お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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第115話 とりあえず織姫だけは凝視しておく

「ああ、いたいた」

「え!? ど、どこに……」

「ほら、あの建物。右から……ひーふー……」

「ん? んんっ!? あ、本当だ。いた……先生、凄いっスね……」

 

 穿界門(せんかいもん)を通って現世に着いたのが、朝の十時くらい。

 そこからルキアさんのか細い霊圧を頼りに、気取られぬように。現世に変な影響を与えないようにゆっくり移動することしばし。

 ようやく彼女を見つけました。

 

「てかアレ、義骸……ですよね? なんでアイツ、義骸になんて……? それに何スか、あの建物。ガキ共が集まって何かやってるみたいですけど……?」

「あれは学校っていう、現世の子供が学問を学ぶための施設よ。霊術院みたいなものね」

「なるほど! ……ってことはルキアのヤツ、また院生みたいな真似してんのか……難儀なヤツだな……」

 

 見つけたときの時間が時間なので、丁度授業中でした。彼女は大勢の生徒に混じって授業を受けています。

 そうそう、こうやって高校生のフリをしていたんですよね。

 制服なんて着ちゃってて、すっごく可愛いです。

 白のワイシャツにグレーのミニスカートが良い感じに似合ってます。

 

「でも、ルキアさん。可愛い格好してると思わない?」

「え……ええっ!? 何言ってんスか!!」

「現世は本当に、尸魂界(ソウルソサエティ)にはない刺激に満ちてるわよね。上はあんなに薄いシャツを着てるし、下なんてちょっと風が吹いただけでめくれ上がっちゃいそうだと思わない?」

「い、いや、その……それは……」

「今の時期は暑くなるから、汗ばんだ肌に着ている物が張り付いて。しかも白で薄手だから、透けちゃって……」

「かっ! からかわないでくださいよっ!!」

 

 あらら。阿散井君が顔を真っ赤にしてる。

 

 でも本当にそうなんだもの。

 制服って、実にけしからん格好だと思わない? こんなの襲ってくれって言ってるようなものじゃない。

 

 あと、ルキアさんの確認もそうだけどもう一人。

 記憶が確かなら、主要な人たちは全員同じクラスでまとめられていたハズだけど……あっ! いたいた!!

 

 あれが井上(いのうえ) 織姫(おりひめ)

 私がずっと昔から願っていた、登ってみたいお山(揉んでみたいおっぱい)の持ち主の一人ね。

 

 うん……これはすごい。

 茶色の長い髪に柔らかそうな表情がすっごく似合ってる。

 そして少し視線を下に動かせば、そこには規格外のおっぱいが!!

 ちょっと胸を張ったらボタンが全部弾け飛んで、シャツが破けてはち切れそうなほどの大ボリューム!

 

『うわああああ!! なんとけしからんおっぱい!! そこにけしからん制服が合わさってあれはもう危険物指定待ったなしでござる!! あれが! あれこそが今回の目的でござりますな!! あのおっぱいをお持ち帰りして、四番隊の隊士にするのが今回のミッションでござるよ!! ささ、いざ参りましょう!! 真の楽園は目の前でござるよ藍俚(あいり)殿!!』

 

 落ち着け!

 いや、私もちょっとうっかり実行しそうになったけれど!!

 でもそっちは後回し!! 今はルキアさんが最優先!!

 

「先生……? どーしたんスか?」

「ううん、なんでもないの。それよりも今は監視だけに留めておきましょう。実際に接触するのは日が落ちてから。いいわね?」

「了解しました!」

 

 見つけたとは言っても、まだ日も高いので強硬手段に訴えるのはちょっと問題です。

 それにどうやら、ルキアさんの表情を見る限りだとこっちの存在になんとなく気づいているみたいですし。

 なにより今から下手に暴れると……浦原と夜一さんが出てきそう。

 

『つまり、今から暴れればあのドスケベ褐色爆乳を久しぶりに堪能できるというわけでござりますな!! よーし……』

 

 だから落ち着きなさい。

 

「ところで先生……そろそろ教えてもらえませんか」

 

 少し会話が途切れた頃を見計らい、阿散井君は深刻そうに切り出してきました。

 

