勢いのまま進めればいいな。
「運が跳ねて上がったのか。巻き込まれてるから下がってるのか。」
コインランドリーの入り口が見える場所にしゃがみ込んだ。見えると言っても、見える入り口は親指ぐらいの大きさ。
「殺るべきか。殺さざるべきか。準備はしておくのは必要だよな。」
右手に用意したライフルに弾を込める。スコープはないが、500m程度なら射程距離に問題はない。
ガラス程度なら、7.62mm弾なら障害物にもならない。
「500mの精密射撃を『程度』って、言われると正直ショックっすわ。ゴルゴでもスコープ使うっすよ?」
「我々の仕事柄でしたらロケット砲や迫撃砲で建物ごと破壊したほうが楽ですよ!先輩!」
「そういえば、人質救出作戦とかないよねー。」
「そんな仕事は回ってこん!仕事せんか!!貴様らは!」
などと仕事場でのやり取りを思い出す余裕もある為綱。元々外すイメージすら思い浮かばない。何度か成功経験もある。
「今は23時前、夜明けまではココはバレないだろうから、動きがあるまで粘れるか。」
レバーを引き、安全装置を外す。あとは引き金に力を入れればいつでも発射できる。足元には万が一のための拳銃。
唯一の懸念は裏口があるらしいことだ。正面入り口以外は三方が建物と隣接してるので見えない。
さすがに視力を『強化』してもコンクリづくりの壁や、コインランドリーの上層階を貫通するのは無理だ。
(あのウォッカが見間違いで、灰原哀。えっと、ごめん。元の名前忘れた。ともかく彼女の動きもなければ、単なるアホだな。俺。約30年前、しかもアニメと漫画の絵でしか覚えてないんだし、仕方がない。そういう事にしておいてくれ。いや、ください。)
もちろんというか。当然というべきか。自分たちが生活している世界は三次元。生の命のある世界。絵とは違いがある。
え?オッチャンと目暮警部は?服装と名前と頓珍漢な推理で分かるわい。あと声。いい声でした。
(さぁ、いつでも来い。いや、来てください。)
気合は十分だが、半開きの目と口。ダラリと力が抜けた身体。要するにアホ面とダラけた身体だ。見る人によっては笑いが出るだろう。
「動かない。ウォッカは見間違い?それとも幻覚?」
待機し始めて2時間。ポルシェは動かず、『仮称・灰原哀』も動かない。椅子に座り続けて何もしない。
今の為綱は平時の苛立ちも、余計な思考もない。
「非常時の半分。いや、1割でも良いから平時に頭を使ってほしいもんだ。」
(変なことまで思い出したわ。すんません。室長。爺ちゃん。)
更に2時間が経過。アホ面状態維持は変わらず、相手も変わらず動かない。雨脚は弱まって小雨に。このまま行けば天気予報は当たり明日は晴れるだろう。
(もし、夜明けまでは動きが無かったらコッチも撤収しよう。昼間にドンパチやったら流石にバレるな。)
それにウォッカだけが動いてるなら、手は出さないほうがいい気がする。正直言ってジンの方が圧倒的に脅威だろう。
(うろ覚えだけど、ウォッカはポカやらかす記憶がある。逆にジンはなかった気がする。そもそも、灰原哀が組織を逃げ出した方法は小さくなってからだったかな?)
古い記憶が少しながら蘇る。そう考えるとジンが来なければ何もしないほうが正解だよな。
灰原哀は組織から逃げるのは出来たんだ。今、余計なことをした方がマズイよな。
「助けたとしても、対策の仕方がわからん。」
フッと頭から緊張が消える。集中が途切れた訳ではなく今日は黒いポルシェの追跡することを優先した。
あのポルシェがジンの物なら拠点や動きの一つでも掌握したほうがいいだろうと考えた。
「………ふぅ。」
一息つくと銃の安全装置を掛け、弾倉を外す。『倉庫』の中に拳銃と小銃を納めて身体を伸ばした。
「帰るか。ホント何やってたんだろ。」
ヒョイとビルから裏路地に飛び降り、表通りに出る。あとは車に乗って帰るだけ。
パァン!!
「は?」
夜の東京に銃声が響く。そして、間抜けな声が為綱の口から出た。
ぐぬぬ。書くことになった元凶に読んでくれる人がいるから良かったと思うだけでは駄目。言われましたけど、元々は罰ゲーム作品だし。イキナリ文才が上昇はしないと思うんだけど。
フィクションの無理な人事や配置は……
-
許せる。
-
許せない。
-
もっと派手にやるべき