お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

138 / 293
(年明け最初の更新なので、藍俚さんより皆様にご挨拶です)

新年、あけましておめでとうございます。
旧年中は評価・感想・誤字指摘と誠にありがとうございました。

今年は卯年ですね。
どうか一つ、本年もご贔屓にしていただければ幸いです。

あちらに四番隊で作ったお汁粉が……え? も、もうっ! 気が早いんですから……
ちょっとだけ、ですよ?
(つ「お年玉」)


第138話 六番隊には話を通しておいた

 つ、疲れた……

 なんで普通に説明するだけなのに、こんなに疲れるのかしら……

 

 なんとか石田君、茶渡君、織姫さんの三名への説明を終えました。途中、桃がほぼ必ず食いついて織姫さんと会話するから、横道に逸れて逸れて大変だったわ……

 

 まあこれで、なんとか三人については一通り済んだはずだから。

 憂いは――桃がやたらと「あの三人の世話は私がします!」って張り切ってたのを除けば――なくなった、かしら……

 

 …………

 

 あ! 忘れるところだったわ!! 六番隊!!

 きっと白哉と阿散井君のことだからルキアさんの様子もちょいちょい見に行ってるはずでしょうし、それに一護が十一番隊にいるって情報も共有しておかなきゃ!

 妹が世話になった相手だから、白哉も直接お礼くらいは言うでしょうからね。

 

 そうと分かれば早速出発……

 

 …………ううっ、四番隊(ウチ)の子たちの「隊長、また外出ですか……? こんな状況なのに隊長不在でいろと……?」って無言の視線が痛い……

 

 ごめんねごめんね!

 でももう旅禍関係の怪我人は出ないはずだから!! 帰って来たら今の総員警戒態勢をもう少し楽にしてあげるから!!

 今が正念場なの! ここでミスすると絶対面倒なことになるから!!

 

 もうっ!! こうなったのも全部、藍染が悪い!!

 あんたが最初の隊首会の時にでも「あ、一護たちが来たのって全部自分が仕組んだことです。なんなら百年前の魂魄消失事件も全部自分です」とか言ってれば良かったのに!!

 

『後ろめたさを隠すためとはいえ、荒唐無稽なことを考えられるのはどうかと……』

 

 仕方ないでしょ。

 こんな馬鹿なことでも考えて自分を騙さなきゃ、外出できないわよ!!

 

『まあ、あとで隊士の皆様にはフォローをお忘れなくでござるよ。そうすれば大抵のことは思い出補正で勝手に解決してくれるでござりますから!』

 

 そこは勿論! 今だけ! この我が儘って、今だけだから!!

 なにより仕事はちゃんとやってるから!! どこかの二番隊とか十番隊の元隊長みたいに、仕事さぼって年中遊び歩いてるわけじゃないから!!

 

「……ん? あら……?」

 

 射干玉に思い切り言い訳をしたところでふと気付きましたが……この霊圧って……

 

「うーん……」

 

 上手く気配も霊圧も隠してますが、この距離まで近づけばなんとか分かりますね。

 立ち止まり、顎に手を当てながら下を向いて考え事をしているように見せかけつつ、相手の居場所を探ります。

 

 ……いた。

 

「あ、そうそう」

 

 ぱん、と軽く手を打ち、何か妙案を閃いたような演技をしたのを見せつけてから、瞬歩(しゅんぽ)で即座に移動します。

 演技のおかげで少しは油断を誘えたんでしょうね。

 相手が私が姿を消したことに気付いた頃には、もう既に背後を取っていました。

 

「こんなところで何をしてるんですか?」

「に、にゃー……」

 

 黒猫がわざとらしい声で鳴きました。

 

 ……夜一さん。

 それで騙せると思ってるなら……いえ、騙せるとは本人も思ってませんねこれは。

 だって鳴き声が思いっきり「にゃー」って平仮名ですし。そもそも私から思いっきり目を背けてますし。

 

『通ればワンチャン奇跡が起きるレベルの誤魔化しでござるな!!』

 

「はぁ……仕方ありませんね」

 

 黒猫は逃げようとしましたが、私の動きはその先を行きます。

 サッと首根っこを掴むとそのまま摘まみ上げ、動きを封じてやりました。

 

「選ばせてあげます。このまま素直に口を割るか、それとも今すぐ砕蜂に連絡をして――」

「わかった! わかったわい!! 観念して話せばいいんじゃろう!!」

「――……決断が早いですね」

 

