始まりの男、そして九人目の戦鬼   作:Hetzer愛好家

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今回はジョー視点オンリーです。


弔いの鐘

 ジリリ、ジリリと相手方の隙を見つけようと目を凝らすショッカーライダー達。目の前に立っている一人のサイボーグから、徐々に尋常ではない殺気が膨れ上がっているので、それに比例してショッカーライダー達の警戒心も上昇していく。

 

 ジョーに吹っ飛ばされた時、全く二人は反応が出来なかった。それもあり、ショッカーライダーの警戒心は本郷以上だ。

 

 その選択は間違っていない。本郷より警戒すべき敵なのも間違いない。

 

 島村ジョーは、数段先のテクノロジーをふんだんに積み込まれてるのだから。

 

「食らえ!」

「っ!」

 

 一人が指先をジョーに向ける。すると、ショッカーライダーの指先から小型のミサイル弾が飛び出した!

 

バシュウウウ!

 

 それも一発や二発ではない。十発以上は連続発射されている。

 

 この攻撃を見て、ジョーはとあるサイボーグの攻撃と重ね合わせていた。

 

 自身以上に生身のまま残っている身体が少ないサイボーグ。全身が兵装と化しており、殲滅力だけならゼロゼロナンバーサイボーグの中でトップクラスの男。サイボーグ004。別称「死神」。

 

 そんな男と共に戦っていたので、ジョーはショッカーライダーの掟破りの様な攻撃にもすぐ反応した。

 

 数発は電磁剣で叩いて方向を変え、残りはギリギリを掠めるぐらいの距離感で全て回避していく。004の持つ機関銃と比べれば大した事ない。ミサイルの性能だって、マイクロミサイルと比較すればお粗末な物だ。

 

「加速装置!」

 

カチリッ

 

 奥歯のスイッチを噛み締める。途端にジョーの流れる時間が凍った。

 

 それを見たショッカーライダー達は、咄嗟にベルトの横にあるスイッチを押し込む。

 

 加速装置。非常に強力な武器だ。しかし、それは009の専売特許ではない。

 

 ショッカーだって当時にしては数世代先のテクノロジーを保持している。それこそ、ゼロゼロナンバーサイボーグの第一世代と同等以上の物は。

 

「「加速装置」」

 

 故に、ショッカーライダーも。そして本郷ライダーも加速装置を使えた。本郷に関してはまだ仮面ライダーの機能を完全には把握してないので、加速装置の存在を知らないが……。

 

 ともあれ、これで速度の差は縮まる……どころか下手したら上回る。

 

 仮面ライダーはとんでもない俊足の持ち主だ。100mを僅か1.5秒で走破できる。時速にすると240kmhにもなる。当然エネルギー消費は大きいが、ショッカーライダー達はバイクを使って散々本郷を追い回したので、エネルギー枯渇の心配もない。

 

 其処へ加速装置の速度向上を加えれば、相当な物になるのは誰でも想像が付く。

 

 加速装置の性能は最初期に造られた002とほぼ同等だが、素の速度が違うのでショッカーライダーが出せるスピードはかなりの物だ。マッハ3ぐらいなら出せるだろう。

 

 差は無論あるが、ショッカーライダーは数で優っている。戦況は五分だ。

 

「死ねぇ!」

「くっ、君達もか!」

 

 加速装置同士の戦闘には慣れている。それでも、ジョーは顔を顰めた。

 

 彼の脳裏に浮かぶのは一番最初に戦った自分の弟、それも双子の弟だ。無敵の能力だと思われていた加速装置を平然と装備し、かつ最終的には二人で襲い掛かって来る始末。

 

 最新の加速装置を備えているのがジョーだけだった事もあり、直接戦闘では倒せなかった。その時に取った戦法は、相手方の数少なく、かつ最大の弱点を突く為に逃げまくる事だ。

 

 数で勝る相手に正面切った戦闘は無謀。それをジョーはよく知っている。

 

 しかし、相手は自分より前のテクノロジーで造られた兵士。

 

 故に、今回取る戦法は……。

 

「……ふっ!」

「何!?」

「待てっ」

 

 木々の枝を経由してこの場から離れる事だった。

 

 あれだけ強烈な殺気を出していた敵が突然逃げ出したと感じたショッカーライダー二人は激怒する。

 

 全エネルギーを解放し、全速力でジョーをショッカーライダー達は追いかけ始めた。

 

 障害物が多い事もあって、加速装置の性能の差は其処までないに等しい。

 

 指ミサイルや光線銃を発射して少しでもジョーの逃げる場所を奪おうとするショッカーライダーと、方向転換をしたジョーに近接戦を挑むショッカーライダーとで役割を分担。スピードその物は劣っていながらも、性能が上のジョーとショッカーライダー達は互角の勝負を繰り広げていた。

