双子の生存戦略   作:ユータンホッケプト

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かけた!!


この世で一番強い奴

「ふ、はは…ははは!ついに、ついにウィロー様が復活なさるぞ!」

「えぇ。この装置を使えば1ヶ月後にこの氷の山を溶かせるわ。よかったわね、願いが叶って」

 

怪しげな場所で男女の科学者がおどろおどろしい機械を前に笑っていた。彼らの目的はツルマイツブリという山の氷を溶かすことのようだ。

 

「そういえば、貴様の名前をまだ聞いてなかったな。名は何というの、だ」

 

男が隣を振り返ると、まるで元からいなかったように女は消えていた。違和感を感じたが妙に青かったし、寒さに耐えきれずとっとと帰ったのだろうとあたりをつけそれ以上謎を追求するのはやめた。

男はそれよりも大切な事があったから。

 

二ヶ月後__________

 

「残りの依頼は何だろなーっと」

ダンがいつものように配達用メールサイトを開くと、奇妙なメールが一件だけ残っていた。そのメールは件名が文字化けしており、全く読めなかった。

「これって何だろう?…まあクリックしても問題ないよな。えいっ☆」カチ

勢いよくクリックして中身を確認するとツルマイツブリという文字と座標のみ書き込まれていた。

 

「ツルマイツブリ…?ここには人が住んでいなさそうな場所だと思うんだけど、違ったのかな?」

 

この地域は吹雪に覆われて凍った山があるだけの場所のはずだ。しかし、隠されたナニカがあるのだろう。メールを送ってきた奴は何が目的か知らないが、怪しさよりも未知への好奇心の方が軍杯が上がった。

ダンは他の二人が帰って来る前にこの場所に行こうと決意した。パソコンをそのままに防寒具を着込んで山へ飛び出した。

 

 

「さ、さすが極寒の地…吹雪で前が見えない…クシッ!」

鼻水垂らしながら飛行を続けあたりを見下ろす。だが周りは白一色で普通の雪山にしか見えなかった。

「うぅ、寒い…かまくら作ろうかな」

寒さに耐えきれず、下に降りた途端謎の施設が見つかった。ご都合主義のような展開に彼は何者かに今も監視され降りるよう誘導された気すらしてきた。

 

「でも後戻りするわけないよね。こういう奴は後回しにしないほうがいいやつだ」

 

ダンは今一度気を引き締めて施設へ歩き出した。

______________________________

 

「ここあったかいな〜!上着ぬごっと」

中に入ると暖房でも効いているのか暖かかった。しかしそれがチグハグした印象を強めた。最近まで放置されたような古さがあるのに、ここ最近この山に人が入った話はないのだ。まるで過去の人間が復活して利用しているみたいだった。

「さすがに考えすぎか、な…」

前を見るとマグカップを片手に持った老人が立っていた。

 

「誰じゃ貴様ーーー!?」「人いたーーー?!?」

 

「どうやってここに…!飛行機でここに辿り着くのは不可能な筈だ!喰らえ!」 ドドドドドドドド!!

左腕を突き出し銃弾を連射する。しかし相手はサイヤ人だ。ただの銃弾では死なない。

「うわっ、危ないな〜」シュピピピピピ

両手を動かし銃弾を掴みまくる少年に老人は驚いていた。頭の中に一つの考えがよぎった。この少年が一人でここまでやってきたと。子供でこれほど強いのなら成長すれば最強になる。

 

「…くくく、儂も運が良い。ウィロー様の肉体になりうる小僧がきたとはな」

「うぃろー?誰のことかわからないけど俺は俺のモンだよ」

「私の名はコーチン。貴様の実力を見てやる!こい、キシーメ!」

扉の向こう側から緑の怪人が歩いてきた。いかにも悪だという風貌だとダンは思った。

「さあ行け!奴と戦うのだ!」 「キィーッ!」

キシーメが勢いよくダンに飛びかかる。悪寒を感じダンは急いで防御の姿勢をとった。ドゴッ!!!

「ぐッ、コイツ速い…!」

相手が次の技を出す前に両腕を解き殴り返す。

「お、ラァ!」そのままラッシュへ繋ぎキシーメに反撃する。

「ダァリャリャリャリャ!!!」ゴガガガガガガ!!

手応えを感じながら攻撃を続けているダンはキシーメがニヤリと笑っているのに気づかなかった。 バチッ

「ぁぐ!?」 ジジジジジジジッ!!!!!!

「ぐぁぁああ!!」

糸状の気がダンにまとまりビリビリと焦がす。予想外の攻撃にダンは一瞬気絶してしまった。その隙に今度はダンが殴られる。

「カァーー!!」 ドゴゴゴゴゴ!!!

