お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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第166話 なぜか朽木家とセットになってる感がある

「なあ、みんな……」

「なんだ、黒崎……?」

「どうして俺たち、ここにいるんだろうな……?」

「あはは……で、でもほら! 楽しいから……」

「井上、無理はするな……」

 

 一護たちが諦めてるわねぇ……

 まあ、気持ちは私も一緒なんだけどね……

 

「オラ! 聞いてっか藍俚(あいり)!?」

「はいはい、聞いてる聞いてる」

「だからな! おれがいなかったら、あの()っちぇえ隊長相手に兄貴だって苦戦してたってわけだよ! わかるか!?」

「そうね、空鶴の言う通りだわ」

「別に腕っ節が弱いとか、そう言うわけじゃねえんだよ!」

「わかるわかる、私も分かるわ」

「だよなぁ!!」

 

 酔っ払い相手には逆らわないのが一番です。

 

「だいたいお主な! 前から聞きたかったが、この百年で何をしたんじゃ!? 砕蜂はあれだけ強くなっておるし、そもそもお主も剣八と斬り合っておるし! 順序立てて説明せんか!!」

「はいはい、夜一さんの言う通りだわ」

「確かに儂とて実戦から離れておったが、アレはないじゃろう!! 瞬鬨を平気で使いこなしおって! しかもあやつ、斬魄刀無しじゃぞ! 分かるか、あの時の儂の気持ちが!?」

「そうね、私も分かるわ」

「じゃろう!!」

 

 酔っ払い相手は逆らわないのが一番です。

 

「「よし! 分かったら呑め!!」」 

「それはお断りします」

 

 前言撤回、逆らう時もあります。

 

『いやぁ、空鶴殿と夜一殿……両手に花! これはなんと羨ましいハーレムでござるな!!』

 

 代わってくれるならいつでも代わってあげるわよ。

 

『いやいや、拙者は藍俚(あいり)殿の身体を通して感じられる、このおっぱいの感触だけで……』

 

 はぁ、まったく……

 

 ……あ、なんのことかわからないですよね? ご説明しますね。

 

『一旦回想シーン入ります、というやつでござるよ!』

 

 と言っても、説明が必要な程に細かい事情なんて無いんですけどね。

 

『すみませーん! 回想シーンキャンセルでお願いするでござる!!』

 

 朽木家での歓迎会の翌日、私と一護たちが志波家に呼び出されました。

 どうやら空鶴が昨日の朽木家での出来事を聞きつけたようで「ならウチでもやるぞ!」と強行したようです。

 まあ一護たちは志波家の皆さんにお世話になったことだし「無事になんとか終わりました」という意味合いを兼ねてなら、分からなくもないんですけどね。

 

 ……だったら一護たちだけで良かったんじゃないの? なんで私まで呼んだの?

 しかもなんで私だけは「酒と食い物を持ってこい」って注文を付けたの? こういう催しって歓待側が基本的には用意してくれるんじゃないの!?

 おかげで樽酒二つ背負って、食材抱えて歩く羽目になったわ……

 あと、行ってみたら夜一さんもいるし……

 また逃げ出したのかしら? 終わったら砕蜂に言いつけておこうっと。

 

 ――とまあ、そういうわけなの。

 

 酔っ払いが二人もいれば一護たちが萎縮するのも当然よね。

 

「……ったく、おいお前ら! いい加減にしとけよ!!」

「なんじゃ海燕! ケチくさいのぉ!!」

「そーだそーだ! だいたい兄貴が、朽木の所の飲み会を断ったのが悪いんだろうが!!」

「そうじゃそうじゃ! ちなみに儂は招かれんかった!」

 

 あなた、子供の頃の白哉をからかって遊んでたじゃない……因果応報よね。

 

「アレは隊長の事を気遣ったんだよ! 京楽隊長も呼ばれてるって聞いたから、知り合い同士でゆっくりさせてやろうと思ったんだ!」

 

 その気遣い、清音さん達の馬鹿騒ぎで随分と破綻していたけどね。

 

「なにより、俺がノコノコ出向けば呼ばれてねえお前たちまで一緒になってついてくるつもりだったんだろうが!!」

「だからこうして我慢してタダ酒呑んでるんじゃねえか!」

 

 ……朽木家に招かれる、四楓院家と志波家の当主か……

 

『オマケに陰の関係者と一部界隈で大注目の藍俚(あいり)殿までいるでござるよ! こりゃ、何か企んでるんじゃねえのか!? と疑われること間違いなしでござる!!』

 

 当人たちは気にしなくても、政敵とか他の家から見れば身構えそうよね。

 海燕さんの行動には、そういう気遣いもあったのかしら……?

 

「タダ酒ってお前……それも湯川に用意させたやつだろうが!」

「持ってくるの大変だったわ」

「嘘を吐かんか! お主ならこの程度、お猪口を持つようなものじゃろう!!」

 

 夜一さんは私のことを何だと思ってるのかしら……?

