お前は天に立て、私は頂をこの手に掴む   作:にせラビア

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第173話 真面目に会議するだけの話

「まったく! こうも面倒とは……!」

「心中、お察しします」

「口ばかり達者の癖に、こういう時に意気地がない!」

 

 山本総隊長の愚痴を笑顔で肯定しながら、肩をマッサージしていきます。

 

「まあ中には気骨のある者もおるが……む、もう少し下を頼む」

「……あ、ここですね。ここなら、強さももう少しくらい――」

「おお! そこじゃそこじゃ! くぅぅ……たまらん!」

「お疲れの証拠ですね。ご迷惑をおかけします」

 

 ということで、現在は総隊長をマッサージ中です。

 年齢に加えてここ数日の慣れぬ応対もあってか、背中と言わず肩と言わず腰といわず、なんなら全身に妙な力が入っているので、そこもほぐしていきます。

 いえ、この様子だと神経系以外に内臓系にもダメージが来てるわね。

 

「とあれ、新体制が発足するまで数ヶ月は掛かるじゃろう……それまでの間、すまんが何度か頼むわい」

「……仕方ありませんよね」

 

 ……はぁ……織姫さんのマッサージがしたいわ……

 なんで半裸の老人男性を揉まなきゃいけないのかしら……しかも一番隊の隊首室で、二人っきりです。

 男の人と二人っきりで部屋の中……でもムードも何もあったもんじゃない。

 

 でもまあ、仕方ないわよね。

 急な依頼を受けちゃったし、それに総隊長の様子も見ていられなかったから。短期集中で施術に来ましょうか。

 

 ……あ、ちょっと聞いて下さいよ。

 実は数時間前に、こんなことがあったんです。

 

 

 

 

 

「どうやら……各人、揃ったようじゃな」

 

 山本総隊長がそれまで伏せていた眼を開ければ、辺り一帯の緊張感がじわりと重くのし掛かりました。

 白眉がふわりと僅かに揺れ動いただけで、この圧力です。

 鷹のように鋭い視線で、部屋中を一度射貫くように見回してから、そう呟きました。

 

 ただ、声に少々張りがありません……お疲れ、なんでしょうね。

 でなければ、私にあんなことを言わないと思います。

 

「ではこれより、隊首会を始める」

 

 太陽が中天から西の空へと傾き始めた頃、隊首会の開会が宣言されました。

 

「さて、改めて説明するまでもじゃろうが……事前の通知の通り、此度の議題は先の藍染惣右介の一件についてじゃ」

 

 そう告げれば、周囲が僅かにざわつき始めました。

 いえ、言葉を発したり動作を伴うような反応があるわけではないんですよ。

 ただこの部屋に集まった全員の気配――まとう雰囲気とでも言うんでしょうかね――が、大なり小なり変化しているのが、なんとなく分かるんです。

 喜・怒・哀・楽。それに加えて困惑や動揺など――雑多な感情が、隊首会室には渦巻いています。

 

 ……なんで喜と楽があるんでしょうか? どうして「新しい相手を斬れるかもしれない」ってワクワクしてるんですか某隊長……

 

『それは勿論、彼女が十一番隊の隊長だからでござるよ!!』 

 

 知ってた。

 

「護廷十三隊より隊長が――三名もの"元隊長"が、尸魂界(ソウルソサエティ)より離反し(ホロウ)たちの側へとついた。これは重大な事件である。本来ならば即座に隊首会を招集し、護廷十三隊の動向を決めるべきじゃ。が、藍染は中央四十六室の全員を排除しておった。そのため――」

 

 この話は長くなるので、要点をまとめておきますね。

 

 つまり――

 

 ・藍染たちが裏切りました。

 ・すぐに会議して死神全体が「こうやって動くぞ」と決めるべきだった。

 ・けれど、意思決定機関がもう藍染に潰されていた。

 ・なので全体の音頭を取る相手が誰もおらず、動き出すのに時間が掛かった。

  それこそ今回の隊首会のように、会議一つ行うのも数日掛かっちゃう。

 

 ――というわけです。

 

「その為、現在早急に四十六室の新たな人員選定が行われておる。じゃがそれらは早くても半年は掛かる見込みじゃ。そのため暫定的な措置ではあるが、決定までの間は四十六室に代わって儂が尸魂界(ソウルソサエティ)の意思決定を執り行うこととなった」