「ッグ…アギ、ガ!オェっ(このままじゃやられてしまう…!油断したら俺は、死ぬ!!まだ他に似たようなのがいるかもしれない、これ以上体力を削らせてたまるかッ)」

 

「ぅぉぉぉおおおおお“お”お“!!!」 ズバァン!

自分の周りを思いっきり爆発させキシーメを引き剥がした。この気を逃してはならないとダンはギロリと睨み声を上げる。

「今度は俺の番だ!ダブルサンデー!!」 チュイン

紫の光がキシーメに直撃した。が、奴を倒すのには威力が足りなかった。まるでその程度かとばかりにダンを見て来る。

 

「まだ、まだだぁ!ダブルゥ…サン、デェエエエ!!!」

BOOOM!!!

先程より大きな光線がキシーメを包む。必殺技というより究極技と呼ぶ程の威力にキシーメが消し炭になった。

 

「ふむ…なかなかの強さじゃ。息切れしておるがまだ闘気に溢れておる。ミソカッツン!エビフリャー!そこな小童の体力を減らせ!」

 

コーチンはそう言い部屋の奥へ入っていった。すれ違いにぷよぷよした黄色の怪人とピンク色の怪人がダンの前に立ち塞がる。

「はぁ…はぁ、やっぱまだいたのか…」

これから先は一回でも当たったら俺の負け(消滅)生きるには彼奴らの攻撃に当たらない事、常に動く事。

ラディッツとイコが考えてくれた俺たち二人の戦略は使えないが、此方を潰す気の奴の攻略法は何となくわかった。

 

「おりゃ!!」 ボッ!

様子見にぷよぷよの奴、ミソカッツンにエネルギー弾を投げ、エビフリャーという奴に迫り技の準備をする。

「ギィイ!」 ぐぐ… ボヨヨン!

ミソカッツンの腹に当たった気弾が速度を増して跳ね返ってきた。「うお、と!」反射的に後ろに下がり回避した後、エビフリャーが両手に何かを纏っているのに気がついた。

 

「極寒で凍えてしまえ!」 「あんた普通に喋れるのかよ!!」 エビフリャーが喋りながら冷気を放ち、それに驚いたダンは突っ込んでしまう。その結果、吹雪のような技を右腕に受けてしまった。パキパキパキ

「見事に凍ってるなこれ…よし、狙うやつ決めた」

左手を握りミソカッツンの方を見る。エネルギーコントロールはイメージからだとラディッツは言っていた。なればこそゴムのような体を貫く刃をイメージする。

 

チッ…チチチチチチチチチチ!!! 「は、ぁああ!」

チェンソーのようにエネルギーを動かし左腕に纏う。これを思いっきり腹に当てて削る。それができたら次はエビフリャーだ。

「いくぞ!!」ドッ チチチチチチチチ!!!!

ミソカッツンの腹を思いっきり殴るとチェンソー擬きがギャルギャル音を立てて肉を削いでいく。「ゴアッ!?」

これに驚いたのか止めようと手を伸ばしてきた。

 

「お前の負けだッ!」 ギャルルルルル!!!

ぶちぶちぶち、ぶち! 「ゴオォオ!」 ギュ、ィィイルルル!! ついに腕は腹の向こう側までぶち抜いた。ガスが抜けた風船の様にミソカッツンは飛んで消え去った。

(予想以上にコントロールが疲れる…最後のエビフリャーという奴が一番厄介だ。心なしか右腕が、痒くて痛い)

 

残り一人なのに、相手は余裕がある。凍らせる技に俺は逃げることしか出来ないのに気づかれているんだ。カイロみたいな温める物でも持ってこればよかった。相手が構えているのを横目に俺はそう悔やんだ。

「凍結拳!!」 ヒュゴオオオオオ!!!

「ここまでなのか…?」 とてつもない冷気を前に一人呟いた。

 

「そこまでだ!」 チュイン!!

シュタリと少女が凍結拳の前に立つ。そのまま気弾で凍結拳をかき消した。煙の中からここにいない筈のイコが現れた。

「イコ…!?どうしてここに!?」

「ダン、私は怒っている。途轍もないほどにだ」

ジッとダンを睨みながらイコは氷を砕いた。

 

 

「いいか?私がここにいるのはパソコンが開きっぱなしで、お前が放置していたからだ。どういうわけか雪が溶け、吹雪がツルマイツブリ山をぐるりと囲っていた。これは異常気象の様な物だ。そこで過去の情報からここにいたという科学者を知った。彼らの名はDr.ウィローとDr.コーチン。どちらかと会ってないか?」

思い返すと銃弾打った人がコーチンと名乗っていたのを思い出す。

 

科学者なら人の体を狙うのも少しは頷ける。カムメもサイヤについて少し気味が悪いくらいに質問してきた。

「誰と比べているのかわかるけど、カムメさんの方がマシだぞ。…これ以上そこの奴は我々を待つ気が無さそうだ。戦略、忘れてないな?」

「勿論!俺一人で無理でも俺たちのなら行けるもんね!」

やっぱりイコはすごい。この状況をイコとならひっくり返せる。うん、ワクワクしてきた!

