藍染「死神辞めて企業する! ホストクラブ経営する!(天に立つ)」
瀞霊廷並び護廷十三隊全ての死神たちを巻き込んだ騒乱は、首謀者・藍染惣右介らの逃亡によって幕を下ろした。
朽木ルキアの処刑から端を発した、中央四十六室の全ての命令は藍染による虚偽の命令である。そのため――死神たちには大小の混乱の差こそあれど――身内同士・仲間同士でいがみ合う必要は無い。
今必要なのはこの事態の詳細な情報と背景、そしてこの事件で傷つき壊れてしまった全ての存在の回復と立て直しこそが急務である。
護廷十三隊総隊長・山本元柳斎はそう発令した。
早い話が「内乱は終わり、死神同士でいがみ合うのは御法度。今は全員で藍染によって引っかき回され歪められた全ての事柄を元通りにして、同時に藍染対策を行いましょう」ということである。
そのため激戦区であった双殛の丘には大勢の死神たちが集結し、事件の後処理に追われていた。
特に後方支援を主任務としている四番隊などは、目が回る程の忙しさになる。
「狛村隊長! 大丈夫ですか!?」
「ああ……すまぬな……」
「いえ、こちらこそ申し訳ありません……私がもっと手早く、上手に……先生みたいに回道を使えていたら……」
現場の最も近くにいた四番隊の隊士は、雛森桃である。
彼女は狛村の治療を自ら買って出たのと平行して、やってきた四番隊の隊士たちへも矢継ぎ早に指示を出していく。
「雛森三席! こちらはどうしましょう!?」
「重傷者を優先してください! 十番隊の方たちは皆さん怪我をされていますから、そちらも忘れずに!」
「あ、あのな……」
負傷者の数で言えば、十番隊と十三番隊が最も多いのだろう。
二つの隊はぶつかり合ったため、半数以上の隊士たちが多かれ少なかれ負傷を負っている。そして現在この場では四番隊の隊長、副隊長とも不在だ。
つまり今は雛森が責任者である。
「その……」
雛森もそれを理解しているため、普段よりも凜とした態度を意識してとっていた。
「へえ……
「ナリは小さいけど、あれでとんでもなくしっかりしてるんだぜ。三席なのは伊達じゃねえよ」
「なるほど……岩鷲、お前さんよりずっと頼りになりそうだな」
「姉ちゃん! そりゃねえよ……!」
海燕の言葉を聞いた空鶴が、岩鷲をからかう。
十番隊の相手をする必要もなくなったため、志波家の兄弟たちもまたこの場所へとやってきていた。
そして――
「ひ、雛森……?」
「…………」
「雛森……三席……?」
――彼らがいるということは、日番谷冬獅郎もまたこの場にいるわけである。
日番谷は丁寧に――もの凄く言いにくそうに、そしてもの凄くもの凄く丁寧に相手の様子を窺うような声音で、目的の相手に話しかける。
「何か御用でしょうか、
「う……」
返ってきたのは、感情の一切無い声と瞳だった。
言葉遣いこそ丁寧ではあるものの、口調は事務的そのもの。それと相まって、まるで無関心を体現したかのようだ。
日番谷と雛森、二人は流魂街で暮らしていた頃からの知り合いである。
そのため当時の癖で日番谷のことを「シロちゃん」や「日番谷君」と呼んでしまうことが雛森には時々あった。
その癖は彼が隊長になっても続いており、ここ数年は雛森が昔のように呼ぶ度に「日番谷隊長な」のように訂正するというやり取りが度々あった。
先ほどのは確かに日番谷が望んだ呼び方だ。
だが違う。
こんな結果は望んでいない。
「いや、そのな……あれは……」
日番谷たちがこの場にいるということは。
事態が終息したということは。
つまりは"何があったのかを雛森が全て知った"というわけである。
「見ての通り、今は忙しいので。用事がなければ後にしてもらえますでしょうか」
彼女が敬愛する
とはいえ日番谷にも言い分はあるのだが、理屈と感情はまた別物。簡単に言ってしまえば"一線を越えてしまった"わけだ。
となれば当てつけのような態度を取られても仕方ない。
「その、だって……あれはな……」
「要件を言えないということは"用事はない"と解釈させていただきますね」
狛村にひとまず問題がないまでの治療を終えると、彼女はすっと立ち上がる。
「では失礼します、日番谷隊長。まだ仕事がありますので」
「あ……っ……あ……っ……」
それは氷雪系最強の斬魄刀を持つ日番谷が底冷えするほど冷たい声だった。
去って行く雛森の背中に向けて、届かないと知りつつゆっくりと手を伸ばす。
「ひっ……雛森いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ようやく口を開いたとき、彼女の姿はすでになかった。
●アイ
哀
●タグ
「ごめんねシロちゃん」のタグが本当の意味で仕事を始められました。
●叫び
「い」を50個。
「ぃ」を30個。
「っ」を20個。
「!」を20個。
合計120文字を贅沢に使用した、渾身の叫び。