お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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第143話 容疑者が一番何も知らない

「日番谷隊長……? 何か御用でしょうか?」

「用があるからここにいるんだよ」

 

 やだ……すっごいぶっきらぼうな態度……嫌われるわよそういうの。

 

『虫の居所が悪いようでござるな』

 

 そりゃ私は"隊長としては"新人だけどさぁ……日番谷隊長に確実勝ってる所なんて"背の高さ"と"年齢"くらいよ?

 

『そういう所ではござりませぬか?』

 

 全然まったく、ちっともさっぱり身に覚えがないんだけど……? 面と向かって「今の四割増しくらい背が高く(186cmくらいに)なって私の背丈を追い抜いてから来いよチビ」なんて、言った覚えないわよ?

 

『それ本人相手に面と向かって言えたら一周回って尊敬するレベルでござるよ』

 

 とりあえず誤解は解いておきましょうか。

 

「日番谷隊長、何を怒っているのかは知りませんが――」

「動くな!」

「――ッ! 急に何を?」

「黙ってろ。お前は口を開く権利はねえんだよ」

 

 あらやだ!

 剣を突きつけられたかと思えば、辛辣なセリフまで。なんて強い拒絶なのかしら。

 

『仲間に剣を向けられれば、藍俚(あいり)殿とて心にクる(・・)ものがありましたか』

 

 仲間……? ……あっ、そ、そうね仲間……そーよそーよ日番谷隊長も立派な仲間! みんな地球の仲間たち!

 

『仲間意識うっすいでござるなぁ!!』

 

 薄くないから! 今は織姫さんのことで頭がいっぱいなだけだから!!

 

「おい吉良」

「…………」

 

 呼びかけられたのに、吉良君ってば俯いたままね。

 

「吉良ッ!!」

「ッ!? は、はいっ!!」

「ったく、しっかりしろよ……んで、どうだった(・・・・・)?」

 

 吉良君の煮え切らないような態度に業を煮やしつつも、日番谷隊長が尋ねます。

 

「……それは……日番谷隊長の言った通りでした」

「やっぱりか……これで確定したな」

 

 確定? そりゃまた……

 

『状況と合わせて猛烈に嫌な予感しかしねぇ言葉でござるよ!!』

 

「一体何のことでしょうか?」

「黙れっ!!」

 

 あら危ない。

 日番谷隊長が斬りかかってきました。ですがこのくらいなら、避けるのは簡単です。下手すれば今の一護の方が攻撃は鋭いでしょうね。

 

「ととと……いきなり斬りかかるなんて、どういう了見ですか? 事と次第によっては上に報告を――」

「上に報告だと!? 今のお前にそんな権利があると思ってんのか!!」

 

 続く二刀目の斬り払いも、距離を少し取って躱します。

 でも今の言葉、ちょっと聞き逃せませんね。

 

「――……どういう意味ですか?」

「ネタはもうあがってんだよ!」

 

 あ、駄目だわ。話を聞いてくれない。

 三度目の刺突を横に動いて捌きつつ、相手の腕を掴んで止めます。

 

「どういう理由かは知りませんが、誤解です」

「まだ言うか! だったら教えてやるよ!!」

 

 物理的な距離は近くなったのに、心の距離は離れたままですね。

 もの凄く怒った目で私をにらみつけてきています。

 

 それはそれとして、一体何を教えてくれるのかしら?

 

「テメエが浦原と組んで、この事件を裏で操ってるんだろうが!!」

「……え?」

 

 なにそれ知らない。

 あまりに予想外な返答を聞いて思わず力を少し緩めてしまい、その隙に日番谷隊長に逃げられました。

 

「俺は当事者じゃねえからよくは知らねえ。だが浦原喜助って奴は百年ほど前にとんでもねえ罪を犯したそうじゃねえか」

 

 魂魄消失事件に端を発したあの事件ね。

 結局、浦原が(ホロウ)化の研究をしていたのが原因で起きた――と公的にはそうなっている(・・・・・・・)だけで、実際は藍染が罪を全部被せたんだけど。

 

「だが四十六室の判決を受けた直後、何者かの手引きで姿を消した」

 

 夜一さんが議事堂に乗り込んで奪還したのよね。

 

「その後、浦原喜助の居場所は知れぬままだった」

 

 現世に逃げたからね。そりゃ尸魂界(ソウルソサエティ)をどれだけ探しても見つからないわよ。

 

「だが、浦原喜助は判決を不服としていた。テメエの研究を邪魔されたことを恨み、現世へ逃げ延びて牙を研ぎつつ、復讐の機会を窺っていたんだ」

 

 おっと!