 

 一方ジョーは逃げるのに邪魔な電磁剣を捨ててしまった為、殴る以外の攻撃手段を持っていない。しかし拳打で決定打を与えるには少々火力が不足している状態だ。

 

 ショッカーライダーの指ミサイルを間一髪で回避しながら、電磁剣を構えたもう一体のショッカーライダーを攻撃を捌くのは相当に精神を摩耗する。

 

 パワーだけなら005並みにあるショッカーライダーの攻撃は、加速装置を入れる事で更に凶悪度を増す。マトモに攻撃を一発でも受けたらバラバラにされるだろう。

 

 だが、これで構わない。ジョーからすれば、加速装置発電中に拳打でショッカーライダーを仕留めるつもりはないのだから。

 

「もう少し。もう少しの筈。ジェットと同じぐらいのテクノロジーなら、もう少しで……」

 

 とある時をジョーは待ち続けていた。どんなサイボーグであっても、加速装置を所持していれば必ずついて回る隙を晒すのを。

 

……加速装置と言うのは様々な解釈がある。時の流れに干渉してしまう代物だって存在するし、単純に機械の身体の出力を全開にして全能力の向上を目指す物も。

 

 ジョーとショッカーライダーが持つ加速装置は後者の方だ。人工頭脳や身体能力と言った全ての機能の出力をスイッチ一つで向上させる。

 

 当然ながら、体内に組み込まれているエネルギー炉はどんどん加熱していく。臨界点付近まで。

 

 ロボットは無限に動ける訳ではない。燃料やエネルギーが枯渇すれば止まるし、エネルギー炉が臨界点に達したら自壊するだろう。

 

 そして、加速装置は相当にエネルギーを消耗する装着であり、かつエネルギー炉に負荷を掛ける物だ。

 

「っ!? な、何だこれはっ」

 

 ショッカーライダーの一人が突然動きを止めた。ジョーに肉弾戦を仕掛けていたショッカーライダーだ。

 

 加速装置を入れながら近接戦闘を行うのは相当に重労働。エネルギーが枯渇するまでのスピードも速い。特に旧式の加速装置であるならば。

 

 使用限界がどれほどなのかを正確に把握してなかったショッカーライダーは、無様にも隙を晒してしまう。

 

 それは致命の隙。

 

「それを待ってた!」

「ぐ、くそぉ!」

 

 ジョーは急加速し、エネルギーが枯渇して座り込んだショッカーライダーの顔面を力の限り蹴り飛ばした!

 

 マッハ5の速度で無抵抗の敵に蹴りを加えれば、流石のショッカーライダーでも耐えられない。

 

 サッカーボールの様に、座り込んだショッカーライダーの首はグチャグチャになりながら何処へと吹っ飛んで行った。

 

「こ、小癪なぁ!」

 

 残されたもう一体のショッカーライダーは激昂しながらジョーに襲い掛かる。怒りの余り、残されたエネルギーを全て消費する勢いで加速を開始したショッカーライダーは、ジョーの加速にも追い付かんばかりの速度で猛迫する。

 

 だが、そんなショッカーライダーを嘲笑うかの様にジョーは奥歯のスイッチを入れ替えた。

 

「Mode2!」

「何ぃ!?」

 

 追い付きそうになっていたショッカーライダーを、ジョーは一気に突き放した。その速度はマッハ4だ。

 

 躍起になってショッカーライダーは彼を追い掛けようとするが、そんな彼の身に突然変化が現れる。

 

「ぐ、がぁ!? 身体が、焼ける……!」

 

 ショッカーライダーの身体が突然発火した。

 

 その原因は言うまでもない。エネルギー炉の臨界点突破だ。

 

 加速装置を切り、ジョーは燃え盛るショッカーライダーを憐れみの目で見やる。

 

 事情は全く知らないが、彼らもまた何者かの実験に巻き込まれた犠牲者。運命の歯車が一つでも違ったら、この様に凄惨な死を迎える事はなかったであろうに。

 

「君達も、僕も。もしかしたら分かり合えたかもしれないのに……」

 

 燃え尽き落ちていくショッカーライダーを見ながら零したジョーの独り言は、強くなった雨音によって掻き消されていった……。

 




002の加速装置とほぼ同性能だけど、素の能力が高過ぎてジョーのMode1の加速装置ともやり合えたショッカーライダー。しかし、ちょっとジョーがスイッチを入れ替えるだけでご覧の通りです。

参考にした戦闘シーンは009が序盤に遭遇したサイボーグ0010兄弟との戦いです。最序盤でありながら、早速自身より性能の高いサイボーグとやり合ったジョーは001が発案した「作戦」で如何にか弱点を突いて辛勝を収めました。その戦闘経験が今回は存分に活きています。

感想や評価頂けると嬉しいです……(乞食みたい)。
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