視点です。


邂逅

「ちぃ、前方と……後方。それに横からも次から次へと出て来やがる!」

 

 前から後ろから。横から。次から次へと、縦横無尽にショッカーライダーは現れる。

 

「其処だっ」

 

ズバシャアアアアアアアアア!!

 

「ゲッ」

 

 前方を陣取るショッカーライダーを一体蹴散らす。しかし、すぐさま別のショッカーライダーが前へ躍り出て本郷にアクセルを全開にさせる隙を作らない。

 

 多少は風力エネルギーが溜まっているが、これっぽっちのエネルギーでは改造人間の能力をフルに発揮する事は叶わない。変身もこれでは出来ない。このままでは殺られるだろう。

 

 ついさっき潰した奴も含め、これまで倒したショッカーライダーの数は四体。また、本郷が知らない場所で倒されたショッカーライダーは二体。全十二体存在したショッカーライダーは、既に半数にまで数を減らしている。

 

 しかし、本郷を囲っている檻は四体も居れば十二分に機能する物だ。

 

 少なくとも変身をさせなければ、犠牲は出ても最終的には本郷を殺せる筈。人間の情を消したショッカーライダーらしい作戦である。

 

「こ、この林では。この状態ではスピードが出せない……」

 

 レイガンでもう一体撃ち殺すが、数が減ったとは思えない強固な檻は一向に崩れない。少しずつ隊列は円形になりつつあるので、時間と共に本郷を完全に取り囲む鳥籠が完成するだろう。

 

「……変身が出来ない!」

 

 死中に活を見出そうとしても、強固な檻を一瞬で破った上で変身するまでの策が思いつかない本郷。脳の回転が非常に早い本郷であっても、死が刻一刻迫るこの状況では有効な策を練り出せなかった。

 

 やがて檻は鳥籠へと姿形を変えていく。状況を打破せねばなるまいと思っても、本郷は鳥籠へと隊形移動するのを止める事は出来ない。

 

「くそ、取り囲まれた……!」

 

 爆音を上げながら本郷を取り囲むショッカーライダー達。手には光線銃。

 

 サイクロンを止めてしまった本郷を殺すべく、ショッカーライダーは皆光線銃の引き金に指を掛けた。

 

 死が目の前に迫る。本郷の目に映る景色がゆっくりと引き延ばされていく。

 

 人間は、死を目前にすると脳の回転が急速に上がる事がある。経験がある人も居るだろう。事故に遭う寸前だったり、大怪我をする一歩手前だったり。その時に見える景色が非常にゆっくりとなるのを。

 

 元から回転の早い本郷の脳は、過去最高の速度で様々な思考を一気に考えては捨てていく。

 

 全てはこの状況を打破する為に。人類の平和と美しい大自然をこれからも守る為に。

 

 幾千のアイディアを考えては捨てた結果、本郷が起死回生の一撃として選んだ行為。それは、

 

ヒュゥゴオオオオオオオ……!

 

 高速で走るショッカーライダーの乗るバイクのタイヤを狙撃。そのまま凍らせてスリップを引き起こす事だった。

 

 狙うチャンスは一度きり。外せば待つのは死。それでも本郷はゆっくりになった時の中で、死を前にして何故か凪いで居る心境のままスーパーガンの引き金を引いた。ショッカーライダーよりもほんの少しだけ速く。

 

バババ! ダアアン! ガガガガ!

 

「うっ。ぐう……!」

 

 光線銃より発射された死を運ぶ一閃が次々と本郷の肉体に刺さる。刺さる度に痛々しい鮮血が飛び散り、確実に近寄る死の足音を本郷の耳へ届けてる。

 

 しかし、ショッカーライダーの方も完全に無傷とは行かなかった。

 

 起死回生の意志と共に放たれたフリーザーショットは見事バイクの前輪に命中。そのバイクに乗っていたショッカーライダーと、その後ろを入っていたもう一体が事故を起こしていたのである。

 

 故に本郷を狙っている射線は三つ。確実に本郷の命を削りこそするが、一通り発砲しても即射殺の状態までは持って行けない。

 

 重傷ながらも何とか自身の命を繋ぎ止める事に成功した本郷は、血塗れにも関わらずサイクロンのアクセルを全開にする。

 

 もう動けないだろうと高を括っていたショッカーライダー達は、アクセルを全開にして全力疾走を開始した本郷を追い掛けるまでの時間が少しだけ遅れた。

 

 一瞬にして急加速するサイクロン。ベルトの風車に轟々と大自然のエネルギーを送り届ける。猛烈な速度で回転をする風車は、やがて本郷の傷付いた全身に膨大なエネルギーを隅々まで行き渡らせていく。

 

 やがて、本郷の肉体に変化が現れた。

 

 まずはベルト付近。其処から広がる様にして足先から首下まで。第二の皮膚が彼の全身を包んだ。

 

 首下までの変身を終えた本郷はサイクロンをドリフトさせながら急停止させ、本郷は地上に降り立つとサイクロンの中から仮面を取り出し、それを躊躇う事なく装着する。

 

 仮面に内張されているメカニズムが特殊な電波を発し、本郷の脳波と同調して彼の肉体に組み込まれている人工内臓が作動すると、噴き出していた血の噴水が鳴りを潜めた。

 