 一気に雲行きが怪しくなったわね!!

 

「あるとき浦原喜助は朽木ルキアが双極で処刑されると知り、それを利用して尸魂界(ソウルソサエティ)全土を滅ぼすことで復讐を成し遂げると決めた」

 

 やだ、とんでもなく物騒なことを考えていたのね。

 全然知らなかったわ。

 

「その協力者がテメエだ! 湯川藍俚(あいり)!!」

「……え?」

 

 なにそれ知らない。

 

「浦原と縁を持っていたテメエは密かに連絡を取り合い、尸魂界(ソウルソサエティ)側の情報を流し続け、復讐に協力していたんだろ!?」

「ちょ、ちょっと待って! 違うわよ!」

「とぼけるな!」

 

 まったくとぼけてないわよ!

 

「隊の垣根を越えて、多数の隊長・副隊長の信頼を得ていること!」

 

 それ、何が悪いの……?

 

「霊術院の講師に就き、多数の新人隊士をその支配下に置いたこと!」

 

 それって卯ノ花隊長が突然持ってきた話なんだけど……? 私は一言も「教師になって年下をたぶらかしたい」なんて言ってないわよ!?

 あ、でも確かに、舐めた態度を取る新人をシメて上下関係をたたき込むのが目的だったから、支配下に置いたと言えなくもないわね……

 

「四大貴族の朽木家と元大貴族の志波家に近づき、多大な恩を売ってその信頼を得たこと!」

 

 朽木家も志波家も夜一さんが紹介してくれたんだけど?

 

「浦原と友好関係にあった四楓院夜一ともテメエは通じていた!! おおかた、他の大貴族へ取りなして貰うために近づいたってところか!?」

 

 それは探蜂さんの命を救ったのが発端で、そこから夜一さんと知り合ったんだけど?

 夜一さんに退院祝いで呼ばれたから知り合いになったんだけど!?

 夜一さんと知り合ってから、浦原とも知り合ったんだけど!?

 

 順番滅茶苦茶よ!!

 ちゃんと調査して裏取ってから発言してる? これが推理モノだったら今頃「シロちゃん(爆)」って言われてる頃よ?

 

「これらは全て、浦原喜助の復讐のための下準備なんだろうが!!」

 

 何故かしら、すっごい頭が痛くなってきたわ……もう今日は寝たい……

 

 でも見ててすっごく面白いのも事実なのよね。だからもう少し黙って聞いていようかしら?

 

「朽木ルキア捕縛の任を引き受けたのは、現世に直接赴いて浦原喜助から復讐計画に必要な何かを受け取るためにだ……詳細な予定が書かれた計画書か、この事態に対応するための秘密兵器でも受け取ったか? 隊長格が現世に行くなんざ、そうそうあることじゃねえからな。元教師の立場を利用したってわけだ!」

 

 いえ、白哉に泣いて頼まれたからです。

 

「その後お前は計画に従い、死神としての立場から状況をコントロールしていた……旅禍たちが現れたあの日にテメエが進言した体制、あれも自分で便利に状況をコントロールするための策なんだろ?」

 

 藍染にフリーハンドを与えるのは面倒なことになりそうだし、どーせそろそろ抜けるんだから監視付きで使い潰してやろうと思っただけですよ?

 

「けど残念だったな! 四十六室は"狙いは双極にある"と気付き、処刑の一時保留を命じた! 同時に一時保留を公布することで、今までとは違った動きを見せるマヌケを炙り出す目的もあったってわけだ」

 

 マヌケって誰のこと……あ、私のことか。

 

 でもなるほどね、そういう理由もあったんだ。

 藍染が「処刑はとりあえず保留!」って我が儘を言って、仕事量を減らしたかったわけじゃなかったんだ。

 

処刑が延期になったのを知った回(138話)の更新時期が正月頃でしたので、てっきり藍染殿も正月休みを取りたかったとばっかり思っていたでござるよ』

 

 メタ過ぎるツッコミはちょっと……

 

「旅禍たちは浦原喜助の復讐に巻き込むために間違った情報を吹き込まれた人間……真実に気付かせねえために、四番隊と十一番隊という古巣に閉じ込めている。四楓院夜一もおそらくは同じ……いや、元十二番隊の隊長なんだ。百年前の時点で洗脳して操っている可能性もあるが、まあそこまでは知らねえがよ」

 