 

「わかったら呑まんか!」

「おっ、いいぞ夜一!! 藍俚(あいり)は付き合い悪ぃからなぁ……!!」

「ちょ……!?」

藍俚(あいり)の姉さああぁぁん!」

 

 どこからか用意した大きな杯にお酒をなみなみと注ぎ、目の前に突き出して来ました。

 アルハラ反対! と思ったら台所から岩鷲君が駆けつけてきて、杯を奪い取ります。

 

「俺が呑む! ………………っ、ばあああっ!! の、呑んだぞ……!」

「あ、ありがとう岩鷲君……」

 

 助かったけどカラ酒の一気呑みは身体に良くないから控えてね

 

「い、いえっ! 不肖・志波岩鷲! 藍俚(あいり)の姉さんのためなら――」

「おい岩鷲! つまみが全然来ねえじゃねえか!」

「ちょっと空鶴、やめなさい! 岩鷲君だって十番隊との戦いとかで頑張ってくれたんでしょう!? 浮竹隊長も褒めてたって聞いたわよ?」

「それはそれ、これはこれだ!」

「だ、だだだだ大丈夫だってば姉ちゃん……も、もう来るから……」

 

 空鶴に胸ぐらを掴まれて若干息苦しそうになりながらも、そう返します。

 続いてその言葉の通り、お盆に大量の料理を載せて運んでくる都さんたちの姿がありました。

 

「お待たせいたしました」

「空鶴姉様、どうぞ」

「おっ、悪いな氷翠(ひすい)! うんうん、お前は良い子だ」

 

 目の前に並んだ御馳走(食材は私の持ち込み)に気を良くしたらしく、氷翠(ひすい)ちゃんの頭を撫でつつも「もう待ちきれなかった」とばかりにもう片方の手は箸を握りしめていました。

 

「おお、なんじゃこの美味そうな料理の山は! どれ、儂も……」

「食え食え! 遠慮すんな!」

 

 夜一さんも食事に参戦します。

 配膳を終えた都さんたちは「君子危うきに近寄らず」とばかりに、そそくさと離れていきました。

 

「痛ててて……」

「大丈夫? ごめんね岩鷲君」

 

 空鶴に放り投げられた岩鷲君を軽く介抱します。

 

「岩鷲! 何やってやがる! お前も呑め!」

「はいいぃっ! 姉ちゃん!!」

 

 うーん……

 

 ……もういい加減、この酔っ払い側の描写はしなくていいわよね? それにほら、向こうで海燕さんがなんだか真面目な話を始めたから、あっちを注視しましょう。

 

 

 

「うおっ! 美味そう……!」

「遠慮せずに召し上がって下さいね。湯川隊長からたくさん差し入れをいただきましたし、足りなければまだまだ作りますから」

「……美味い」

「本当に、美味しいです」

「うわぁ……これ、美味しいよぉ……」

 

 目の前に並んだ御馳走を我慢出来ず、一護たちは食べ始めました。

 

「おう、遠慮すんな! 前にウチに来たときにゃ、きちんと持てなしも出来なかったそうじゃねえか!! 都の料理は世界一だぜ!! 食ってけ食ってけ!」

「父様、私も手伝いました!」

「おう! そうだな!! 氷翠(ひすい)もちゃーんと頑張ったもんな!! 偉いぞ!!」

「えへへ……」

 

 海燕さんが娘の頭を撫でてる……子煩悩なシーンだわ……

 

『あとサラッと「嫁の料理は世界一」と言ったでござるよ! よい旦那さんしつつ惚気までするとは……!!』

 

「えっ! これ氷翠(ひすい)ちゃんが作ったの!?」

「はい……」

「うええ……すごい……私、こんなに上手に料理できないよぉ……」

「お母様と、藍俚(あいり)おば様にも教えて貰いました」

 

 私なんて大したことは教えてないんだけどね。

 親からの遺伝と、教育が良かっただけだと思うわ。都さんの遺伝子って凄い……

 え? 志波家の遺伝子? 知らないわね。

 

 ……て、あら? 今、一瞬だけ織姫さんと目が合ったわ??

 

「まあ、食いながらで良い。一護、忘れないうちにお前にコイツを渡しておく」

 

 盛り上がっている向こうで、海燕さんは懐から封書を取り出して一護に渡しました。

 

「手紙……?」

「ああ、ソイツはお前の親父……一心宛てだ」

「親父に!?」

 

 おお! 海燕さんからのお手紙ですね!!