 

 この辺が、冒頭で愚痴っていた内容に繋がるわけです。

 

 まず、中央四十六室に所属しているのは貴族です。

 ですがその貴族が全員殺されました。

 ポストが大量に空いたと言えば聞こえは良いですが、その全員が死んでいる――というより暗殺されているわけですよ。

 

 だから「自分も同じように殺されるんじゃないか」と貴族の腰が引けているそうです。

 今まで「自分たちは尸魂界(ソウルソサエティ)で一番偉いぜ! しかも死神が守ってくれるぜ」といった背景もあったのに、その安全神話が崩れたわけですからね。

 元とはいえ死神に殺される。しかも相手は完全催眠なんて能力を使うわけですから、察知することすら難しい。

 

 逆に「そういう逆境だからこそ!」みたいに奮起してる貴族もいるようですが、真摯に尸魂界(ソウルソサエティ)のことを思っているのではなく、復讐に燃えているだけ。死神たちを道具としか見ていない――という人も多いようですよ。

 特に殺された四十六室の旧メンバーの身内に。

 

 さらには総隊長が四十六室の代理となるのも、身内の面々や他の貴族からも難色を示されたそうで。

 それでも「世界の一大事だから、統一された意思で藍染と戦うだけの力が要る」と言い切ってなんとか押し通したそうです。

 

 以上、マッサージ中に散々聞かされた裏情報からの補足でした。

 

「へえ、山じいがねぇ……こりゃ大出世だ」

「元柳斎先生が……! その、何か手伝えることがあれば俺にも言って下さい」

「そのつもりじゃ。この火急の事態を乗り切るため、お主らにはこれまで以上に働いてもらうぞ」

 

 総隊長の話に、先ほどとは違う意味で周囲が騒がしくなりました。

 勿論「良い意味で」ですよ。

 

「うむ、その意気やよし。では早速、藍染の動き――狙いについてじゃが……これについては、まず助っ人を呼んでおいた。その者に解説してもらうぞ。入れ」

「や~れやれ、やっと儂の出番か……待ちくたびれたわい……」

 

 ブツブツと文句を言いながら入室してきたのは、夜一さんでした。

 その姿に三度、部屋の中が騒がしくなります。

 

「よ、よよ夜一様!?」

「あら? 確か彼女は百年ほど前に……」

「あらら……山じいってば、大胆だねぇ……」

「皆の中には、知っている者も多かろう。前二番隊隊長であった、四楓院夜一じゃ。そして貴様らの懸念も当然だが、此奴は藍染たちの目的を知っておる。それこそ百年前の件の事件についても、な……」

 

 口ぶりや反応から察するに、いつの間にやらちゃんとした協力体制を結んだ様です。

 ……まあ「二番隊の副隊長にさせられた」わけですから、自由奔放というわけにはいきませんよねぇ。

 

「あー、分かっておると思うがの。これはあくまで特別協力の一環に過ぎぬ。儂()については正式な決定事項というわけではないことを、まずは念頭に置いておけ」

 

 儂()、ですか。

 つまりは言外に浦原たちも含んでいますね。

 

「それと例の件じゃが、よろしく頼むぞ!」

「……わかっておる。そのくらいの便宜は図ろう」

 

 あら? 何か密約でも交わしたんでしょうかね?

 

「うむ、ならばよい。では説明するぞ」

 

 ということで夜一さんが、藍染のことについて知っている限りの説明をしました。

 そして語られたのは――

 

 ・(ホロウ)化の技術を求めていたこと。

 ・百年前の事件の黒幕だったこと。

 ・今回の狙いであった崩玉についてのこと。

 ・(ホロウ)の側についたということは、死神化した(ホロウ)を……破面(アランカル)を作り出しているのだろうということ。

 

「――とまあ、こういったところじゃな」

 

 そう言って話を締めくくったわけですが……

 

 あれ!? 平子元隊長らの情報がありませんね。

 状況的に考えても、接触してて顔見知りのハズですが……

 あっ、そうか!! 意図的に伏せてるのね!