 夜一さんと一護たちは、浦原に都合の良い嘘を吹き込まれただけ。

 善意の第三者として見ているわけね。

 でもその場合、一護たちはどんなとんでもない嘘を言われたのかしら……? 気になるわねぇ……

 

「旅禍の一部は居場所が分からなかったが、マヌケが動いたおかげで目星はついた! さっきの吉良の証言のおかげで確証が持てたぜ! お前こそが裏切り者、獅子身中の虫だってことがな!! どうした! 何か言って見ろ!?」

 

 えーと……コメンテーターの射干玉さん、ご感想をどうぞ。

 

『コントとして見ればなかなか楽しかったでござるよ。そんなことよりおなかがすいたでござる。おうどん食べたいでござる。いや、かき氷の方がいいな。だからとっとと氷輪丸殿を働かせるでござるよ!!』

 

 うん、そうね……そうね……えーと、そうね……その、そうね。そうよね……

 

「じゃあ、言わせて貰うわ。確かに当時、私は浦原喜助とは知り合いだったけれど。彼が姿を消してからどうやって連絡を取り合っていたっていうの?」

「はっ!」

 

 思いっきり鼻で笑われたわ。

 

「テメエは浦原喜助本人から"なんとか"って小屋を貰ってるそうじゃねえか! あれでいつでも連絡が取れるように仕込んでるんだろうが! それも周りから気付かれずによ!! その小屋で連絡を取り合い、浦原喜助に尸魂界(ソウルソサエティ)の情報を流していた! 浦原喜助が朽木ルキアが極刑となり双極を使う事を知ったのもそこでだ!」

 

 なんとか……? ……ああ! 霊圧遮断部屋のことね!!

 あの中ならちょっとやそっとじゃ中で何が起きているか分からないし、秘密裏に連絡を取り合えるって考えられなくもないわね。

 

「あれには連絡装置なんてありません! 調べていただいても結構です!」

「どーだか……どうせもう連絡を取り合う必要はねえんだ。いつ調べられても良いように、とっくに壊してんだろうが?」

 

 あ、駄目だわこの子。

 もう端っから疑って掛かってるもの。これじゃ何言っても信じてくれないわね。

 仕方がない……こういう場合は、ちょっと矛先を変えてみましょう。

 

「……吉良君も、私のことを疑っていたの?」

「っ!!」

 

 ここで名前を呼ばれると思ってなかったんでしょうね。

 もの凄い「ドキッ!!」とした反応を見せてくれたわ。顔も真っ青になっている。

 

「あ……あの……先生、僕は……僕は……」

「当然だろうが! だからこそ吉良は今日、お前に従った! 自分の目で、決定的な証拠を確認するためにな!!」

 

 割って入ってくるな! こっちは四番隊同士で話をしてるのよ!!

 そういうのは身長が五尺六寸(170cm)を超えてからにしなさい!!

 

『そういうことを言うと炎上するでござるよ?』

 

 なんで?

 桃の身長が五尺(151cm)で、男女の身長差としては五寸(15cm)くらいが理想ってよく言うでしょう?

 だからちょっとオマケして五尺六寸(170cm)くらいの身長なら、二人が並んでも格好がつくだろうって思っただけよ?

 

『日番谷殿は四尺四寸(133cm)なので、五寸(15cm)くらいの差は既にありますな! 男の方が低いでござるが些細な違いなので何も問題なし!! 現在の世相を慮っておくでござるよ!!』

 

 あ、そう言われればそうね。じゃあ割って入ってきてよし!

 

「吉良、俺はお前に感謝してんだ……おかげで、雛森と藍染を利用していた奴をこの手で討てるんだからな!!」

「なっ……!! 日番谷隊長!! それじゃあ約束が……!!」

霜天(そうてん)()せ、氷輪丸(ひょうりんまる)!!」

 

 約束? 吉良君が何やら止めようとしていますが、日番谷――もうこれ、日番谷って呼び捨てでいいわよね? コレに隊長を付けるの馬鹿馬鹿しくなってきたから――は始解して襲いかかって来ました。

 冷気を纏った刀身が私を刺し貫かんと放たれます。

 

「なんで、どうして!? 藍染隊長はともかく、雛森さ――桃まで利用していたことになるの!?」

 

 藍染は分かるんですよ。

 話の中にも出てきましたし、なんだったら今までの流れから「私が"今コイツ手薄だぞ"と絶好の殺害タイミングで指示を出した」みたいに想像できるのは当然でしょうから。

 でも桃は!?

