お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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すみません、ちょっとリアル生活的な方を優先させていました。



第121話 立ってる者は親でも使えって、親が言ってた

「七地区十二番、異常ありません」

「同じく十三番、異常なし!!」

「了解しました。引き続き捜索を行って下さい」

「「了解しました!!」」

 

 無線から報告が飛び込んで来ては、その結果が白地図上に反映されていきます。

 各部隊、各隊士の懸命な捜索によって書き込みがされていくものの、今のところは、白が七分(ななぶ)に黒が三分(さんぶ)と言ったところでしょうか。

 これだけでも瀞霊廷がどれだけ広いのか、それを改めて実感させられます。

 

「旅禍は西方郛外区(せいほうふがいく)に現れました。であれば、西側を重点的に調べるべきでしょう。そちらの様子はどうなっていますか!?」

「配置は済んでいますが、まだ報告は上がってきてません。慎重に調べているようです!!」

「わかりました……」

 

 藍染――いえ、今だけは藍染総司令(・・・)と呼ぶべきですかね?――の言葉に、一人の隊士が現状の報告を返します。

 その内容に藍染は思案顔を浮かべました。

 

「怪我人が出たような報告は?」

「いえ、今のところは皆無です!」

「隠密機動は各隊と連携して捜査に当たれ! 二番隊の各隊士は、仲立ちを務めるように!! いいな!!」

 

 私と砕蜂も、藍染総司令に負けじと指示を出していきます。

 色々と忙しいですよね。

 椅子に座ってふんぞり返っていればいいわけじゃありませんから。

 

 

 

 

藍俚(あいり)殿!! そろそろ説明を!! さっぱり理解出来ないでござるよ!! なんでござるかこの状況は!?』

 

 はいはい、分かってますって。

 それじゃあ、隊首会が解散する直前まで場面が一旦飛ぶわよ。そこから説明するから。

 

 

 

 

 

「言葉を遮ってしまったことは、申し訳ございません。一つ、考えがあるのですが……提案、良いでしょうか?」

「……申してみい」

「ありがとうございます」

 

 総隊長の言葉を遮る形で口を挟んだ私は、そのまま考えを口にしました。

 

「瀞霊廷内への侵入者というのは、あまり例がありません。そこで、各隊がバラバラに動くのではなく各隊が協力する体制を作るべきではないかと思います」

「ふむ……」

 

 その言葉に総隊長は髭に手を当てつつ思案顔を見せます。

 

「言うは易し。なれど、行うは難し。具体的にはどうするつもりじゃ?」

「一人、総司令役を用意します。その総司令の指示に、隊長を含めた各隊隊士は従うことで、組織だった動きや連携を行えるのではないかと意見します」

「…………」

「総司令の場所を用意し、そこが全体の動きを統括すれば対応も円滑に進むのではないでしょうか」

 

 結構、死神たちってバラバラですからね。

 今回のような場合、各隊は決められた地域を守るのですが、上に立ってしっかり指揮を執る。下の者はそれに従う。

 そういう組織的な動きって、苦手です。

 

 戦場だって、総司令部から指示を受けることで各部隊は動くわけでしょう?

 今までは、隊長というの名の現場指揮官がそれぞれ独自に動いて、それでも上手く行っていたわけなのですが。

 

「なるほどねぇ……この事件を利用してその組織的な動きの実戦訓練をしちゃおうってわけだ。こりゃまた、藍俚(あいり)ちゃんは凄いことを思いついたね」

「だが、今回の場合は効果的かもしれないな。侵入者がどこにいるかも分からない現状、横の繋がりと情報のとりまとめ役は必要だろう」

 

 意外にも、と言っては失礼ですかね。

 京楽隊長と浮竹隊長が好反応を見せてくれました。

 

「なんだそりゃ!? こんなときに悠長にそんな事してる余裕なんてあるのか? とっとと動くべきだろうが!!」

「慣れぬ試みゆえに、対応が遅れる可能性もある。旅禍相手に後手に回るのはあまり好ましくなかろう」

「拙速は巧遅に勝る場合もある。止めておくべきでは?」

 

 そして当然ながら、反対意見も出てきました。

 狛村隊長と東仙。あと何故かやたらとエキサイトして反対してくる日番谷隊長です。

 

「どうでもいいヨ。早く旅禍を捕縛させてはくれんかネ」

 

 ……涅隊長はブレませんねぇ。

 他の隊長たちは、特に賛成も反対も無しといった感じでしょうか? 

