お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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消えたら勝ち。

くらいの精神で行った方が良いのかも知れない、ひょっとしたら。


第16話 マッサージをしよう - お試し -

「お邪魔するわよ」

「いらっしゃい」

 

 食堂を一足先に立ち、自室に戻って施術の準備――と言っても簡単な物だけれど――を終えて待っていると、やがて蓮常寺さんがやってきました。

 

「し、失礼しまーす……」

「いらっしゃいませ。結局綾瀬さんも来たのね」

「えへへ、やっぱり来ちゃいました」

 

 彼女に続くようにして綾瀬さんも現れました。

 結局彼女も私の施術を受けるようです。まあ、予想通りなのですけれど。

 

「大丈夫、こっちもちゃんと二人分の準備をしていたのだけれどね。それじゃあ用意を済ませちゃうから、二人とも着替えて貰えるかしら?」

「はーい」

「ええ」

 

 そう告げると、私は私で最後の準備を始めます。

 二人とも一度は私のマッサージを受けていますからね。手順は知っています。

 

「破道の二 蛍火」

 

 予め用意していたお香に火を付けると、良い香りがうっすらと辺りに漂い始めました。

 うーん、良い匂い……

 コレは香道でも使われるお香で、気分を落ち着かせて緊張をほぐす効果があります。流石は瀞霊廷、安物とはいえ流魂街とは比べものにならないくらい質がいいですよね。

 バイト代を細々と貯めて買いました。

 

「んしょ……」

「ふぅ……」

 

 私が準備をしている後ろでは、二人の衣擦れの音が聞こえてきました。

 本当なら専用の着替えとか更衣室とか用意したいところですが懐事情で今は無理。

 ですが、腰帯を解く音や袴を脱ぐ音。その時に二人が漏らす小さな吐息にもドキドキさせられるのでこれはこれでアリですね。

 

「わぁ! 小鈴さん、やっぱり均整が取れた身体していますね……いいなぁ……」

「あら、綾瀬さんだって健康的で素敵よ」

 

 お互いに相手の肢体を褒める声も聞こえてきます。

 やはり二人とも仲がいいですよね。こう言うやりとりに参加出来ると思うと、今の生き方も悪くないと改めて実感します。

 

「終わったわよ」

「わぁ、良い香りですね」

 

 やがて着替えも終わり、二人とも肌襦袢(はだじゅばん)裾除け(すそよけ)だけの格好――今で言う下着姿――になりました。

 おかげで二人の身体がよく分かります。

 

 蓮常寺さんはほどよく膨らんだ女性の肉体。

 腰つきも女性らしく、胸元もふっくらとしています。日々の授業や鍛錬で鍛えているのにうっすらと肉が乗っており、その凜とした雰囲気と相まってまるでなにやら芸術品のような気品すら感じます。

 

 反対に綾瀬さんは子供っぽい肉体。

 胸もあるにはありますがボリュームに乏しく、けれども活動的で溌剌とした印象をこれでもかと受けます。

 

 並んでいるおかげか、その対比で二人とも種類の異なる、襲い掛かりたくなるような魅力を放っていますね。

 

 ……あ!

 これは肌の状態や筋肉の張りや反応を見るために、出来るだけ裸に近い格好でいるのが必要なのです。

 決して個人の欲望を優先させた結果ではありません。決して、決して!

 

「それじゃあお二人とも、こちらへどうぞ」

 

 施術用のベッド――まあ、寝具部屋から持ってきた布団なんですが――へ横になるように促せば、二人とも手慣れたもの。何も言わずに横になりました。

 

 

 

 

 

「じゃあまずは、蓮常寺さんからね」

「ええ、お願いするわ」

 

 うつ伏せとなっている彼女の下半身、足裏からゆっくりともみほぐしていきます。

 ゆっくりゆっくりと、手は足首からふくらはぎへ。そして太腿へ。

 

「ん……っ……」

 

 我慢できなくなったのでしょう、小さく喘ぐような声を漏らしました。

 

「この辺は固くなりがちだから、少し重点的にやるわよ」

「え、ええ……お願いね」

 

 そう告げると太腿を重点的に揉んでいきます。肉付きの良い太腿を外側から内側へと、じっくりと。

 

「ん……っ……ぁ……ぅ……」

 

