お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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第129話 謎の侵入者

 やれやれ、やっと終わったわ。

 

 四番隊に戻り、山田七席が誘拐されたときの詳しい状況とその下手人についての情報を受け取ってから、ようやく司令部まで戻ってきました。

 

 その場にいた隊士たちの証言からすれば彼を誘拐したのは、片方は一護でほぼ確定。

 でも、もう片方って誰なの……?

 なんだか覆面で顔を隠していた女性って話だったけれど、そんなのいたかしら?

 しかもそっちはやたらと好戦的だったとか、爆弾で被害を拡大させていたって話よ。こっちの状況を混乱させようとしている、ってところかしら?

 何にせよ、悪知恵に頭が回るみたいね……そいつのせいで怪我人が大勢運ばれてきたわけだし、用心はしておいた方が良さそう。

 

「湯川隊長、お疲れ様です!」

 

 司令部に入ったところ、近くにいた子が挨拶をしてきました。

 

「ええ、ようやく戻ってこられたわ。何か変わったことはあった?」

「旅禍たちが暴れているという情報は入ってきますが、目的・正体や捕縛したという情報は未だ……どうも旅禍たちはかなりの力を持っているようです」

 

 話から察するに、進捗は芳しくないといったところみたい。

 これ、多分だけど藍染が上手に"正解の二つ隣くらいのところを調査させる"みたいに状況をコントロールしているんでしょうね。

 じゃなきゃ、ここまで一護たちに振り回されるはずがないもの。

 

 瀞霊廷って死神の地元よ? ホームなのよ? しかも基本的には組織で動いているのよ? なのに相手は個人レベルで、しかも土地勘すらないのよ?

 普通なら、一人くらいはもうとっくに捕まって取り調べされてるはずよね。

 

『拷問でござる! とにかく拷問に掛けるでござるよ!! 拙者、織姫殿に服だけ溶かすスライムでヌルッヌルにする拷問を仕掛けたいでござる!!』

 

 はいはい、絶対に機会は作るから。それはちょっと待ってなさい。

 

 でも射干玉の言葉じゃないけれど、捕まえて拷問して口を割らせて仲間を芋づる式に、って状況にいつなっても不思議じゃないのよね。

 

「そうね。聞いてるかもしれないけれど、七番隊の四席がやられたから。相手は少なくとも三席以上の力を持っていると考えた方が良いと思うわ。用心しておいて」

「え、七番隊って……一貫坂四席ですか!?」

 

 あら、意外と有名なのね。

 

「万が一の時には注意してね」

「ご忠告ありがとうございます」

 

 まあ、相手はルキアさんの奪還が目的だから。

 ここに来るとは思わないけれど。

 

「一貫坂……鎌鼬でしたっけ?」

「ええ、そうよ……――って、砕蜂!?」

「はい、藍俚(あいり)様! 只今戻って参りました!!」

 

 彼女と別れて総司令室へと向かおうと思った矢先、声が聞こえてきました。

 何かと思えばいつの間にやら砕蜂が隣に並んでいるとか、こんなの驚くに決まってるでしょ。

 

「ただ申し訳ありません。警告を発した者は見つけることが出来ませんでした」

「そう……」

 

 となるとやっぱり、アレも陽動と混乱のための一手で間違いないか。

 

「隠密機動でも見つけられないとなれば、何か特別な理由があると考えるべきでしょうね」

「我々も同じ結論です。何者かが侵入しているのか、それとも隊士たちの誰かが虚偽の報告を行っているのかまでは、わかりませんでしたが」

「ううん、ありがとうね」

 

 さて……

 

 そろそろツッコミを入れてもいいわよね?

 

「ところで砕蜂、その猫って……」

 

 彼女とここで再会したときからずっと気になっていました。

 だってこの子、肩に黒猫を乗せてるのよ!

 それも"すごくどこかで見たことあるにゃんこ"だし! しかもそのにゃんこは"昔感じたことのある霊圧"を放ってるんだもの!

 

 ……何やってるのよ、夜一さん……

 

「はい! 先ほど私の部下になって貰いました」

「部下に……?」

「はい! 凄く暴れていたのですが、私一人でなんとか(しつ)けました!」

 

 なにそれ? そんなグイグイ来る展開知らないんだけど……??

 

 それに"躾け"って……?

 よーく見ると夜一さんも砕蜂もなんだか怪我しているし、しかもにゃんこは"私は不本意です"って顔に書いてあるし。

 

 ……状況から察するに、砕蜂が夜一さんを見つけた。

 戦った。勝った。

 その結果、力尽くで従わせた。

 みたいな状態なのかしら? そして夜一さんを連れてここまで戻ってきた、と。

 

 なにそれ、そんなアグレッシブな展開知らない……

 

 いえまあ確かに砕蜂とはちょくちょく一緒にお稽古とかしてるし、霊圧もどんどん高くなってるし、瞬鬨も教えたし、なんだかんだで瞬鬨はかなり使いこなしているし、それ以外の技も教えたんだけど……

 あれ? 勝てそうねコレ……いやでもだからって、まだ一護たちは侵入したばっかりよ!? なのにもう見つけて連れてきたの!?