 

「ふむ、なるほど。各人の言い分はあれど、やってみて損はなさそうじゃな。して、肝心のとりまとめ役は誰が行う? 湯川、お主か?」

「いえ、その役目は藍染隊長にお願いしようかと思っています」

「……ええっ!? 僕がですかっ!?」

 

 突然の大抜擢に、藍染は目を丸くしています。

 

「ええ、そうです。藍染隊長とは、私が霊術院で講師をしていたときに何度と特別講義を依頼しましたし、そのときに見せた知識や考え方など、どれも素晴らしかったので。是非、お願いしたいんです」

「い、いや……それは……弱ったなぁ……僕には荷が重すぎますよ」

 

 案外、本気で困ってるのかもしれません。

 演技とは思えないくらいに、悩んでいます。

 

「それに、今回の侵入者ですが。十中八九は、件の旅禍だと思います。ですが、その旅禍を隠れ蓑として別の存在が来たという可能性もあります。藍染隊長ならば、そういった事にも気づけると思います」

「……なるほど。藍染の評価については、儂も聞いておる。問題はなかろう」

 

 納得したとばかりに総隊長はパンと手を鳴らしました。

 

「此度の件については、藍染を頂点とした動きを取ることを厳命する! 異例のことじゃが、そもそも瀞霊廷への侵入者というのもあまり例はない! そのため、各隊長は部下の隊士たちへと伝え、きちんと手綱を握っておくように。よいな!」

 

 総隊長の命令が下りました。

 こうなってはもう、逃げられません。

 

 普通ならば、こうも容易く決定することはないのでしょうが。

 藍染の優秀さと、それを知る者達の多さ。

 そして異例の事態に対応するためということが、総隊長の心を後押ししたのでしょう。

 

 ということで藍染は総指揮を取ることになりました。

 ですが、この話はここだけでは終わりません。

 

「藍染隊長、もう一つお願いが」

 

 切り出したのは、私と砕蜂を副指令とすることでした。

 

 隠密機動と二番隊という、いわゆる隠密的な動きをする者たちのトップである砕蜂。

 四番隊という、治癒や各部隊の後方支援をする者たちのトップである私。

 

 そんな二人が補佐としてつけば、全体の動きをよりスムーズにできるはず。

 ということで、この案も認められました。

 

 

 

 という顛末です。

 

 藍染は総司令となり、総司令部が大急ぎで建設され、彼はそこで指揮をとることになりました。

 総司令部には不定期に情報が飛び込んできており、加えて人の出入りも不定期です。

 

 誰がいつ来るのか、どんなタイミングで事態が動くのかも不明瞭。

 そんな状況になれば、いくら藍染といえども鏡花水月で死を偽装するような真似は出来ません。

 だって、誰にいつ見られるのか分からないんですから。

 なので裏で好き放題に暗躍することはできません。

 

 さらに彼の横には私と砕蜂がついています。

 補佐として基本的に行動を共にしているわけですから、姿を隠して事件を裏で操る暇なんて、そうそう出来ません。

 

 ついでに、総司令部には総隊長もいます。

 何か言うわけではありませんが、私たちの動きを無言で見ていて、なんとも言えないプレッシャーが全員に掛かります。

 一応名目上は「新しい形を試している以上、どこかで不都合が起きるかも知れない。その見極めのため」ということですが……うん、やりにくい。

 きっと藍染はもっとやりにくいことでしょうね。

 

 そしてなによりも。

 まだルキアさんから崩玉を入手していない以上、藍染は真面目に大人しく仕事をするしかないわけです。

 

 仮に私の目論見に気付いていたとしても、どうすることもできないわけです。

 

 どーせこの人、この騒動が終わったらいなくなっちゃうんですから。

 最後のご奉公です。思う存分に、使い倒してやりましょう!!