 口を開いたので、手を放して自由にしてあげました。

 けどまだ二つ目の選択肢の途中だったのに、そんなに今の砕蜂には会いたくないんでしょうか……? 勿体ないわね。三つ目の選択肢として「射干玉に全身ヌルヌルにされる」も提示するつもりだったのに……

 

『ええっ!? 夜一殿! 夜一殿ぉぉっ!! 三番目、三番目が正解の選択肢ですぞ!! 騙されてはなりませぬ!! どうか拙者の声を! 届け! 拙者のこの想い!! そして……ぐふふふふふでござる!!』

 

 と、いくら叫んでも射干玉の声は夜一さんには届かないわけで。

 

「お主を探しておったのじゃ! 藍俚(あいり)! お主、砕蜂に一体何をした!?」

「何……と言われても……」

 

 砕蜂に、ですか……? 私がやったことと言えば――

 

「砕蜂を励ましたり稽古をつけたり食事をしたり……そのくらいですよ。何しろあの子、敬愛する隊長が突然いなくなって大変だったんですから」

「ぐっ……」

「それに夜一さん、多分ですけど私がいるから黙って消えても平気だってちょっとくらいは思ってませんでした? あの頃から私と砕蜂は仲が良かったですから、押しつけちゃえ……みたいの」

「ぐぬぬ……っ……」

「そういう意味では、砕蜂は強くて逞しくて、特例込みですが二番隊の隊長と隠密機動の軍団長を立派にやっていますよ」

「じゃ、じゃがアレはなかろう! 儂が手も足も出なかったぞ!!」

 

 ああ、やっぱりそうだったんですね。砕蜂ってば強くなったもんねぇ……

 

「瞬鬨はどーせお主が教えたんじゃろうが! いや、瞬鬨だけではなくあの妙な体術も!!」

「教えただけで使いこなせるわけではありませんよ。全ては砕蜂の努力の成果です。なので夜一さんはもう観念して、砕蜂の部下として……」

「断固として断るわい!!」

「じゃあやっぱり、今すぐ砕蜂に連絡を……」

「それもやめい!! 最初に選ばせたのはなんだったんじゃ!!」

「だって夜一さん、あの場面で逃げましたし」

「自分が他者を殺めている現場を自分で見たんじゃぞ! 逃げるに決まっておるじゃろうが!」

 

 そこまで大声でツッコミを入れたところで、夜一さんはぜーぜーと肩で息を始めました。にゃんこが疲労困憊でお疲れな感じというのも、面白い姿ね。

 

「まあ、あの場では驚きと余計な厄介に巻き込まれそうじゃったから逃げたが。じゃがあの不可解な現象には心当たりがある。まあ、お主は知らなくても当然かも知れぬがの」

 

 数秒後、呼吸を整えた夜一さんが真剣な雰囲気で口を開きました。

 あれこれってまさか、鏡花水月のネタバレ来ちゃいます? 私に教えてくれる感じですか?

 

「アレはおそらく、藍染の仕業じゃ」

「藍染隊長の……? ああ、斬魄刀の能力ですよね」

「なん……じゃと……!? お、お主! それをどこで知った!?」

 

 驚く夜一さんに向けて、私はにっこりと微笑みます。

 

「藍染隊長の斬魄刀――能力は霧と水流の乱反射で同士討ちを誘う流水系の能力――という話でしたよね?」

「あ、ああそうじゃ……儂もそう聞かされておったが……」

「ちょっと、疑問に思う時があったんですよ。それで気付きました……ひょっとしたら藍染隊長は、本当の能力を隠しているんじゃないか? あの斬魄刀はもっと強力な能力を宿しているんじゃないか……って」

 

 半分は漫画知識で知ってました。

 でもね、それ以外にも気づけたタイミングがあったんですよ。仮に私に漫画知識がなかったとしても「あれ? 何か変だな?」と思えた瞬間が。

 いつどこで、とは言いませんけど。

 

「く、お主というヤツは本当に底が知れんな……まあよい、その通りじゃ。藍染の斬魄刀の真の能力は、完全催眠とのことじゃ。五感も霊圧をも誤認させられるらしい。儂もあくまで話に聞いただけであって、検証などはしておらんがな」

「話に聞いた……ひょっとして平子隊長にでも聞きましたか?」

「ぶはっ!?!?」

 

 今度は猫が吹き出しました。これもまたレアな姿ですね。

 

「お、お主どうして……?」

「どうしてと聞かれても……夜一さんたちの過去の動きから考えれば、自然と想像できますよ……」

「う、うむ……その通りじゃ。百年前に平子らを罠に嵌めたのも藍染じゃよ、今は詳しい説明は省くがの」

 

 そういえば平子隊長たちを救出してますから、その流れで浦原などと情報は共有していたんでしょうね。

 一護たちに教えなかったのは……必要ないと思ったんでしょうか? 現時点の主目的はルキアさんの救出ですし……でも、藍染が死んだ時点でその辺も教えて良かったのでは……?