 

先程より険しい顔でエビフリャーは此方を見る。どうやら俺たちが油断出来ないと認識したみたいだ。

「では、やるぞダン」 「りょうかい!」 ダッ!

ダンが走り出し、イコが後ろから気弾を連射する。この二段構えが二人の策だ。気を逸らし、隙をつくりそこを狙う。

凍結拳とやらを使おうとしたら二人で頬をぶん殴り中断させる。

 

「そろそろ止めを差しておこうか。ダン、時間を少し稼いでくれ」 シュッ

額に指を当てイコが技の準備をする。その間ダンがひたすらエビフリャーを殴り、足止めを合図が来るまで続けた。

「ダリャリャリャリャリャ!!!」 シュゴッドガッグギッ!

「お、のれェ!」 ガッ!

後ろに移動して殴り掛ろうとしても、それを見越して拳を逸らされた。 「ダン、そこを退け!」 

後は放つだけになったイコを見てダンはエビフリャーに会心の一撃を叩き込み離脱する。

 

「グゥォオオ…!」 ヨタヨタと腹を抱えているエビフリャーにイコが究極技を撃った。

「魔貫光殺砲!!!」 ズウォォオ“オ”オ“ン!!!!

「やったぁ!イコが勝った!…ところでそれどうやって覚えたの!?光線がこう、ずどーんって!ずどーん!かっこいいね!」

ニコニコ笑いダンは少女に駆け寄る。

「…ピッコロに教えてもらったんだ。彼奴教えるの上手だぞ」

 

傷だらけの弟を見ながらイコは生きていたことに安与した。

「では傷を治すからそこに座ってろ、アホ」

「アホはやめてよ。俺すっごい頑張ったんだから!」

ダンはしずしず大人しくイコの前に座り治癒を待つ。彼女が何処でこの魔術を知ったのか分からないが、とても便利だし深く考えるのはやめよう。

 

「よし、治ったぞ」 「ありがとうイコ」

もう少しこうしていたいが、この研究室の奥にいるやばいのを放っておけない。多分ウィローという博士がいるんだろう。科学者にしては強そうな感じがする。

「ね、この先に行ってみてもいい?」

「…何をする気だ」

帰りたそうなイコが心底嫌と顔に出す。けど後でもっと強い怪人でも作られたら、それがサイヤ人が来る日と重なったら最悪だと俺なりにイコにプレゼンすると渋々了承してくれた。

 

奥へ向かい、上の部屋を見つけた。いかにもいるぞ、という雰囲気にやっぱり映画みたいだなんて思い返した。入ってすぐにボウ…と大きな画面が写り俺たちの姿を流す。

「よくきたな。貴様はコーチンの言う通り我が肉体にふさわしい強さだ」 壁にある脳みそが喋った。どうやら彼がDr.ウィローらしい。

「一体どうなってんの?それで生きているの?」 強いインパクトに空いた口が塞がりにくい光景だ。

この科学者ヤバイ

それがすごくわかった。コーチンが言っていた言葉じゃ、俺の体乗っ取る気…脳みそ消される…!

 

「ぜ、絶対まけない!」 「私がダンを守る!」

イコもウィローがやろうとしていた事に気がついたらしい。声が荒くなっている。

「では一応聞いておこう。この天才である私に体を渡せ。貴様より有効活用してやるぞ」 「断る!俺はまだ知りたい事やりたい事いっっぱいあるからね!」

 

「そうか…ならば力付くで奪うまで!」 ゴゴゴ

ガラガラ壁が壊れ機械の体が現れた。それは双子の何倍も大きい姿だ。ウィローは手始めに邪魔であるイコを潰そうと剛腕を振り落とす。それなりに早い動きにダンは片割れを呼ぶ。 「イコ!!」 

「わかっている」 少しずつ彼女の体が振れていき、ガシャン!と音がした時にはそこから消えていた。何処だと探してみるとウィローの背後に現れていた。

「残像拳。どうやってみているか知らんが、実体をそこに置いていくこの技は見抜けないだろう?」

 