 流れ出た血はもう戻らないが、これ以上出血してダメージを負うと言う事態は何とか防げた。これなら戦える。

 

「まだ。まだ死ぬ訳にはいかん。貴様らを倒し、必ずこの先の未来も守って見せる」

 

 大自然の使者。風が運ぶ超戦士。正義の味方。そして、歪んだ文明である「ショッカー」のデストロイヤー。

 

 その名を、仮面ライダー。

 

 多くの人が知る歴史では叶わなかった仮面ライダーへの変身を成した本郷は、貧血で揺れる体に活を入れる為に叫んだ。

 

「風よ、俺の中で叫び唸れ! 渦を巻く竜巻となれ! 吹き荒ぶ嵐となれ! 大自然が運ぶ全ての風が、この俺の力だ!!」

 

 死の運命の一歩先へ足を踏み入れた本郷の魂の叫びは、逃がした彼を追って来ていたショッカーライダーを気圧す。強風が吹いている訳でもないのに、何故だか前へ進めない。

 

 思わずブレーキを掛けて止まってしまったショッカーライダー達。そんな彼らの後ろに、新しく吹き抜けた風が一筋現れた。

 

「う、こんな所にもさっき見た敵が居る。あの脳波通信の内容は本当だったんだ……」

 

 全くの偶然である。新しく出現した風を纏った少年からすれば、加速装置を切った瞬間にこの場面に出くわしたのだから。

 

 しかし、困惑で塗り尽くした少年の表情はすぐに引き締まった。

 

 優れた状況判断能力を持つ少年は、誰が無作為に人を殺そうとする冷血サイボーグなのかを判別した。そして、その冷血サイボーグに狙われている心優しい人間が誰なのかも。

 

 確信めいた何かはなかったが、それでも少年は血濡れたスーパーガンを手にしている仮面の男こそが純粋な心を持つ人間であると判断した。

 

 少年はショッカーライダーが行なっている脳波通信を知らぬ間にジャックしており、”裏切り者の本郷猛”を殺し、目的を達成したら周辺の民家も滅ぼしてやると言う悍ましい会話を全て聞き取っていた。

 

 少年は。いや、島村ジョーは加速装置を入れて移動。本郷の前に立つ。

 

 本来であれば、ジョーが本郷を助けてやる義理はない。このまま立ち去っても問題はなく、誰も責めないだろう。

 

 しかし、平和に生きるごく普通の人間すらも容易に殺してやろうとするショッカーライダー達の精神性が、ジョーは見逃せなかった。このまま放置を決め込む事も出来なかった。

 

 何故なら彼は、戦いを忘れた人々の為に人知れず戦ってきたゼロゼロナンバーサイボーグなのだから。

 

「うおっ!? 君は寝ていた筈ではなかったのか?」

「……それよりも、今は目の前の敵を倒しましょう。貴方の怪我で三人を相手するのは無謀です。僕が二体引き受けますから、貴方は最後の一体を頼みますね」

 

 年齢こそジョーの方が若いが、戦闘経験は彼の方が圧倒的に上。冷静に本郷の状態を分析し、二体を相手取ると宣言したジョーは、再度加速してショッカーライダー二体を少し遠くまでぶっ飛ばした。

 

 唖然とする本郷だったが、すぐに目の前にさっきまで居た少年が援護してくれるのだと察し、倒れそうになっている身体に「これで最後だぞ」と鞭打って残された最後のショッカーライダーと向き合う。

 

「……最後の勝負だな」

 

 蓄えられた風力エネルギーはごく僅か。徒手空拳で戦うとすれば、全力で動ける時間は数分。それ以上は逆立ちしても不可能だ。

 

 サイクロンで加速してエネルギーを蓄えようにも、さっきの様に奇襲でも仕掛けない限りは満足にサイクロンのスピードを出せない。

 

 ショッカーライダーの警戒心も相当であるし、さっき奇襲の手は使ってしまったので、同じ手は通用しないと考えて良いだろう。

 

 よって、本郷が取れる選択肢は一つ。

 

「来い、ショッカーライダー!」

 

 目の前の死神と、背後から何時襲い掛かるか分からぬ見えない死神と戦いながら徒手空拳を選ぶ事である。

 

 二度はない。生きるか死ぬかの戦いだ。

 

 それでも本郷は前へ足を踏み出す。明日を掴む為に。

 

 

……少し離れた場所で、ジョーは二体のショッカーライダーと睨み合う。

 

「とんだ邪魔をしてくれたな、小僧」

「まずは貴様から殺してやる」

「そして次は……」

「応。次は裏切者の虫けら。そして愚かな人間」

 

 裏切者を始末する絶好のチャンスを邪魔され、ショッカーライダー達は頗る不機嫌気味だ。

 

 しかし、不機嫌なのはジョーも同じ。

 

 誰よりも優しく慈愛に溢れる心を持っているジョーからしたら、ゴミでも捨てるかの様に人間を駆除しようとするショッカーライダーが気に入らない。

 

「絶対にさせない。僕が、彼らを守る最後の防波堤になってやる!」

 

 数十年先のテクノロジーをふんだんに積み込まれたゼロゼロナンバーサイボーグ。

 

 その本領を発揮すべく、ジョーは内蔵されているエネルギー炉の熱を限界まで高めるのだった。




次回はジョーへ多めにスポットを当てたい。感想や評価頂けると嬉しいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。