 それに、教えて貰ったのは嬉しいんです。嬉しいんですけど……

 

「どうじゃ? 値千金の情報じゃろう? これを公表すれば……って、どうしたんじゃお主? 頭を抱えて……?」

「いえ、その情報は信頼性が低いなぁと……」

「信頼性が低いじゃと! 儂の言うことが信じられんのか!?」

「そう言うことではなくて、出所(でどころ)の問題ですよ。平子隊長も浦原さんも夜一さんだって、尸魂界(ソウルソサエティ)では脛に傷を持つお尋ね者ですよ? 有益な情報なのは否定しませんけど、素直に上へ報告しても"裏付けはあるのか?"って言われて終わりです」

 

 これが問題なんですよ。信頼性の問題です。

 藍染は公的には"とってもとっても優秀な隊長"なんですから。自らの死を偽装したことだって"敵を欺くにはまず味方からと言います。離れた位置から観察したことで面白いことが分かりました"とか言われれば、逆転するだけの材料がない。

 

「む……っ! そ、それは……」

「現在は夜一さんが藍染隊長を殺害した最有力容疑者ですから"罪から逃げるために適当な嘘を吐いている"と言われて、握り潰される可能性もあるんですよ……」

 

 これを総隊長にありのまま報告するのはちょっと危険すぎます。よって仲間内で共有するまでが限界だと思います。

 

「けど確かに、重要な情報ではあります。なので、ちょっと私と一緒に行きましょうね」

 

 再び夜一さんの首根っこを摘まんで持ち上げます。

 

「お、おいお主! 何をする!」

「何って、元々は六番隊に行くつもりだったんです。丁度良いですから、夜一さんも一緒に来て下さい」

「六番隊……おいこら、放せ! 儂はそんなところに行くつもりなど……!!」

 

 はいはい、文句を言っても手は放しませんからね。

 一緒に六番隊へ行きましょうね。あなたも話し合いに参加するんですよ。

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 

 

「湯川殿! お聞きください湯川殿!!」

 

 六番隊まで出向き、白哉へ会いに来たことを告げたところ、応接室へ通されました。

 応接室でにゃんこと一緒に待っていたところ、白哉が入ってきたかと思えばこの調子でした。開口一番、肩を思い切り掴んできて嬉しそうに口を開いたの。

 

 一体なにがあったのかしら……?

 

「実はルキアのことですが、現在の旅禍騒ぎが決着して沈静化するまでは、刑を延期するという報が四十六室より届いたのです! いえ、それどころか再考も検討するとのこと! 我々の訴えは、どうやら無駄ではなかったようです!」

「え……っ!? そ、そう、なの……?」

 

 刑の執行を短縮するならまだしも、延期? 再考?

 一体何が狙い……?

 普通に考えるなら、私が原因で時間を浪費していたから、こっちで帳尻あわせをしてきた? それとも単純に朽木家の動きを抑えるため? 単純に外部との繋がりを断ちたかった?

 理由は色々、それこそ無数に考えられるけれど、どう考えても……

 

「……怪しい」

「じゃな。あの四十六室が決定を覆すことなどありえぬ」

 

 思わず独白した言葉に、隣のにゃんこ(夜一さん)が同意しました。

 

「はて? この声は……」

「久しいな白哉坊」

「むっ……貴様、化け猫! 何をしに来た!?」

 

 二人は知り合いでしたね。といっても顔を合わせるのは多分、百年ぶりくらいでしょうけれど。

 子供の頃に玩具にされていた年上のお姉さんとの久方ぶりの再会に、白哉は渋い顔をしています。

 

「何をしにとは御挨拶じゃのう。今日の儂は藍俚(あいり)のツレ、(れっき)とした客じゃよ」

「二番隊の砕蜂隊長の部下に昨日就任しましたけどね」

「こら藍俚(あいり)! それを言うではない!」

「ほう、二番隊の……ならばよくて副隊長。ふっ、隊長の私に対して、随分と無礼な口を利くではないか」

「にゃんじゃと!!」

 