 だって藍染は、まだ善人の仮面を被ったままですから!!

 

 ビックリするほど有能な相手なんですから、こっちの味方だと公言している間は仕事を大量に与えて逃げられないようにしてやりましょう!!

 ほらほら、アンタの狙い通りに事態を動かせる盤面は作ってあげたわよ! 感謝しなさいな!! ここからどう動くのかしら!?

 

 というのが、私の狙いです。

 ついでに、ちょっとだけ嫌がらせ狙いでもありますけどね。

 

 

 

 

 

 というわけで――

 

「こっちの地区は!?」

「いえ、まだ何も」

 

 藍染総司令は今も必死でお仕事をしています。

 総司令部には通信機器が持ち込まれ、そこから現場の各隊士から矢のように情報が送られてきています。

 寝る間もないほどの忙しさです。

 

 仕事があって、監視の目もあって、私と砕蜂という両手に花もありますよ。

 良かったですね。

 

 そうそう。この状況ですが、白哉は抜けています。

 総隊長からも許可を取って、ルキアさんへの対応に集中することになりました。

 情にながされちゃいましたかねぇ……総隊長も……

 

「四番隊隊長、湯川から各隊士へ。侵入者が旅禍だった場合、その実力は少なくとも西門の兕丹坊を倒すほどです。発見した場合でも、無理はしないようにお願いします」

 

 と、私も注意を促すような指示を出しておきます。

 それと四番隊にも連絡を入れておいて、勇音に仕切らせるように指示しています。

 ちゃんとお仕事はしておかないと駄目ですからね。

 

 さてさて……どう転ぶかしら?

 

 

 

 

 

 ――結局、その日は発見の報告もありませんでした。

 休みなく一晩中お仕事をしていたので、司令部の面々も疲れの色が見え隠れしています。この辺、交代で休憩を取らせるしかありません。

 まあ、一部の人は休めませんけど。

 

 そんな感じで、交代のローテーションを決めようとしていた明け方頃、強烈な衝撃が瀞霊廷を襲いました。

 まるで大質量を持った何かがもの凄い勢いで衝突したような……

 

 ……あれ? これで一護たちが来たんだっけ?

 

 じゃあ、あのときに鳴り響いた侵入者の報告はなんだったのかしら……?

 

 え!? あれまさか鏡花水月!?

 

『オラァ! 催眠!! でござるよ!!』

 

 ひょっとして、射干玉も気付いてた……?

 




 ※ 今週の今日の一護は、特別拡大版を別枠で放送予定です

●藍染いじめ
このタイミングの藍染は(多分)本物なので、本物が拘束されて働かされています。
(原作だとこの頃の藍染は基本的に身を隠していた。
 隊首会の時だけ本物だったと言ってるので)

冷静に考えるとこんなことやらない方が上手く回ると思いますけどね。
(藍染への嫌がらせ"だけ"は特化してると思いますが……)

●総司令部の一コマ(想像)
「湯川隊長。僕、仮眠を取りたいんですが……」
「はいこれ、四番隊特製の寝なくても平気になる薬です」
「え……?」
「総指揮を取る人間が不在は問題なので、どうぞ。効きますよ」
「え、え……?」
「砕蜂隊長は、お先に仮眠を取って下さい。三時間くらい経ったら起こしますから」
「は! それではお先に失礼します」
「え、え……? え……!?」

 多分、現場はこんな感じ。
 藍染を使い潰せ!!

 ……こんなことしてると「カッとなってやった」って理由で刺されそう。
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