 

 考えれば、仮面の軍勢(ヴァイザード)まではバラせませんよね。

 いくら知り合いだったとしても、事前に許可も取らずに喋るなんて愚の骨頂です。

 よかれと思っての行動が、大きなお世話になるかもしれない。

 そういう判断からでしょうね。

 

「自分を高次の存在とでも思ってるのか……?」

「そんなことの為に……俺は……」

「東仙……」

「死神の力を持った(ホロウ)……破面(アランカル)ですか。腕が鳴りますね」

 

 改めて目的を知らされて、各員が思い思いの感想を口にしています。

 

「死神の(ホロウ)化……フム、面白そうだネ。是非とも研究してみたいヨ。こちらにも面白いサンプルもあることだしネ」

 

 ゾクッとさせられました! 涅隊長がこっちを凝視しています!!

 やめて! まだ公にするのは早すぎると思うの!!

 

「それと、藍染の実力についてじゃが……これについては、より適任者がおる。その者に語ってもらおうとしよう」

「……え?」

 

 総隊長の視線が、それに釣られて全員の視線が私に集まりました。

 

「湯川、そなたが藍染とやりあった事は聞いておる。お主の目から見て藍染の強さはどうじゃった?」

「え、えー……そうですね……」

 

 そう言うことを言わせるんだったら、話をまとめる事前準備の時間くらいはくださいよ! そっちは「この程度ならアドリブで平気だろう」って思ってるんでしょうけど!!

 

「まず皆さんもご存じの通り、藍染は霊術院の特別講師としても評判でした。そこでは効率が良くて、より効果的な手段を幾つも。それこそ惜しげもなく紹介していました。霊術院の教本には、藍染が提案した訓練法が幾つも載っています――それだけ斬拳走鬼の造詣が深いんです」

 

 物事を教える場合、相手の三倍は理解していないと伝わらない。

 なんて表現がありますが、藍染の場合は三倍どころじゃないですからね。

 

「つまり単純に基礎能力だけを見ても、強いです。というか、実際に手強かったです。相手は様子見と時間稼ぎだけが目的だったのに、私は終始押されっぱなしでした。なので『総隊長に匹敵する実力を持っている』くらいで考える必要があると思います」

「……あれ? 藍俚(あいり)ちゃん、斬魄刀はどうだったの? ほら、なんだっけ……完全催眠とかいうやつ。それは使われなかったの?」

 

 京楽隊長が思い出したように質問してきました。

 

「ええ、戦いの最中では使ってきませんでした。様子見だった、というのもあると思いますが……でもおそらく、使う意味が無かったんだと思います」

「というと?」

「藍染の話を信じるなら、催眠といっても()(ゆう)にすることは出来ないようです。なので多対一ならば騙す対象が増えるでしょうが、一対一だと騙してもあまり意味が無いのだと」

 

 そう言うと京楽隊長は納得したように頷きました。

 

「なるほどねぇ……目の前の相手の姿が突然親友や恋人に変わったとしても、それじゃあすぐにバレちゃうもんね。使いどころは考える必要があるってことか」

「おそらくだが、化ける相手を真似る必要もあるんじゃないか? 催眠で姿や声は真似られても、思考や仕草に癖が違えば疑われそうだ」

 

 浮竹隊長が口を挟んできましたが……さすが、これだけなのによく分かっている。

 と思っていたら、夜一さんが手をポンと叩きました。

 

「ああ、そういえばそうじゃったな! 百年前には、藍染が自分そっくりの演技をするよう仕込んだ死神がおったとか……」

「何! それは本当か!?」

「誰なのか調べれば、何か他の情報も探れるかもしれぬな」

「ならば隠密機動に調べさせよう」

「その者を調べるのも良いが、現時点では情報がない。考えてもみよ、その者が男か女かすら分からぬのだぞ?」

「あ……」

 

 ……いやぁ、生きてないんじゃないかしらね?