 おっと白哉が勝ち誇ったように鼻で笑いました。それにしっかり乗っていく夜一さんも凄いですね。

 

「あの、隊長……先生もお知り合いみたいですけど……なんなんですかこの猫……? なんか、猫にしてはやたらと霊圧が高いみたいですし」

 

 そして完全に状況に置いてけぼりにされて所在なさげな阿散井君が、申し訳なさそうに私たちへ助けを求めてきました。

 そっかそっか、そりゃ知らないわよね。

 

「この猫は四楓院夜一さん。元二番隊の隊長で隠密機動の軍団長も兼務していたの」

「そして百年ほど前には罪人を逃がした最有力候補として嫌疑を掛けられており、現在は藍染隊長を害したお尋ね者でもあるがな」

「へっ……!? 四楓院……って、四大貴族の!? あれでも、百年前って言ったら……え、それに藍染隊長の? ……あの、ならなんで捕まえ……? えっ!? ええっ!?」

 

 阿散井君の「それってどういうこと!?」な初々しいリアクションです。見ていて楽しいわねぇ。

 

「ふふ……いや、すまぬな恋次。少々からかい過ぎたようだ。お前の想像通り、こやつは四楓院家の当主であった。罪人として扱われてもいるが、それにも色々と事情があったのだろう。捕らえる必要はない」

「なんじゃ、ずいぶんと物わかりがよくなったのう?」

「貴様には随分とからかわれたが、理由もなく罪を犯すような悪人でもない。そのくらいの分別はわきまえているつもりだ」

「お、お主……一体、何があったのじゃ……?」

 

 また挑発するような言い方をしたというのに、全然乗ってこない。さらりと受け流した白哉の態度に、夜一さんは目を丸くしていました。

 

「私のことなどどうでもいいだろう? それより、罪人として手配されているにも関わらず湯川殿と共に顔を出したのだ。何か話があるのだろう? 聞いてやる」

「う、うむ……」

「一応、私が六番隊(こちら)へ行こうとしたときに色々あって合流したんですよ。なので、それも含めてお話しますね」

 

 

 

 ということで、一護たちの目的や現在の状況。それに加えて夜一さんの知る限りの藍染らについての情報が共有されました。

 まあ、夜一さんが話してくれたのは「藍染の斬魄刀の能力」「百年前に藍染が何をしたか」くらいなんですけどね。

 

 

 

「……こんなところじゃな」

 

 一通りの情報共有が済んだあたりで、喋り疲れたとばかりに夜一さんが嘆息しました。

 

「喉が渇いたが、この姿では茶も満足に飲めん。元の姿へ――」

「あ、それは駄目です。少なくともこの場では絶対に止めて下さい」

 

 のんきに人間の姿に戻ろうとしたので、全力で止めます。

 

「なんじゃと? 別によかろう、減るもんでもなしに!」

「湯川殿の仰る通りだ。状況を考えろ」

「あ、やっぱり猫の姿は化けてるだけだったんスね……でも、なんで元の姿に戻すのは駄目なんですか?」

「……恋次、お前は見たいのか?」

「あのね阿散井君、夜一さんが猫の時は服を着てないのよ? それが人の姿に戻るって事は……ね? わかるでしょう?」

 

 素っ裸の女性が出てこられても……いや嬉しいのよ? 嬉しいんだけど……阿散井君たちの前だと少し問題があるから……

 

「しかも夜一さんは女性なのよ。だから、問題がさらに大きくなって……」

「はあ、女性……女なんスかこの人!?」

「そうじゃぞ小僧。どうじゃ、見たいと思わぬか? 自分で言うのものなんじゃが、なかなか良い身体をしていると思うぞ?」

 

 あなたのスタイルで"良い身体"程度の評価なら、世界中が大混乱を起こしますよ……

 

「い……いやいやいや! 俺は別に!!」

「そうよね。ルキアさんとせっかく気持ちが通じ合ったのに、ここで不誠実な真似は出来ないわよね」

 

 偉いわよ阿散井君! よく我慢したわ! けどまあ……

 ルキアさんと恋人同士になりました! でも白哉がいる前で「夜一さんの裸が見たいです!」とか言った日には……千本桜で全身を斬り刻まれても文句は言えませんよね。

 

