「ようこそ新入生諸君!」
大きな声が響き渡ります。
「我が真央霊術院は千年以上もの誇りある歴史を持ち、未来の鬼道衆・隠密機動そして護廷十三隊を作る未来ある若者を育成する伝統ある学院である!」
霊術院に所属している全院生を収容可能といううたい文句の大講堂に集められた私たち、一回生――つまり新入生は、壇上に立った学院長のありがたーいお言葉を聞いています。
はい、早い話が入学式ですね。
「諸君らもその伝統に恥じぬよう――……」
しかし、いつの時代もどんな場所でも、入学式とか卒業式って内容は変わらないものなんですかね。定型通りというか、むしろ逆に分かり易いというか。
周囲にちらりと視線を向けると、同期生たちも皆さん真面目に聞いている風ですがどこか退屈そうです。
儀礼的な意味はあるんでしょうけれど、血気に逸る若者ですからねぇ。こういうのは退屈以外の何でもないはず。
さらに視線を動かせば、壇上のもう少し上に垂れ幕が掛かっています。そこには所謂"入学おめでとうございます"の旨の文字が刻まれており、隣には入学年度も入っています。
……年度が書いてあるのは良いんだけれど、何年に何が起こったのかが分からないの。
前年度の卒業生が
「改めて述べるが、我が真央霊術院は六年制である。そして、卒業しても死神や鬼道衆になれるワケではない。入隊試験を突破せねば、正式に認められず――……諸君らは、とりわけ特進学級である一組となった者は、現在の立場に満足することなく更なる研鑽を――……次代の中心となるように日々、自分自身の――……」
ありがたいことに、お話はまだ続きそうです。
ちゃんと聞いている同期は何人いるんでしょうね?
「皆さん、改めてご入学おめでとうございます」
長い長いありがたーいお話が何のアクシデントもサプライズの一つもなく、滞りなく終わると、その足で各コース・各学級の教室に向かいました。
学長の話にもあったように、真央霊術院は死神のためだけの学校ではありません。
死神を目指す子は、死神コースを。
鬼道衆――死神たちの中でも鬼道に秀でた者達によって組織された特殊部隊――を目指す子は鬼道衆コースを。
隠密機動――いわゆるスパイや暗殺者みたいな裏の仕事をメインとする部隊――を目指す子は隠密機動コースを。
とまあ、目標によって学科が分かれています。
各学科に分けられた後は、それぞれが組で分けられます。
この組は完全に実力順で決定。成績優秀者は第一組に。振るわないと第二組、第三組……――入学者数によって組の総数も異なりますが――と、組の数がそのまま実力の差となって現れます。
そして私は何と! 死神専攻の第二組でした!!
……普通ですね。しかも全二組の中での第二組です!! 死神を目指す生徒の数が今年度は少なかったみたいで、ちょっと二組の生徒数は多いみたいです。
うーん……師匠にたっぷり鍛えて貰ったはずなのにこれですか……
ちょっとだけ伸びていた鼻っ柱をたたき折られた気分です。慢心していたつもりはないんですが、がっかり感じているということは、どこか楽観視というか客観視が甘かったみたいですね。
ちなみに。蓮常寺さんは第一組で、綾瀬さんは第二組でした……ちょっとだけ蓮常寺さんが心配ですね。ちゃんとクラスでやっていけるんでしょうか?
あとで綾瀬さんと一緒に様子を見に行こうかしら。
「さて、本日はこれで終わりとなりますが。その前に皆さんにお渡しするものがあります」
ぼーっとそんなことを考えていたら、担任の話が随分進んでいました。気がつけば担任は大量の刀を手にしています。
「これは
あら!? これはちょっと意外だったわね。
浅打を持つのは師匠から教わって知っていたけれど、まさかこんなに早く渡されることになるなんて。
「浅打も斬魄刀ですが、今のままでは無銘――名も無き只の刀でしかありません。皆さんはこの刀と寝食を共にし、錬磨を重ねねばなりません。そうして己の魂の精髄を刀に写し取ることによって、浅打は名を持った"己の斬魄刀"へと創り上げられるのです。死神は斬魄刀と共に成長するもの……そのことを忘れないでくださいね」
「「「「「「はい!!」」」」」」
全員に浅打が行き渡ったことを確認してから、担任はそう言って締めました。思わず感銘を受けたのでしょう、教室内の全員がはっきりとそう返事をするほど。
「これが浅打……自分だけの斬魄刀か……」
今日は入学式と説明だけで終了。もう帰っても問題ありません。
ですが。
「どんな風になるのかな?」
「へへへ、よろしくな相棒!」
教室内には大勢の生徒が残っています。全員、貸与された浅打に興味津々ですね。腰に差したり、声を掛けたり、中には頬ずりしている子もいますね……
かくいう私もご多分に漏れず、鞘に収められたままのそれを指先でそっと撫で回しているのですが。
「斬魄刀ってどんな風になるんでしょうね?
「うーん、それはまだなんとも……魂を写し取るって話だから、今すぐどうこうなるって物でもないんでしょうね。もっとちゃんと時間を掛けて鍛えていかないと」
「そっかぁー……そうですよね」
綾瀬さんも気持ちは同じのようで、自分の浅打を抱き締めています。かわいい。
「師匠の話だと
「今は?」
「蓮常寺さんを冷やかしにでも行きましょうか?」
「いいですね! 小鈴さんが寂しがっているかもしれませんから!」
ようやく本物の死神への道を歩き始められました。