 下手に証拠を残すくらいなら、とっくに始末されてそうに思うけれど。

 

「じゃが、ある程度のことは割れた。なればこそ、儂自らが藍染の相手をするのが良策と見た。その際、他の者は被害が広まらぬよう注力せよ」

 

 総隊長が、そう結論づけました。

 実際にそれが正解でしょうね。

 最強の実力者が一人で吶喊して、無差別に攻撃する。これが一番確実だと思います。

 

 ……あら? 何か忘れているような……なんだったかしら……えっと……

 その作戦には危険な要素があったような無かったような……

 

「さて、次の議題じゃ」

 

 考え事をしていたら、話題が変わっていました。

 

「三名もの隊長が抜けた穴はあまりにも大きい。そのため、空となった隊長の席を埋めることも考えておる」

「なっ!」

「ええっ!?」

「ふむ……」

「性急すぎるのでは?」

「元柳斎先生! そうは言っても、当てはあるのですか!?」

 

 本当、今日は騒ぎになることばかりね。

 ですがこれはまた別のベクトルで大事件です。なにしろ新隊長を、それも三人も決めるわけですから。

 しかもただ埋めるだけじゃなくて、藍染との戦いで活躍出来るほどの相手じゃないと意味がありません。

 

「かつての十番隊は何十年も隊長不在でしたし、今回もそれで良いのでは?」

「まあ、待たんか。お主らの懸念は尤もじゃが、儂にも一人当てがある」

 

 当て……って誰なのかしら……?

 全然想像つかないわ……あ! 一角かしら!?

 三番隊、五番隊、九番隊のどれかだとしても……ギリギリ三番隊かしらねぇ?

 ……ううん、やっぱり無理そう。別の人選よね。

 

「儂は嫌じゃぞ!」

「わかっておる! 何より、即座に全ての席を埋めるつもりもない。平行し、候補者の選定を進めていくということの周知に過ぎぬ。お主らの知り合いに、誰ぞ適任者がおればそれでも構わぬぞ」

「そういうことでしたら」

 

 すっと優雅な仕草で挙手をしたのは、白哉でした。

 

「我が隊の副隊長を……阿散井 恋次を候補としてやりたいのですが……」

「ふむ……阿散井か……」

 

 ええっ! 意外というか何というか……

 そっかぁ……白哉も、阿散井君のことを認めてるのね。

 

「確かに、先の騒乱の折りに卍解を使っていたと……ふむ、実力は申し分なしか」

 

 総隊長も髭に手を当てつつ、思案顔です。

 ですがどうも、悪い推薦ではないようですね。というか、結構乗り気です。

 

 しかしこの話は結局、この時点では保留に。

 能力はあれど、まだ阿散井君本人の意思を確認していないことなどありましたので。

 

 ……おかしいわね。

 私の時には事前説明もなしに突然一番隊に連れてこられたかと思えば、隊長にされていたんだけど……?

 隊長になるのって、そういうものじゃないの??

 

 そんな感じで、隊首会は進んでいきました。

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 

 

「ふむ、相変わらずお主の按摩は良く効くわい」

 

 と、回想シーンを挟んでいたらマッサージが終わりました。

 総隊長は相変わらず半裸のままですが、腕や肩を回して調子を確認すると満足そうに頷いてくれました。

 

「ご満足いただけましたか? では、最後にこれをどうぞ」

「……なんじゃこれは?」

 

 出したのはお茶です。

 ただ、ちょっとだけ色が違いますけどね。

 

「薬湯です。要らぬ気疲れが積み重なっているとのことでしたので、内臓に良い効能のある漢方を混ぜていますよ」

「む……じゃが……」

「どうぞ」

 

 明らかに苦そうですもんね。

 でもダメです、ちゃんと飲みましょうね。

 

「う……ぐ……っ……!」

「飲みながらで良いので、少しだけ話を聞いていただけますか?」

「な、なんじゃ……」

 

 薬湯に悪戦苦闘している総隊長に向けて、先ほどの回想で気付いたことを伝えます。

 

「藍染惣右介の対策についてです。総隊長がお一人で倒すとのことでしたが、考え直してみれば藍染がそれに気付かないとは思えないんです」

「ふむ……」

「同じ死神であったのですから、総隊長の強さは知っています。ならば、総隊長への対策を――流刃若火への対抗策はあると思っておいた方が良いかと」

「……確かにな。炎への対策か……考えておこう」

 

 神妙に頷いています。

 手にした薬湯がまだ三割くらいしか減っていないことを除けば、完璧ですね。

 それ、一気に飲み干しちゃった方が楽ですよ? ほらほら、ちょっと離れた場所に置いて「これは見なかったことにしよう」ってしてもダメですからね。

 