 内腿を触れると、むちっとした触感が指先から伝わってきます。同時に彼女の口から何度も何度も小さな吐息が漏れ始めてきました。

 身体を小刻みに震わせ、必死で声を我慢しようとする姿に私も思わず熱が入ります。

 

「もう少し、じっくりする?」

「え……ええ、そ、そうね……お願い、するわ……」

 

 微かな逡巡を挟んで、もっとお願いとおねだりをしてくる。

 なのでそのお願いを叶えるべく、私はもっと念入りにマッサージをしていきます。

 張りのある太腿が揺れ、腰を小刻みに痙攣させるその姿は、まるでおねだりをしているかのような、なんともエッチな姿。

 

 隣で順番待ちをしている綾瀬さんが口を半開きにして、顔を赤らめながらも彼女の姿から目を離せなくなっているのが何よりの証拠ですね。

 

「はい、ここまで。それじゃあ次は……」

「……ぁ……」

 

 ですが焦らすような辺りで手を止めると、続いて腰周りの施術です。不満そうな吐息は聞こえなかったことにしておきましょう。

 

「しかし、蓮常寺さんって安産型よね」

「そ、そうかしら……?」

「貴族の子女としては、いいことなんじゃないのかしら? 将来、あなたの旦那さんになる人が羨ましいわねぇ」

 

 お尻に手を触れながらそう言うと、照れたように顔を赤らめます。

 太腿と同じく張りのあるお尻はきゅっと引き締まっており、けれども触れるとぽよぽよとした感触を返してきます。

 腰回りの肉付きもよいので、同級生の男性たちにはさぞ目のやり場に困ることでしょう。

 

「あ! そ、そこはあまり強くしなくても良いじゃないのかしら?」

「ううん、座り作業も多いからね、ここも念入りに……っと」

 

 グッと力を込めてお尻を指圧をします。

 むにゅっと沈むものの、手を放せばあっというまに形を取り戻すそれは、健康的な証拠ですね。

 形を整えるように揉んでいくと、我慢できなくなったのか取り繕うような声を上げました。ですが手を緩めるわけにはいきませんよ。

 こちらも時間を掛けてゆっくりとたっぷりと、小麦粉の生地を捏ねて整形するように丁寧に。

 

「ん……ううぅ……は……ぁっ……」

 

 切なそうに漏れる声なんて聞こえません。

 今はマッサージの最中なのですから。

 あー、お尻揉むの楽しい。

 

 そのまま腕は腰から上へ、背中から肩へ、肩甲骨へと上がっていきます。

 

「ん……良い感じ……」

 

 この辺まで来ると、単純に整体術の気持ちよさだけを感じているのでしょうね。

 どこかほっとしたような、けれどもちょっとだけ残念そうな口調になっています。

 

「んー……ああ、この辺りね」

 

 両肩から背中のラインに沿ってほぐしていきますが、その時にちょっとした裏技を使っています。

 

 虚閃(セロ)を放つ要領と回道による霊圧治療を行う要領を上手く応用して、ごくごく弱い霊圧を手の平から放って身体の中の具合を探っています。現代医療でいうところの超音波検査みたいなものですね。

 ただ私が行っているのは、それよりももっとよく分かりますが。

 

「あっ! そこ……いい、気持ちいい……もっと……」

 

 効果はご覧の通り。

 彼女の反応と合わせれば、どこをもっと重点的にして欲しいかが丸わかりです。ほれほれ、ここがええんやろ。ってものです。

 

「ここかしら?」

「そ、そこっ! そこもっとぉ……」

 

 少し痛いくらいに力を入れると、よりおねだりの言葉が蠱惑的になりました。

 背中越しに振り向いて口にされるその言葉は、多分男の頃だったら我慢できなかったと思います。

 あと、上に乗って背中を揉んでいるので、胸元が押し潰されているわけです。なのでちょっとはみ出ているのが見えます。

 役得ですね。

 

「はい、じゃあ次は仰向けね」

「え……もう、終わりなの……?」

「ずっと背中側ばっかりだとバランスも悪くなっちゃうからね」

 

 名残惜しそうではありますが、ゆっくりと仰向けになってくれました。

 しかし、言葉だけ聞くとどう考えても誤解されますねこれは。

 

「それじゃあまずは……」

「ひゃあぁっ!?」

 