二人は確実に強くなっていた。故に自信を持って格上に挑むほど強気なのだ。奴の装甲は硬いが動きは素人そのもの。多少早くても倒せるとダンは考えている。しかしイコはその硬さと知恵を大いに警戒していた。大天才の名は数十年経っても残っている程、此方の持ち技全て見切られたらカウンター祭りが始まる。早期決着せねばと焦ったイコが技を放った。

「くらえ!!ダブルサンデー!」チュイン! 衝突しても煙ができただけで傷がなかった。

その事に気がついたダンが気を引き締めて己に喝を入れる。

 

「一々小賢しい…!」 苛立ったウィローが光線をばら撒きまくった。 キィィィイイイ“イ”イ“ン”!!!

不規則に放たれたそれが少女の肉体を貫く。

  「ぅがッ!」ジュッ!

「っ、くそ!」 これ以上イコに近づかせない為にウィローを殴る。こんなの屁でもないだろうが、こっちに注目させれた。 「オニさんコチラ!」 足に頭突きして転ばせる。

ズシン!と音が溢れ、そこから距離をとっていると光が後ろから貫いた。 「あ、れ…?」 じわじわくる痛みにビームを打たれた事に気がついた。

 

____________________

「くくく…儂を忘れておったな?」 ガチャガチャと機械をいじりボタンを押す。すると謎のチューブがダンに絡みついていった。 「よくやったぞコーチン!」

身動きが取れないダンにスポットライトが当たる。脳が溶かされる用意が出来上がっていた時に、ドゴォン!と破壊の波が響いた。 「世話が焼けるガキどもだ」

連絡ツール片手に大男が穴からやってきた。

 

少し前にイコはラディッツに連絡を入れていた。ボロボロの中、勝てる一手を呼び出す事に成功した。

「げほ…ダン、!」 内蔵がやられている有様に恐怖を思い出し必死に治癒する。何度も何度も何度も何度も何度も!

「そこら辺にしろ、イコ」 「…ラディッツ」

さっさとあれをやるんだろう?問いかける男にイコは立ち上がり、一歩 前に進んだ。

 

「攻撃は俺の方に合わせろ!」「言われずとも分かってる!!」 二人で気弾を打ちまくり、飛びながら回避する。逃げ遅れそうになった時は首を掴んで動かす。

その様子をダンはぼんやりと見ていた。怪我がほぼ治っても体が石みたいに動かない。カチカチと巡る記憶が対攻の一手を探そうとしている。体術は効かない、エネルギー波は表面を焦がすだけ…埒があかないと引き出しを全て出す。波となったそれの中に、この怪我とヒーローが敵を撃つ場面、俺らを抱きしめるじょせいが一斉に重なる。

 

目眩がしてもふるふると指をウィローに向け、ありったけのエネルギーを込める。ギュイギュイバチバチ焼けてもその腕を下ろさず溜め続けた。

「…ショ、ット」ドッ ギュィィィ”イ“イ”イ“イ”イ“!! ズガァン!!!  「なんだと…!?」 ガラガラ ズズン…

 

その一撃見事に液体カプセルを打ち抜きそのまま屋根を破壊した。ボトボトと流れる液体を止めようとする様にラディッツとイコがクロスしながら止めを刺す。

「「ダブル…!サンデー!!!」」 チッ ドォオオオン!!

「この…Drウィロー、が…やられるとは…!」 BOooooOM!!!

最後の言葉を残しウィローが大爆発した。それに共鳴する様にこの施設も次々と爆破していく。

 

「何もたもたしているんだ!さっさと帰るぞ!」

少年を抱え、穴に向かうラディッツがイコに叫ぶ。呼ばれた少女は一点を見つめた後返事を返した。

「…今向かう!」 そのまま三人は荒野へと向かって消えた。

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「まさか此方を覗き返そうとするなんて…予想以上に魔術の才能を持っていたのね」 「トワ、どうする?」

 

青い二人組が何処かからか現れた。どうやら先程の戦いを観ていたらしい。

 

「そうね…予想以上に強くなっていたから、ナッパを強化する案にするわ」

「彼奴らを始末するのはいつにするんだ?」

 

「少なくとも今じゃないわ。ミラ、今回の事件でこんなにもキリが溜まったのよ?まだ価値があるから利用するの。

精々私のために頑張ってちょうだい。ねぇダンとイコ」




取り敢えず双子の戦闘力を明らかにしたいので下に書く

ダン 戦闘力 390→5900→6500

イコ 戦闘力 318→5600→6000
おまけ
ラディッツ 戦闘力 1500→8200

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