「それともう一つ、藍染の鏡花水月の対策についての別案です」

「別案? なにかあるのか?」

「はい。と言っても、その場しのぎみたいな考えなんですけどね」

 

 実際、なんどか実行すると藍染にはすぐに対応されそうですが。

 でも手段を多く用意しておくには超したこともありませんし。

 

「技術開発局が映像や音を記録したり飛ばす機械を作っています、それを利用するんです。藍染の戦いの際に、機械が映し出した映像を見て催眠か本物かを判断し、それを音声で各死神に伝えるんです」

 

 早い話が「現場の方と中継が繋がっています。現場の●●さーん」とニュース番組でやるアレみたいなものです。

 藍染との戦場をカメラで映して、それを見たディレクターが指示を出すわけです。

 指示出しをしているのが誰かなんて藍染には分からないでしょうから、ある程度は効果があると思います。

 

「さすがに機械にまで催眠が及ぶとは思えませんから」

「……やりたいことはわかった。じゃが奴は、瀞霊廷の全ての死神に催眠を掛けたと聞くぞ? 指示を送る者が騙されれば――」

「ええ、ですから流魂街の住人を使います」

「な……っ!!」

 

 驚かれました。そんなに変な案だったでしょうか?

 総隊長はしばらく瞑目していましたが、やがて口を開きました。

 

「……理には適っておるな……十二番隊に打診だけはしておこう」

「ありがとうございます」

「ついでじゃ。儂からも一つ、お主に聞こう」

 

 え? 何かありましたっけ……?

 

「黒崎一護……その親についてじゃ」

「……あ!」

「混乱を避けるため、あの場ではあえて話題とはせんかったが……」

 

 あちゃぁ……そうでしたね。

 

「はい。その口ぶりですと、総隊長はもうご存じだとは思いますが……」

「志波 一心か……」

「まだ直接確認したわけではなく、あくまで息子の――黒崎一護の口からだけですが。可能性は限りなく高いと思います」

 

 そこまで告げると、再び総隊長は少しの間だけ口を閉ざしていました。

 

「お主が黒崎一護とその友たちを鍛えているのも、それが理由か?」

「え?」

「五大貴族より除籍された志波家であるが、その影響力は無視出来ぬ。貴族たちの要らぬ権力闘争に巻き込まれぬ為の、自衛の力を付けさせている。過去、朽木の家の面倒事に絡んだことのあるお主らしい考えじゃな……違うか?」

 

 あー、なるほど……そういう見方も出来ますよね。

 私はただ「どうせこの後も破面(アランカル)だ藍染だと敵に狙われるらしいから、先んじて鍛えておこう」程度の考えなんですけど。

 ですがそういった事前知識がなければ、そうなりますよね。

 

 だって一護は死神"代行"でしかありません。

 今現在は協力関係にあって友好的ですが、それでも藍染との戦いにむやみに巻き込むのはNGと考えるのも仕方ありません。

 なにより霊術院も卒業していない子供を戦場に出さなきゃならないのはねぇ……一応、死神側の面子もありますし。

 一護(子供)に「お願いだから助けて!」とは、なかなかどうして言いにくいです。

 

「いえ……いえ、そうですね。そのようなところです」

「ふむ、そうか……まあ、よい。黒崎一護らへの支援体制もきちんとした形で整ったのだ。長らく窮屈な生活を強いたが、ようやく彼奴らを現世へと帰してやれるわ。その辺り、お主から伝えてやれ」

 

 そこまで口にすると、総隊長は離れた所にある湯飲みを掴みました。

 

「実際、貴族の中にはそれを仄めかす者もおったわ。じゃが全ては事実無根、仮に関係者であったとしても尸魂界(ソウルソサエティ)とは関係が無いと言い切ったがの……まったく、どこで聞きつけたのやら……」

 

 そのまま湯飲みを口元に――って、それは!!

 

「……ぶふううぅぅっ!!」

 

 ああっ! 苦いのに覚悟しないで飲むから!!

 

 でも効果は抜群なので、私が帰る頃には総隊長はすっかり元気になっていました。

 

 

 

 

『……拙者の出番がねえでござるよおおおおぉぉぉっっ!!!!』

 

 あら、本当だわ。

 




もう2話くらいで、一護たちを(ようやく)帰らせます。

さー、破面(アランカル)殴る準備するぞー。
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