 

『本家の長男から、分家の者へと宛てた手紙……厄の匂いがプンプンするでござるよ!!』

 

「お前には前にも話したが、一心は二十年ばかり前に突然音信不通になっちまった。死んだ、なんて言う奴もいたが、あの一心が簡単にくたばるなんざ俺には信じられなくてよ。それがこう月日が流れて、一心のガキと膝突き合わせて話すことになるとは……人生って、わかんねえもんだな……」

「海燕さん……」

「そんな顔すんじゃねえよ、前にも言っただろうが。親戚だ、ってよ!」

 

 本来なら海燕さんは墓の下ですもんねぇ……それを考えれば、人生って不思議です。生きててよかったよかった。

 ……あら……? 織姫さんたちがなにやら不思議な表情をしているわね?

 

「……え? ええっ!! く、くくく黒崎くんって……そうなの!?」

「親戚……だと……!?」

「今の話の流れからすると……黒崎の父親は……!?!?」

 

 なるほど、あの三人は知らなかったのね。

 

「あん? なんだ、お前らは知らなかったのか? 仕方ねえな……」

 

 面倒くさそうなポーズを取りつつ、海燕さんは織姫さんたちに説明を始めました。

 その横では都さんが、海燕さんの時とおなじく一護に封書を渡しています。

 

「私も一心様に宛てて、一筆啓上させていただきました」

「都さんもか!?」

「一心様とは何度か顔を合わせたこともありましたので」

 

 同じ死神だったからねぇ……

 オマケに親戚だし、そりゃあ顔を合わせる機会も多かったでしょうね。

 

「わ、私もお手紙を書きました……」

氷翠(ひすい)もかよ!?」

「はい。一心おじ様とお会いしたことはありませんが、気持ちはたくさん込めたつもりです」

「は、はは……こりゃすげえな。よし、あの親父の首根っこを掴んででも連れてきてやるよ!!」

 

 手紙を大事そうに仕舞うと、一護は力強く宣言しました。

 その言葉を聞いた氷翠(ひすい)ちゃんは、少しうっとりとした表情を浮かべます。

 

「どんな方なんでしょうか……きっと父様みたいに素敵な方なんだと思います……」

「いや……悪いがあの親父はそんな立派な人間じゃ……」

「一護さん! 駄目です、ご自分の父様のことをそんな風に言ってはいけませんよ!」

「す、すまねえ……?」

 

 あー……海燕さんが父親で、その親戚だから……年上の男性に変な憧れを持っちゃってるのかしら?

 

「それと、最初にお話を聞いたときからずっと気になっていたのですが……」

「あん……なんだ?」

「一護兄様とお呼びすべきでしょうか?」

「いやそれは……好きに呼んでくれ……」

 

 ――というやり取りを、酔っ払い二人に挟まれながら眺めていました。

 

 ……あ、そろそろ岩鷲君が限界っぽい……

 だ、大丈夫!? ギブアップは早めにね!?

 

『そういえば……藍俚(あいり)殿! この数百年間、ずーっと疑問に思っていたでござるが……』

 

 なに? この状況を切り抜けられる逆転の秘策!?

 

『お酒から酒精(アルコール)だけを消し去る鬼道とか、開発なされば良いのでは? ほら、あの除菌する鬼道のように……』

 

 ……何でもっと早く言ってくれなかったの!! 射干玉の馬鹿ぁっ!!

 

『す、すまんでござる!!』

 

 でも大好き!!

 

『拙者も!!』

 

 

 

 

 

 

「うおっ! 湯川さん酒くせえ……!」

「私は一滴も呑んでないんだけどね……」

 

 志波家での宴会もなんとか終わり、私たちは帰路の途中です。

 瀞霊廷の大通りを歩いています――歩いているんですが……

 

「ほら、あの人……」

「なるほど、あの死神が……」

 

 すれ違う死神や住人は、一護を見ては何やらヒソヒソと囁いていました。

 当人は全く気付いていないのですが、一体何を話しているのやら……

 

「アレが十一番隊に殴り込んだっていう……」

「それどころか、そこの副隊長と斬り合った猛者らしいぞ」

「いやいや、十番隊の隊士たちを何人も蹴散らして、日番谷隊長も圧倒したらしいですよ」

「自分の名前を大声で叫んで、助けに行く相手の名前も叫んでたって」

「えっ!! その相手って十三番隊の朽木ルキアさんでしょ!? 男性が女性の名前を叫んだってことは……」

「恋人同士だったってこと!?」

「まさかあの騒動って、恋人を取り戻しに来たのが発端だったの!?」

「ロマンチック……」

 

 ……これは。

 なんだか、変な噂が広まってる……

 

オレンジ海燕殿(くろさきいちご)ブラック一護殿(しばかいえん)の話が混ざってるでござるな!! 尾ひれどころか手足まで生えてカオスになってるでござる!!』

 

 ま、まあ実害はないから。放っておきましょう!

 




親戚同士のほのぼの交流会
(なおプロットは「海燕が一心宛の手紙を一護に渡す」としか書かれていない)

……なんだろうこの話……??

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