 つん、とおへそを指先で突けば、なんとも楽しい反応が返ってきました。

 先程も見ましたが、彼女の身体はスッと整った肉体です。お腹周りにも無駄な贅肉はありません。必要最低限の脂肪があるので触れた感触は柔らかいですが、その奥には鍛錬の成果である筋肉がしっかりとあるのが分かります。

 

「くすぐったかったかしら? でもお腹周りはここが基本だから」

「ちょ……っ! わ、わかったからぁ……! あんまり触らないで……っっ!」

 

 この辺りは敏感なのでしょうね。グッと奥歯を食いしばるようにして堪えようとしているのが分かります。

 お腹の中心のおへそから、四方周囲にむけてぐーっと流れるように揉んでいきます。

 

「ふ、ぁ……っ……」

「うわぁ……うわぁ……」

 

 瞳を伏せて、切なそうに身じろぎをする姿に、綾瀬さんがしきりに小さな声を上げていますね。

 その間にも私の手はお腹からまずは、下の方へ。

 

「ひゃっ!」

「腰回りはこっちも大事だから、少しの間だけ我慢してね」

 

 下腹部から内腿の辺りをゆっくりと、腰から足の付け根に沿うようにほぐしていきます。五指の腹を使って強く、相手がもっとも感じる場所を探り当てるようにじっくり、じっくりと……

 足の付け根辺りは特に重点的に。身体の中心部を意識するようにして……

 

「ん、んんんっ!!」

 

 まるで何かを我慢するような声ですが、一体なんなのでしょうか。指を噛み、必死で堪えようとするその姿ですが、なんのことか私にはさっぱり分かりません。

 

 荒い呼吸と身体全体が熱を帯びていますが、なるほどこれは良いことですね。代謝が良くなっている証拠です。

 

「それじゃあ最後に――」

「や、やっぱりそっちもやるのね……」

 

 軽く胸に手を置くと、最後の抵抗のように言います。

 

「当然ですよ? 前回も言いましたけれど、胸の周りも大事なんです。大きさが不均等だと身体のバランスもおかしくなりますから」

「そ、そうね……お願いするわ」

 

 チラッと私の胸を見た後、何か覚悟を決めて重大な決意をするように頷きました。

 なるほど。ある意味では私の身体はこれほどない説得力なのね。

 

 胸部の辺りを中心――谷側から山側へと向けるようにおっぱいを揉んでいきます。

 

 ふむふむ、手の平から少しはみ出す程度のボリュームですね。むにっとした感触がなんとも良いです。

 同期の中では多分、一位二位を争うくらいかしら? 張りもよくてこれはちょっと、病みつきになりそう。ちょっと興奮してきちゃう。

 

「く……ィ……ぅぅ……ん……っ……!」

 

 肋骨側から、鎖骨側からと、マッサージをしていきます。何度も何度も念入りに、力の込め具合を微妙に変化させて、相手の反応に合わせて求める最良の刺激を与えられるように、丹念に丹念に……円を描くようにゆっくりと、感触を確かめるように……柔らかなおっぱいを手に包み込んで、刺激を与えていくように……

 

 そのたびに何度も身じろぎをして歯を食いしばっていました。

 施術完了後には、汗をびっしりと掻いていましたが、一体どうしたんでしょうか?

 

 私にはさっぱり分かりません。 

 

 

 

 

 

「次は綾瀬さんね、おまたせ」

「……あや!? ひ、ひゃい! お、おねがいます!?」

 

 じーっと蓮常寺さんの施術を見続けていたのでしょう。心此処にあらずと言った様子でしたが、私が声を掛けたことでようやく正気にもどったようです。

 

「それじゃあ同じく、下半身から……」

「ひゃっ!」

 

 待っている間に何かあったのか、彼女の身体もじっとりと熱を帯びていました。これはマッサージの効果アップが期待出来ますね。

 足首から太腿へと揉んでいく度に、小さな悲鳴が上がって身体が飛び上がりそうになっています。

 

 うーん、敏感肌なんですかね?

