【おかーさん!こっちに獲物いるよ!】
獣のように吠えながら四足歩行で走る幼子は、目の前の鹿を見据えている。成長した男の子のようだ。
【ダン、今そっちに行くから追い詰めておけ!】
狼が返事を返しながら匂いを追う。暗い森の中、匂いが一番頼りになるのだ。逃げ回っていた鹿がダンに追いつかれそうになっている。鹿が逃げ道を変えようとした瞬間狼に噛みつかれた。
【やったあ!ご飯増えた!】
【そろそろ帰るよ。今頃イコが他の獲物を狩って戻ってきてるところだろうよ】
ダンがご機嫌な気持ちで狼と共に巣穴に戻ると、イコが焚き火の用意をしていた。
【お帰り。ダン、フェリス母さん。もうすぐヒがつくよ】
振り返り声をかける。その手からはエネルギーがギラギラボウボウ声を上げていた。そのままエネルギー弾を放ち、火を起こす。
狼であるフェリスは数日前から、不思議な事ができるようになった自分の娘である、イコのワザで発生した情けないがヒを恐れている。森を終わらせる赤い恐怖を思い出すからだ。何故出来る様になったのか尋ねても、イコは教えてはくれなかった。それにダンに聞いた事のない言葉を使って話すようになった。おそらく彼女は、自分達が入っていた変なゆりかごを調べたのだろう。そこに色んな知恵が詰まっていたのだろうか?空には別の方法で過去を繋ぐことができるのかと、少し驚いた。ならば本当の親も知っただろう。近い内にこの地を離れて、空に帰るのかもしれないがその時はみをくろう。
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【森を出てしまったな…】
狩に夢中になりすぎて、森の外の草原にまできてしまった。障害物がないこの場所では、獣はあまり寄り付かない。しかし、あまりにも見た事がない異質な物体があったので、好奇心に負けた彼女は、その物体の中に入っていった。カチカチ硬いものが色々くっついてる。ボタンである。ボタンの中でも一際目立つ赤い大きなボタンがあった。興味本位でポチりと押すと、音と共に映像が流れ出す。
『言語習得プログラム実行シマス』
【なんだ!?何が起きたんだ!?】
『マズハ単語カラ始メマショウ』
聞き覚えのない言語が、踊るように耳に入ってくる。数時間後、おおよそ理解したイコはホンを探した。知らない事が纏まっているらしいそれは、先程のプログラムで出てきた。カミが複数詰まっていて、ペラペラしているものを探し、発見した。
【これがホン…?】
表紙を開きモジを確認する。その中には確かに知恵が、情報が入っていた。肉はヒを通さないと腹を痛める可能性がある事、空を飛ぶ事が出来る事、など色んな知らないことがホンにはあった。さっそく、巣に戻りエネルギーを作ってみる。
初めてとは思えない程、きれいに纏まっている。
「ほん、は実践できるのだな…」
覚えた言語でポトリと言葉を落とした。
【イコ?どうしたの?】
巣穴で寝ていたらしいダンが目を擦り歩いてくる。
【新しいことを知ったんだ。ダンもやってみるか?】
新しいこと?と頭を巡らしても思いつかない。どんなことかワクワク胸を動かして聴く体制をとる。
【それってなに?】
【エネルギー弾というものだ】
そう言って先程作り上げたものを見せる。