「現世に行ってルキアを捕縛する任務ってことは、朽木隊長からも聞きました! だからこうやって現世まで来ました! でも! なんで! どうしてルキアが捕まえられなきゃならねーんスか!! なんでその任務に先生が出向いてるんですか!! 朽木隊長はどうして先生に任せたんですか!! 俺、訳が分かんねぇスよ……」

 

 ずーっと腹の中に抱えていた不満をぶちまけてきましたね。

 まあ、そういう詳細説明を省いて連れてきちゃったから、不満があるのも当然なんですけども。

 

「その訳は、後で話すわ。手間を省く意味でも、ルキアさんと合流するまで待って貰って良い? こっちの都合で申し訳ないんだけど……」

「……分かりました。先生に限って変なことを企んでいるハズは無いって、信じてます」

「ありがとう。じゃあもう一つ、朽木隊長のことも信じて貰えるかしら? 誓って変なことは企んでいないわ。ただ、あっちはあっちで今回の任務について動いているの。それも、私なんかよりもずっと精一杯に」

「…………」

 

 目を閉じて私の言葉に耳を傾けるその姿は、何度も反芻して自分に言い聞かせているようにも見えます。

 

『誓って変なことは企んでいません……でござるよ!! ただ拙者たちは、織姫殿を思う存分、指が擦り切れるまでマッサージしたいだけでござる!! それとあの性格なら強く押せばそのまま疑うことなく信じるはずでござるので、夢の無知シチュを実現出来るやもしれぬでござる!! うっはww  夢がひろがりまくりんぐww やる気がめがっさ満ち溢れてキターーー!!』

 

 おだまんなさい!!

 

「わかりました、信じます。てか考えてもみりゃ、朽木隊長は絶対にそんなことしませんから」

 

 やがてゆっくりと目を開け、納得したような表情で頷きました。

 

「この間だって隊長、鴇哉(ときや)のヤツにですね――……」

「え? 何その話、私知らない。何があったの? 詳しく教えて」

 

 監視はまだまだ続きますが、そこはそれ。

 視線は緩めませんが、話題は六番隊の隊長が息子に振り回される話にシフトしていきました。

 

 え? そんな話をしていたら他の人にバレないのか?

 大丈夫ですよ。

 縛道で二人の姿と気配を可能な限り薄くしていますし。

 それに何よりも、私たちは今は空中にいますから。

 足下の霊子を固定して足場代わりに使っているんです。

 上への警戒って、なんとなくおろそかになりがちですし。

 

 なので安心して監視任務を続けられます。

 

 ……まあ、一部の実力者にはバレてるんでしょうけどね。

 

 

 

 

 

 

「さて、そろそろいい頃合いかしらね?」

「んあ……よーやくですか……? 待ちくたびれましたよ……」

 

 下校するルキアさんを追い、クロサキ医院に入り、やがて暗くなってからこっそりと抜け出してきた彼女の背中を目で追いながら、阿散井君に声を掛けます。

 言葉通り彼はすっかり監視に飽きており、しゃがんだままうつらうつらと船を漕いでいたほど。

 性格的にもこういう任務って向かないわよねぇ……阿散井君は……

 

「てかルキアのやつ、人通りの少ない方に行ってません? まさか、誘ってる?」

「というよりも、こっちに気づいた上で万が一にも他人の迷惑にならないように人気(ひとけ)の無い場所に移動してるんでしょうね」

 

 そう言うところはきちんと気を遣いますね彼女は。

 こっそりと逃げていく彼女を追うことしばし……ああ、この辺なら問題なさそうね。

 "一人を除いて"誰もいないし。

 

 ……どうやら、近くで様子を見ているのがいるみたい。

 

「そろそろ良い頃合いよ。阿散井君が声を掛ける? それとも私が話した方がいい?」

「いえ……俺が行きます……」

 

 覚悟を決めた男の表情を見せながら、阿散井君はルキアさんを追い抜くように加速して彼女の前まで回り込みました。

 

「いよぅ! ルキア!!」

「ぬおっ!! ……む! お、お主……恋次か……!?」

「ったりめーだろうが!! 他の誰に見えるってんだ?」

「脅かすな馬鹿者ッ!!」

 

 そのまま一気に飛び降りて、ルキアさんの前に着地します。

 彼女はといえば、突然目の前に男が降ってきたことに驚き、続いてその相手が幼なじみだったことに気づいて二度驚いています。

 