「ふむ、まあ……そういうことなら仕方ないの」

「そういうことです。だから夜一さんも、誤解を招くような真似は慎んで下さいね。それに朽木隊長も同じ立場なんですから」

「お気遣い、感謝します」

「同じ立場……?」

 

 あ、夜一さんが食いつきました。

 

「なんじゃ白哉、婚約者でもおるのか?」

「いや、妻と子がいる」

「………………は?」

 

 そして夜一さんの動きが固まりました。

 

「なんじゃとおおおおおおおおっ!! お主もか!? 海燕に続いてお主もか!? 妻も子もいるのか!? なぜ儂は知らんのじゃ!! おかしいじゃろう!?」

「それほど驚くことでもなかろう。知らぬ理由は……それこそ知らぬ。尸魂界(ソウルソサエティ)から離れていれば、知る機会もないだろう」

「それはそうじゃが……はっ! 藍俚(あいり)! ひょっとしてお主もまさか……!」

 

 こっちに話を振らないで!

 

「いえ、私は別に」

「そ、そうなのか……? いや……すまぬ。なんというか……その……すまぬ……」

 

 とても珍しい、夜一さんが普通に素直に謝るシーンです。

 別に謝られる必要はないはずなんですけど……

 

「えと、話を元に戻しますね。といって、藍染隊長は何か考えがありそうなので注意する。黒崎君たちとは協力が出来るので力を貸す。くらいしか、今は出来ないというか……」

「じゃろうな。一護の奴を中心に騒ぎを起こして、その隙に目的を達成するのは変わらん。そういう意味では、今の硬直した状況は好機とも言える。協力者たちは足並みを揃えられるじゃろうし、一護も十一番隊で腕を磨ける。ならば成功する確率も上がろう」

 

 そう言われればそうですね。

 良い準備期間を稼げたと思うようにしましょう。

 

「それなら夜一さんも、十一番隊へ行って黒崎君を手助けしてあげてください」

「な……っ!? 儂がか!?」

「表立って出歩ける立場ではないでしょう? なら、身を隠せますし一石二鳥ですよ。それに、秘策の一つや二つくらいは用意してあるんでしょう?」

 

 卍解修行をしてましたよね、確か。

 なら、しっかり協力してあげてください。

 

「じゃが儂じゃぞ!? 今の姿では入れてはもらえぬじゃろうし、元の姿では捕まるわ!」

「ふむ、そう言うことならば私が力になろう」

 

 名乗り出たのは白哉でした。

 

「私が十一番隊へ向かうので、その際に同行すればよい。その姿なら袂にでも入れておけば気付かれん」

「袂!? いやまあ、確かにそれは一理あるが……」

 

 袂に隠すって……あ、これは絶対に「実力で忍び込めるだろ」って分かった上で、ちょっと意地悪しようとしていますね。

 子供の頃の意趣返しの一つでもやってやるって感じでしょうか?

 

「それに私自身、ルキアが――妹が世話になった相手なのだ。一度くらいはきちんと顔を合わせておきたい」

 

 こっちは本音でしょうね。

 

「恋次、お前も来るか?」

「え? ……まあ、そうッスね。現世でのこともありますし、わかりました! お供して、ちゃんと顔を合わせておきます!」

 

 どうやら白哉と阿散井君も一護の様子を見てくれるようです。

 やったね一護、展開の先取りだよ。

 




●2023年(時事ネタ&ボケ)
???「ウサギ年……閃いた! 今年は四番隊女性隊士は全員バニーガール姿で働くでござるよ!!」

●十一番隊が賑わう
白哉「妹が世話になったそうで」
恋次「オウ、久しぶり。お礼(意味深)に来たぜ」
一護「すンませんッした!!」

きっとこんな感じ。

●話しちゃう夜一さん
平子は鏡花水月の完全催眠を知ってる。
なら浦原に情報共有くらいはしてるはず。
なら夜一も完全催眠を知ってるはず。
(原作の砕蜂と夜一が藍染の動きを封じたシーンで、夜一は刀(柄頭)を抑えている。
 これはルキアと白哉を斬られないようにする以外にも「抜かせなければ完全催眠は発動できない」と想定していた(まだ鏡花水月の細かな条件が不明だったので)かもしれない)

ということに気づき、一足(四足くらい)早いネタバレです。
だって夜一さんなら教えるでしょ? ましてやあの状況ですし……

……おかしい、ここで知る予定なんてなかったのに……

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。