 

「あ、痛っ! 止めて下さい!!」

 

 夜一さん、よっぽど文句が言いたいんでしょうね……

 まるで爪とぎをするようにバリバリと砕蜂の肌に爪を立てました。

 にゃんこ姿ですし、迂闊に喋るわけにも行かないだろうから、文句や不満を伝えるための苦肉の策なんでしょう。

 

「とりあえず砕蜂もそっちの猫ちゃんも、傷は治すわね」

 

 移動しつつ、まるで"一戦やりあってきた"みたいな怪我をしている二人の傷を治しておきます。

 外から見て分かる傷が残っていると、要らない騒ぎになりかねないのでそっちを優先しながら。

 しかし、怪我してるのに服が全く破けていないのは奇跡よね。

 

『砕蜂殿も夜一殿もちょっと破れただけで丸見えになってしまう格好でござりますからなぁ!! おっと、これは失礼! 拙者としたことが!! にゃんこ状態の夜一殿は全裸でござった!! ……はっ、これは消されるのではござらんか!? 星マークで隠せばセーフでござるか!?』

 

 ……星マークでも金塊(おたから)マークでも黒塗りでも十円玉を置くでも、なんでもいいわよ……

 

「――とにかく、後で事情は説明して下さいね」

「にゃあ」

 

 治療をしつつ、二人にだけ聞こえる程度に抑えて囁きます。

 夜一さん――この姿だと"夜一にゃん"って呼ぶべきかしら?――が鳴きました。多分「了承した」って返事してくれたんだと思います。

 

「なんにせよ、夢が叶って良かったわね砕蜂」

「はい、ありがとうござ――ッ!!」

 

 瞬間、猛烈な殺気が私たちを襲いました。

 彼女は途中で言葉を切り、一瞬にして戦闘体勢を取ります。

 それどころか夜一さんも砕蜂の肩から降りて、にゃんこ姿ながらも警戒体勢を取っています。

 あ、当然私も反応してますよ。

 いつでも対応できる様に斬魄刀へ手を掛けつつ、殺気の発生源――総司令室へと鋭い視線を向けます。

 

「これって……」

「はい。何者かはわかりませんが、敵がいるようです」

 

 総司令室の中からは、殺し合いでもしているかのような気配が伝わって来ます。

 気配を放っているのは一人だけのようですが、どうやらかなりの強者のようですね。うなじがチリチリとします。

 

「……私が開けるわ」

「では私が敵の相手をしますので。後詰めはお願いします」

「ええ、いくわよ……さん、に、いち……」

 

 砕蜂と二人で軽く打ち合わせを済ませると、戸に手を掛けてカウントダウンでタイミングを合わせます。

 

「っ!!」

「……ぇ!!」

 

 戸を開けると、鮮血の匂いが一気に鼻を突きました。

 室内では通信士として動いていた隊士たちが全員、真っ赤に染まって倒れているのが見え、私は思わず息を呑みました。

 続いて飛び込んだ砕蜂の呆けたような声が聞こえてきました。

 

「一体何が……っ!?」

 

 彼女に続いて部屋に入れば、そこには凄惨な光景が待っていました。

 むせかえるほどの血の匂いが充満しており、刃物で斬られたのでしょう隊士たちは全員が深手を負っています。

 

 そして、部屋の奥では――

 

「え……?」

「馬鹿な……! ありえん……!?」

 

 黒装束に身を包んだ夜一さんがいました。

 

 手にした斬魄刀を、藍染の胸元へと突き立てながら。

 

「……」

 

 その夜一さんは私たちの方へと顔だけを向けると、斬魄刀を乱暴に引き抜きました。

 支えを失い、藍染は口から血を流しながら倒れます。虚ろな目をしたまま、乱暴に扱われてもピクリとも反応しないその姿から、どうやら絶命しているようですね。

 

「……はっ! ま、待てっ!!」

 

 あまりに予想外の光景に、私も砕蜂も一瞬思考が停止していたようです。

 私たちの反応が鈍いうちにその夜一さんは一瞬にして姿を消しました。

 目にも止まらぬ速度で移動して姿を消すそれは、確かに夜一さんとしか思えません。

 

「はぁ……」

 

 なるほどね、こうやって逃げるわけか。

 

 少し離れた場所で固まっている黒猫を横目にしながら、私は少しだけ感心していました。

 




●?????
こうすれば私は自由だ!! これで仕事からも解放される!!

……え! なんで本物連れてきてるの!?

●藍染側の視点で考えてみる
浦原の助けで西流魂街に来てるし、夜一が来てるのも分かってる。

なら、その夜一が一護側の予定にない行動をしていたら?
夜一が死神側の隊長を殺した場面を目撃されたら?

死神側、一護側ともにでっかい混乱が起こる。
(死神側はすぐに混乱。死神経由で一護たちに伝わって向こうも混乱)
その結果、どちらの陣営も疑心暗鬼が大きくなる。

藍染は死を装っているので、自由に動けるようになった。
混乱が大きくなるので藍染はもっと動きやすくなる。

という(結構)良い手となる……はずだったのに……

●総括すると
??「私、何かやっちゃいました?」
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