「……いや、待て! ということは、今朝から感じていたのは……」

「ああ、そうだ。お前がガッコウ? とかいうところでお勉強してた時からずっと見てた。すっげー退屈だったぞ!」

「な……っ!! そんな時からだと!? い、いや。今はそんなことはどうでもいい! 恋次、お主が……追手なのか?」

 

 顔見知りが出てきたことで緊張感が薄れてしまい、精神が日常会話モードになりかけていましたね。

 ですがそこをグッと堪えて、気を引き締め直してます。

 

「……ああ、そうだ。けど、俺だけじゃねぇぜ。もう一人いる」

「ッ!?」

 

 あ、呼ばれたわ。

 じゃあせっかくだし、インパクトを重視するためにも後ろから。こう肩にポンと手を置いてから……

 

「こんばんは、ルキアさん」

「せ、先生!?」

 

 大慌てで後ろを振り返り、私と目が合って彼女はさらに驚きを増します。

 

「朽木隊長じゃなくてごめんなさいね。本当なら彼が来る予定だったんだけど……私が代理を任されることになったの」

「い、いえ……そんなことは……」

「それじゃあ、薄々察しは付いているとは思うけれど、私たちが現世に来た理由を説明するわよ」

「……はい」

 

 しょんぼりと項垂れるルキアさんと、そんな彼女を阿散井君は苦しそうな目で見つめています。

 

「ルキアさん、あなたは"人間に死神能力の譲渡"および"無許可で滞外超過"を犯しました。四十六室はこれを重く見て、あなたへの極刑を決定したわ」

「ッ!!」

「な……っ!!」

 

 聞いてません、といった様子で二人が大仰に反応しました。

 阿散井君にすらここまでは教えてませんから、仕方ないんですが。

 

「私たちはルキアさんを捕縛して尸魂界(ソウルソサエティ)に連れ帰る任務を受けているの。大人しく、従ってもらえるかしら?」

「……はい」

「ちょ、ちょっと待って下さいよ先生!!」

 

 そりゃ阿散井君は口を挟みますよね。

 

「確かに能力の譲渡は重罪ですけど、極刑ってのはおかしいでしょう!?」

「残念だけど、上が決めたことよ」

「……くっ!!」

 

 ギリギリと歯を食いしばり、納得いかないと顔中に書いています。

 ですが一応は引き下がってくれました。

 

「そしてもう一つ。ルキアさんの死神能力を譲渡された人間から、その力を取り戻さないといけません」

「ッ!!」

 

 今度はルキアさんが顔を青ざめさせる番でした。

 

「その人間はどこかしら?」

「あ、そうか! それもあったのか!! オイ、ルキア! そいつはどこにいる!? 最悪の場合は斬り殺してでも……ッ!!」

 

 軽く刀に手を掛けた瞬間を狙ったかのようにして、霊子の矢が飛んで来ました。

 ですがそこは阿散井君、軽く身体を捻り余裕を持って避けました。

 

「あら懐かしい。今のって滅却師(クインシー)の攻撃ね。確か……神聖滅矢(ハイリッヒ・プファイル)……だったかしら?」

「ご名答」

 

 通り過ぎる矢を見ながら呟けば、声が聞こえてきました。

 

「死神にも知られているなんて驚きだね」

「何者だ、てめぇ……!」

「ただのクラスメイトだよ。死神嫌いのね」

 

 姿を現したのは黒髪で眼鏡を掛け、片手に霊子兵装を。もう片方の手には……え? ビニール袋!? なんでそんなもの持ってるの!?  お買い物帰り!?

 ううん、ルキアさんと接触する少し前から気配があったからそれはないわね……ってことはその手に持ったビニール袋は自前なの?

 あとそのシャツは何!? なんでおっきく十字架を描いたようなデザインになってるの!? 趣味!? そのデザインは趣味なの!?

 ああっ! なんだか一つ気になるともう全身ツッコミを入れたくなってきちゃう!!

 

 けどそんな気持ちはグッと堪えて。

 確かこの男の子、ルキアさんの知り合いよね。名前は……い、いし……

 

「石田……貴様、どうしてここに……」

 

 そう! 石田君だわ!! 石田……ウルルン……だっけ?

 あら、何かが違うような……半分くらいは合ってる気もするんだけど……

 えっと……確か……ウルルン……いえ、ギョロ……?

 

石田(いしだ) 雨竜(うりゅう)だ。よろしく」

 

 そうよ! 雨竜だったわね!!