 今までの説明の中で、桃の"も"の字も出てこなかったわよ!?

 

「裏切り者が! 雛森のことを! その名前で呼ぶんじゃねえええぇぇっっ!!」

 

 今までで一番激昂しながら斬りかかってきました。おかげで大振りすぎて隙だらけ。

 右へ左へ力任せに振り回される斬魄刀なんて、楽々避けられます。

 

「テメエは! こんな! つまらねえ復讐計画のために! 大勢の死神を利用した! 霊術院時代! 雛森に目を付けて! 引き込んだのも! お前の計画の一部なんだろうが!!」

 

 あーあー、まったくもう……

 大声で怒鳴りながら刀を振り回すから……あっという間に息が切れてるじゃない……

 

 それに私は桃に「四番隊においで」とか言った覚えないわよ? そりゃ、繋がりは欲しいとは思ったけれど、どっちかって言うと向こうから寄ってきたし……

 というか卯ノ花隊長が引っ張り込んだのよ……

 

 でもこれが、日番谷の本音よね。

 桃を利用するんじゃねえ! って気持ちが最初にあって、そこから理由が組み上がっていった、と。

 

『ついでに雛森殿を"桃"呼びしているのも仲良さそうに見えて苛立ち満点! 怒りで頭が沸騰しまくり大噴火でござるよ!!』

 

 ……うわぁ……なんていうか、日番谷……うわぁ……

 

「くそっ! 剣術じゃあ、長年死神やってるテメエ(ババア)に一日の長があるってわけかよ……!」

 

 あら? 今何か……とんでもない事を言われたような?

 具体的には二、三十発くらい殴っても許されるような言葉を。

 

「吉良! お前も手伝え!!」

 

 あ、勝てないからってついに吉良君まで助っ人に呼んだわ。

 

 ……もうコレのことは"シロちゃん"呼びでも良い気がする……

 




●シロちゃんの言ってたことまとめ
・この事件の黒幕は浦原喜助。目的は100年前の復讐。
・浦原は現世で身を隠しつつ、牙を研ぎ続けながら復讐の機会を狙っていた。
・そんな時に、朽木ルキアが極囚となる(双極で処刑される)と知る。なので双極の力を利用して尸魂界(ソウルソサエティ)を滅ぼそうとしている。

・実は藍俚は浦原とはずっと繋がっていて、連絡を取り合っている。
・藍俚が協力するのは浦原と懇意だったから。その縁で浦原に協力している。
・その昔、浦原に「霊圧遮断部屋」を作って貰ったが、あれが連絡用の道具。霊圧を遮断して外から感知できなくするので、条件にピッタリ。
・浦原がルキアのことを知って双極の利用を画策したのも藍俚が連絡したから。
尸魂界(ソウルソサエティ)側の情報を知らせるための獅子身中の虫の役目)

・藍俚は一護たちが尸魂界(ソウルソサエティ)に来てからの状況を操っている。
・藍俚は各隊の隊長・副隊長と仲が良い。
・藍俚は四大貴族と仲が良い。
(朽木家からは超VIP扱い。四楓院家は夜一と仲が良いし、現在は砕蜂を通して味方に引き込める。凋落しているものの志波家もかなり恩に感じている。
(つまり大貴族の五分の三を味方に引き込んでる))
・(浦原がいなくなってから突然)霊術院の講師を始めたのも、この復讐計画の一部。新人隊士を手駒として取り込みやすくするため。
・これらの立場を築き上げたのは、復讐実行の際に動きやすくするため。だから積極的に他隊と繋ぎを作っていた。

・ルキアを現世へ捕縛に行く役目を代わったのは、現世で浦原と直接連絡を取るため。
・旅禍襲来時、藍染を中心とした体制を進言したのは、自分の権限を使って状況を有利にコントロールするため。

・一護たちは騙されて先兵にされている。夜一さんが動きやすくするための囮。
・用済みになった藍染は夜一さんに暗殺させることで状況をさらに混乱させた。
・その夜一さんと一護たちを庇っているのが、何よりの証拠。
・他部隊へ積極的に赴いて情報交換をしているのも状況をコントロールするため。

・それら陰謀に気付いた四十六室は先手を打ち、ルキアの処刑を一時保留にした。
・あとは証拠を固めて裏切り者を処断すればいい ← シロちゃんが今ココ

藍俚「私、そんな大それたことをやっていたのね……知らなかった!」
射干玉「こりゃまた、希代の大悪人でござるよ!」
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