 

 元々小柄で肉付きもそれほどではないので、熱くなった身体と合わさって刺激に過敏に反応しているのかもしれません。

 

「綾瀬さん、ごめんなさい。もう少し我慢してもらえる?」

「が、我慢ですか!? わ、わかりましたっ!!」

 

 既に施術は太腿から腰回りへと伸びています。

 こうやって、お尻のまわりをぐーっと何度も何度も念入りに揉んでいくと――

 

「~~~~ッ!」

 

 両手の拳をグッと力一杯握りしめて懸命に堪えています。

 その様子、なんだかとってもドキドキさせられますね。

 ちょっと悪戯心がでてしまい、力を抜いて触れるか触れないか程度のささやかな刺激に変えてみましょう。

 

「……(ほっ)」

 

 小さく安堵の吐息が漏れました。まあ、弱い刺激になってますからね。

 ですがそれは慢心、命取りですよ。

 

「うん? ああ、この辺りね」

「……っ!?!?」

 

 慣れてきたところを見計らい、腿の付け根辺りを内側から外側へ、ぐっと強く揉みます。途端、声にならない声が上がりました。

 どうやらかなり良い刺激となったようで、はぁはぁと絶え絶えとなった呼吸音が室内に小さく響き渡ります。

 

「次は仰向けね」

「……ふぁい?」

 

 とろんと、夢見心地になっている彼女の身体をゆっくりと反転させますが、そこまでしてもまだ正気を取り戻せていないようです。

 

「次はお腹周りからだけど……大丈夫?」

「らい、じょーぶ、れす……」

 

 なるほど、大丈夫なら問題ありませんね。

 

 蓮常寺さんを女と評するなら、こちらはなんというか……少女ですね。ほとんど一直線ですが、一応膨らんではいます。

 お腹周りはすっきりしすぎていて、ちょっと物足りないくらい。腿も最低限の肉しかない、カモシカのようなすらっとした足です。

 まあ、この辺の好みは善し悪し。完全に個人差ですね。

 

「じゃあおへそから」

「……っ!!」

 

 刺激で意識を無理矢理覚醒させられたようですね。けれど私の言いつけを守って、必死に耐えています。

 うんうん、良い子ですね。

 

 ではそのままお腹周りをじんわりと………

 

「ッ!! ……ッ!?!?」

 

 脇腹を擽られる感触の数倍くらいですかね? そんな刺激に耐えて歯を食いしばる姿はなんともそそられそうです。

 

「このまま下に」

「ん……っ!!」

 

 腿の内側を正面からじんわりと。指に力を込めてゆっくりと。健康的な脚を大切に、剣の手入れをするように丁寧に。

 外側から内側へ、身体の中心線に集めるようにして……

 

「ふ……ぅっっ……!! ひ……ん……っ! そ、こは……っ」

 

 普段は元気いっぱいな声が今だけは熱をおびたそれになっている。

 誰にも聞かせた事の無いような声を私だけが独占しているのだと思うと、自然に力が入ってしまいます。

 なんどもなんども念入りに身体をほぐしていき、気がつけば腰回りは痙攣したように小刻みに震えていました。 

 

「最後に胸回りね」

「お、お願いします!!」

 

 蓮常寺さん同様、彼女も私の胸を見て覚悟を決めたように言いました。もしかしたら「この半分――いえ、一割でもいいからください!」とか思っているのかもしれません。

 

 なので、こちらも念入りに。

 

 手の平にすっぽりと収まる、どころか物足りないといったおっぱいの感触。ですがそこはそれ、確かな柔らかさがあります。

 彼女の望みを叶えてあげるように、じっくりじっくりと、焦らすように丁寧に。

 身体の流れを整えて、血流が滞りなく行くように丹精を込めて。筋肉に刺激を与えて大胸筋が発達するように祈りながら丹念かつ入念に。おっぱいを手の平全体を使ってゆっくりと揉んでいきます。

 

「……う、んっ……! ぃ……ぅ……っ!!」

 

 何度も熱い声を漏らし、身体を震わせる綾瀬さん。

 

 彼女もまた、施術が終わった頃には汗だくとなり、腰が抜けたのか立てなくなっていたほどでした。

 

 

 

 これにて、術式完了。良い仕事したわ。

 




16話使ってようやく。
基本的に描写レベルはこんなもの。まだ"さぐりさぐり"ですから。
(最初がオリキャラなのは、いきなり原作キャラだと「散々期待させてこの程度かよ」となるでお試しという意味で)

……?
何を考えているのか分かりませんが、マッサージです。

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