 ――って、あら?

 ちょっと考え事をしていたら、なんだか石田君と阿散井君が一触即発の雰囲気になってるわね……なんで?

 

「いかに死神とはいえ、自分を倒した相手の名前ぐらいは知っておきたいだろうからね」

 

 ああ、なるほど。

 ちょっと見てない間に、挑発みたいなことをしてたのね。

 そういえば石田君は基本的に"死神が嫌い"ってスタンスだったわね。がっつり絡んで仲良しこよしのイメージしかなかったから、すっかり忘れてたわ。

 何より滅却師(クインシー)なら、死神と敵対する態度でも当然なのよね。

 で、その挑発を受けて阿散井君が……あら……?

 

「……っく、あはははははっ!! 俺を倒す? 現世にも面白い冗談を言えるヤツがいるんだな」

 

 怒るかと思ったけど、少し意外ね。あっさり笑って余裕で受け流したわ。

 とはいえ実力差を冷静に鑑みれば、そういう反応にもなるわね。

 

「教えてやるよ、上には上がいる。残念だがてめぇじゃ、逆立ちしたって俺には勝てねぇ」

 

 堂々と言い放つと阿散井君は徒手空拳のまま構えます。

 

「……何のつもりだい? その腰の刀は飾りかな?」

「お前相手に斬魄刀を抜いちゃ、弱い者いじめになっちまう。せめてこのくらいは手加減しとかねぇと釣り合いが取れねぇだろ?」

 

 にやりと笑いながら言い放ちました。

 

「阿散井恋次だ。よろしくする気はねぇが、名前だけは覚えとけ」

「……へぇ」

 

 おっと、若干石田君が苛立ったみたいですね。

 眼鏡をクイッとしながら、レンズの奥に見える双眸を若干細くしました。

 

「よせ! 恋次!! 相手は現世の人間だぞ!! 石田!! 逃げろっ!!」

 

 ルキアさんが悲痛に叫びます。

 ……まあ、そうですよね。阿散井君の実力を知っていれば、この戦いは手合い違いどころではありません。

 いくら霊圧を制限されているとはいえど。

 

 そして、彼女の制止の声もむなしく、阿散井君は瞬歩(しゅんぽ)で一気に間合いを詰めるとそのまま下段蹴りを放ちました。

 

「……なにっ!?」

 

 鍛え上げられた彼の瞬歩(しゅんぽ)は、下手な隠密機動顔負けです。きっと石田君の目には、相手が瞬間移動して接近してきたように見えたでしょう。

 反応も出来ぬまま、無防備に一撃を食らっています。

 ですがこの一撃は体勢を崩すのが狙い。

 間髪入れずに本命の一撃が放たれました。

 

「シッ!!」

「ぐっ……!?!?」

 

 顎の先を擦るような一撃。

 その攻撃で頭を揺らされ、彼は一瞬にして倒れました。

 

「が……あ、ぐ……っ……!!」

「言わんこっちゃねぇ。この程度の攻撃も避けられねえ相手に、どうやって負けろってんだ? 昼寝でもしてりゃいいのか?」

「く……くそっ……!」

 

 石田君はまともに立つことも出来ず、コンクリートの道路に倒れたままそれでも阿散井君をにらんでいます。

 意識を失わずにいるのと、この執念だけは褒めても良いかもしれません。

 

「ま、わかっちゃいるとは思うが。さっきの攻撃でテメェを殺すことも出来たんだ。見逃してやるから、とっととお家に……帰れ!」

 

 さらにダメ押しとばかりに片足を上げると、そのまま石田君の顔のすぐ横を目がけて踏みつけました。

 ストンピング(踏みつけ)ですね、それも脅しが目的の。

 顔面スレスレを狙うことで恐怖心を。情けを掛けることで屈辱感を。それぞれ何倍にも倍増して相手に与えます。

 

「何してんだテメェぇぇぇっ!!」

 

 そんな阿散井君の行動を見て、この場に文字通り飛び込んできた男が一人。

 

「な……!? 何だ、テメーは!?」

「黒崎一護! テメーを倒す男だ! よろしく!!」

 

 お約束通りの流れよねぇ……

 




オレンジ色の高校生、やっと登場

●ギョロとウルルン
スターオーシャン・セカンドストーリーより。
(雨(ウルル)って名前のキャラもいるので微妙に紛らわしい)
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